4 / 4
4
しおりを挟む
◆◆◆
そして、時は戻って現在。
「……うーん、何でこうなったかなぁ」
王宮の豪華な部屋で、私は一人腕組みをしながら考える。
「悪魔にすがろうとしてたから神様が助けてくれたのかも。でも、まさか私が王子妃になるなんて」
諦めかけたあの後。何とカインツ様がいきなり元気になった。
彼の病は、幼い頃から毒を体内に蓄積して来たことが原因だったらしい。小さい頃、兄ハインツにその乱暴さを抗議したところ、激怒した彼に少しずつ毒を摂取させられてきたという。軟禁された部屋の鍵穴から、致死量にならない程度に薄めた毒のスプレーを噴射され続けていたとか。
おかげで、体には何年分もの毒が溜め込まれて、全身ボロボロの状態だったらしい。いや、王家恐ろしすぎでしょ。
ところが、うちに来てから毎日呪いで使う草を食べていたら、それが稀少な毒消しだったようでキレイに治ったそうだ。取引があった国からもらった草を植えただけなのに、まさかそんな効能があったとは……。
回復したカインツ様は、ここぞとばかりにリハビリと筋トレに励んだ。倉庫の肥やしになっていた筋力トレーニングの機械だとか、胡散臭い健康療法の書籍だとかを引っ張り出してきて。うーむ、おべっかに乗せられやすい父がホイホイ買わされたブツがこんな形で役に立つとは……人生ってワカラナイ。
とにもかくにも、体作りに励んだカインツ様は、信じられないほどの短期間で健康な成人男性と同じくらいまで体力を回復させた。
しかも、カインツ様の頭脳は天才だった。『王家から追放された元王子はローゼ男爵家で寝込んでいる』と触れ込んで王家を油断させておいて、実際は変装して外を駆け回り、すっかり丈夫になった体と知略を駆使してバカ妹の居場所を突き止めてくれた。うちから盗まれた宝石が売りに出されていたので、そのルートを遡っていったらしい。とっても幸運なことに、妹はまだ権利書とかの重要書類には手をつけてなくて、全て取り戻すことができた。
とっ捕まった妹は機密文書及び男爵家私財の窃盗でこってり絞られて、国で一番厳しいと言われる懲罰施設に送られて重労働の刑! 『ぶぅえぇぇん、おねえざまダズゲデエェェ!!』と、涙と汗と鼻水ズルズルで引きずられて行ったバカ妹を、助けてやるなんてことはもちろん有り得ない。たっぷり反省しなさいザマーミロ!
その後、留学先で監視の目をかいくぐり、他国の王侯貴族を味方につけて反旗を翻す機会を窺っていた王太子ジュード殿下と連絡を取り、協力して現王夫妻を押し込め、王宮の奥に隠れていた本物のハインツも引きずり出した。カインツ様のことも含めてこっちの事情を知った公爵家が、一転して味方になってくれたおかげで、サクサク進みましたよ!
しかもしかも、ハインツの元婚約者の公爵令嬢とジュード殿下は、実は幼馴染で両想いだったらしい。一度は諦めた恋を再燃させて見事ゴールイン、公爵令嬢はめでたく王太子妃になられた。
で、王家の言いなりになっていた司法官を総入れ替えして、公正な裁判を行った結果、国王夫妻とハインツは身分剥奪の上、生涯幽閉。よっしゃ、元王族だからって容赦はありません!
そして――新たな王となったジュード殿下に請われて、カインツ様は王族に復帰することになった。結婚していた私はなし崩しで王子妃になっちゃって、ローゼ男爵家は特別の恩賞を賜って伯爵に取り立てられた。父は優秀な遠縁を養子に迎えて次代も安泰。
だから私は王宮にいるわけ。あまりの急展開に付いて行けなかったけど、カインツ様は優しいし、今の生活には割と満足してるから、ま、いっか。
妹を追いかけたり王家と対決するドタバタの中で、何だかんだでカインツ様とも距離が縮まって、結構いい感じになってるしね。この前はついにキスしちゃったの!
