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しおりを挟む私には将来を誓い合った相手、婚約者がいました。
私達はご近所さんで同じように育った為か、思考が似通っていてだからなのかは
分かりませんがお互いの事がよく分かってしまう。
だから、お互いを補うような関係がいつの間にか婚約者へと変わっていったのは
自然な流れだったとおもいます。
そんな私達だからきっと素敵な未来が待っていると思っていたのに……
それは突然やって来てしまいました。
「コナーム。話があるんだが」
ベルトムにそう言われて私は何か嫌な予感がしました。
でもそれはまた仕事で何かをやらかしたとかおばさんを怒らせたとかそんな
ありふれたものだと思っていたら、
「コナーム、俺と別れてくれ」
そんな事を言ったので驚いてしまいました。
「な、なんでよ! どうしたのよ、急に。そんなにヤバい事をしたの? 」
「否、そういう事じゃないんだ。その言いにくいんだが、運命の相手を見つけて
しまったんだよ。ドリクーペって言うんだ」
ベルトムは私に知らない女を紹介した。
「どうも」
その女はとても綺麗な人でした、女の私から見てもとても魅力的なその人が
ベルトムの運命の人だなんて、私には信じられません。私は知っています。
ベルトムがそんなに夢見がちな性格ではない事を。
「う、嘘よ! そんな事ある訳ないじゃない。こんな綺麗な人がベルトムの運命の
相手とかある訳ないわ! 」
「聞いてくれ、コナーム。俺だって最初は何かの間違いだと思ったさ。でも違った
んだ! ドリクーペは俺の運命の相手なんだ! 」
「違うわよ! こんなに綺麗な人は貴族とかに嫁ぐ人なのよ! だから目を覚まし
てよ、ベルトム! ねえ、お願いよ」
「俺はもう決めたんだ! だからごめん。君との婚約は破棄するよ」
こうして私達は婚約破棄をする事になりました。
*****
それから私が漸く婚約破棄のショックから立ち直ったころ、あの人を見かけまし
た。見間違える事などある訳もなく、あの綺麗な人の横には私の知らない男性が
立っていました。
そして、彼女はその男性とハグをして別れていきました。
私はどういう事なのか理解が出来ず、彼女を追いかけました。
「ねえ、ちょっと貴女! 待って、ねえ! ドリクーペさん! 」
「なんですか? 何か私に御用? 」
彼女は振り返ると私を見てそう聞いてきたので、どうやら彼女は私の事を覚えて
いないのだと理解しました。
「ねえ、さっきの人は誰なの? 」
だから率直に聞きました。
「どうして貴女にそんな事を教えないといけないの? 貴女のような平民が話を
できるような人では無いわよ」
どうやら貴族の人のようです。
「貴女、ベルトムを知っているわよね? 」
「ベルトム? 嗚呼、あの男か。それが って貴女、あの時の婚約者だった人? 」
「そ、そうよ! ベルトムとはどうなったの」
私は動揺しながらも聞く
「どうもこうも無いわ。あんなのとはとっくに縁を切ったわよ? 」
「どういう事よ! 」
まさかの返答に私は虚を突かれる。
「だからもう知らないって。しつこかったからさっさと別れたわよ。嫌よね、
しつこい男って。私があんなのを本気で相手してると思い込んじゃってさ。
そんな事ある訳ないじゃない、遊びよ。ほんと笑えるわ」
こんな奴にベルトムが取られたのかと思うと私は許せなかった。
「ふざけないで! ベルトムがどれだけ本気だったかアンタには分からないの!
ベルトムは昔から真面目で一本気の性格だったの。だからアンタが運命の相手
だって連れて来た時私は……」
「だから何? そんなの私に関係あるの? 貴女達が仲がよくて有名だったから
どんなものかと思ったら、あいつすぐに貴女を捨てたのよ? そんな男が真面目
って、そんなにあれがいいのならあげるわよ? もう捨てたから何処でどうして
るかなんて知らないけどね」
パンっと私は彼女の頬を叩く
「それで。気が済んだ? 貴女達みたいなのはお互いに傷でも舐め合いながら生き
て行けばいいわ! 」
彼女は動じない。
「この世界に救いなんてものは何処にもないんだから、一生みじめな思いをして
生きて行きなさい! 」
「なっ! 」
彼女は去って行く。
私にはこのどう仕様もない思いを抱いたままその場に置き去りにされた。
応援ありがとうございます!
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