京都大学という大学の皮を被ったニート養成所に救いの手を!

taka1gou

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第3話 我が華麗なる食生活

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 極悪への道を歩み始めた僕がまず始めに取りかかったのは、食生活の改善、いや改悪だった。
 今日まで僕は一日三食、バランス良く、好き嫌いせずに、質素な食物を30回きちんと噛んで食していた。いやはや、今思えばなんとつまらない食事だろうか。一日三食はともかくとしても、30回噛むだなんて。そんなの今時、小学生でもやっていないだろう。

 だいたい、30回も口の中で”クチャクチャ”と食物を噛むなんて僕は牛か何かか?
 いや違う。僕は誇り高きチンパンジーである。消化器官を著しく発達させた、崇高なる類人猿なのだ。胃袋に蓄えておいた胃石で、食ったものをすりつぶさなければ消化もままならないような、そんな貧弱な草食獣ではないのだ。30回も噛むなんて無駄な行為だ。断固、食物は噛まずに飲み込むべし。

 まあつまり何が言いたいかというと、これまでの僕の食生活は”健全”で”退屈”で”面倒”という『思春期の子供が大嫌いな要素トップ3』をハットトリックしてしまっていたので、その改革を行ったということだ。

 では改革によって、僕の食生活は一体どう変わったか?
 まず始めに、一日三食だなんてつまらないことは言わず、一日9食とハイパーボリュームアップさせた。驚天動地のインフレーション。きっとお相撲さんよりも多いだろう。まあ関取がどのくらい食べるのかは知らないが。
 そしてさらには、バランスよく食べるなんて事もせず、タンパク質と脂質を重点的に補給し、欲望そのままに、めいっぱい好き嫌いしまくった。早い話が、どんぐりや栗をむさぼる冬眠前のクマのように、貪欲にコレステロール値を稼ぎまくったわけだ。言うまでも無く、僕の腹はぶくぶくと肥え太っていった。

 そんなわけで、僕の食生活はかつての質素でリーズナブルなモノから、カロリーと金額の両方で怒濤の値上がりを見せ、果てしなくブルジョワジーで豪勢、なにより不健康なモノへと変貌した。ついでにお腹も特権階級になっていった。

 二日に一度はステーキを食し、時には一度の食事で炊飯器を空にし、挙げ句の果てにマヨネーズをチューパットの如くに吸い尽くす。
 もちろん、どれも一噛みもせずに全部を丸呑みだ。僕の体内の消化器官は須く、ブラック企業顔負けの酷使と残業を強制された。労働基準監督署から僕の体内に査察が入ってもおかしくはなかっただろう。

 『健康に良い食事を提供してくれるから』と以前は足繁く通っていた学生食堂にもめっきり行かなくなり、近場のファストフード店で欲望のままに暴飲暴食するようになった。当時はよく、マックでこれ見よがしにケンタッキーのフライドチキンを頬張って嫌がらせ、もとい営業妨害をしたものだ。楽しかったなぁ。
……あ、もちろん逆のこともした。カーネルおじさんの前でバーガーを頬張ったりとか。そこはやはり、平等にしなければならない。どちらか一方に肩入れしてると思われて角が立つといけないから。

 そして無論、人間を堕落させる魔の飲料である酒もたしなんだ。いや、たしなんだというのは誤りか。浴びるように飲んだ、酒を。
 喉が渇けば水の代わりに酒を飲み、風呂に入るにあたっては水の代わりに酒で風呂を満たし、皮膚にアルコール成分を浸透させ、エラ呼吸によって酒から酸素を取り込んだ。いつ何時もビール缶と酒瓶を手放さず、隙あらばアルコールを摂取し続けた。

 ああ、なんと素晴らしいことか。人間の三大欲求の一つである食欲を、こんなにも謳歌できるなんて。かつての僕に教えたい。欲望のままに生きるのは、こんなにも素晴らしいことなのだと。欲望バンザイ。暗黒面バンザイ。ダークサイドはこんなにも素晴らしい。

 と、そんな事を考えながら僕はこの生活を二週間にわたって続けた。そしてその結果、3週間目に突入した頃合いで僕は、居酒屋で暴飲暴食の限りを尽くしていた際にぶっ倒れ、意識を失ったのだった。

 病院に担ぎ込まれ、目を覚ました僕に医者は「飲み過ぎですな」と教えてくれた。うん、知ってる。

 正直な話、この『死にかける』という経験は、僕に反省をさせた。
 無論、『悪の道に落ちてしまった』という事に対する反省などでは断じてなく、『悪を極める手段を間違えてしまった』という意味での反省だ。

