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推理王ショウナンGX
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――ライディング推理――
――それはスピードの中で進化した推理――
――そこに命を賭ける頭脳は大人の少年を見た目は子供の少年は1Sと呼んだ――
「オラッ! 出てこいや! 金返せ!」
何かがおかしい。巷では西の方のやつに人気がとられていると俺の中で話題になっている俺、【東京山 湘南】(とうきょうやま ショウナン)(7)は今の状況に違和感を覚えた。
俺、ショウナンはわけあって一時的に俺をかくまってくれている【アガサ・クロマック・アノカター】(96)博士の家にやってきていたのだが、家には誰もおらずしばらく待っていると黒ずくめの借金取りたちが博士の家を包囲して家の扉を殴りだしたのだ。
何故かくまわれているのかは聞かないでくれ。いろいろあったんだ。別に遊園地で一人でかっこいいポーズの練習をしてたらたまたま何かの間違いでいわれなき暴力を振るわれ、とっさに近くに落ちていた変な薬を拾い食いしたわけではない。断じて。
あと俺の名前だが別にこれは偽名ではない。暴力を振るってきた男も子供になって生き残っているとは思わないだろう。最近幼馴染のモーリーが「ショウ……ナン……?」とか「もしかして……ショウナン?」とか言いながらこっちを見てくるが大丈夫だろう、多分。
さて改めて現在の状況を説明しておこう。アガサ博士の家の周囲にはおよそ6人の男が散らばっている。玄関前に二人、裏口に一人、バイクで爆音を鳴らしながら家の周りをまわっているのが三人だ。
やつらの時折聞こえてくる断片的な会話から玄関に張り込んでいる二人は【有留斗羅 満彦】(うるとら みつひこ)(??)と【ウナジュー・デブリン】(??)であることが分かっている。
裏口の奴はだんまり決め込んでいるしバイク三人衆は延々と「セイヤッ! セイヤッ! 金出せセイヤッ!」と繰り返し続けているので詳細は分からん。
とりあえず知り合いの優秀な警部に通報したのでもう少しすれば全員しょっ引かれるとは思うが警部が来てくれるまでの間どうしてこうなったのか俺なりに推理しておこう。
現在注目するべき点は『呼び出したにもかかわらず何故か家にいなかったアガサ博士』、『狙いすましたかのように現れた借金取りは何者なのか』、の二点だ。
まず前者だがアガサ博士が何らかの形で誘拐されたというのが有力な説だ。アガサ博士が黒幕? ハハッ、冗談は顔と読む小説の選び方だけにしてくれよな。アガサ博士が黒幕なわけないだろ? 理由? アガサ博士が黒幕なわけないからに決まってるだろ?
「おい! 早く中の小僧を捕まえナ! あの方がせっかく自宅に小僧をおびき寄せたってのにサツが来ちまって捕まえられませんでしたじゃアタシたち殺されちまうヨ!」
「ヘイ! スンマセン走美そうみの姉御!」
おや、裏口の黒ずくめがようやく口を開いたようだ。名前はソウミか。なんとなくオーラを感じる名前だ。
それはともかくアガサ博士が誘拐され、さらに俺をも捕まえようとしているということはここの脱出に時間はかけていられないな。時間をかければかけるほどアガサ博士が命を落とす可能性は高まっていく。
どうやら警部の到着を待って、という当初の計画は捨て去るべきだろう。さりとてやみくもに脱出してみてもアガサ博士の行方が分からなければ助けに行くこともできない。
アガサ博士の行方の手掛かりを得るにはここで時間をかけて黒ずくめの借金取りから情報を聞き出す必要があるが時間をかければ博士が危ない。彼方立てれば此方が立たぬ。八方ふさがりといったところか。
――そう、普通の人間ならば――
だが俺には、いや、俺たち・・・ には手掛かりを得つつアガサ博士を救出に行く手段が一つだけある!
「オラッ! もうブツは上がってんだぞ! カツドンやるから出てこい!」
それは尋問してる警察のセリフだ。だがもう一度でもその扉を叩いてみろ。その瞬間が貴様らの最期だ。
「開けやがレヴォンペンペンッ!?」
「セヤカテッ!?」
爆音とともに玄関ごと借金取り二人が吹き飛ばされ空を翔る。アガサ博士の開発した腕時計型RPG-7で人間をあの世にシューッ! 超エキサイティングした俺はそのままS-スケートを急旋回させ家の庭を駆け抜ける!
「なんだ!? 玄関で爆発!?」
「小僧が逃げたぞ!」
「犯罪じゃねーか! 警察呼べ警察!」
バイクの男たちが口々に罵声を浴びせてくるが知ったことか。俺の目的はこんなザコ共ではない。俺はS-スケートを飛ばすと裏口へ回る。
「あばよとっつぁ、いやネーチャーン!」
「しまった! あの小僧、S-スケーターか!?」
これ見よがしにソウミの前を突っ切って公道へ脱出する。しばらく奴らが追いつける程度・・・・・・・・・・のスピードで逃走する。
「待てコラ! ぶっ殺すぞ!」
「クソッ! なんて速えスケートだ!」
「道交法違反だぞオイ!」
バイク三人組に追いつかれるが俺は巧みなS-スケート捌きで奴らのタックルを回避する。
「待ちなクソガキ!」
三人の男たちの攻撃を回避し続けていると後ろから声が響く。先ほどのソウミとかいう女の声だ。そしてソウミが乗っているのは……
「ハァ!? 姉御もスケートに乗ってやがる!」
「しかも速え! あの小僧以上のスピードだぜ!」
「来るときはバイクだったのになんでスケート乗ってんだよ!」
ソウミの方が速い? 馬鹿め、あえて追いつける程度のスピードで走ってソウミが追いつくのを待っていたんだよ!
「エコー! シャンディー! ベンザー! あんたらなんて様だ、アタシの顔に泥塗る気?」
なるほど、小物っぽいハゲがエコー、全体的に説明口調なのがシャンディー、どっかずれてるアホがベンザーか。それはともかく舞台は整ったようだぜ!
「まんまとかかったなソウミ! お前から感じるオーラ、お前は間違いなくS-スケーターだと思っていたぜ!」
「なに? それはどういうことサ!」
「ヘッ、分からないのか? S-スケーターが二人集まればやることは一つ!」
「ハッ!? しまった! そういうことか!」
ソウミが気づいたときにはもう遅い! 市内の交通システムは二台のS-スケートを感知してルートの選定を始めている!
『推理が開始されます。一般車両はただちに退避してください。繰り返します』
地面がせり上がり俺たちの戦いのロードを作り上げる!
「これで俺たちの邪魔をするものはS-スケーター以外いない!」
「クソ! 初めからこれが狙いでアタシに追いつかせたのカ!」
「その通りさ! あんたらがどうして俺を狙っているのか、人質はどこにいるのか。さぁソウミさん、俺との推理に付き合ってもらうぜ!」
「ライディング推理! アクセラレーション!」
「俺の推理によればあんたたちの狙いはこの俺。何らかの方法でアガサ博士の家を空にし俺をおびき寄せ包囲した。まんまと逃げられちまったがな。さて、答えてもらおうか! アガサ博士をどこにやった!」
「ハッ、馬鹿かてめえハ! アガサ様こそアタシたちのボス、そしてアンタをはめた張本人サ! あんたたち、やっちまいな!」
「しらばっくれる気か。上等だぜ、必ずおまえたちから俺の推理でアガサ博士の居場所を聞き出してやる!」
俺がそういうと推理開始と言わんばかりにエコーが俺の前を陣取る。そして残りの二人は俺のサイドから挟もうと車体を俺の方へとよせてきた。
