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日常

原稿用紙九枚目

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聞きたくなかったがこのタイミングで出るのも馬鹿な話だろう。個室でじっと、自分の噂話を息を潜めて聞かなければならなくなった。

《あの先輩さ、仕事しづらいよね。》

    ……なんてセリフは聞きたくない。

「あの先輩さ、仕事すごいきっちりするよね。」

え?

「あー、わかる!!見様見真似でもめちゃくちゃ上達するやり方だもんね。」

んん??

これってつまり……私褒められてますか?
いや、それはそれで出にくいぞ。さぁどのタイミングで出るか…。これ結局帰ったあとにオフィス戻っても

《あ、あの先輩いたんだ》

ってなっちゃうよね。これは色々と大変な(私の心の中だけ)ことなりそう。

後輩との付き合い方と現状をどうにかする方法を教えてください。とにかく仕事がいつ入るかもわからないので早くオフィスに戻りたい。どうにかしてこの子達に見えないように。

「志村先輩初めてのバイトだよね。何だあんなうまいんだろう…」

片付けはあまり好きな方じゃないけど掃除は好きだからね。他人様の部屋とか廊下とか、合法的に好き勝手キレイにできるなんて最高じゃん。

「ホントだよね、なんかすごいや。」

うん、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しいけどどうしよう。そんなこと思っていたら電話の呼び出しがなった。

「はい、もしもし……____」

なったのは後輩の片割れらしい。その後を追うようにもう一人が出ていった音がしたので一件落着、安心して個室から出れた。
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