神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

文字の大きさ
347 / 601
第5章

9.寝言の内容は秘密

しおりを挟む
「ふぅ……」

 見慣れた我が邸に帰ると、自然と力が抜ける。テーブルクロスがかかった食卓を見ると、急に空腹を感じた。渡すはずだった差し入れのバスケットがぽつんと置かれているが、冷めても美味しいものばかりなので問題はないだろう。

「もう少ししたらライナスたちの方も落ち着くだろ。その頃に転送するか。それよりラモスとディモスだ」
「ええ、念話するわ」

 すぐに聖獣たちと連絡を取り、大急ぎで返って来てもらう。聖威師が襲撃されたと聞いた二頭は、文字通りすっ飛んで来た。アマーリエはフレイムと共に、事情を説明する。

「……ということだから、今回の件が解決するまでは、なるべく私たちと同じ部屋にいてちょうだい。明日、フルード様かアシュトン様に、解決まであなたたちを神官府に帯同させていただきたいと打診するわ」

 状況が状況であることと、二頭は獣版の聖威師なので、許可はもらえそうな気がする。

「ただ、子どもの神官や猛獣が苦手な人もいるでしょうから……普段は猫の姿になってもらうかもしれないわ。ごめんなさい」
『私たちは全く構わない。猫でも犬でも主の注文通りに変化する』
『就寝時はご主人様の自室の続き部屋にでも控えさせていただけましたら……』

 普段の聖獣たちは、アマーリエとは別の部屋で寝ている。理由は簡単、アマーリエとフレイムが毎晩仲良くしているからだ。頰を染めてうっと詰まったアマーリエに対し、フレイムは平然としている。

「あー、とりあえず今夜は一緒にいろ。な?」

 さすがに、襲撃があったその日の夜に、呑気に事に及ぶつもりはないらしい。当然だが。

「そ、そうよ、それが良いわ」

 コクコク頷いた瞬間、くぅと小さな音が鳴る。

(あ……)

 全員の視線が集中した。発生源のアマーリエは、頰を熱くしながら腹を押さえた。

「ご、ごめんなさい。何だかお腹が空いてしまって」
「そうだな、話はいったん置いといて夕食にしようぜ。ラモスとディモスの肉も用意してあるから」

 一気に空気が緩む。ラモスとディモスがピョンと尾を振り、小さく噴き出したフレイムが形代に夕食の配膳を命じた。アマーリエはすごすごとイスに腰掛ける。

「恥ずかしいわ……」
「恥ずかしくなんかねえよ。ユフィーは何だって可愛い。腹の音だけじゃなく寝言とかもな」
「私、寝言を言っているの!?」

 先日、葬邪神と疫神にも同じことを聞いた気がする。

(変なことを言っていたりしないかしら)

 なお、以前佳良から聞いた話では、紅日皇后こうにちこうごう日香にちかは時折昼寝をしているそうだ。盛夏だろうが真冬だろうが関係なく、自身の宮の庭園でドデーンと大の字になって爆睡し、『はっ、これしきの量で私が満腹になるわけないでしょ~! 全部食べ尽くしてやるぅ、かかってこぉい!』と叫んでいたところを、やって来た黇死皇てんしこう秀峰しゅうほうに蹴り起こされていたこともあるらしい。

「んー? まぁそんな恥ずかしいことは言ってねえよ。それより、腹減ってるみたいだからアミューズとスープにオードブル、まとめて持って来させた」
「やったわ、もうお腹ぺこぺこよ!」

 形代が夕食の配膳を始め、すぐに夕食に関心が移ったアマーリエが目を輝かせる。テーブルの下座では聖獣たちも肉に飛び付いていた。

「今日はポタージュね」

 透き通ったコンソメスープも美味しいが、空腹な時は食べでのあるポタージュの方が嬉しい。

「パンプキンピューレにミルクと生クリームを入れたんだ」

 大喜びでカトラリーに手を伸ばす愛妻の姿を見ながら、フレイムはただにこにこしている。

 ……余談だが、アマーリエはよく、『ん……フレイム……だいしゅき……』とうにゃうにゃ寝言を言う。フレイムはそのたびに愛しすぎて悶え死にそうになっているのだが……それは彼だけの秘密だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング3位、ありがとうございます。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

処理中です...