ウィルビウス〜元勇者パーティに拾われて裏ボス兼勇者に至った私と、元凶である悪役令嬢の元彼女を含めた絶対破壊の交響曲!?

奈歩梨

文字の大きさ
48 / 55
学園編・中編

第44話〜救済へと至る過程〜

しおりを挟む


 私、ことリリアは疑いもせずに私自身を信じると言い切ったに等しい20の瞳に思わず顔を伏せてしまう。

(……どいつもこいつもバカばかりだ…だが…)


 だが、その馬鹿さ加減に私の心は救われている。

 同時に、一時でもそのバカの筆頭(ユウキ)に醜い感情を向けた私自身が一番愚かだと理解した。

 或いは、彼等ならこの運命(のろい)を終わらせてくれるかもしれない…そんな淡い希望を抱かせる程に水中から見る太陽の様に眩しい存在だった。


「……今日はこの後授業もない、皆に時間があるなら私の生い立ちから話したいが…構わないか?」


 返事の代わりに皆が首を縦に振る、マイペースだと思っていたエリスが全員分のジュースを食券で買ってくるが、それは彼女なりの気遣いなのだと此処にきて初めて気付いた。


「……ありがとう、…私は水中国家アトランティスの第一皇女マリー様に仕える騎士として育てられた上流貴族の出だ…国家と言ってもアトランティスが水中で唯一の国ではあるが」


 マリー様は現アトランティス国のアトラス様とその奥方様であるマリア様の一人娘であり、私を姉様と慕ってくれる私にとっても妹同然の存在だ。

 そんな彼女に異変が訪れたのは今から3年前…。

 ある日夢の中で神託を受けたマリア様はマリー様が海の神であるポセイドン様にマリー様の15歳の誕生日と共に花嫁として貰い受けるとの神託を受けた。

 その神託から3日後の早朝、マリー様の胸元にポセイドン様の象徴とも言える三叉槍の呪印が刻まれていた。

 だが、我々海に生きる者にとって海神ポセイドンは血の気は多くとも決して弱者を食い物にしない誇り高き存在だ。

 皆、場内の者は皆ポセイドン様の名を騙る者の仕業であると噂しているし私だって同じ気持ちだ。

 問題は偽物であったとしてもマリー様が神の名を騙れる程の力の持ち主に狙われているという点だ。

 私を含め上流貴族の者達は皆王国の上級騎士と同じ位の戦闘力は持つ、こと水中戦となれば無類の強さを誇るだろう。

 然し、相手が神域となれば話は変わってくる。

 然も我々が住むアトランティスはAクラスの魔法を幾ら打ち込まれても微動だにしない強力な防御結界に覆われているのだ、その中でも王族が住まう王宮は特に強力な結界に覆われている。

 その結界を突破し二度に渡り王族に干渉してきたという点に皆、警戒心を強めている。

 此処までを余す事なく話す、彼等の信頼に応える為に。


「……成程、ありがとうございます。…もう一度確認しますがその呪印らしきものは三叉槍だったのですね…?」


 ユウキが確認の為、と挙手をしながら問うが私はそれに首を縦に振る。


「あぁ、確かに三叉槍だ。だがあれが本当に神託によるものなのか呪いによるものなのかは定かでは無い…本来神の気を探る等は一度でも神域に至った者で無ければ預かり知らぬ事なのだからな」


 少なくとも、アトランティスにはそんな稀人は存在しない。

 ユウキと初めて手合わせした時に、直感的に彼が神域に至った者だと理解したからこそ彼を連れて行きたかったのだ。

 今も尚、気丈に振る舞いながらも不安に脅えているマリー様を救う為に。


「…なら、私としては明日にでも御伺いしたいと思います…皆はどうかな?」


 暫く考え込んでいたユウキは皆に意見を求むと皆、異議なしとばかりに頷く。


「俺も師匠に賛成だ!そんな話聞いたら黙ってられねぇって!」


 単細胞だとバカにしていたライに今程感謝した瞬間は無い。


「あたしも賛成だねぇ、頭数は多い方が良いさね」


 ルビア先輩がにっと不敵に笑いながら私の頭を抱き込む…どうやら何時の間にか泣いていたようだ。


「み、皆一緒なら怖くない…です!」


 ベラ先輩が小さな身体でガッツポーズを取るのが見えた。


「…任せて」


 エリスがぽんぽんと背中を叩く、宥めるように優しく。


「…仕方ないわね、協力してあげるわ」

「ふふ…安心して下さいね?心の中では放っておけないって言ってますよ?」


 シオン先輩の心を代弁しとうのシオン先輩に怒られているセチアが頭を撫でてくれた。


「そういう訳です、勇者としても後輩としても…仲間としても放っておけませんよ」


 アリシアが力強く、仲間と口にするのが聞こえた。


「ま、乗り掛かった船だ!泥船に乗ったつもりで任せときな!」

「兄さん、泥船に乗ったら沈みますよ?」


 ヒュウガとユイが励ましてくれる。


(…私は、良い仲間を持った…)


 本当に良い仲間を持ったと思う…私には勿体無いくらいの素敵な仲間達を。

----------------

 その後、私はリリア先輩達と明日の昼頃に学園で集合する約束をしエリス以外の皆と別れた。


「おかえりなさいませ、ユウキ殿」
「ユウキ殿、入浴になさいますか?それとも食事になさいますか?」

「それとも~、あたしとにゃんにゃんする~?」

「食事でお願いします」


 屋敷に戻るとメイド服を着たルトさんとルカさんに出迎えられるも何故布団で簀巻きにされた姿のライア様が現れるが気にしてはイケナイ類だと本能的に察すればルトさんとルカさんに向き合い間髪入れずに即答する。


