321 / 618
第4章
37.安心するのはまだ早い
しおりを挟む
「だが、アマーリエたちはきっとこのことを知れば衝撃を受ける。取り返しの付かない事態が起こった後で、自分たち以外の末裔の存在に気付き、彼女たちを助けたいと望んでももう手遅れだ。だから少しヒントは出しておいた」
そう言いながら腕も組んだラミルファが、軽く小首を傾げる。
「僕の他にも気付いた者がいるとすれば、一の兄上と二の兄上だろう。一の兄上は神罰についてこれでもかと調査していたし、二の兄上も神威を多く解放した状態で君たちを視て、神罰のことを把握していた」
アマーリエは内心で息を呑んだ。
(疫神様が言っていた思わせぶりな台詞はこのことだったのね)
「俺が視たところ、エイールは神罰の因子を継いでるが、相当に薄い。潜伏期間中だからとかじゃなく、受け継いだ因子自体が少ない感じだった。多分、覚醒することもない」
フレイムが安心させるように言った。因子が覚醒さえしなければ、その後の肥大化と爆発は起こらず、神罰に選ばれた者にもならない。当然、共鳴も起こらない。
「あんなにうっっっっっすい因子だったら、神格を抑えてるアリステルの力でも対応できるぜ。ラミルファがユフィーに下賜した守護の玉と同じ物を創って渡してやれ」
「分かりました。では後は、エイールの子に神罰を継がせなければ解決ですね。胎児の段階でなら因子を抹消できます。エイールに事情を話し、身篭ったことが発覚した際は即座に聖威師に連絡を入れるよう厳命しておけば良い」
アリステルが口元に指を当てながら言った。アマーリエはフレイムを見る。
「お願い、フレイム。もしエイールさんのお腹に子どもが来てくれたら、その子の中から因子を焼却してあげて」
この通り、と手を合わせて懇願すると、打てば響くような了承が返って来た。
「ユフィーのお願いなら仕方ねえな。エイールが妊娠した時は、すぐに俺を勧請しろ。跡形もなく燃やしてやるぜ」
神は原則地上に関わらないが、神官などから請願を受けた場合には限定範囲内で助力することもある。エイールに関してもその要領で対応可能だそうだ。
「フレイム、ありがとう!」
「感謝いたします、焔神様」
顔を輝かせるアマーリエと共に、フルードも安堵を滲ませた。
(これで一安心ね。後はエイールさんとバルドさんにきちんと話を通すだけ)
ひとまず解決した、という喜びに包まれるアマーリエだが、フレイムの返事は芳しくなかった。
「いや、安心するのはまだ早いんだぜ」
緩みかけていた空気が一気に凍る。愁眉を開いてカップに手をのばしかけていたフルードとアリステルが、仲良く動きを停止させた。
「ま、まだ何かあるの、フレイム?」
「ああ、俺も天界で過去視をして気付いたことだ。――ラミルファがさっき言ってた言葉を思い返してみな。何回か言ってた。そこに答えがある」
(ええと、どの言葉? 何回か……?)
急いで今までの会話を再生する。フルードとアリステルも、宙を睨んで動かない。二人も考えているのだろう。
静かになった空間に、澄まし顔の邪神がカップを持ち上げる際の衣擦れだけが響く。
やがて、フルードとアリステルが口を開いた。
「「新たに見付けたレシスの末裔たち……」」
ラミルファが先程口にしたフレーズの一部だ。同時に閃いたアマーリエも、呆然と呟く。
「どうして複数形なの?」
そう言いながら腕も組んだラミルファが、軽く小首を傾げる。
「僕の他にも気付いた者がいるとすれば、一の兄上と二の兄上だろう。一の兄上は神罰についてこれでもかと調査していたし、二の兄上も神威を多く解放した状態で君たちを視て、神罰のことを把握していた」
アマーリエは内心で息を呑んだ。
(疫神様が言っていた思わせぶりな台詞はこのことだったのね)
「俺が視たところ、エイールは神罰の因子を継いでるが、相当に薄い。潜伏期間中だからとかじゃなく、受け継いだ因子自体が少ない感じだった。多分、覚醒することもない」
フレイムが安心させるように言った。因子が覚醒さえしなければ、その後の肥大化と爆発は起こらず、神罰に選ばれた者にもならない。当然、共鳴も起こらない。
「あんなにうっっっっっすい因子だったら、神格を抑えてるアリステルの力でも対応できるぜ。ラミルファがユフィーに下賜した守護の玉と同じ物を創って渡してやれ」
「分かりました。では後は、エイールの子に神罰を継がせなければ解決ですね。胎児の段階でなら因子を抹消できます。エイールに事情を話し、身篭ったことが発覚した際は即座に聖威師に連絡を入れるよう厳命しておけば良い」
アリステルが口元に指を当てながら言った。アマーリエはフレイムを見る。
「お願い、フレイム。もしエイールさんのお腹に子どもが来てくれたら、その子の中から因子を焼却してあげて」
この通り、と手を合わせて懇願すると、打てば響くような了承が返って来た。
「ユフィーのお願いなら仕方ねえな。エイールが妊娠した時は、すぐに俺を勧請しろ。跡形もなく燃やしてやるぜ」
神は原則地上に関わらないが、神官などから請願を受けた場合には限定範囲内で助力することもある。エイールに関してもその要領で対応可能だそうだ。
「フレイム、ありがとう!」
「感謝いたします、焔神様」
顔を輝かせるアマーリエと共に、フルードも安堵を滲ませた。
(これで一安心ね。後はエイールさんとバルドさんにきちんと話を通すだけ)
ひとまず解決した、という喜びに包まれるアマーリエだが、フレイムの返事は芳しくなかった。
「いや、安心するのはまだ早いんだぜ」
緩みかけていた空気が一気に凍る。愁眉を開いてカップに手をのばしかけていたフルードとアリステルが、仲良く動きを停止させた。
「ま、まだ何かあるの、フレイム?」
「ああ、俺も天界で過去視をして気付いたことだ。――ラミルファがさっき言ってた言葉を思い返してみな。何回か言ってた。そこに答えがある」
(ええと、どの言葉? 何回か……?)
急いで今までの会話を再生する。フルードとアリステルも、宙を睨んで動かない。二人も考えているのだろう。
静かになった空間に、澄まし顔の邪神がカップを持ち上げる際の衣擦れだけが響く。
やがて、フルードとアリステルが口を開いた。
「「新たに見付けたレシスの末裔たち……」」
ラミルファが先程口にしたフレーズの一部だ。同時に閃いたアマーリエも、呆然と呟く。
「どうして複数形なの?」
5
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
婚約破棄をしておけば
あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる