お前しかいない

菫川ヒイロ

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 正直、鈴に「何これ? 」と言われた時は結構へこんだが
 確かにこんなものを見せられても分かるはずもない。
 俺自身でもそう思わなくはないのだから。
 
 
 一応、説明したら分かってもらえた事は言っておこう。
 
 
「作りたいのは分かったけどさ、うん。
 私のお話を使ってくれるのはいいんだけど……
 これって栄ちゃん一人だけじゃ作れないよ? 」
 
 
 鈴にそういわれて俺は根本的な事に気づかされる。
 確かに俺だけじゃ何も出来やしなかった。
 この絶望的な現実に俺はまたしてもへこんだ。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 なんて俺は無力なんだと映像を見ながら思う。
 高校生が作っていたから、俺も出来るとつい勘違いをしてしまったけど
 でも俺はまだ中学生で……
 
 
 あれ? 高校生になれば出来るんじゃない? ていうかこの高校って確か……
 俺は大先生に聞いてみたら、その高校は受験できる範囲の高校だった。
 じゃあこの高校に入れば俺も作れるんじゃないか!
 
 
 そう思いついた俺はさっそく鈴に話に行った。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「俺、この高校に行って映像部に入るよ! 」


 鈴にそう宣言した俺は大事な事をすっかり忘れていた。
 
 
「ねえ、栄ちゃん。そうやって目標を立てて頑張ることは凄くいいと思うし
 私も応援したいとは思う。思うけどね栄ちゃん、この高校は栄ちゃんが
 思っているよりも入るのが難しいと思うよ?
 だってこの高校、それなりにレベル高い所だよ? 栄ちゃん、勉強大丈夫? 」
 
 
 そう、何もして来なかった俺が勉強など出来る訳がないのだ。
 でも、やっと見つけたのだ、やりたい事を。
 だからそう簡単に諦めるなんて出来やしなかった。
 
 
 それからというもの、俺は今までの分を取り返す為に勉強を始めた。
 いくら無謀だと言われようとも、そんなものに反論している時間さえ
 もったいない!
 
 
 鈴にもあーだこーだと口を出してもらいながら、俺は今まで一番勉強したと思う。
 まぁ今までが今までなだけに吸収力があったのだろう、
 順調に俺の学力は上がって行った。
 
 
 そして俺は必死こいてなんとか入る事が出来たのだ、この高校に。
 本当、周りが言うように、俺自身も奇跡だと思う。
 そうしてどうにか映像部にも入る事が出来た。
 ようやくだ、ようやく俺のやりたいことが出来るのだ!
 
 
 ここからがスタートライン、後は走り出すだけだった。
 





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