「おいおい、そんなヘナチョコテクで俺をブロックするきかい?」
俺はこれまた博士の発明品どこでもビーム射出ベルトのダイヤルを合わせる。一見ただのベルトのバックルからビームが射出され俺をブロックしているエコーは焼き尽くされる!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」
「安心しろ。峰うちだ」
これで一人は始末できた。奴らはおそらくコンビネーションありきの有象無象。一人倒せばどうということはない。
「一人倒せばあとは総崩れ、そう思ってんだロ? 甘いんだヨ!」
「何ィ!?」
そんなはずはない。俺のビームを食らって生きている人間などいるはずがない。
だが俺のそんな考えを打ち砕くように煙の中から現れたのはエコーだった。バイクも無傷だ。
「な、なぜだ!?」
「ヘッ、俺は組織では光速ブロッカーエコーとして有名なんだぜ! あの程度のビームなら見てからブロックできる!」
「チッ、意外な特技だ。小物っぽい割に手が早いぜクソッタレ!」
「さぁて! 挟み撃ちにしてやるぜクソガキ!」
前方をふさがれた俺はじわじわとサイドの二人から距離を詰められていく。
「だがあんたらはバイクだぜ? S-スケートならともかくバイクで接触なんか起こして大丈夫かよ!」
「それは問題ない。前を見ろ」
俺は言われた通り前方を見る。エコーのさらに先には中央分離帯が……
「まさかてめえら!」
「その通り! このまま中央分離帯にぶつけてやるぜ!」
このままではマズイ! 走り続ければ激突は必至、脱出しようといくらスピードを落としても奴らは合わせてスピードを落としていくだろう。停止してしまえば中央分離帯との激突は避けられるかもしれないが走れないS-スケーターに発言権は回ってこない。これではアガサ博士を救うことができない。
俺一人ではこの状況を打破することは出来ない。だが今はライディング推理中。警察だろうと軍隊だろうと国家元首であろうと邪魔することは出来ない。一体どうすればいいんだ……
「ハッ! 所詮は四対一。この国は民主主義サ、正しいといった人間が多い方が真実になるのサ!」
はるか前方を走るソウミがそう言い放つ。この状況はかなりまずい。スピードを増せば推理力はどんどん増す。狩りに俺が方位を脱出できても奴の圧倒的推理力はゆるぎないだろう。初めからソウミは下っ端三人に俺を足止めさせてぶっちぎりの推理力で真実を決めつけるつもりだったのだろう。
もはや勝機はない。真実とは奴らが言うとおり、アガサ博士が犯人だというのか……
(最後まで……希望を捨ててはいけません……)
諦めかけていた俺の頭の中に突然声が響く。強敵であり、ライバルであり、知り合いでもある彼の声だ。
(S-スケーターならば……最後の最後まで走り続ける……それが、私たちの宿命!)
幻聴か……いや、違うこれは!
「ICレコーダーか!」
「その通りですよショウナン君!」
次の瞬間デジカメのフラッシュのような光が周囲を包む! 来るとわかっていた俺以外の四人は目が眩んで前が見えない!
そして側壁を飛び越えて現れたのは渡辺警部だ! 警部はそのままシャンディーを後頭部から襲い掛かる!
「ブラコンッ!」
スピードの乗ったS-スケートをもろに後頭部に食らったシャンディーは奇声を上げバランスを崩しヘルメットが吹き飛ぶ! その隙に俺は弾切れの腕時計型RPG-7に直射日光を反射させ奴の目を焼き尽くす!
渡辺警部はそのまま俺の背後へ着地すると返す刀でベンザーの横に回り込むと高速回転を始める! その回転により竜巻が生まれベンザーははるか上空へと吹き飛ばされる!
