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「マジで返してくれんだな」
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「で、気になってんだ」
初めて来た地下にあるBAR。
天馬の友達が働いてるって事で連れて来てもらった。
あまり広くない店内は落ち着いてて、大人な雰囲気。
半個室みたいなボックス席に通してくれた。
そこで、俺はさっきコインランドリーで会ったあの男の事を天馬に話した。
「…いやぁ…まぁ…泣いてたし?」
男がさ…外でそんな泣くような事、あんま無いじゃん…。
だから余計気になったんだ。
知らない奴だけど…。
「でも、家も結構近くだったりして」
「あー…それは分かんねぇけど」
確かに、俺が行った時、車もバイクも自転車も何も停まって無かった。
だから、きっとあの男も徒歩だったんだろう。
そうなると、家から近いんだろうなって推測出来る。
「次会ったら、100円返して来んのかな」
「そりゃ、返して来るんじゃねぇ?もういいって言ったらすごい勢いでダメッって言われたからさ」
天馬は可笑しそうに笑う。
「あはは、ちゃんとしてんね、そいつ。良い奴なんじゃね?」
「100円だよ?」
「金には変わりねぇじゃん」
「そうだけどさ」
「100円あったら、駄菓子屋で何個買えると思ってんだよぉ」
軽く頭を小突かれる。
駄菓子屋で何を爆買いするつもりだよ、お前は。
ふと、泣いてた横顔が脳裏に浮かんだ。
「何で泣いてたんだろうな」
それだけが気になる。
知らない奴だけど、泣いてるの見たら……え、ってなるよ。
「今度会ったら聞いてみ?」
…いや…聞けないだろ、それは…。
「お前、ところでどうなってんの?」
話題を変えたのは俺。
「何が?」
「奏太だよ」
「あ~…」
あからさまにとぼけてんな。
奏太というのは、一緒に働いてる後輩スタッフの沢渡 奏太(さわたり かなた)。
天馬は先週、仕事終わりに奏太から告白されたらしい。
…好き、だと。
相手は、男。
奏太は小柄でどっちかって言うと女の子っぽい感じはあるけど、まさか天馬を好きだとは思って無かったから、俺はそれを聞いた時は正直驚いた。
天馬は、何となく奏太が自分を好きだって気付いてたらしい。
俺達は、高校は男子校だった。
他の男子校がどうかは知らないが、俺らの高校ではそういう、男同士で付き合うとか……ぶっちゃけ日常茶飯事的にあって…。
天馬も、高校時代は彼女的な男の恋人が居た時もある。
相手が男とか女とかは関係ない。
好きになるかどうか。
高校時代、天馬はそう言っていた。
「奏太、そのまま放置出来ないだろ?」
仕事仲間でもあるんだし。
「放置するつもりは無いよ。…でもさ、好きかどうかがまだ分かんねぇ。確かに、奏太は可愛い後輩だけどさ…だからってすぐに答えは出せないじゃん。……奏太には悪いと思ってるけど……考える時間貰った」
……ちゃんと考えてんだ。
ま、天馬はそういう奴だ。
だから、親友やってんだ。
「何か……お前モテんの分かるわ」
これは、俺の本心だ。
言っとくけど……俺も、モテない訳では無い。
いや、むしろモテる。
自分で言ってしまって何だけど…。
一応……BIRTHではトップだと言われてるし…。
でも、天馬は俺よりもきっと包容力がある。
俺も結局、天馬がいるからまともにやれてるって思うとこあるし。
BIRTHで働く前に1年くらい付き合ってた人が居た。
俺より2つ年上の、清楚なイメージの人。
お互いに気に入って、何となく付き合うようになったけど、付き合ってみたら俺はけっこう本気になって、このまま同棲とかしても良いかなぐらいに思ってたんだけど……年上の彼女にしてみたら俺はきっと頼りなくて物足りなくなったんだろう。
