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第3章
41.黒雷の襲撃
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(どうしてここに? リーリア様の邸で眠っているのでは……)
困惑して口を開こうとした時、脳内をフレイムの声が貫いた。
《ユフィー! まだ気を抜くな、もう一柱いる――!》
その言葉の意味を理解するより早く、虚空に閃光が走った。鈍い黒を纏う雷。
「っ!!」
反射的にクラーラの前に立ちはだかり、結界を発動させようとする。
「きゃあああ~!」
だが、当のクラーラが悲鳴を上げながら、アマーリエの袖をグイッと引っ張った。
「あっ……」
想定外のところから引かれ、バランスを崩したアマーリエは数歩後ろに下がった。稲妻が間一髪で鼻先を通り抜け、舞い上がった髪の毛先を焦がしていく。
「うえーん怖いよ~!」
「ク、クラーラちゃん落ち着いて――」
言い切る前に二度目の光が走った。先ほどよりも眩く刺々しい。見上げれば、視界いっぱいに黒い雷霆が迫っていた。
『伏せろっ!』
瞬間、耳をつんざいたのは、誰よりも信を置く声だった。アマーリエは躊躇なく上体をねじり、クラーラを抱きしめると、床に転がるようにして低く身を伏せる。
紅蓮に燃える刃が頭上を駆け抜け、熱い旋風と火の粉が舞う。大量の稲妻が全て撫で斬りにされ、轟音と爆煙を上げながら吹き飛んだ。
「フレイム!」
火炎を噴き上げる剣を携え、ワインレッドの髪を閃かせた長身がアマーリエの前に飛び込んだ。
だが、攻撃は止まらない。無数の球電がバチバチと虚空に出現し、漆黒の落雷が降り注ぐ。
『ちっ……!』
美しい容貌に険相を浮かべたフレイムが、愛し子を背に庇ったまま得物を振るった。
縦横無尽に飛び交う高電圧の熱線、それら全てを最低限の動きで弾く紅蓮の残像。鮮やかな炎を纏う刃がキラキラと輝き、生き物のようにしなる。蜃気楼の揺らめきが剣戟と共に大気に波紋を刻み、広い厨房内に陽炎が立ち昇る。
長大な剣を自在に操り、冷ややかに黒雷を見据える山吹色の眼は、アマーリエが一度も見た事がない冷徹さを放っていた。
(す……すごい……)
フレイムが戦うところを見たのは、星降の儀でラミルファと小競り合いを起こした時以来だ。あの時とは比較にならないほど速く荒々しく、そして洗練された美しい動き。それがしっかりと見切れるようになっている。
『ほぉ、見事だ』
絶え間なく弾ける大音響と、炎雷の競演が織りなす光の明滅に翻弄される中で、その声は不思議と耳に届いた。瞬きしたアマーリエは、音源を探して視線を下に向ける。今の声は腕の中から聞こえた気がしたのだが……いるのはシクシク泣いている小さな少女だけ。
「アマーリエ、無事ですか!」
「つい今しがた、食堂にも雷撃が撃ち込まれた」
フレイムと共に駆け付けたフルードとアリステルが、手を差し伸べてくれる。澄んだ青と濁った青は、双方共に厨房の出入口を示していた。
「食堂の方は邪神様が応戦して下さっています。私たちは焔神様と共にアマーリエと合流するように言われて来たのですが――その子は?」
「ええと、今日お話ししたクラーラちゃんです。牛の魔物に襲撃された時、リーリア様の邸に避難させたのですが、何故か戻って来てしまったようで……」
「ならばその子の避難が優先だ。転移は使えなくされているから、走って離脱するしかない」
「分かりました!」
一体何故、どうやってクラーラがここに戻って来たのかは気になるが、そういった話は後だ。一般人の子どもをこの渦中に置いてはおけない。
