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番外編

プロローグ

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古い畳の匂いを嗅ぎながら目を覚ます午前8時。ちゅんちゅく鳴くスズメも今年の秋にはもっふもふのボールになっていた。

「朝はやっぱりコーヒー……飲もうかな。」

大きく寝転がっていた布団をかき分け立ち上がるとミシミシと畳がしなる。この音案外好きなんだよね、あたし。


キッチンはたかがアパート、されどアパート。大きくも小さくもない。だから案外不便。だって小さいからってコンパクトな収納とか買っても小さすぎて不便だし、なら大丈夫って大きめ買ったら狭くて不便だし。何かとあるんだよね、このキッチン。
そんな愚痴は置いといて…コーヒーを作ってみる。もちろん面倒なのでインスタントにお湯どばー。これでも美味しいんだよ、最近の日本すごい。

朝起きてたった1分でできたコーヒーをすすりながらレースカーテンが揺らめく様子をぼーっと眺めていた。やることはなく、ただ一日を浪費していく。今日はバイトもないのでなおさらだ。
ふとケータイを覗く。検索バーを開いて文字を打ち込む。

"暇つぶし 家の中で稼げる"

都合良すぎるかな。そんな不安をいだきつつも検索エンジンをかける。該当件数はいろいろなワードに引っかかったのか結構あった。それを上から順に虱潰しらみつぶしに流し目で見ていった。家で稼げるバイト…? 1日10万…?都合が良すぎて鳥肌が立ったのでやめた。ケータイを布団の上に投げ出し全身の力を抜く。そしてまぶたが降りた瞬間……。


あたりは闇に包まれていた。あっという間に今日も過ぎてしまった…。メッセージアプリの公式がピコピコうるさかったのでケータイを開くと検索エンジンがかかったままだった。もういいや、そう思って消そうとしたときふとした言葉が目についた。

「小説家………?」

そんな根性もないくせに、そのときばかりは高揚していた。すぐさま申込みを押し設定を終わらせてアカウントを作る。それで宣伝するらしかった。早速書こうかと思ったがこの家は原稿用紙どころか紙なんてものはなかった。書いてみたかったんだけどなぁ。まぁいいや、明日バイトだし早速買ってみるか。今日はもう……寝よう。考えたらすぐ行動、布団に潜り込み肩まで毛布をかぶった。

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