職場の先輩と良い感じになったらしくて、結局振られた。
その時は、けっこう墜ちた。
一緒に住んでも良いって思ってたくらい本気で好きだったから、職場の男に取られる感じで終わったからさすがに凹んで………何か投げやりになって……その後は、寄って来る女の子と次々に遊びまくってた。
どうでも良かった。
好きなら辛いけど、どうでも良ければ、去ってっても悲しくも何とも無かった。
そんな俺を見て……天馬がすげぇ怒った事がある。
今まで見た事ないような顔で俺を壁に押し付けて「自分を安売りすんな」と言った。
俺は…天馬のその一言で、目が覚めた。
女の子をとっかえ引っかえして遊んでたけど……結局自分の価値を下げてんだって気付かされた…。
その日から、俺は一切女遊びを止めた。
その言葉は今でも頭に残ってる。
俺の事を、親友として大事に思ってくれてるんだってすごく伝わったから。
日が変わるまで天馬と飲んで、別れた。
家の近くのコンビニでタクシーを降りる。
明日も時間があったらBIRTHへ行くつもり。
桐ケ谷さんには色々とお世話になってるし、案外細かい物が多くて備品撤去が中々捗らない。
コンビニでパンと牛乳を買い、家に向かう。
途中、ふと、あのコインランドリーを思い出して、わざわざ遠回りになる方の道を選んで、何となく前を通ってみた。
この時間、利用する人は少なく、中には誰も居ない。
もちろん、あいつの姿も無い。
1人座って泣いてたらどうしよう…とか、ちょっと心の片隅で思ってたけど……姿の無い事に少しホッとした。
~~~~~~~~
朝…と言ってももう11時が来るけど……
昨日の酒のせいもあってか、すごくゆっくり寝てた。
ポキポキと至る所の関節を鳴らしながら起き上がり、一度伸びをしてカーテンに近付く。
シャッと軽快な音を立ててカーテンを勢い良く開ける。
今日は、晴れ。
久々の晴れだ。
清々しい気持ちと共に、今日はコインランドリーに行く必要は無いな……などと、無意識に考えてる自分が居て、密かに驚く。
部屋はマンションの5階。
景色が良いのよ、と言って、この部屋を気に入って独断で決めたらしい母から、高1の終わりにカギを受け取った。
俺も、このベランダからの景色はこの部屋に住んだ時から気に入っていて、ベランダに出てボーッと景色を眺めてる事もよくある。
特に夜が良い。
夜景は、ほんとに日本かと思うくらいキレイだ。
5階ってだけで、空気も少し澄んでる気がするし。
BGM代わりにテレビを点けると、お天気のお姉さんが週間天気予報を伝えてる。
『今日から5日間くらいの間に一気に秋めいて来ます。朝晩がだいぶ冷え込んで来ますので厚手の服や布団で体調を崩さない様に注意して下さい』
寒くなるんだ…。
寒いのイヤだな……。
暑い方がまだマシ派だからな、俺…。
昨日買ったパンと牛乳で、何ご飯なのか分からない食事を済ませ、身支度を整え動きやすい服で家を出た。
BIRTH
天気予報のお姉さんの言ってる事はほんと当たってて、昼間も、体感する風が少し冷たくなった気がする。
「ぉいーーっす」
ぬるい挨拶をしながら店内へ。
「おー、侑利、毎日悪いな」
桐ケ谷さんがキッチンカウンターの備品を纏めながら俺を振り返る。
「出だしめっちゃ遅いですけどね」
笑いながら、俺も桐ケ谷さんの隣へ。
「今日で何とか全撤去したいんだよなぁ」
「あー、いけるでしょ?」
「お、やる気だね」
「若いんで」
「人をおっさんみたいに言うな」
頭をバシッと叩かれる。
桐ケ谷さんは35歳。
既婚。
美人の奥さんと可愛い保育園の男の子が居る。
35歳って言ったら、だいぶ歳取ってるイメージあったけど、桐ケ谷さんは、こんな35歳なら俺も早くなってみたいって思わせてくれるような人。