「な、なんだこの回転は! うわああー!」
「Pペナルティ-ストリームという技でしてね。まぁこれは私の同僚の技ですが少し貸してもらいました。貴方にはご退場願いますよ」
渡辺警部はそう説明しながらも攻撃の手を緩めない。手に持ったICレコーダーを前方へ素早く投げ飛ばす。飛ばしたICレコーダーは前方を走るエコーの車輪の下に入り込む。
「ツルッツルしてる。これめっちゃツルッツルしてる」
踏みつけたICレコーダーでバランスを崩しスリップしたエコーはそのまま中央分離帯に激突し停止した。俺は無事包囲から脱出し激突を免れる。これでソウミの取り巻きはすべて走れなくなり発言権を失った。
「よく来てくれたぜ渡辺警部」
渡辺警部は俺の横につける。前を見ればソウミはほとんど見えなくなるほどになっていた。推理力もとんでもないパワーになっていることだろう。
「警察として、それ以上にS-スケーターとして、複数でよってたかって推理のごり押しをする輩が許せなかっただけですよショウナンくん。真実というものは信じる者の多寡で左右されるものではありません。真実とは、飽くなきスピードを求め、忌憚なき推理を続けたその先にあるものです」
「ありがとう、警部……忘れていたよ、俺が推理を始めたころの心を。俺の歩いて来た推理など、まだ入口。世界にはまだまだ未知の推理がある。そう、俺には見えているはずだ。果てなく続く推理ロードが。なのに俺はこんなところで立ち止まってなんかいられない!」
「そう、己が推理を、おのれのS-スケートを信じて進むのです! 露払いは済ませました、あとは彼女をあなたの推理で粉砕するだけです!」
「ああ、見ててくれ警部! 俺の推理を! 俺の生きざまを!」
俺のS-スケートがどんどんスピードを増していく。S-スケートはS-スケーターの精神力に応じてパワーを発揮する。今の俺はどんな奴よりもぶっちぎりのスピードで走ることができる!
あっという間にソウミに追いつき並走する。
「ば、馬鹿な! あれだけ突き放していたはず! あんた一体どうやって……」
「よう! ペテン師野郎! てめえのアガサ博士が黒幕なんて戯言、この俺が叩き潰してやるぜ!」
そういうとソウミはにやりと笑う。
「いい度胸サ! あんたに真実ってやつを叩きつけてやるヨ!」
俺たちは200キロを超えた超スピードで道路を走り抜ける。気づけば俺たちはお互い笑いあっていた。S-スケーターとしての本能か、こんな未知の領域での推理に俺たちは心躍らせている。
「行くぜソウミ! 俺たちの推理はこれからだ!」
――ライディング推理! アクセラレーション!――
ご愛読ありがとうございました。
――それはスピードの中で進化した推理――
――そこに命を賭ける頭脳は大人の少年を見た目は子供の少年は1Sと呼んだ――
「オラッ! 出てこいや! 金返せ!」
何かがおかしい。巷では西の方のやつに人気がとられていると俺の中で話題になっている俺、【東京山 湘南】(とうきょうやま ショウナン)(7)は今の状況に違和感を覚えた。
俺、ショウナンはわけあって一時的に俺をかくまってくれている【アガサ・クロマック・アノカター】(96)博士の家にやってきていたのだが、家には誰もおらずしばらく待っていると黒ずくめの借金取りたちが博士の家を包囲して家の扉を殴りだしたのだ。
何故かくまわれているのかは聞かないでくれ。いろいろあったんだ。別に遊園地で一人でかっこいいポーズの練習をしてたらたまたま何かの間違いでいわれなき暴力を振るわれ、とっさに近くに落ちていた変な薬を拾い食いしたわけではない。断じて。
あと俺の名前だが別にこれは偽名ではない。暴力を振るってきた男も子供になって生き残っているとは思わないだろう。最近幼馴染のモーリーが「ショウ……ナン……?」とか「もしかして……ショウナン?」とか言いながらこっちを見てくるが大丈夫だろう、多分。
さて改めて現在の状況を説明しておこう。アガサ博士の家の周囲にはおよそ6人の男が散らばっている。玄関前に二人、裏口に一人、バイクで爆音を鳴らしながら家の周りをまわっているのが三人だ。
やつらの時折聞こえてくる断片的な会話から玄関に張り込んでいる二人は【有留斗羅 満彦】(うるとら みつひこ)(??)と【ウナジュー・デブリン】(??)であることが分かっている。
裏口の奴はだんまり決め込んでいるしバイク三人衆は延々と「セイヤッ! セイヤッ! 金出せセイヤッ!」と繰り返し続けているので詳細は分からん。
とりあえず知り合いの優秀な警部に通報したのでもう少しすれば全員しょっ引かれるとは思うが警部が来てくれるまでの間どうしてこうなったのか俺なりに推理しておこう。
現在注目するべき点は『呼び出したにもかかわらず何故か家にいなかったアガサ博士』、『狙いすましたかのように現れた借金取りは何者なのか』、の二点だ。
まず前者だがアガサ博士が何らかの形で誘拐されたというのが有力な説だ。アガサ博士が黒幕? ハハッ、冗談は顔と読む小説の選び方だけにしてくれよな。アガサ博士が黒幕なわけないだろ? 理由? アガサ博士が黒幕なわけないからに決まってるだろ?
