女勇者様が弱すぎるんだが

ふつ

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1章〜ロレンと最弱女勇者

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 扉から数歩離れる。それと同時に彼女はさらに後ろへ下がった。

 剣を抜く。

 教会に訪れた勇者から教わった技、今も覚えてる数は少ない。

 俺は使える数少ない必殺技のうち、一つを決めた。

 氷を砕こう。

 ならこれしか無い。

「必殺!、岩斬り!!」

「うわっ!!」

「キャッ!?」

 扉に向かいその剣を振り下ろりしたが、手応えがなく、またしても鈍い音をし、吹き飛ばさた。

 痛い。

 嘘だろ……ビクともしない? この必殺技でか?

「えーっ!? 今の必殺技で壊れないなんて、硬すぎるよっ!!」

 必殺技、岩斬りは威力が高いが、それと相応に体力の消耗が馬鹿にならない。

 大事な時以外で使うのは控えよう……

 よし。

「なら次はこの技だ!」

 剣を構える。

 今でも強く印象に残ってる。あの頃始めて、必殺技を見せてくれた、あの勇者の技でもあり、彼女を助けた技でもある必殺技。

 氷なら、熱で対応してやる。

「必殺、炎一閃斬り!!」

 すると、これまでの音とは違かった。

「あ!」

 剣を振り、扉にはなった炎。

 相性が良かったみたいだ。

 扉を覆っている氷の一部がみるみるうちに溶け、人が通れるくらいの穴ができた。そこからは上に続く階段が露わになった。

 それを見て喜び、声をあげる彼女であったが、次の瞬間。

 カチカチと、どことなく凍り始める入り口は、瞬く間に全身を氷で纏った。

「え、一度は壊れたのに、すぐ、また凍り始めちゃった……!」

 どれだけ、俺から体力を消耗させればいいのか。

「どうすればいいんだろう……」

 もしかしたら、この扉のこと何か知ってる人がいるかもしれない。

「この辺の人に聞いてみようか。」

 彼女はこくんと頷いた。

 俺たちは魔王城を後にして魔境に向かう。

 古びた階段を降り、少し歩くとポツンと置かれた1つの墓石を中心とする、数人の人がいる広場に着いた。

 そこで彼女は、鉄の甲冑を被った鋼の鎧を身に纏うクールな男に声をかけた。

「魔王城の扉を突破する方法を知りませんか?」

「……む。もしや君達が言ってるのは『氷鏡の扉』のことか?」

「ひかがみのとびら……?」

 彼女は、首を傾げながら返答を反復する。

 ひかがみのとびらか……聞いたことないな。

「魔王城の入り口にある最初の扉のことだろう?」

「はいっ! そうです!!」

「あの扉は、氷で出来た鏡。全ての攻撃をはね返してしまう。だが……唯一跳ね返せないものがある。」

「跳ね返せないもの?」

「氷鏡の扉が唯一はね返せないもの……それは『強い炎』だ。」

 そういうことか……

「たしかに、炎の攻撃ははね返らなかった。」

「でもすぐに戻っちゃったよ? どうすればいいんだろう?」

 そこだ、あの扉は割れたと同時に、再生した。

「……氷鏡の扉は一気に蒸発させねば何度でも再生してしまうのだ。大切なのは、強い光が発する超高温……灼熱のパワーが必要だ。『マグマジェイル』という宝石をつかうといい。」

「ま、マグマジェイル!? すっごく貴重な宝石だよ!? ロレンくん持ってる?」

「持ってるわけないだろ!? それどこで手に入るんだ?」

 マグマジェイル? 見たことも聞いたこともない。

「今は亡き、遠く離れた灼熱の国で手に入るものだ。世界中を旅する勇者ならば、どこかでお目にかかることもあるだろう。」

「それにしても……魔王城のことも世界のこともずいぶん詳しいんですね。」

「当然だ。私はもともと『勇者』だったからな。」

 と、彼女に対してかえってきた言葉を聞いた俺と彼女は驚嘆する。

「「えっ!?」」 

「そ、そうだったんですか?」

 そういえば……! この人も昔、教会に来たような気がする。

 凝視していると、それに気づいたクールな勇者は、ん?と悩むように見てくる。

「……む! キミはあの時の教会にいた少年か?」

 なんでその事を知ってるんだ? 

「そうですけど……」

「……立派になったな。また会えてうれしいよ。ときにキミはこのあたりにいる人々を見て何か思い出さないか?」

「え?」

 なんのことだ? ただ違和感はあった……会う人会う人が、初対面じゃない気がする。

「……わからないか。あの時キミはまだ小さな子供だったものな。ならば私が教えよう。このあたりにいるのはみな……魔王に戦いを挑み、敗れ去った『元勇者』たちなのだよ。」

「えーーーーーーーーーっ!?」

 横で話を聞いていた彼女は飛び跳ね、聞いたこともないよえな声で叫ぶ。

 なるほど! 繋がった……違和感の原因はそれか!

「そうか! だからどこかで見たことあるような気がしてたんだ……」

「勇者たちの中にはマグマジェイルを持ってる者がいるかもしれない。話を聞いてみるといい。」

「わかりました! ありがとうございます!」  

「……む。お礼などいいのだ。頑張ってくれたまえ。」

 彼女がお礼言い、2人でペコリと丁寧にお辞儀をし、その場を離れる。

 凄い事を聞いた。とても晴れ晴れとした気分だ。だが、そうなると疑問が生まれる。

 俺が考えてるのに気づいたのか、彼女は口を開く。 

「……ロレンくん、どうしたの?」

「ここにいる人たちは、みんな『勇者様』なんだろ? どうしてみんな魔王城の目の前にいるのに戦おうとしないのかなって……」

「たしかにそうだよね……見た感じ、ケガもしてないのに戦う気がなさそう。なにか『事情』があるのかな?」

 俺たちは、再び聞き込み始める。








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