次はどんなステップに進むのかとドキドキワクワクしながら、私はそっと、まだあの時の感覚が色濃く残る唇を撫でて微笑んだのだった。
そして、時は戻って現在。
「……うーん、何でこうなったかなぁ」
王宮の豪華な部屋で、私は一人腕組みをしながら考える。
「悪魔にすがろうとしてたから神様が助けてくれたのかも。でも、まさか私が王子妃になるなんて」
諦めかけたあの後。何とカインツ様がいきなり元気になった。
彼の病は、幼い頃から毒を体内に蓄積して来たことが原因だったらしい。小さい頃、兄ハインツにその乱暴さを抗議したところ、激怒した彼に少しずつ毒を摂取させられてきたという。軟禁された部屋の鍵穴から、致死量にならない程度に薄めた毒のスプレーを噴射され続けていたとか。
おかげで、体には何年分もの毒が溜め込まれて、全身ボロボロの状態だったらしい。いや、王家恐ろしすぎでしょ。
ところが、うちに来てから毎日呪いで使う草を食べていたら、それが稀少な毒消しだったようでキレイに治ったそうだ。取引があった国からもらった草を植えただけなのに、まさかそんな効能があったとは……。
回復したカインツ様は、ここぞとばかりにリハビリと筋トレに励んだ。倉庫の肥やしになっていた筋力トレーニングの機械だとか、胡散臭い健康療法の書籍だとかを引っ張り出してきて。うーむ、おべっかに乗せられやすい父がホイホイ買わされたブツがこんな形で役に立つとは……人生ってワカラナイ。
とにもかくにも、体作りに励んだカインツ様は、信じられないほどの短期間で健康な成人男性と同じくらいまで体力を回復させた。
しかも、カインツ様の頭脳は天才だった。『王家から追放された元王子はローゼ男爵家で寝込んでいる』と触れ込んで王家を油断させておいて、実際は変装して外を駆け回り、すっかり丈夫になった体と知略を駆使してバカ妹の居場所を突き止めてくれた。うちから盗まれた宝石が売りに出されていたので、そのルートを遡っていったらしい。とっても幸運なことに、妹はまだ権利書とかの重要書類には手をつけてなくて、全て取り戻すことができた。
とっ捕まった妹は機密文書及び男爵家私財の窃盗でこってり絞られて、国で一番厳しいと言われる懲罰施設に送られて重労働の刑! 『ぶぅえぇぇん、おねえざまダズゲデエェェ!!』と、涙と汗と鼻水ズルズルで引きずられて行ったバカ妹を、助けてやるなんてことはもちろん有り得ない。たっぷり反省しなさいザマーミロ!
その後、留学先で監視の目をかいくぐり、他国の王侯貴族を味方につけて反旗を翻す機会を窺っていた王太子ジュード殿下と連絡を取り、協力して現王夫妻を押し込め、王宮の奥に隠れていた本物のハインツも引きずり出した。カインツ様のことも含めてこっちの事情を知った公爵家が、一転して味方になってくれたおかげで、サクサク進みましたよ!
しかもしかも、ハインツの元婚約者の公爵令嬢とジュード殿下は、実は幼馴染で両想いだったらしい。一度は諦めた恋を再燃させて見事ゴールイン、公爵令嬢はめでたく王太子妃になられた。
で、王家の言いなりになっていた司法官を総入れ替えして、公正な裁判を行った結果、国王夫妻とハインツは身分剥奪の上、生涯幽閉。よっしゃ、元王族だからって容赦はありません!
そして――新たな王となったジュード殿下に請われて、カインツ様は王族に復帰することになった。結婚していた私はなし崩しで王子妃になっちゃって、ローゼ男爵家は特別の恩賞を賜って伯爵に取り立てられた。父は優秀な遠縁を養子に迎えて次代も安泰。
だから私は王宮にいるわけ。あまりの急展開に付いて行けなかったけど、カインツ様は優しいし、今の生活には割と満足してるから、ま、いっか。
妹を追いかけたり王家と対決するドタバタの中で、何だかんだでカインツ様とも距離が縮まって、結構いい感じになってるしね。この前はついにキスしちゃったの!
次はどんなステップに進むのかとドキドキワクワクしながら、私はそっと、まだあの時の感覚が色濃く残る唇を撫でて微笑んだのだった。
30
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
不倫した妹の頭がおかしすぎて家族で呆れる「夫のせいで彼に捨てられた」妹は断絶して子供は家族で育てることに
佐藤 美奈
恋愛
ネコのように愛らしい顔立ちの妹のアメリア令嬢が突然実家に帰って来た。
赤ちゃんのようにギャーギャー泣き叫んで夫のオリバーがひどいと主張するのです。
家族でなだめて話を聞いてみると妹の頭が徐々におかしいことに気がついてくる。
アメリアとオリバーは幼馴染で1年前に結婚をして子供のミアという女の子がいます。
不倫していたアメリアとオリバーの離婚は決定したが、その子供がどちらで引き取るのか揉めたらしい。
不倫相手は夫の弟のフレディだと告白された時は家族で平常心を失って天国に行きそうになる。
夫のオリバーも不倫相手の弟フレディもミアは自分の子供だと全力で主張します。
そして検査した結果はオリバーの子供でもフレディのどちらの子供でもなかった。
開発者を大事にしない国は滅びるのです。常識でしょう?
ノ木瀬 優
恋愛
新しい魔道具を開発して、順調に商会を大きくしていったリリア=フィミール。しかし、ある時から、開発した魔道具を複製して販売されるようになってしまう。特許権の侵害を訴えても、相手の背後には王太子がh控えており、特許庁の対応はひどいものだった。
そんな中、リリアはとある秘策を実行する。
全3話。本日中に完結予定です。設定ゆるゆるなので、軽い気持ちで読んで頂けたら幸いです。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
うん、軽〜くサクサク読めて、楽しかったですよ〜!
お読みいただきありがとうございます。
初感想とても嬉しいです!