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第2章
9.認証の儀
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「えっ……せ、聖威師になった!? リーリア様が!?」
アマーリエは思わず肉声を放って復唱していた。驚いたのか、肩を跳ねさせたフロースが大きく目を見開き、フレイムとラミルファも纏う気配を変える。
《それも高位神の愛し子として見初められ、リーリア自身も高位の神になったと言っている》
「リーリア様ご本人も高位神になられた……つまり、私たちと同じということですか?」
再び声を発すると、三神が真剣な顔になり、神威を使って念話網に割り込んだ。
《おい、俺たちも混ぜろ。聖威師が誕生したって?》
《ふふ、なかなか面白いことが起こったみたいじゃないか》
《本当なら私たちにとっても無関係ではない》
フロースとラミルファの降臨を承知しているライナスは、冷静に挨拶を返してから言う。
《焔神様、泡神様、邪神様――認証にご臨席いただくことは可能でしょうか?》
恭しく尋ねられ、フロースがビクッと動きを止めた。一方のラミルファは、クックと笑いながら親指を立てる。フレイムが頷いた。
《俺は別に良いけどよ。後の二神は降臨を秘密にしてるからな。部下のフリをしたままこっそり見る形になると思うが。泡神様は体調次第だ》
《それで構いません》
とんとん拍子に進んでいくやり取りが一瞬途切れたところで、アマーリエは思念を挟んだ。
《認証とは……新しい聖威師が顕現した際、その真偽を先達が確認することでしたよね?》
《はい。稀に神の愛し子を騙ろうとする者も現れますので。間違いなく神の加護を受けたことを、他の聖威師が確認するのです》
当たり前だが、自称だけで聖威師と認められるわけではない。
《とはいえ、聖威師とて神格を抑え不完全な擬人となっている身。万全を期す意味で、できる限り天の神にご臨席をお願いしています》
なお、アマーリエがフレイムから寵を与えられた時には、フルードとラミルファがその瞬間に立ち合っていたため、それを以って認証が成立したとされた。
《アマーリエも、今度は確認する側として体験してみると良い》
フルードとライナスが答えてくれている間、ソファベッドの上で丸くなったフロースが毛布をひっかぶって震え始める。
「わ、私も頑張る……怖いけど頑張るよ」
「ビビることないだろ。ユフィーとセインの後ろから覗くだけだ。それも怖いなら俺とラミルファに任せとけば……」
「いいや、私も絶対に参加する!」
「お、おぅ……」
何故かいきなり強気になったフロースに、若干引き気味になるフレイム。
ラミルファがフルードを見た。
《で、誰が聖威師になったって? 君たちの台詞を聞くに、リーリアとかいう人間かい?》
《はい。テスオラ王国のアヴェント侯爵家の令嬢、リーリア・レアナ・アヴェントです。テスオラ神官府の主任神官であるアヴェント侯爵の娘で、彼女自身も神官であり、テスオラでは一番の霊威の持ち主だと評判です》
《ふぅん》
自分から聞いておきながら、興味がなさそうに相槌を打つ邪神。
(テスオラの新主任といえば、以前大神官に絞られていたわよね)
《テスオラの奴なら、ユフィーと顔見知りじゃねえのか?》
《いいえ、リーリア様と話したことはないの。幾度か遠目にお見かけしたくらい。私はお父様に雑用係をさせられていて、いつも神官府の地下奥にいたから》
当時を思い出しながら、アマーリエは自嘲気味に答えた。フレイムの麗姿に後悔の影が走る。
《すまん、嫌なことを思い出させちまったな。過去がどうであれ、お前はもう俺の愛し子で火の女神だ。最高峰の立場に上ったんだから、何も臆することはないんだぜ》
大きな手でそっと頭を撫でられ、心地よさに目を細めた時、ライナスが補足した。
《聞いたところ、リーリアが寵を授かったのは、照覧祭の開催が決まってから少し後だったようです》
「ええ!?」
予想以上に前だった。てっきり、数日前かそこらの話だと思っていた。驚きを隠せないアマーリエの側で、フルードは冷静さを保っていた。
《では数か月前から見初められていたのですか。しかし、聖威師になった者は、その旨を遅滞なく中央本府に連絡し、認証を経てこちらに転属することになっているはずです》
《先ほど問い質したところ、寵を与えた神のご希望だったとのことだ。ご神意が絡んでいた場合、即時連絡しないことも許容される》
《ああ、そうでしたね。アリステルの前例もありますし》
(アリステル?)
初めて聞く単語だ。話の流れからすると誰かの名前だろうかと訝るが、聞くタイミングが掴めない。新旧の大神官はそのまま話を進めていく。
《神はどのようなご希望を示されたのでしょうか?》
《何でも、目立つのは嫌いで騒ぎにしたくないから、しばらくテスオラ王国にも中央本府にも伝えるなと仰っていたそうだ。だが昨夜、急に言を翻し、ずっと秘密にしておくことはできないのだし、もうそろそろ報告を上げて良いと仰ったと》
そのため、テスオラの主任神官たるアヴェント当主が本日の朝一で連絡を寄越したそうだ。
何だそれは、という空気が部屋に満ちる。
(どうしていきなり意見を変えたの?)