そもそも、35歳の若さでこれだけの規模の店経営してて、20人近く居るスタッフを使って結果出してるってとこがほんとに尊敬に値する。
~~~~~~~~
時間はもう夕方5時近く。
作業はほとんど終了で、最後の店内掃き掃除やってるとこ。
疲れたけど、これで来週から工事に予定通り取り掛かれるみたいだ。
「久我さん」
呼ばれて振り返ると、奏太が立っていた。
「おぉ、奏太、どした?」
掃き掃除の手を止めず、聞く。
「今日、天馬さん、来て無いんですね」
奏太から天馬の名前を聞いて、思わず手が止まる。
「あぁ、今日、あいつ、どうしても除けらんない用事あるっつってたわ」
「あ、そうなんですか」
ちょっとホッとしたような顔。
「どした?」
「えっ、……あ、いえ……別に…」
何か言いたそうな口ぶり。
「奏太、」
「僕、…」
被った。
少し気まずそうに奏太が俯く。
「あの……天馬さんから何か聞いてますか?」
「え…」
「僕…告白したんです……天馬さんに」
「あぁ、…」
俺も何か気まずいんですけど…
「天馬さん…何か……言ってませんでしたか…?」
探るように聞いて来る。
「何か、って?」
俺も探るように聞く。
「…僕の事……避けてる、とか…」
それだけ言うと、奏太は黙ってしまった。
告白した事で、天馬に避けられてると思ってんだ。
確かに、時間貰ったって言ってたし…返事はまだ少し先になりそうって言ってたから…。
そりゃ、待ってる側にしてみたら……辛いのも分かる。
奏太はもう、泣きそうな表情をしていて…俺は、どうしたものかと少し焦る。
「あのさ……天馬は奏太の事、避けたりなんかしてねぇよ?時間くれって言われてんだろ?奏太が好きだって言ってくれた事、真剣に考えたいから時間貰ったって言ってたよ。あいつ、案外真面目だからさ、好きです、はいオッケーってなんねぇんだよ。奏太も待ってるのしんどいと思うけどさ、もうちょっとだけ考えさせてやってくれないかな……」
俺の言葉に奏太は俯いてた顔を上げる。
大きな目にいっぱい溜まってた涙が、とうとう零れ落ちた。
あ……思い出した。
あいつも、泣いてたんだった…。
あの、コインランドリーの男…。
泣いてる横顔を覚えてしまってる。
「…だけど、あんまり長い事待たせんな、って俺が言ってやるから」
奏太の頭を撫でてやる。
天馬の事、すげぇ好きなんだ…。
そんなに人を好きになれて……羨ましいよ、俺は。
「久我さん……」
奏太はそれだけ言うと、ボロボロと泣き出した。
「あーー!!侑利が奏太泣かしてるっ!!」
「ほんとだっ!!侑利っ、何やったんだよっ!!」
宮永 巴流(みやなが はる)と上杉 大和(うえすぎ やまと)だ。
2人とも俺や天馬と同じくオープニングスタッフ。
天馬、巴流、大和、それに俺の4人が、BIRTHでは一番看板張ってる面子。
同期だし、それぞれに認め合ってるから仲も良い。
「いや、泣かしてないし」
ボソッと反論する。
「僕が勝手に泣いてるんですっ、久我さんに相談があって…」
奏太がフォローしてくれてる…。
「侑利に相談して、何か解決すんの?」
「巴流、お前何気に俺に対して失礼だよ」
「奏太、辛い事あったら俺に言いな?」
「おい、大和、お前クールに下心出すな」
いつものふざけた会話が始まって、ふと見ると奏太の涙はもう止まっていた。
「…ありがとうございます、ちょっとだけ楽になりました」
奏太が不安そうな顔で、そう言った。
だけど……きっと、天馬の答えが出るまでは楽になるなんて事無いんだろうな…
「言った事は、ほんとだからな。また、いつでも相談して来いよ」
「…はいっ」
少し嬉しそうな表情をしてくれて、俺も少し救われた。
俺に相談して、ほんとに何も解決しなかったら、巴流の思うツボだ。
奏太は、俺にお辞儀をすると最後の作業の続きに戻った。
「お前、めっちゃカッコつけてんじゃん」
「何がだよ」