伏せていた体を起こし、少女を抱えて退避を開始した瞬間、稲妻が閃く。中空で弾けたそれは獣の形に変じ、獲物を追い詰める肉食動物のごとく宙を駆けて迫り来た。
困惑して口を開こうとした時、脳内をフレイムの声が貫いた。
《ユフィー! まだ気を抜くな、もう一柱いる――!》
その言葉の意味を理解するより早く、虚空に閃光が走った。鈍い黒を纏う雷。
「っ!!」
反射的にクラーラの前に立ちはだかり、結界を発動させようとする。
「きゃあああ~!」
だが、当のクラーラが悲鳴を上げながら、アマーリエの袖をグイッと引っ張った。
「あっ……」
想定外のところから引かれ、バランスを崩したアマーリエは数歩後ろに下がった。稲妻が間一髪で鼻先を通り抜け、舞い上がった髪の毛先を焦がしていく。
「うえーん怖いよ~!」
「ク、クラーラちゃん落ち着いて――」
言い切る前に二度目の光が走った。先ほどよりも眩く刺々しい。見上げれば、視界いっぱいに黒い雷霆が迫っていた。
『伏せろっ!』
瞬間、耳をつんざいたのは、誰よりも信を置く声だった。アマーリエは躊躇なく上体をねじり、クラーラを抱きしめると、床に転がるようにして低く身を伏せる。
紅蓮に燃える刃が頭上を駆け抜け、熱い旋風と火の粉が舞う。大量の稲妻が全て撫で斬りにされ、轟音と爆煙を上げながら吹き飛んだ。
「フレイム!」
火炎を噴き上げる剣を携え、ワインレッドの髪を閃かせた長身がアマーリエの前に飛び込んだ。
だが、攻撃は止まらない。無数の球電がバチバチと虚空に出現し、漆黒の落雷が降り注ぐ。
『ちっ……!』
美しい容貌に険相を浮かべたフレイムが、愛し子を背に庇ったまま得物を振るった。
縦横無尽に飛び交う高電圧の熱線、それら全てを最低限の動きで弾く紅蓮の残像。鮮やかな炎を纏う刃がキラキラと輝き、生き物のようにしなる。蜃気楼の揺らめきが剣戟と共に大気に波紋を刻み、広い厨房内に陽炎が立ち昇る。
長大な剣を自在に操り、冷ややかに黒雷を見据える山吹色の眼は、アマーリエが一度も見た事がない冷徹さを放っていた。
(す……すごい……)
フレイムが戦うところを見たのは、星降の儀でラミルファと小競り合いを起こした時以来だ。あの時とは比較にならないほど速く荒々しく、そして洗練された美しい動き。それがしっかりと見切れるようになっている。
『ほぉ、見事だ』
絶え間なく弾ける大音響と、炎雷の競演が織りなす光の明滅に翻弄される中で、その声は不思議と耳に届いた。瞬きしたアマーリエは、音源を探して視線を下に向ける。今の声は腕の中から聞こえた気がしたのだが……いるのはシクシク泣いている小さな少女だけ。
「アマーリエ、無事ですか!」
「つい今しがた、食堂にも雷撃が撃ち込まれた」
フレイムと共に駆け付けたフルードとアリステルが、手を差し伸べてくれる。澄んだ青と濁った青は、双方共に厨房の出入口を示していた。
「食堂の方は邪神様が応戦して下さっています。私たちは焔神様と共にアマーリエと合流するように言われて来たのですが――その子は?」
「ええと、今日お話ししたクラーラちゃんです。牛の魔物に襲撃された時、リーリア様の邸に避難させたのですが、何故か戻って来てしまったようで……」
「ならばその子の避難が優先だ。転移は使えなくされているから、走って離脱するしかない」
「分かりました!」
一体何故、どうやってクラーラがここに戻って来たのかは気になるが、そういった話は後だ。一般人の子どもをこの渦中に置いてはおけない。
伏せていた体を起こし、少女を抱えて退避を開始した瞬間、稲妻が閃く。中空で弾けたそれは獣の形に変じ、獲物を追い詰める肉食動物のごとく宙を駆けて迫り来た。
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