アマーリエは思わず肉声を放って復唱していた。驚いたのか、肩を跳ねさせたフロースが大きく目を見開き、フレイムとラミルファも纏う気配を変える。
《それも高位神の愛し子として見初められ、リーリア自身も高位の神になったと言っている》
「リーリア様ご本人も高位神になられた……つまり、私たちと同じということですか?」
再び声を発すると、三神が真剣な顔になり、神威を使って念話網に割り込んだ。
《おい、俺たちも混ぜろ。聖威師が誕生したって?》
《ふふ、なかなか面白いことが起こったみたいじゃないか》
《本当なら私たちにとっても無関係ではない》
フロースとラミルファの降臨を承知しているライナスは、冷静に挨拶を返してから言う。
《焔神様、泡神様、邪神様――認証にご臨席いただくことは可能でしょうか?》
恭しく尋ねられ、フロースがビクッと動きを止めた。一方のラミルファは、クックと笑いながら親指を立てる。フレイムが頷いた。
《俺は別に良いけどよ。後の二神は降臨を秘密にしてるからな。部下のフリをしたままこっそり見る形になると思うが。泡神様は体調次第だ》
《それで構いません》
とんとん拍子に進んでいくやり取りが一瞬途切れたところで、アマーリエは思念を挟んだ。
《認証とは……新しい聖威師が顕現した際、その真偽を先達が確認することでしたよね?》
《はい。稀に神の愛し子を騙ろうとする者も現れますので。間違いなく神の加護を受けたことを、他の聖威師が確認するのです》
当たり前だが、自称だけで聖威師と認められるわけではない。
《とはいえ、聖威師とて神格を抑え不完全な擬人となっている身。万全を期す意味で、できる限り天の神にご臨席をお願いしています》
なお、アマーリエがフレイムから寵を与えられた時には、フルードとラミルファがその瞬間に立ち合っていたため、それを以って認証が成立したとされた。
《アマーリエも、今度は確認する側として体験してみると良い》
フルードとライナスが答えてくれている間、ソファベッドの上で丸くなったフロースが毛布をひっかぶって震え始める。
「わ、私も頑張る……怖いけど頑張るよ」
「ビビることないだろ。ユフィーとセインの後ろから覗くだけだ。それも怖いなら俺とラミルファに任せとけば……」
「いいや、私も絶対に参加する!」
「お、おぅ……」
何故かいきなり強気になったフロースに、若干引き気味になるフレイム。
ラミルファがフルードを見た。
《で、誰が聖威師になったって? 君たちの台詞を聞くに、リーリアとかいう人間かい?》
《はい。テスオラ王国のアヴェント侯爵家の令嬢、リーリア・レアナ・アヴェントです。テスオラ神官府の主任神官であるアヴェント侯爵の娘で、彼女自身も神官であり、テスオラでは一番の霊威の持ち主だと評判です》
《ふぅん》
自分から聞いておきながら、興味がなさそうに相槌を打つ邪神。
(テスオラの新主任といえば、以前大神官に絞られていたわよね)
《テスオラの奴なら、ユフィーと顔見知りじゃねえのか?》
《いいえ、リーリア様と話したことはないの。幾度か遠目にお見かけしたくらい。私はお父様に雑用係をさせられていて、いつも神官府の地下奥にいたから》
当時を思い出しながら、アマーリエは自嘲気味に答えた。フレイムの麗姿に後悔の影が走る。
《すまん、嫌なことを思い出させちまったな。過去がどうであれ、お前はもう俺の愛し子で火の女神だ。最高峰の立場に上ったんだから、何も臆することはないんだぜ》
大きな手でそっと頭を撫でられ、心地よさに目を細めた時、ライナスが補足した。
《聞いたところ、リーリアが寵を授かったのは、照覧祭の開催が決まってから少し後だったようです》
「ええ!?」
予想以上に前だった。てっきり、数日前かそこらの話だと思っていた。驚きを隠せないアマーリエの側で、フルードは冷静さを保っていた。
《では数か月前から見初められていたのですか。しかし、聖威師になった者は、その旨を遅滞なく中央本府に連絡し、認証を経てこちらに転属することになっているはずです》
《先ほど問い質したところ、寵を与えた神のご希望だったとのことだ。ご神意が絡んでいた場合、即時連絡しないことも許容される》
《ああ、そうでしたね。アリステルの前例もありますし》
(アリステル?)
初めて聞く単語だ。話の流れからすると誰かの名前だろうかと訝るが、聞くタイミングが掴めない。新旧の大神官はそのまま話を進めていく。
《神はどのようなご希望を示されたのでしょうか?》
《何でも、目立つのは嫌いで騒ぎにしたくないから、しばらくテスオラ王国にも中央本府にも伝えるなと仰っていたそうだ。だが昨夜、急に言を翻し、ずっと秘密にしておくことはできないのだし、もうそろそろ報告を上げて良いと仰ったと》
そのため、テスオラの主任神官たるアヴェント当主が本日の朝一で連絡を寄越したそうだ。
何だそれは、という空気が部屋に満ちる。
(どうしていきなり意見を変えたの?)
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