 確かに、暴飲暴食により欲を満たすというのは悪徳である。が、しかし。そのせいで『死にかける』などというのは、ただの阿呆のすることじゃないか。
 確かに僕は悪の道を究めると誓った。しかし阿呆になりたいわけではない。死にたいわけではない。あくまで僕は悪の道を突き進むことによって自らの欲望を満たし、不健全で幸福な人生を歩みたいだけなのだ。なのになんだこの体たらくは。

 ”幸福になる”という観点から言って、今回の『死にかける』というのはどう考えても、不健全でこそあれど幸福とはとても言えないものだ。だって死にかけてるんだもの。僕は別に死にそうになって喜ぶドMの変態じゃない。
 こんなのは、どこからどう見ても間違っている。

 そう、間違えたのである。僕は悪の道を勘違いしてしまっていた。目の前の欲望に忠実になりすぎるがあまり、巨視的な幸福を見失っていた。もっと計画的に欲望を満たすべきだった。
 そうじゃないか。よくよく考えてみれば、こんな”短絡的な欲望”に身を任せる悪人というのは、どう考えても小悪党。小説や映画なんかでは、主人公の手痛いお仕置きを喰らうのがオチである。考えてみて欲しい。漫画とかで良く現れるデブの敵キャラは大概、悲惨な末路をたどるだろ? スターウォーズのジャバ・ザ・ハット然り、北斗の拳のハート様然り。
……なに? 紅の豚のポルコ・ロッソはどうかって? あんな豚は知らん。
大体あの人は魔法であんな姿になってるだけで、人間だった頃は痩せてたんだからノーカウントだ。

 しかし何はともあれ、こんなのはどう考えても良い作戦とは言えない。こんな『暴飲暴食で欲望を満たそう』なんて考え、酷いオチが目に見える最悪の計略だ。かの高名な軍師、諸葛孔明に聞かせたら、ノータイムでグーパンが飛んでくるような愚策。こんなのを続けるのは不毛と言うほか無い。

 そう考えた僕は、2週間にわたって繰り広げた暴飲暴食をやめることにした。まあ命が掛かっているのだから当然ではあるけれども。
 そうだ。もっと別な方法を探るべきだった。もっと確実に幸せになれる、しかも命の危険が無い方法。それを考えるべきだった。
 しかるに、そんな真理にたどり着いた僕が次に計画したのは、愛に生きることだった。

 愛。それは言うまでも無く、人生を幸福にしてくれるものである。愛さえあれば他に何もいらないだなんてキザなセリフもあるように、この世は愛で出来ている。愛に満ち満ちている。愛こそが世界を救うのである。ラブ&ピースである。
 悲しい話、二十歳になるまで愛なんてものを知らなかった僕は、当時愛に飢えていた。町中を歩くカップルを見れば反吐を吐き、ベンチに仲良く座る男女を見ればそんな彼らの周囲にパンくずを蒔いてナパーム弾鳩の糞の餌食にしてやりたい衝動に駆られ、女性を見る度に愛の告白をガトリングガンの如くに連射したい情動に駆られていた。生物学的分類がメスであるならばなんでもいい、いいやいっそ例えオスでも見た目が良ければそれで良い。そんな危険なレベルの人恋しさに襲われていたのだ。今思えば、何と危険な状態だったことか。

 そしてその結果、僕は愛を求めて、サークルに所属することにした。サークル、又の名を同好会。言わずもがな、大学に属するリア充達の社交場である。『同好の士を集って趣味に没頭する』だなんだと建前では言っているが、その正体は『恋人発掘研究会』だ。
 サークルという建前上、スポーツや文化的活動も”一応”しているが、それは活動のほんの一部であり、大半は飲み会、コンパ、性的活動、肉体結合実験、少子化対策、腰を用いたピストン運動 etc.などをしている(と思われる)。
 なんとふしだらなことだろう。学生の本分を忘れた、悪逆なる行為だ。しかし今の僕からしてみれば、それは望むところだ。

 これまでの20年間、僕は勤勉に誠実に生きてきた。その結果、愛などと言う物は知らずに暮らしてきた。無論、童貞である。けれど、それも今日までだ。
 これからは愛のために生きる。人生を賭けて尽くせるパートナーを見つけ出し、性的行為に没頭し、快楽を追求し、刹那的幸福に溺れるのだ。
 この世には必ず、自分と赤い糸で結ばれた運命の人が居ると言う。ならば僕はその運命の相手をなんとしてでも見つけ出し、まだ顔も知らないその誰かと“赤い糸”で、いや“ふしだらな糸”でネチョネチョの雁字搦めに絡まり合うのだ。R18指定待ったなしである。

 これより先、お子様の視聴はご遠慮くださぁい。とんでもない濡れ場が待っております。
 こうして僕は、生涯の伴侶を見つけるべく、大学のサークルへ加入することを決めたのだった。
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