「いつでも相談して来いよ、…とか」
「似てねぇし」
俺の口調を真似て言ったであろう巴流に思いっきりデコピンしてやった。
「いてぇ!!!」
おでこ押さえて蹲ってる。
あいつの涙は……何だったんだろう…。
今度もし会ったら……天馬の言う通り……何で泣いてたか聞いてみようか……
聞いたところで、ほんとに何も解決しないかも知れないけど…。
~~~~~~~~
BIRTHは今日から工事着工。
俺らが手伝いに行く事も無くなり、本格的な休みに入った。
未だ3週間以上も休みがある…。
「っすー」
「おー」
夜、天馬が来た。
今日はあのコインランドリーに行く。
と、言うのも、ほんとに肌寒くなって来て朝方とかちょっと身震いする程で……とにかく布団を変えようと思ってて。
少し厚手の布団とシーツを出したけど、夏の間使ってた布団を片付けるのに、さすがに布団は家の洗濯機ではちょっと洗い辛いな、と。
そうなるとやっぱ、コインランドリーになる。
天馬と飯の約束してたから、家に車で迎えに寄って貰って布団ごと乗り込んで、コインランドリー経由にして貰う事にした。
ただ、最近は晴れ続きで……残念ながら、どこの家でも、洗濯物が乾かないなんて事はまず無いだろう。
コインランドリーを利用する人も……まぁ、多分、居ないだろうと予想される。
片隅にはずっと……あの男の泣き顔と笑った顔が交互にある……
何でそんなに覚えてるのか……自分でも謎だけど……
「ちょっと行って来るわ」
そう言って、布団を抱えて天馬の車を降りる。
到着したコインランドリー。
予想通り、誰の姿も無い。
店内に入ると先客も居ないようで、どの機械も動いていない。
洗濯から乾燥まで一気に出来るタイプの物を選んで布団を押し込む。
1時間以上かかるじゃん…
終了時間を確認し出入り口に向かおうとして、思わず立ち止まった。
「やっぱり!良かったぁー!」
アイツだ。
勢いよく走り込んで来た。
柔らかそうな焦げ茶の髪が、走ったせいで乱れたのを適当に直しながら嬉しそうな顔して言う。
「お、おぅ」
小さく、挨拶とも何とも取れない声を返す。
「あっちから見えて…もしかしてそうかなぁって…それで急いで来たんですっ」
丁寧に説明してくれる。
手に持った紙袋には洗濯物が入ってるんだろうけど……やっぱり、今日も洗濯物は少ない。
しかも、紙袋に入れてる辺りから推測するに、濡れてない衣服なんだろう。
やっぱり、洗濯からすんだな……とか、どうでも良い事を考える。
「あの、これ」
男が財布から100円玉を取り出し、俺の前に手を差し出して来た。
「ありがとうございました」
笑顔で言われたけど、その手は今日も少し震えてて……ヤバい薬でもやってんのかとちょっと不安になる。
俺がそっと手を出すと、手の平に100円玉をポンと置いた。
「マジで返してくれんだな」
律儀なのか何なのか……ちょっと可笑しくなって俺がフッと笑うと、つられた様に男も少し恥ずかしそうに笑う。
「じゃ、確かに」
100円玉を自分の財布に仕舞う。
男は嬉しそうにそれを見届けると、自分の洗濯物を機械に入れ始めた。
こうなると最早何も言う事は無く……ここに居る用事も無い。
「じゃあ、な」
男の背中に向かって一応一声かける。
そのまま出て行くのも何か、って思ってさ…。
「あ……はい」
想像以上に小さな声で男が言う。
寂しそうな……そんな声。
何となく、それが気になって振り返った時………今までずっと聞きたかった事を…質問する気になった。
「この前さぁ、」
俺からの言葉に驚いたように男は俺に向き直る。
「…泣いてなかった?」
「え…」
男の顔が少し曇った気がした。
「いや…見間違いかも知れないけどさ…そんな風に見えたから」
多分…見間違えて無いけど。
「……バレてました?」
ハハ、と小さく笑う。
