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しおりを挟む「なあ、アンタは一体何なんだ? 何が目的なんだ? 」
俺はとりあえず気になっている事を聞いた。
少しでも情報が欲しかったのだ。
「貴方が知る必要はないし、知らない方がいいって事があるのよこの世界には。
それと、私を呼ぶときはママって呼ぶのよ? そうじゃないとおかしいでしょ?
私達は親子なのだから。ほら、呼んでみなさい」
女は俺に命令する。
「ママ」
「何か違うわね。もっと普通に出来ないの? 」
正直一体誰に何を求めいるのか? って思った。普通て何だ? 俺はママなんて
今まで生きて来て一度も言った事は無かったし、そもそも自分の親の顔なんて
知っている訳がないのだ。だからどんな風に言えばいいのかが分からない。
正解がわからないのだ。
「演技は諦めるか、じゃあ後はマナーくらいは覚えて貰わないといけないわね」
そして俺は女に、否ママに連れられてやって来たのはレストラン。
もちろんこんな所になんて入った事も無ければ来た事もない、俺が一生来る事が
ないような場所にばかり女は連れて来るのだ。
「何、緊張してるの? 」
「仕方ないだろ、初めてなんだから」
「へえ、素直に認めるのね。あまり周りをジロジロ見ない方がいいわ、私だけを
見ていなさい。私がやるようにしていれば間違いないから」
それから俺は女がするようにして出て来たものを食べた。
それはきっとおいしい食べ物だったのだろうけど、俺には味わうなんて暇はなく
ただ女が次どのように動くのかに集中していた。だから女とまったく同じ順番に
同じものを食べていたと思う。
「別にいいんだけどさ。もう少し楽しく食事しない? 」
注文が多い女だ。
俺にそんな余裕がある訳がないのが分からないのか?
「ほら、あの席の親子を見てみなさいよ。ああいう風にするのよ」
周りを見るなと言ったと思ったら今度は見ろと言ったり、一体どっちなんだ?
と思いながらも俺はその親子を観察した。
無邪気に笑う子供、そんな子供に微笑みかける親。
それれは眩しすぎる光景。
そんな絶対にあり得ない人生を生きている奴ら見るのはあまりにも苦痛だった。
だから少しだけ嫌味のつもりだった。
「ママ、僕もアイス食べたい」
「もう、仕方ない子ね二コルったら」
女は店員を呼びアイスを注文する。
「上手に出来たからご褒美をあげましょうね、二コル」
女のそんな言い回しに結局俺は子供なのだと認識させられる。
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