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第5章
24.天堂は混乱真っ只中
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フレイムが近くにいないアマーリエは、主神が守っている他の聖威師たちと比べて無防備だ。
「きゃあ!」
「アマーリエ様!」
リーリアが手を伸ばすが、ひしめき合う神々に割り込まれる形で引き離されてしまい、届かない。側にいるフロースも、押し寄せる神々を食い止めていて動けない。
(っ……!)
アマーリエは聖威を纏わせた右手を振るい、引っ張られている袖を切り落とした。狼神が防衛行動を許可してくれたので、神相手でもこのような行動が可能になっている。
『恐れずとも、あなたが還るべき場所に還るだけよ』
だが、布切れと化した袖をあっさり手放した神は、今度は直接腕を掴んで来た。周囲にいた数柱の神もそれに加勢する。
「は、離して下さい!」
天界に通じている空間の割れ目に引き込まれようとしていることを悟り、アマーリエは必死で足を踏ん張った。あの中に連れて行かれたら終わりだ。昇天したと見なされ、聖威師として地上に戻ることはできなくなる。聖獣たちのように、正規の手順を経て喚ばれた場合は例外だが。
『主!』
『お離し下さい!』
ラモスとディモスがアマーリエの前に割り込んで阻止しようとするが、神々は怒るどころか嬉しそうな顔をした。
『おお、この獅子たちも我が同胞ではないか』
『よしよし、共に天に行きましょうね』
アマーリエから二頭を引き離そうとするどころか、まとめて抱え込んで亀裂に引きずって行こうとする。
『『えっ!?』』
目を点にした聖獣たちが素っ頓狂な声を上げた。完全なる神となった自分たちもまた、アマーリエと同じく神々の強制帰還対象になったことを失念していたらしい。体を張って主を守るつもりが、セットでテイクアウトされかかっている。神々はこちらを殺傷しようとしているのではなく、体や衣を引っ張って移動させようとしているだけなので、防御壁も反応してくれない。
『ユフィー! ラモス、ディモス!』
上方にいるフレイムが血相を変えるが、同格である戦神の刃をさばいているので余裕がなく、駆け付けられない。僅かに気を散じた瞬間、蘇芳色の御稜威が幾本もの細い杭となって放たれ、フレイムの四肢を貫き虚空へと縫い止める。
『っ……!』
舌打ちしたフレイムが神威を炸裂させ、自らの手足をねじ切って磔から逃れた。
『行けフレイム、戦神様も僕が引き受ける!』
闘神を相手取っているラミルファがフレイムの背を押した。瞬時に四肢を復元させたフレイムが応じる前に、鈍い漆黒の水球が放射され、アマーリエと聖獣たちに群がっていた神々を弾き飛ばした。
『ならーん! 無理強いをしてはならん!』
「魔神様!」
解放されたアマーリエは、床に座り込んで声を上げる。黒色がかった濃青の長髪に、暗い紫紺の瞳を持つ絶世の美青年が上方から舞い降り、アマーリエを背に庇う形で立ちはだかった。魔神クロウエンだ。
「あ、ありがとうございます」
『なんのなんの、此方は雛たちの味方なのじゃ~』
のんびりした語尾のせいでいまいち緊迫感がないが、助かったことに変わりはない。
フレイムとラミルファが僅かに愁眉を開いた時、戦神と闘神が二神を分断するように攻撃を仕掛けた。ラミルファがまたフレイムをフォローして行かせようとするかもしれないからだ。
『ちっ』
舌打ちしたフレイムとラミルファの距離が開く。場を席巻する神威の暴風の中、遊運命神が長髪をなびかせながら両腕を広げた。
『還ろう、愛しき雛たちよ』
その背後に巨大な神紋が展開し、格子状の遊戯盤が現れる。チカチカと光り輝きながら配置される、幾つもの丸い駒。リーリアがひゅっと息を呑む。
「ア、アマーリエ様、体が透けていますわよ!?」
「リーリア様も……いえ、聖威師全員消えかけているわ!」
『遊運命神様の力だ。このままでは運命を書き換えられて強制昇天させられる』
こちらに向かって腕を伸ばす神々を阻みながら、フロースが険しい顔で言う。
『ユフィーたちの運命を力ずくで昇天に持っていこうとしてやがる! あの盤面ごと神威を叩っ斬れ!』
フレイムが声を飛ばした。戦神の振り下ろす湾刀を、燃える刃で受け止めている。
『分かっているよ、けど強硬派を止めるのに精一杯で、遊運命神様に近付けないんだ』
答えるフロースは、魔神と共に神威を飛ばして運命の操作盤を破壊しようとする。怒涛のごとく放出される藍白と鈍黒の水流が螺旋を描いて絡み合い、瀑布の矛と化して神盤に迫った。
そうはさせじとばかりに、遊運命神がドス黒い氷の礫を放つ。一斉に掃射された氷弾が空中で無数に分裂し、水流を粉砕した。着弾時に破裂する氷弾の連撃に穿たれ、飛沫を上げながら砕け散る矛の雫がキラキラと大気に飛散する。他の主神たちも続け様に神威を放つが、強硬派の神々が結界を張って防いでしまう。
『私の力を纏わせて運命操作から防御する!』
嵐神の言葉と共に、新緑の風が聖威師たちを取り巻いた。透けていた体がゆっくりと戻っていく。
「きゃあ!」
「アマーリエ様!」
リーリアが手を伸ばすが、ひしめき合う神々に割り込まれる形で引き離されてしまい、届かない。側にいるフロースも、押し寄せる神々を食い止めていて動けない。
(っ……!)