「おい! 早く中の小僧を捕まえナ! あの方がせっかく自宅に小僧をおびき寄せたってのにサツが来ちまって捕まえられませんでしたじゃアタシたち殺されちまうヨ!」
「ヘイ! スンマセン走美そうみの姉御!」
おや、裏口の黒ずくめがようやく口を開いたようだ。名前はソウミか。なんとなくオーラを感じる名前だ。
それはともかくアガサ博士が誘拐され、さらに俺をも捕まえようとしているということはここの脱出に時間はかけていられないな。時間をかければかけるほどアガサ博士が命を落とす可能性は高まっていく。
どうやら警部の到着を待って、という当初の計画は捨て去るべきだろう。さりとてやみくもに脱出してみてもアガサ博士の行方が分からなければ助けに行くこともできない。
アガサ博士の行方の手掛かりを得るにはここで時間をかけて黒ずくめの借金取りから情報を聞き出す必要があるが時間をかければ博士が危ない。彼方立てれば此方が立たぬ。八方ふさがりといったところか。
――そう、普通の人間ならば――
だが俺には、いや、俺たち・・・ には手掛かりを得つつアガサ博士を救出に行く手段が一つだけある!
「オラッ! もうブツは上がってんだぞ! カツドンやるから出てこい!」
それは尋問してる警察のセリフだ。だがもう一度でもその扉を叩いてみろ。その瞬間が貴様らの最期だ。
「開けやがレヴォンペンペンッ!?」
「セヤカテッ!?」
爆音とともに玄関ごと借金取り二人が吹き飛ばされ空を翔る。アガサ博士の開発した腕時計型RPG-7で人間をあの世にシューッ! 超エキサイティングした俺はそのままS-スケートを急旋回させ家の庭を駆け抜ける!
「なんだ!? 玄関で爆発!?」
「小僧が逃げたぞ!」
「犯罪じゃねーか! 警察呼べ警察!」
バイクの男たちが口々に罵声を浴びせてくるが知ったことか。俺の目的はこんなザコ共ではない。俺はS-スケートを飛ばすと裏口へ回る。
「あばよとっつぁ、いやネーチャーン!」
「しまった! あの小僧、S-スケーターか!?」
これ見よがしにソウミの前を突っ切って公道へ脱出する。しばらく奴らが追いつける程度・・・・・・・・・・のスピードで逃走する。
「待てコラ! ぶっ殺すぞ!」
「クソッ! なんて速えスケートだ!」
「道交法違反だぞオイ!」
バイク三人組に追いつかれるが俺は巧みなS-スケート捌きで奴らのタックルを回避する。
「待ちなクソガキ!」
三人の男たちの攻撃を回避し続けていると後ろから声が響く。先ほどのソウミとかいう女の声だ。そしてソウミが乗っているのは……
「ハァ!? 姉御もスケートに乗ってやがる!」
「しかも速え! あの小僧以上のスピードだぜ!」
「来るときはバイクだったのになんでスケート乗ってんだよ!」
ソウミの方が速い? 馬鹿め、あえて追いつける程度のスピードで走ってソウミが追いつくのを待っていたんだよ!
「エコー! シャンディー! ベンザー! あんたらなんて様だ、アタシの顔に泥塗る気?」
なるほど、小物っぽいハゲがエコー、全体的に説明口調なのがシャンディー、どっかずれてるアホがベンザーか。それはともかく舞台は整ったようだぜ!
