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第1章
18.小鳥との再会
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アマーリエが内心でうんざりした時、こちらを優しく見つめる山吹色の眼差しが脳裏をよぎった。
(フレイムは……私をここから連れ出してくれるのかしら。彼の神使になったら……)
心の奥からじわりと浮かんだ甘やかな夢。それを慌てて打ち消す。
(いけないわ、何を考えているの。フレイムは焔神様、色持ちの高位神様なのよ。私なんかが御使いになれるわけがないじゃない!)
「……床を拭くものを取って参ります」
「まあ、今は私たちが食べているのよ。食事をしている横で掃除をする気? 汚いわね、後にしなさい」
ネイーシャがさっそく文句を付けて来た。だが、仮に後で掃除をしようとしていても、『床が汚れた状況のまま食事をさせる気か』と言われていただろう。アマーリエがどのような選択肢を取ろうとも、否定することしか頭にないのだ。
相手にするのも疲れ果て、アマーリエは黙って視線を逸らした。素知らぬ顔で食事をしている父が取りなしてくれるのでは……という期待は、何年も前から消え果ている。
(フレイムに視ないように言っておいて良かったわ。こんなところを視られたら絶対に怒り狂うもの。そんなに何度も焔神様を止められないわよ)
やがて食事が終わると、アマーリエは雑巾とバケツを取りに倉庫に向かった。歩く廊下はガランとしている。サード邸にあった、価値のある絵画や花瓶は既に売り払ってしまっているからだ。雑巾を持ち、バケツに水を汲んで食堂に向かって歩いていると、コンコンと音がした。
「え?」
そちらに目を向けると、窓枠にあの桃色の小鳥が止まっている。小さな嘴をガラスに打ち付けて音を出したようだ。
「あら、あなた、今朝の小鳥さんじゃない。どうしてここにいるの?」
「ピキュ~!」
入れて入れて! とばかりに、つぶらな瞳を細めた小鳥が鳴く。
「入りたいの? 困ったわね、うちに来ても何もないわよ」
(と言っても、佳良様が連れていた神鳥だもの。ここで放り出して、万一のことがあったらまずいわ。霊具が暴走した時は助けてもらったし……)
この小鳥に押し倒される形で伏せたため、あの爆発の直撃を受けずに済んだのだ。
「仕方がないわね」
窓を細く開けると、すぐに飛び込んで来た。桃色の塊がピョンピョンと窓枠を跳ねるのを眺めていると、ふと閃く。
「そうだわ。テイクアウトしたサンドウィッチとクッキーがあるじゃない。ねえ、パンとお菓子食べる?」
パッとこちらを振り向いた小鳥の目が、キラーンと輝いた気がした。
「ピィピィ、ピキュキュ!」
アマーリエの肩に止まり、嬉しそうに擦り寄って来る。人差し指で撫ででみると、フカフカすべすべな羽毛が心地よい。
「今夜は私の部屋に泊まって、明日一緒に神官府に行きましょう」
(オーネリア様の所に連れて行けば、佳良様にお返ししていただけるはずよ)
この鳥が何故ここに来たのかは分からないが、一晩くらいなら何とかなるだろう。自分の案に納得し、アマーリエは一つ頷いた。
「なら、少し待っていてくれる? これから食堂の掃除をしないといけないから」
小鳥を振り落とさないようにゆっくりと歩き出しながら話す。
(聖威師様の鳥だもの、こちらの言葉はきっと分かっているわ)
「キュキュィ?」
小鳥がちょこんと小首を傾げた。掃除? あなたがやるの? と言っているようだ。
「母がワインを零したの。うちは貧乏で使用人がいないから、自分でやるしかないのよ」
バケツを軽く掲げて笑い、アマーリエは食堂に入った。
(フレイムは……私をここから連れ出してくれるのかしら。彼の神使になったら……)
心の奥からじわりと浮かんだ甘やかな夢。それを慌てて打ち消す。
(いけないわ、何を考えているの。フレイムは焔神様、色持ちの高位神様なのよ。私なんかが御使いになれるわけがないじゃない!)
「……床を拭くものを取って参ります」
「まあ、今は私たちが食べているのよ。食事をしている横で掃除をする気? 汚いわね、後にしなさい」
ネイーシャがさっそく文句を付けて来た。だが、仮に後で掃除をしようとしていても、『床が汚れた状況のまま食事をさせる気か』と言われていただろう。アマーリエがどのような選択肢を取ろうとも、否定することしか頭にないのだ。
相手にするのも疲れ果て、アマーリエは黙って視線を逸らした。素知らぬ顔で食事をしている父が取りなしてくれるのでは……という期待は、何年も前から消え果ている。
(フレイムに視ないように言っておいて良かったわ。こんなところを視られたら絶対に怒り狂うもの。そんなに何度も焔神様を止められないわよ)
やがて食事が終わると、アマーリエは雑巾とバケツを取りに倉庫に向かった。歩く廊下はガランとしている。サード邸にあった、価値のある絵画や花瓶は既に売り払ってしまっているからだ。雑巾を持ち、バケツに水を汲んで食堂に向かって歩いていると、コンコンと音がした。
「え?」
そちらに目を向けると、窓枠にあの桃色の小鳥が止まっている。小さな嘴をガラスに打ち付けて音を出したようだ。
「あら、あなた、今朝の小鳥さんじゃない。どうしてここにいるの?」
「ピキュ~!」
入れて入れて! とばかりに、つぶらな瞳を細めた小鳥が鳴く。
「入りたいの? 困ったわね、うちに来ても何もないわよ」
(と言っても、佳良様が連れていた神鳥だもの。ここで放り出して、万一のことがあったらまずいわ。霊具が暴走した時は助けてもらったし……)
この小鳥に押し倒される形で伏せたため、あの爆発の直撃を受けずに済んだのだ。
「仕方がないわね」
窓を細く開けると、すぐに飛び込んで来た。桃色の塊がピョンピョンと窓枠を跳ねるのを眺めていると、ふと閃く。
「そうだわ。テイクアウトしたサンドウィッチとクッキーがあるじゃない。ねえ、パンとお菓子食べる?」
パッとこちらを振り向いた小鳥の目が、キラーンと輝いた気がした。
「ピィピィ、ピキュキュ!」
アマーリエの肩に止まり、嬉しそうに擦り寄って来る。人差し指で撫ででみると、フカフカすべすべな羽毛が心地よい。
「今夜は私の部屋に泊まって、明日一緒に神官府に行きましょう」
(オーネリア様の所に連れて行けば、佳良様にお返ししていただけるはずよ)
この鳥が何故ここに来たのかは分からないが、一晩くらいなら何とかなるだろう。自分の案に納得し、アマーリエは一つ頷いた。
「なら、少し待っていてくれる? これから食堂の掃除をしないといけないから」
小鳥を振り落とさないようにゆっくりと歩き出しながら話す。
(聖威師様の鳥だもの、こちらの言葉はきっと分かっているわ)
「キュキュィ?」
小鳥がちょこんと小首を傾げた。掃除? あなたがやるの? と言っているようだ。
「母がワインを零したの。うちは貧乏で使用人がいないから、自分でやるしかないのよ」
バケツを軽く掲げて笑い、アマーリエは食堂に入った。
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