やっぱり泣いてたんだ。
「何かあったの?…泣くほど辛い事」
ストレート過ぎたかも知れないと、言った後で思ったけど……一番気になってた事だし…
「…はい…ちょっと…」
ややあって、男がボソリと言う。
何かあったんだ。
「でも…もう、大丈夫ですっ」
にっこりと笑う。
俺に天馬の事を相談して来た時の奏太の表情と似てる、って思った。
無理してる感じ。
だけど、本人が大丈夫って言ってる以上、俺はもう何も聞く事が無い。
「…そっか、良かったな」
「は、はいっ」
「…じゃあ、ツレ待ってるし行くわ」
親指で天馬の車を指差して言う。
「あ、はい」
「じゃあな」
何かモヤッとしてるけど…聞きたい事は聞けたし…
「あのっ、」
出入り口を出ようとした瞬間、また、呼び止められた。
「え?」
振り返って見た男の顔は……さっき見せた笑顔とは随分違ってて……少し俯いてるその目に涙が浮かんでるのが分かる。
「ごめんなさい……嘘です」
「…何が?」
その顔を覗き込む。
「…全然大丈夫じゃなくて……まだ…泣いてます」
ドキ…と、心臓が一度大きく鳴った。
顔を上げた男の目から、あの時の奏太と同じ様に、涙が一筋零れ落ちた。
男はハッとしたように指でその滴を拭い、直ぐにもう一度笑って見せた。
何故かとても健気に見えて……何とも言えない感情が沸いた。
知らない男相手に、どんだけ情が沸いてんだって自分で突っ込みたくなったけど……
目の前のその男の表情に…俺は、確かにグラついてしまった。
「また会ったら……話しかけても良いですか?」
しばらく流れてた沈黙を破ったのは男の方だった。
「…あぁ、良いよ。顔見知りなんだし」
断る理由も無いし…
「ありがとうございます」
今度は嬉しそうな顔で言う。
忙しい奴だな…
「友達…待たせてしまってすみません」
「あぁ、大丈夫」
「どこか行くんですか?」
「あー、アレ回してる間、飯行って来る」
さっき放り込んだ布団をチラッと見やって言う。
「気をつけて」
「おー、サンキュ、じゃな」
「じゃあ」
俺はそう言って天馬の車に向かう。
男は小さく俺に手を振った後、またどこに行く感じでもなく店内のイスに座った。
その姿をもう一度チラッと眺めて、車に乗り込んだ。
「あの子?」
天馬が興味津々な顔で乗り込むなり聞いて来た。
「あぁ、そう」
「へぇ~…キレイな子じゃん」
「キレイって、男だし」
まぁ、確かに……BIRTHに居たら一発でトップ持ってかれそうなぐらいイケメンだし…
俺よりは少し背も低いけど、でも、172~3はあるだろう。
小顔だしスラッとしてて手足も長いし……
って、俺も意外と観察してんじゃんか……
「行って良いの?」
「え?」
天馬の言葉に少し驚いた。
行って良いの、ってどういう質問だよ。
「良いよ、何で?」
「や、あの子の事気になってますって顔してるからさ」
どういう意味だよ…
聞く事聞いたし、もう気にしてねぇよ…………多分…
「別に良いよ」
「ふ~ん…じゃ、行くわ」
天馬が車を発進させた。
1人になったらアイツは……また、泣くんだろうか……
どこか引っかかってるけど、何が引っかかってるのか分からない。
ただ、俺の頭の片隅にはまた、やっぱりアイツが居る。
初めて来た地下にあるBAR。
天馬の友達が働いてるって事で連れて来てもらった。
あまり広くない店内は落ち着いてて、大人な雰囲気。
半個室みたいなボックス席に通してくれた。
そこで、俺はさっきコインランドリーで会ったあの男の事を天馬に話した。
「…いやぁ…まぁ…泣いてたし?」
男がさ…外でそんな泣くような事、あんま無いじゃん…。
だから余計気になったんだ。
知らない奴だけど…。
「でも、家も結構近くだったりして」
「あー…それは分かんねぇけど」
確かに、俺が行った時、車もバイクも自転車も何も停まって無かった。
