異世界転生。「この世界は歪んでいる。」

桂木 鏡夜

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プロローグ。

始まり。

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     ザシュ!!!


   それは少年が15歳の夏の休日。

 昼時になったので飯を食べようと普通に街中を歩いていた時に起きた。

   手前を歩く中年の男が急にもたれ掛かってきたのだ。すると腹部から電気の様に熱い熱が体中に巡った。

  男は「くく。」と笑ったのか?そのまま流れる様に隣を歩く女性へと持たれかかった。

  少年は何が起きたか分からず、腹部に手を当てがった。

 するとヌチャッとした感触で理解する。

  ーーー刺されたーーーー。

  それが分かった途端に激痛の波が激しく少年を襲った。

「ぐぁぁぁぁ!!!!!!」

  痛い!熱い!!痛い!熱い!!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

  何だこれ!?なんで!?何で刺された?

  パニック状態のまま、意識は朦朧としていき膝をつくと、隣を歩いていた女性が目の前で倒れ込んでいた。

  恐らくだが余りの痛さに気絶したのだろう。その瞳には涙がこぼれ落ちていて、腹部からはドクドクと赤い血が流れ出ていた。

  少年は特に正義感があるわけでもない。

  だがこのまま死ぬには余りにも残念すぎる。

「せめて最後は‥」

 気力を振り絞り立ち上がる。

 そして目標目掛けて走り出す。

 走る先々で数人が倒れ込んでいたが、それには目もくれず少年は飛び上がった。

 それに気づいた通り魔は、振り返り反撃しようと試みるが既に遅い。 少年の飛び蹴りが顔面に直撃し、通り魔は状態を崩し倒れ込んだ。

  少年はそのまま通り魔の包丁を持つ手を踏み付け、手から無理矢理包丁を奪い取る。

  通り魔は必死の抵抗をするが少年の怒涛の攻撃は止まらない。

 包丁の刃先を通り魔目掛けてふりおろした。

 ザシュ!!!

  何とも言えない感触が少年の手に伝わると、通り魔の断末魔が辺りに響き渡る。

  だが少年は更に包丁を振り上げもう一度刺した。

  刺して、抜いて、何度も刺した。

 ザシュ!ザシュ!ザシュ!!ザシュ!

「ふっ‥ざけんじゃねぇぇ!!!!!!」

  最早機能を失った人形の様に転がる通り魔を見て少年は少し微笑む。

 「ざまぁみやがれ。俺は唯じゃ死なねーんだよ。」

 そう言って少年は地に倒れこんだ。

  色んな音が混じって騒音が彼の耳に響き渡るが、それを最後に少年は目を閉じた。


ーーーーーー。


  目を開くと天上が見えた。

  試しに首を左右へと動かすと、真横にメイド姿の女性が涙ながらに歓喜する表情を見せていた。

「旦那さま!奥方様!メル様が!メル様が目覚めました!!」

  メイドは少年と目が会うなり走って部屋の外に出て言った。

 メル?何のことだ?

 少年は混乱していた。あのメイドは少年の事をメルと言ったのだ。

 少年はゆっくりと状態を起こす。だが身体の動きに妙な違和感を感じた。
  更にベッドから降りると、ベッドの位置が自分の目線とかなり近く感じ尚違和感を感じる。
 それに加え、部屋を見渡すと何故か高級感の漂う空間になっている。

   病院‥じゃないのか?
  
   そう思いながら目線を向けた先に大きな鏡があり、少年は自分の姿に驚愕した。

  鏡に映っていたのは黒髮で、5歳当時の自分が立っていたのだ。

  どうなってる!?

  少年が動揺している中、部屋の外からドタドタと数人の足音が響き渡り部屋の扉が再び開かれる。

「メル!!!」

   入って来るなり直ぐに少年に抱きついたのは、綺麗な青い髪を腰まで伸ばした美しい女性だった。
   そして、その隣に並び入って来たのは金髪の凛々しい顔立ちの男と、その凛々しい顔立ちを受け継いだかの様な幼い子供だった。どことなく少年にも似ている。

   女性は少年の無事を確かめる様にあちこちを触り確認する。

「よかった。よかったよぉ。」

  女性は涙ながらに再度、少年を強く抱きしめた。

  それを横で見ていた渋めの男が少年に問う。

「して、今の具合はどうだ?」

  「‥っつ!」

  少年がその問いに答えようとした瞬間。頭痛が走る。

  すると不思議な事に知らぬ子供の記憶が頭の中に蘇り、浮き上がっていった。

  その時に少年は今の現状を理解する。

  この渋めの男が父グラフィス辺境伯。女性が母レイラ。子供が兄クリスである事に。

 そして自分がこの世界に転生し、メルというに幼児になっていた事を。
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