それが答えだった

菫川ヒイロ

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 昨日も今日も何も変わりはしないし、明日だって同じ日だ。
 俺達には何時だって今だけしかない。そんな生き方をしているのがここに居る
 連中の大半だった。
 
 
 明日に希望なんて持てるほどのものを持ち合わせていない俺達にファミリーから
 の誘いがあったのが昨日で、そして俺達は一員に成るべく今日俺達はファミリー
 の連中に面を通す為に集まった。
 
 
 みんな浮かれているのがよく分かる。
 それはそうだろう、こんな場所へ来るなんて事がそうそうある訳でもく、
 そもそもファミリーに入る事が夢だった奴だっている。夢が叶ったのなら
 浮かれても仕方がない。
 
 
「ほう、お前がリーダーか? なかなかいい面してるじゃないか」


 何処までが本音なのかなんて全く分からない表情でボスに言われた俺はただ
 まっすぐに目を見た。きっとここで全てが決まると思ったのだ。これからの
 俺達の立ち位置が決まる場面なら、弱みなんて見せられない。舐められては
 いけないのだ。
 
 
「よし、気に入った。お前達に一つやって欲しい事がある。それが成功すれば
 晴れてファミリーの一員だ。励めよ、ええと名は何だったか? 」
 
 
「二コルです」


「そうか、二コルか。いい名前だ」


 結局何も分からないまま仕事を押し付けられた。とは言え誰もそう考えていない
 事は分かっている。
 
 
「よし、絶対やってやる」
「これで俺もファミリーの一員か! 」
「やっべー、興奮して来た」


 各々が口にする言葉は完全に成功すると思っているのだ。
 確かに細々とやって行くにも限界が来ていた。
 だからこそみんなは夢を見るのだろう、未来を信じている、
 希望なんてものを持ってしまっている。
 
 
「おい、何だよ二コルって聞いてないぞ」


「いいだろ? 」


 俺は決めていたのだ。
 こんな時ぐらいしか名前は決められないのだから、その時は二コルと名乗る事に
 決めていた。
 
 
「それなら俺も新しい名前にしようかな」
「じゃあ俺も変えるよ」
「そうなの? 俺も変えよっかな」


 なんて浮かれている中で、幹部が俺達に言う。
 
 
「お前等の仕事はこいつを殺す事だ」


 そうして渡された写真には俺がよく知っている人物が写っていた。
 
 







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