だから、きっとあの男も徒歩だったんだろう。
そうなると、家から近いんだろうなって推測出来る。
「次会ったら、100円返して来んのかな」
「そりゃ、返して来るんじゃねぇ?もういいって言ったらすごい勢いでダメッって言われたからさ」
天馬は可笑しそうに笑う。
「あはは、ちゃんとしてんね、そいつ。良い奴なんじゃね?」
「100円だよ?」
「金には変わりねぇじゃん」
「そうだけどさ」
「100円あったら、駄菓子屋で何個買えると思ってんだよぉ」
軽く頭を小突かれる。
駄菓子屋で何を爆買いするつもりだよ、お前は。
ふと、泣いてた横顔が脳裏に浮かんだ。
「何で泣いてたんだろうな」
それだけが気になる。
知らない奴だけど、泣いてるの見たら……え、ってなるよ。
「今度会ったら聞いてみ?」
…いや…聞けないだろ、それは…。
「お前、ところでどうなってんの?」
話題を変えたのは俺。
「何が?」
「奏太だよ」
「あ~…」
あからさまにとぼけてんな。
奏太というのは、一緒に働いてる後輩スタッフの沢渡 奏太(さわたり かなた)。
天馬は先週、仕事終わりに奏太から告白されたらしい。
…好き、だと。
相手は、男。
奏太は小柄でどっちかって言うと女の子っぽい感じはあるけど、まさか天馬を好きだとは思って無かったから、俺はそれを聞いた時は正直驚いた。
天馬は、何となく奏太が自分を好きだって気付いてたらしい。
俺達は、高校は男子校だった。
他の男子校がどうかは知らないが、俺らの高校ではそういう、男同士で付き合うとか……ぶっちゃけ日常茶飯事的にあって…。
天馬も、高校時代は彼女的な男の恋人が居た時もある。
相手が男とか女とかは関係ない。
好きになるかどうか。
高校時代、天馬はそう言っていた。
「奏太、そのまま放置出来ないだろ?」
仕事仲間でもあるんだし。
「放置するつもりは無いよ。…でもさ、好きかどうかがまだ分かんねぇ。確かに、奏太は可愛い後輩だけどさ…だからってすぐに答えは出せないじゃん。……奏太には悪いと思ってるけど……考える時間貰った」
……ちゃんと考えてんだ。
ま、天馬はそういう奴だ。
だから、親友やってんだ。
「何か……お前モテんの分かるわ」
これは、俺の本心だ。
言っとくけど……俺も、モテない訳では無い。
いや、むしろモテる。
自分で言ってしまって何だけど…。
一応……BIRTHではトップだと言われてるし…。
でも、天馬は俺よりもきっと包容力がある。
俺も結局、天馬がいるからまともにやれてるって思うとこあるし。
BIRTHで働く前に1年くらい付き合ってた人が居た。
俺より2つ年上の、清楚なイメージの人。
お互いに気に入って、何となく付き合うようになったけど、付き合ってみたら俺はけっこう本気になって、このまま同棲とかしても良いかなぐらいに思ってたんだけど……年上の彼女にしてみたら俺はきっと頼りなくて物足りなくなったんだろう。
職場の先輩と良い感じになったらしくて、結局振られた。
その時は、けっこう墜ちた。
一緒に住んでも良いって思ってたくらい本気で好きだったから、職場の男に取られる感じで終わったからさすがに凹んで………何か投げやりになって……その後は、寄って来る女の子と次々に遊びまくってた。
どうでも良かった。
好きなら辛いけど、どうでも良ければ、去ってっても悲しくも何とも無かった。
そんな俺を見て……天馬がすげぇ怒った事がある。
今まで見た事ないような顔で俺を壁に押し付けて「自分を安売りすんな」と言った。
俺は…天馬のその一言で、目が覚めた。
女の子をとっかえ引っかえして遊んでたけど……結局自分の価値を下げてんだって気付かされた…。
その日から、俺は一切女遊びを止めた。
その言葉は今でも頭に残ってる。
俺の事を、親友として大事に思ってくれてるんだってすごく伝わったから。