「やぁん…ダーリンのいけずぅ…」


 いや、いけずって…。

 この人本当に何万年も生きた精霊(ニュンペー)なんだろうか。


「そうだよ~?なんなら証拠見せよっか?」


 さりげなく心を読む辺り彼女が少なくともイレーナ母様なセチアの祖にあたる存在だというのは理解してしまう。


「いえ、大丈夫です…」

「そう?……あれ?…ふぅん…そうなんだ…?」


 唐突に何かを察した様にふむふむと頷きながら私をじっと見つめるライア様だが、直ぐににっこりと微笑むとガッツポーズを決める。


「ダーリン、がんば!多分本物っぽいけどダーリンならなんとかなるよ!」


 …どうやら私の中に眠る火の意思である精霊と会話をしていたようだ。

 私はその方とは会話は出来ない分歯痒い思いをしてはいるのだが。


「あはは!まぁ、この子シャイだから仕方ないっしょ!」


 そうなのか…そう考えるとなんだか愛らしいな。


「あ!だからって浮気はダメー!ダーリンのイケメン魂はあたしのなんだから!」

「……ユーくんはエリス達の…」


 ぎゅっ、とエリスが腕を掴みライア様に威嚇する、うん、何時もの光景だ。

 だが、本物かもしれない、か…一度調べてみる必要があるな。


「ところで、何でライア様は簀巻きになっているんですか?」

「それはね~ダーリンのせいだよ?」


 簀巻きにされながらもえっへんと胸を張るライア様は私をじっと見つめている。


 正直、解せぬ。


----------------

 食事を頂き、風呂で汗を流した後、私は久方振りに幼い頃に授けられた力であるアカシック・ウィンドウを使い図書館へと入り浸る。


「…オリュンポス十二神…ポセイドン…あった、これだ」


 不貞や浮気、拉致に強姦なんでも御座れのオリュンポス十二神の末弟ゼウスを頂点とした中でも海の神でありゼウスに次ぐ実力者である事から海のゼウスとも呼ばれるのが海神ポセイドンである。

 彼は海の神である前は大地の神としての側面もあり地震を司る神である。

 デメーテルやメドゥーサ、カイニスといった見目麗しい女性を手篭めにしてきたゼウスにも引けを取らない神であるらしい。


(……有り体に言えばクズだな)

 改めて調べ直すとろくでもないなオリュンポス十二神…。

 まぁ、神というのは善性の神ばかりでは無いのは確かだし人の尺度では測れないものもあるのだろうが。


「…さて、問題は掛けられた呪いの対処だがどうしたものかな…いっその事消しゴムの様にその呪いも消せたら楽なんだが…」


 無窮斬者(むきゅうざんしゃ)で呪いを断つ事も勿論考えたが、その場合腹いせに地震で大津波でも起こされたら敵わない。

 セチアの時のように一度術として完成してしまったものを無効化出来る能力は私は持ち合わせていない、ファラを連れて行けば良いのだが彼女は政務が忙しいとの事で直ぐには合流出来ないとの事だ。

 シオンの能力を頼れば呪いを死滅させられるが同時にマリー皇女にも負荷を掛けてしまうかもしれない…。


「かと言って…多分普通の解呪(ディスペル)では解呪出来ないだろうな…中々に厭らしいな…」


 そもそも呪いの効果すら現段階では推察の域を出ないのだ。

 恐らくタイムリミット迄に刻んだ者の魂を蝕み心身共に己が花嫁にする類の呪術だとは思うが。


(…何か、何かないものか……ぐっ…)

 幾つか当たりを付けた魔術書や歴史書の頁を捲っていると激しい頭痛を覚え頭を抱える。


「ぁ…が……あぁぁっ…!」


 この頭痛の原因は理解している。

 だが、認める訳には行かない。



『悲しいな…私はもう一人の私なのに』


 !?


「あな、たは……」


 目の前の有り得ない現象に眼を見開くが真白(ましろ)と真黒(まくろ)のベールに包まれた存在は私の額に手を置く。


『…本来、限界の概念が存在しない君がこうして苦しむのは身体や脳ではなく魂が私に引っ張られているからだよ、…平たく言えば私という存在に君が引き摺られている状態だ…綱引きみたいなものだね、私は何もしていないが』


 彼が手を翳すと嘘のように痛みが引く…いや、“痛みという存在を抹消されたような感じだ”


『…一時しのぎかもしれないが、今はこれで良いだろう…さ、今はもう帰りなさい』

「ありがとうございます…、今…何をしたんですか…?」


 目の前の存在に私は問い掛ける、何をしたのかを…魔法の気配を感じたがありとあらゆる魔法を修めた賢王である母上から魔法を学んだ私にも理解の及ばぬ魔法に今回の一件を解決に導く手掛かりが掴めそうで思わず問い掛けた。


『…そうだね、先ず私の事はカオスと呼ぶと良い。…この魔法は本来【原初の神鎧】に刻まれた魔法の一つだから教えたくは無いが…究極の救済を体現した魔法とだけ伝えておこう』


 救済、か…。

 確かに、これだけの魔法を何の詠唱もなく使えるならそれは使い方次第では大きな救いを齎すだろう。


 その代わり、それを手にした者は…。



「…ありがとうございました」

『うん、…君は、後悔しない様にね』


 何かを言いたげにしながらも虚空へと消えるもう一人の私(カオス)を見送り、私は彼が送り込んできた何万年分の記憶から擬似的にではあるが悪魔の力へと至る知識を手に入れた。


 ───絶対に手を出してはならない、禁忌の力へと至る時に、私がどうなるのかも自覚しながら。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...