京都大学という大学の皮を被ったニート養成所に救いの手を!

taka1gou

文字の大きさ
5 / 15

第5話 サークルに入れないとは何事か

しおりを挟む
 問題が起きた。いや、極悪への道を突き進んでいる時点で僕の人生は問題だらけなのだけれど、それよりもっと重大な問題が起きた。

 テニスサークル『Frends』。僕がそれに出会いを求めて加入しようと決意したことはすでに述べたとおりである。そしてそのために僕は、秋の新会員募集を行っていたFrendsの練習場にお邪魔した。そこまでは良かった。では何が問題だったのか?
 居たのである。僕と同じく『不健全な理由』から、新たにサークルに加入しようとする不届き者共が。それも大勢。

 テニスコートへと到着すると、僕がそこで見たのは、50人あまりのコートに群がる男共だった。話を聞くとどうやら全員『Frends』に入会するためにやって来た者達らしい。
 正直言って、これには相当驚いた。確かにFrendsは、京都大学と同志社大学にまたがる巨大サークルだ。だがしかし、それでもFrendsはあくまで『ただのテニスサークル』でしかなく、その構成員は現在100名にも満たない。
 にもかかわらず。何を間違ったか、現在この100余名しか居ないテニスサークルに、50名もの人間が新規参入しようとしていたのだ。それも男ばかりが。明らかに異常である。裏に何らかの理由があると見て間違いない。
 実際、これが異常でも何でも無く、ただの必然であったのだということを僕が知るのには、そう時間はかからなかった。

 50名あまりの男共がFrendsに加入しようとしていた理由。それは一人の例外も無く、須く全員同じであった。
 そう、彼らは全員が、ただ一人の女性を目当てに……つまりは、その女とお近づきになり、あわよくば性的行為に及ぶべく、Frendsに加入しようとしていたのである。

 時は遡ること半年前。つまり、僕が世界に絶望し、極悪への道を転落し始めた頃にまで戻る。
 僕が暴飲暴食の限りを尽くし、その結果病院へとかつぎ込まれていた頃合い。ちょうどその時期に、テニスサークルFrendsに、ある一人の女が入会した。

 女の名は上野琴音。同志社大学に入学したばかりの、なりたてほやほや一回生だ。なんでも高校生の頃は数多くのテニス大会で入賞したような凄腕プレイヤーであったらしく、その筋ではかなり有名な人物であるらしい。そんな彼女が、このテニスサークルFrendsに入会したのだ。

 では、それの何が問題だったのか。
 何もかもが問題だったのである。

 彼女は美しかった。いや、あまりにも美しすぎた。その美貌は天地を揺るがし、男共の視線を一手に引き受け、周囲の他の女をかすませる、楊貴妃やクレオパトラも斯くたるやというような、凄まじきものだった。彼女を一目見た男はそれから三日三晩彼女を夢に見ては恍惚にうなされ、起きている間も目前に彼女の幻覚を具現化させ、女ですらも、その美しさに嫉妬を通り越して尊敬の念を抱く。
 まさしく神の創り出した芸術品。完全無欠の美しさ。セル第三形態。それ程の美貌を彼女は有していた。
 ……いや、さすがにこれは誇張が過ぎるだろうが、しかしそんな誇張もやむなしと言うほどに、彼女は素晴らしき美貌を兼ね備えていた。

 もうおわかりだろう。その結果が、現在である。彼女の美しさに魅了された男共が、彼女にお近づきになるために、よりにもよって僕がこれから加入しようと計画していたFrendsに、同じく加入しようとしていたのである。

 全くもって迷惑極まりない話だ。上野琴音とお近づきになるためだけに、テニスなんかには微塵も興味が無いくせに、テニスサークルであるFrendsに加入しようしているとは。真面目にテニスをやっている者も居る中で、お前達は恥ずかしくないのか? 恥を知れ愚か者共め。お前達は全員、母親の胎内から人生をやり直すべきだ。
 しかし、これでは彼らのせいで僕まで、上野琴音目当てにサークル加入をしようとしていると思われてしまうじゃないか。風評被害も良いところだ。僕は別に上野琴音目的ではないのに。あくまで僕は出会い目的。赤い糸、いや“ふしだらな糸”を紡ぐためにここに来ているのだ。断じて、上野琴音が目的ではない。もう一度言う。断じて上野琴音が目的ではない。ただ、ほんのちょっとだけ『Frendsに超絶美人がいるらしい』と噂に聞いただけだ。

 というか、本当にここにいる男共全員を入会させてしまうのだろうか? 明らかに、サークルのキャパシティーを越えていると思うのだけれども。
 少なくとも、ここの全員が加入してしまったら、サークルに居る半分は球拾いしか出来ないだろう。なんのためにテニスサークルに居るのかわからない事態になりそうだ。もっとも、上野琴音が目的の男共にしてみれば、それはそれで別に構わないだろうが。……と、そんなことを考えていた僕の予感は、見事に的中した。

「数が多すぎるのでこれから、入会試験をさせて貰います」

 自分目当てに集まった男共の黄色い、いや”真っ黒で薄汚くドスの利いた”歓声を浴びながら彼らの目の前に立つと、上野琴音はそう告げた。
 やはりというか、全員を入会させるわけにはいかなかったらしい。いくら会員が増えればその分会費が多く手に入るとは言っても、さすがに全員入会させるのはマズいと考えたのだろう。当然の判断だ。

「今から私と一セット試合をして貰います。それであまりにも酷いようなら、入会をお断りさせて頂くので、頑張ってください」

 彼女はそう言うと、彼女目当てに集まった50人あまりの男共の選別を始めた。
 そして……誰も居なくなった。僕も含めて。

 そもそも、勝てる道理など無かったのだ。テニスなどしたこともないのに、ただ女目当てに集まった僕たちが、高校から真剣にテニスを続けてきた彼女に、一点たりとも取れるはずなど無かった。
 上野琴音は圧倒的だった。圧倒的なまでに、文字通り男を寄せ付けない覇気を放ちながら、彼女に挑む男共を、次々と粉砕、玉砕、大喝采していった。
 彼女がサーブを放てば、それは美しき二次曲線を描きつつ、対戦相手の顔面に直撃し、彼女が自らに向かってくるボールを打ち返せば、その弾丸は真っ直ぐに、対戦相手の金的に激突した。
 文字通り、彼女に挑むという行為は、玉と共に散る“玉砕”だった。”平成狸合戦”ならぬ”令和アホ猿チンパンジー合戦”だった。

 結果。入会試験という名の処刑が行われた後に残っていたのは、股ぐらを押さえる憐れな男共の屍だけだった。もちろんのこと、その中には僕も含まれていたのだが。

 最後。今季の入会者がゼロ人である事を認めた上野琴音は、耐えがたい局部からの痛みに悶える僕たちに、蔑むようにこう吐き捨てた。

「アンタ達は一生、自分の右手で我慢していなさい」

凄まじき名誉毀損である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...