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日常

原稿用紙五枚目

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「うぅ……、さっむ…。」

そう呻きながら薄ら目を開ける。まだ街が目をさましていない午前5時。何故かこんな時間に目覚めたあたしは朝のルーティーンなんてあるわけもなくまた目を瞑った。

きっとまた眠っていたのだろう。ただ先程とは違いずっしり何かが私の上を横たわった。案外重いそれは暖かくて湯たんぽを乗せてる気分だった。あれからまだ10分しか経っていなかったがあたしは起きることにした。ふと、自分の上には何が横たわっているのかと目を開けて確認する。それはもふもふとした……白と黒の……多分猫。野良の方だと思われた。

思われたじゃなくて、これどうしよ。野良猫ってたしかすごい病原菌媒体してるんだよね。引っかかれたら瞬殺とかなんとか。引っかかられるも何もやばい、乗られてるんですけど。とりあえずどいてもらわなきゃ。そう思い無理やり起き上がってみる。

「みゃうっ!!」

濁点をつけたくなるような鳴き声とともに部屋の隅に一目散に逃げていった。

「それはそれで……困るかも。」

とりあえず道を絶たねば。……ってこの猫どこから……。そう思った瞬間朝の冷たい風が襲う。ん?風?そうか、そういうことね。私はカーテンひらめく窓を見た。やはり、窓が空いていた。これは入ってきても仕方ないね。猫さん、ご愁傷さまです。

「ミャャャャー………!!」

あぁ待って待って怒らないでっ!!前言撤回来てくれてありがとうっ!!………なんで感謝してんだよ…、とか思っちゃって冷静になった。とりあえず窓を閉める。これで逃げられない。別に家具に隙間もないので猫が身を隠せるところはせいぜい机の下くらいだった。よし、いける。私は身をかがめて猫にこう語りかけた。

「暴れてもいいけど……原稿用紙とあたしは引っかかないでね…?」
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