終∶もだもだする話

加速・D・歩

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・水田

7 あれ

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「あれ、ぅ……っ、」

 トイレの個室で清掃の作業をしようとした時──自分の意思とは関係なく大量の涙が溢れ出した。止めようと拭いても拭いても涙が床を汚す。子供みたいにわんわん泣いてたら同じフロアに居た同僚がきて馬鹿みたいに心配された──

 結局、リーダーにも精神的なモノだろうと来なくていいとクビになった。
 バイト一つ減っちゃった。どうしよう、トボトボ歩いてるとまた涙が頬を伝った。なにこれ、なんで涙が出るの、思い当たる理由が浮かんでは消え、目を袖でゴシゴシと拭いた。

「水田くん、こんばんは。ってどうしたのその顔?!」
「あ、古谷さん、こんばんは……?」

 今日はよく会うなぁと呑気に思ってたら、両肩をガシと掴まれてビックリする。彼が言うにはかなり酷い顔になってると、手鏡を渡してくれてそこには泣き腫らした顔、目が赤いし、ほんと酷い。




「話なら聞くよ」
「えっと、色々あってバイトの1つをクビになって……」
「そっか、今日行った清掃だよね」
「いつもフロア担当なんですけど、トイレ担当が休んでさっさと終わらせようと作業を開始しようとしたら、大泣きしちゃって、理由が分からなくて……」

 ホットコーヒーのコップがカタカタ音がする。あれ、あれ、って思ってると古谷さんが俺を抱きしめた。
 あれ──? と思った瞬間、彼の匂いが声だけでもなくて匂いも落ち着く……

「だいぶ、震えも治ったね。大丈夫? 怖い思いでもあったみたいだね」
「? そう、なのかな」
「僕が君の助けになれるなら友人として協力するよ」
「ありがとうございます」

 清掃の仕事は性に合ってたけど、しょうがない。別の仕事を探すか。またコーヒーをご馳走してもらって落ち着いてから自分の部屋に帰った。
 悪循環──これは良くない流れ。

 このままじゃ古谷さんの優しさに甘えてしまう。明日は本屋だし、気持ちを切り替えないと!




「そうなのよ、兄弟が多いのも大変なのよ」
「私の所だと7歳上と下で離れてますよ」
「あら~、そうなの」

 本屋の同僚がお客さんが少ないから井戸端会議をし始めた。
なんでも兄弟の話らしい。多い所だと9人とか歳上世代は凄いなぁ……俺は一人っ子だったから兄弟が居るの羨ましい。家に帰って親が共働きで部屋に1人だったから──

「水田くんの所は?」
「確か一人だったけ?」
「そうです、一人っ子。だから居るの羨ましいですね~」
「えー、喧嘩はするし下だとお古ばっかで一人っ子羨ましかったなぁ」
「俺も一人っ子ですけどお古ばっかでしたよ!」

 他の人はなんで? って顔するけど歳が近い家の子達の親は服とか使ってたオモチャとか譲るんだよね。だから少し上の歳の子の服とか着てたし。




 今日のお客様は少なかった。本屋は店舗にもよるだろうけど今はネットで買える時代だから全盛期ほど人が来ないらしい。だからこう暇な時もあって──

 家に帰ってきて部屋着はカツラ無しのネグリジェを着てる。オナニーする時はさすがに被るけど、普通の部屋着が落ち着かなくて……

 乳首に吸引クリップをつけて弄って鼻息が漏れる。男なのに女になる感じが背徳感あってゾクゾクする。ヘッドホンから聴こえる彼の声──

「ちくび、なめて……んっ、クリクリしないでぇ……っ」

 妄想しながら乳首を触ってるとピンポンとインターホンが鳴った。慌ててパーカーを羽織って玄関に行くと古谷さんが立っていた。

「あ、あの、少し待ってくださいねっ!」

 ドア越しに声をかけてから、念の為に部屋の中と服を着替える。


「こんばんは、ど、どうしたんですか?」
「夜分遅くにすみません。よかったら家飲みしませんかって誘いに来たんだけど、大丈夫ですか?」
「え、あ、はい! 喜んで! 上がってください!」
「じゃあお邪魔します」
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