異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜

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2章 学園編

41話「2日目の夜に‥」

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翌朝。

 何事もなく一日目が過ぎ、再び馬車が動き出した。

 馬車内でニアがバルックに話しかける。

「バルックさん。昨日の晩はお一人で寂しくなかったですか?2人制で入れ替われば良かったのに。」

 ニアに悪気は無い筈だが、軽く近づかれただけでも普通の男なら生唾を飲み込む。

 勿論バルックもだ。

 「な!?ななな!寂しい訳ないだろう!!なんてったって俺だからな!子守よりかはよっぽどマシだぜ!」

 そう言ってニアを見ない様にするバルックだが、耳は真っ赤に染まり上がっていた。

 恐るべし【魅了テンプテーション】。

 そしてひたすら進む事3時間を過ぎた所で、一度休憩を挟む事となった。

辺りの景色も大草原から荒野風に様変わりしていた。

 皆で昼食の準備を始め、火を起こした。

 今日の昼食は馬車に乗せていた、ブタイモムシの肉で出来たジャーキーだ。

 ブタイモムシとは、この世界の主流の肉だ。

 顔がブタで体はイモムシという異形な姿の生き物だ。

 始め見た時は気持ち悪い生き物だと思ったが、これが案外、豚肉の脂分を五十パーセント程カットされた感じでアッサリしている。だが欠点としてバサついてはいるが美味しく食べれるのだ。

 後、これは余談だが豚肉とより近い肉もある。それはオークという人型でイノシシの顔を持つとても知性の高い魔物の肉だ。

 元が魔物なだけに討伐に危険も伴う為、高級食材として扱われている。

 他にも高級食材はあるが、今はいいだろう。

  皆でジャーキーを頬張っていると、バルックが俺をジロジロと見てくる。

 それは今に始まった事ではないので、また無視しようとすると、イフリートがバルックに問いかける。

「バルック殿は何故アルを見るのだ。」

 率直!?っつかどストレートの問いだな!

 そう心の中でイフリートに突っ込むと、俺は恐る恐るバルックの方へと顔をむける。

「どんな強い奴なのかを知りたくてな。見るからにただのガキでヒョロヒョロじゃねえーか。なのになんでバルトールさんは‥」

 ブツブツと小言を言うバルックの気持ちは分からなくもない。見た目はどう見ても子供にしか見えないんだからな。

 こうして夕方頃。

 少し小高い丘を登り頂上に辿り着くと、先にはバルバラの街が見えていた。

しかしこのまま行っても、着く頃には夜になる。

 大概の街は夜になると門を固く閉ざす為、中には入れないのだ。

 なのでここで野営という事となった。

 夜になり、皆で焚き火を囲んでいると従者の爺さんが不吉なことを言い始めた。

「この辺りには‥出るらしい。」

 その発言に一番驚いたのは女性陣では無くバルックだった。

「な!ななな!何が出るんだよ!?」

 明からに声が上擦っている。

「おや?バルックさんは知りませんで?従者仲間の内では有名な話でしてな。この荒野の丘はその昔、死刑場となっていてこの下にはいくつもの骨が埋まっておる。じゃからその怨念が今も燻り夜な夜な死者の体で彷徨うのだそうだ。」

「お、‥おぉぉい。冗談はヨセよな‥。」

 バルックさんの表情は引きつり上がっている。普段強がっているけど心霊系は苦手なんだな。って言っても俺もあんまり得意じゃないんだけどね。

 実際に前世で体験した事もあるぐらいだしな。

 それにしても、イフリートもニアもあんまり怯えた様子は無いな。

 イフリートは霊と言われてもピンと来てないようだけど、ニアに限っては全然平常心だ。

 男の願望からすれば「こわーい!」とか言って、引っ付いて来てくれたりしたらかなり喜ぶんだけどなぁ。

 なんて事を考えてると、不意に俺の右肩に手が乗った、

 思わずビクッとなるが、誰かのイタズラだろうと鼻で笑ってみたが、ふと冷静に判断すると、目の前に皆が居るのでイタズラされる筈も無い。

 俺は恐る恐る後ろへ振り返る。

 焚き火に照らされ現れたのは目玉が飛び出たゾンビの姿だった。

「グモォォォ!!!」

「ぬぉぉぉ!!!!」

 思わず大声でその場から離れると、それに気づいた周りが直ぐに戦闘態勢に入る。だが皆武器は馬車の中だ。

 見っともない姿を見られてしまった。いや、今はそれどころじゃ無い。

「アル!大丈夫!?」

 ニアが俺を心配して声を掛けてくれる。

 呼吸 はまだ乱れては居るが、直ぐに落ち着かせて「大丈夫。」と返事した。

「おいおい!こりゃどうなってんだ?囲まれちまってんぞ!っつか地面から湧いて来やがる!なんなんだ彼奴は!キモい!キモい!めっさキモいぞ!!」

 バルックさんの腕に鳥肌が立っているのが目に取れる。

 「あれはアンデット系のゾンビですね。」

 ニアが冷静に答える。

「んなもん見りゃ分かる!!っつか何でこんな所で野営にしようなんて言いがったんだ?おいジジイ!!‥ってジジイ?」

 バルックが怒りの矛先を爺さんに向けようとするが、爺さんの姿が見えなくなっていた。

「むぅ。どうやら、してやられた様じゃな。」

 イフリートに同感だ。

「あぁ。まんまとあの従者さんに騙されたみたいだ。」

 皆、状況を把握した様で、背中を合わせる。

「おい!お前らちょっとでも時間を稼げるか?馬車の武器さえあれば俺が何とかしてやる。」

 バルックがそう提案を持ちかけてくるが、イフリートがその提案を「その心配はないぞ」と断った。

「は?20体は軽く居るのにガキがどうにか出来るわけねぇだろ!」

「まぁ。そう急くでない。彼奴らは炎系の魔法に弱い。ニア、特訓の成果を見せてやるのだ。」

「うん。見ててねアル。」

 ニアは俺にウィンクを送ると、呪文を唱えた。

「【フレアバースト】」



 



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