「まんまとかかったなソウミ! お前から感じるオーラ、お前は間違いなくS-スケーターだと思っていたぜ!」
「なに? それはどういうことサ!」
「ヘッ、分からないのか? S-スケーターが二人集まればやることは一つ!」
「ハッ!? しまった! そういうことか!」
ソウミが気づいたときにはもう遅い! 市内の交通システムは二台のS-スケートを感知してルートの選定を始めている!
『推理が開始されます。一般車両はただちに退避してください。繰り返します』
地面がせり上がり俺たちの戦いのロードを作り上げる!
「これで俺たちの邪魔をするものはS-スケーター以外いない!」
「クソ! 初めからこれが狙いでアタシに追いつかせたのカ!」
「その通りさ! あんたらがどうして俺を狙っているのか、人質はどこにいるのか。さぁソウミさん、俺との推理に付き合ってもらうぜ!」
「ライディング推理! アクセラレーション!」
「俺の推理によればあんたたちの狙いはこの俺。何らかの方法でアガサ博士の家を空にし俺をおびき寄せ包囲した。まんまと逃げられちまったがな。さて、答えてもらおうか! アガサ博士をどこにやった!」
「ハッ、馬鹿かてめえハ! アガサ様こそアタシたちのボス、そしてアンタをはめた張本人サ! あんたたち、やっちまいな!」
「しらばっくれる気か。上等だぜ、必ずおまえたちから俺の推理でアガサ博士の居場所を聞き出してやる!」
俺がそういうと推理開始と言わんばかりにエコーが俺の前を陣取る。そして残りの二人は俺のサイドから挟もうと車体を俺の方へとよせてきた。
「おいおい、そんなヘナチョコテクで俺をブロックするきかい?」
俺はこれまた博士の発明品どこでもビーム射出ベルトのダイヤルを合わせる。一見ただのベルトのバックルからビームが射出され俺をブロックしているエコーは焼き尽くされる!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」
「安心しろ。峰うちだ」
これで一人は始末できた。奴らはおそらくコンビネーションありきの有象無象。一人倒せばどうということはない。
「一人倒せばあとは総崩れ、そう思ってんだロ? 甘いんだヨ!」
「何ィ!?」
そんなはずはない。俺のビームを食らって生きている人間などいるはずがない。
だが俺のそんな考えを打ち砕くように煙の中から現れたのはエコーだった。バイクも無傷だ。
「な、なぜだ!?」
「ヘッ、俺は組織では光速ブロッカーエコーとして有名なんだぜ! あの程度のビームなら見てからブロックできる!」
「チッ、意外な特技だ。小物っぽい割に手が早いぜクソッタレ!」
「さぁて! 挟み撃ちにしてやるぜクソガキ!」
前方をふさがれた俺はじわじわとサイドの二人から距離を詰められていく。
「だがあんたらはバイクだぜ? S-スケートならともかくバイクで接触なんか起こして大丈夫かよ!」
「それは問題ない。前を見ろ」
俺は言われた通り前方を見る。エコーのさらに先には中央分離帯が……
「まさかてめえら!」
「その通り! このまま中央分離帯にぶつけてやるぜ!」
このままではマズイ! 走り続ければ激突は必至、脱出しようといくらスピードを落としても奴らは合わせてスピードを落としていくだろう。停止してしまえば中央分離帯との激突は避けられるかもしれないが走れないS-スケーターに発言権は回ってこない。これではアガサ博士を救うことができない。
俺一人ではこの状況を打破することは出来ない。だが今はライディング推理中。警察だろうと軍隊だろうと国家元首であろうと邪魔することは出来ない。一体どうすればいいんだ……
「ハッ! 所詮は四対一。この国は民主主義サ、正しいといった人間が多い方が真実になるのサ!」
はるか前方を走るソウミがそう言い放つ。この状況はかなりまずい。スピードを増せば推理力はどんどん増す。狩りに俺が方位を脱出できても奴の圧倒的推理力はゆるぎないだろう。初めからソウミは下っ端三人に俺を足止めさせてぶっちぎりの推理力で真実を決めつけるつもりだったのだろう。
もはや勝機はない。真実とは奴らが言うとおり、アガサ博士が犯人だというのか……
(最後まで……希望を捨ててはいけません……)
諦めかけていた俺の頭の中に突然声が響く。強敵であり、ライバルであり、知り合いでもある彼の声だ。
(S-スケーターならば……最後の最後まで走り続ける……それが、私たちの宿命!)
