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しおりを挟む最初の山場を乗り越えてからというもの、驚くほどスムーズである。
だから問題があるとすれば、それは私のテンションが上がらない事だった。
栄ちゃんはうまい事やっていると思うし、実際、ここまで小暮洋という
ポンコツを上手に処理できている。
初日のあのポンコツとは別人なんじゃないかと思う程の変わりように
私は素直に尊敬する、栄ちゃんを、あくまでそれは栄ちゃんが凄いので
あって、このポンコツではないのは明らかなのだが……どうもこのポンコツ
調子に乗っていると感じる所が多々ある。
無駄に映り込んで来たり、謎の決め顔があったり、さすがに栄ちゃんに注意
されてからは治まったが、カット前に余計な台詞を足したり、立ち位置を
変えてみたりと本当に余計ない事をしてくれるのだ。
千里の演技が良いので撮り直しなんてしないけど、カメラ越しに私は
イライラしっぱなしなのである。
「あのさ、虹子。悪いんだけど…… 」
だから栄ちゃんが何が言いたいのかが分かるから私は、
「分かってる、分かってる。ええ我慢しますとも、もちろん。
ただね、栄ちゃん。編集では我慢しないからそれは分かっててね」
「はい」
栄ちゃんの良いお返事が聞けたので私は我慢して撮り続けた。
*****
ようやく撮影が全て終わった。
いつもならこれから編集の作業があると思うと、一回休憩入れないと
やる気が出ない私だが、今回はルンルン気分ですぐに取り掛かる事が出来た。
ここからはずっと私のターンだ。
「あの、虹子さん。編集の方よろしくお願いします」
栄ちゃんが丁寧にお願いして来たので私も笑顔で答える。
「はい、もちろんそのつもりですよ。じゃあ鈴、連れって行って」
私は栄ちゃんをさっさと鈴に連れて行ってもらう。
「栄ちゃん、大丈夫だよ虹子だから」
鈴はそう言って心配する栄ちゃんを連れていった。
「さてと、始めますか」
鈴は私だからと言うが、当然私に遠慮や配慮なんてものは一切なく、
無駄なカットはどんどん削って行くし、音声なんかもってのほかである。
だから私は必要の無いもの(主にポンコツの映像や声)はどんどん
編集してしまうのだ。
「ここも、ここも、後これも」
今回の作業は私史上一番はかどった。
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