アマーリエは聖威を纏わせた右手を振るい、引っ張られている袖を切り落とした。狼神が防衛行動を許可してくれたので、神相手でもこのような行動が可能になっている。
『恐れずとも、あなたが還るべき場所に還るだけよ』
だが、布切れと化した袖をあっさり手放した神は、今度は直接腕を掴んで来た。周囲にいた数柱の神もそれに加勢する。
「は、離して下さい!」
天界に通じている空間の割れ目に引き込まれようとしていることを悟り、アマーリエは必死で足を踏ん張った。あの中に連れて行かれたら終わりだ。昇天したと見なされ、聖威師として地上に戻ることはできなくなる。聖獣たちのように、正規の手順を経て喚ばれた場合は例外だが。
『主!』
『お離し下さい!』
ラモスとディモスがアマーリエの前に割り込んで阻止しようとするが、神々は怒るどころか嬉しそうな顔をした。
『おお、この獅子たちも我が同胞ではないか』
『よしよし、共に天に行きましょうね』
アマーリエから二頭を引き離そうとするどころか、まとめて抱え込んで亀裂に引きずって行こうとする。
『『えっ!?』』
目を点にした聖獣たちが素っ頓狂な声を上げた。完全なる神となった自分たちもまた、アマーリエと同じく神々の強制帰還対象になったことを失念していたらしい。体を張って主を守るつもりが、セットでテイクアウトされかかっている。神々はこちらを殺傷しようとしているのではなく、体や衣を引っ張って移動させようとしているだけなので、防御壁も反応してくれない。
『ユフィー! ラモス、ディモス!』
上方にいるフレイムが血相を変えるが、同格である戦神の刃をさばいているので余裕がなく、駆け付けられない。僅かに気を散じた瞬間、蘇芳色の御稜威が幾本もの細い杭となって放たれ、フレイムの四肢を貫き虚空へと縫い止める。
『っ……!』
舌打ちしたフレイムが神威を炸裂させ、自らの手足をねじ切って磔から逃れた。
『行けフレイム、戦神様も僕が引き受ける!』
闘神を相手取っているラミルファがフレイムの背を押した。瞬時に四肢を復元させたフレイムが応じる前に、鈍い漆黒の水球が放射され、アマーリエと聖獣たちに群がっていた神々を弾き飛ばした。
『ならーん! 無理強いをしてはならん!』
「魔神様!」
解放されたアマーリエは、床に座り込んで声を上げる。黒色がかった濃青の長髪に、暗い紫紺の瞳を持つ絶世の美青年が上方から舞い降り、アマーリエを背に庇う形で立ちはだかった。魔神クロウエンだ。
「あ、ありがとうございます」
『なんのなんの、此方は雛たちの味方なのじゃ~』
のんびりした語尾のせいでいまいち緊迫感がないが、助かったことに変わりはない。
フレイムとラミルファが僅かに愁眉を開いた時、戦神と闘神が二神を分断するように攻撃を仕掛けた。ラミルファがまたフレイムをフォローして行かせようとするかもしれないからだ。
『ちっ』
舌打ちしたフレイムとラミルファの距離が開く。場を席巻する神威の暴風の中、遊運命神が長髪をなびかせながら両腕を広げた。
『還ろう、愛しき雛たちよ』
その背後に巨大な神紋が展開し、格子状の遊戯盤が現れる。チカチカと光り輝きながら配置される、幾つもの丸い駒。リーリアがひゅっと息を呑む。
「ア、アマーリエ様、体が透けていますわよ!?」
「リーリア様も……いえ、聖威師全員消えかけているわ!」
『遊運命神様の力だ。このままでは運命を書き換えられて強制昇天させられる』
こちらに向かって腕を伸ばす神々を阻みながら、フロースが険しい顔で言う。
『ユフィーたちの運命を力ずくで昇天に持っていこうとしてやがる! あの盤面ごと神威を叩っ斬れ!』
フレイムが声を飛ばした。戦神の振り下ろす湾刀を、燃える刃で受け止めている。
『分かっているよ、けど強硬派を止めるのに精一杯で、遊運命神様に近付けないんだ』
答えるフロースは、魔神と共に神威を飛ばして運命の操作盤を破壊しようとする。怒涛のごとく放出される藍白と鈍黒の水流が螺旋を描いて絡み合い、瀑布の矛と化して神盤に迫った。
そうはさせじとばかりに、遊運命神がドス黒い氷の礫を放つ。一斉に掃射された氷弾が空中で無数に分裂し、水流を粉砕した。着弾時に破裂する氷弾の連撃に穿たれ、飛沫を上げながら砕け散る矛の雫がキラキラと大気に飛散する。他の主神たちも続け様に神威を放つが、強硬派の神々が結界を張って防いでしまう。
『私の力を纏わせて運命操作から防御する!』
嵐神の言葉と共に、新緑の風が聖威師たちを取り巻いた。透けていた体がゆっくりと戻っていく。
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