幻聴か……いや、違うこれは!
「ICレコーダーか!」
「その通りですよショウナン君!」
次の瞬間デジカメのフラッシュのような光が周囲を包む! 来るとわかっていた俺以外の四人は目が眩んで前が見えない!
そして側壁を飛び越えて現れたのは渡辺警部だ! 警部はそのままシャンディーを後頭部から襲い掛かる!
「ブラコンッ!」
スピードの乗ったS-スケートをもろに後頭部に食らったシャンディーは奇声を上げバランスを崩しヘルメットが吹き飛ぶ! その隙に俺は弾切れの腕時計型RPG-7に直射日光を反射させ奴の目を焼き尽くす!
渡辺警部はそのまま俺の背後へ着地すると返す刀でベンザーの横に回り込むと高速回転を始める! その回転により竜巻が生まれベンザーははるか上空へと吹き飛ばされる!
「な、なんだこの回転は! うわああー!」
「Pペナルティ-ストリームという技でしてね。まぁこれは私の同僚の技ですが少し貸してもらいました。貴方にはご退場願いますよ」
渡辺警部はそう説明しながらも攻撃の手を緩めない。手に持ったICレコーダーを前方へ素早く投げ飛ばす。飛ばしたICレコーダーは前方を走るエコーの車輪の下に入り込む。
「ツルッツルしてる。これめっちゃツルッツルしてる」
踏みつけたICレコーダーでバランスを崩しスリップしたエコーはそのまま中央分離帯に激突し停止した。俺は無事包囲から脱出し激突を免れる。これでソウミの取り巻きはすべて走れなくなり発言権を失った。
「よく来てくれたぜ渡辺警部」
渡辺警部は俺の横につける。前を見ればソウミはほとんど見えなくなるほどになっていた。推理力もとんでもないパワーになっていることだろう。
「警察として、それ以上にS-スケーターとして、複数でよってたかって推理のごり押しをする輩が許せなかっただけですよショウナンくん。真実というものは信じる者の多寡で左右されるものではありません。真実とは、飽くなきスピードを求め、忌憚なき推理を続けたその先にあるものです」
「ありがとう、警部……忘れていたよ、俺が推理を始めたころの心を。俺の歩いて来た推理など、まだ入口。世界にはまだまだ未知の推理がある。そう、俺には見えているはずだ。果てなく続く推理ロードが。なのに俺はこんなところで立ち止まってなんかいられない!」
「そう、己が推理を、おのれのS-スケートを信じて進むのです! 露払いは済ませました、あとは彼女をあなたの推理で粉砕するだけです!」
「ああ、見ててくれ警部! 俺の推理を! 俺の生きざまを!」
俺のS-スケートがどんどんスピードを増していく。S-スケートはS-スケーターの精神力に応じてパワーを発揮する。今の俺はどんな奴よりもぶっちぎりのスピードで走ることができる!
あっという間にソウミに追いつき並走する。
「ば、馬鹿な! あれだけ突き放していたはず! あんた一体どうやって……」
「よう! ペテン師野郎! てめえのアガサ博士が黒幕なんて戯言、この俺が叩き潰してやるぜ!」
そういうとソウミはにやりと笑う。
「いい度胸サ! あんたに真実ってやつを叩きつけてやるヨ!」
俺たちは200キロを超えた超スピードで道路を走り抜ける。気づけば俺たちはお互い笑いあっていた。S-スケーターとしての本能か、こんな未知の領域での推理に俺たちは心躍らせている。
「行くぜソウミ! 俺たちの推理はこれからだ!」
――ライディング推理! アクセラレーション!――
ご愛読ありがとうございました。
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支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
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