日が変わるまで天馬と飲んで、別れた。
家の近くのコンビニでタクシーを降りる。
明日も時間があったらBIRTHへ行くつもり。
桐ケ谷さんには色々とお世話になってるし、案外細かい物が多くて備品撤去が中々捗らない。
コンビニでパンと牛乳を買い、家に向かう。
途中、ふと、あのコインランドリーを思い出して、わざわざ遠回りになる方の道を選んで、何となく前を通ってみた。
この時間、利用する人は少なく、中には誰も居ない。
もちろん、あいつの姿も無い。
1人座って泣いてたらどうしよう…とか、ちょっと心の片隅で思ってたけど……姿の無い事に少しホッとした。
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朝…と言ってももう11時が来るけど……
昨日の酒のせいもあってか、すごくゆっくり寝てた。
ポキポキと至る所の関節を鳴らしながら起き上がり、一度伸びをしてカーテンに近付く。
シャッと軽快な音を立ててカーテンを勢い良く開ける。
今日は、晴れ。
久々の晴れだ。
清々しい気持ちと共に、今日はコインランドリーに行く必要は無いな……などと、無意識に考えてる自分が居て、密かに驚く。
部屋はマンションの5階。
景色が良いのよ、と言って、この部屋を気に入って独断で決めたらしい母から、高1の終わりにカギを受け取った。
俺も、このベランダからの景色はこの部屋に住んだ時から気に入っていて、ベランダに出てボーッと景色を眺めてる事もよくある。
特に夜が良い。
夜景は、ほんとに日本かと思うくらいキレイだ。
5階ってだけで、空気も少し澄んでる気がするし。
BGM代わりにテレビを点けると、お天気のお姉さんが週間天気予報を伝えてる。
『今日から5日間くらいの間に一気に秋めいて来ます。朝晩がだいぶ冷え込んで来ますので厚手の服や布団で体調を崩さない様に注意して下さい』
寒くなるんだ…。
寒いのイヤだな……。
暑い方がまだマシ派だからな、俺…。
昨日買ったパンと牛乳で、何ご飯なのか分からない食事を済ませ、身支度を整え動きやすい服で家を出た。
BIRTH
天気予報のお姉さんの言ってる事はほんと当たってて、昼間も、体感する風が少し冷たくなった気がする。
「ぉいーーっす」
ぬるい挨拶をしながら店内へ。
「おー、侑利、毎日悪いな」
桐ケ谷さんがキッチンカウンターの備品を纏めながら俺を振り返る。
「出だしめっちゃ遅いですけどね」
笑いながら、俺も桐ケ谷さんの隣へ。
「今日で何とか全撤去したいんだよなぁ」
「あー、いけるでしょ?」
「お、やる気だね」
「若いんで」
「人をおっさんみたいに言うな」
頭をバシッと叩かれる。
桐ケ谷さんは35歳。
既婚。
美人の奥さんと可愛い保育園の男の子が居る。
35歳って言ったら、だいぶ歳取ってるイメージあったけど、桐ケ谷さんは、こんな35歳なら俺も早くなってみたいって思わせてくれるような人。
そもそも、35歳の若さでこれだけの規模の店経営してて、20人近く居るスタッフを使って結果出してるってとこがほんとに尊敬に値する。
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時間はもう夕方5時近く。
作業はほとんど終了で、最後の店内掃き掃除やってるとこ。
疲れたけど、これで来週から工事に予定通り取り掛かれるみたいだ。
「久我さん」
呼ばれて振り返ると、奏太が立っていた。
「おぉ、奏太、どした?」
掃き掃除の手を止めず、聞く。
「今日、天馬さん、来て無いんですね」
奏太から天馬の名前を聞いて、思わず手が止まる。
「あぁ、今日、あいつ、どうしても除けらんない用事あるっつってたわ」
「あ、そうなんですか」
ちょっとホッとしたような顔。
「どした?」
「えっ、……あ、いえ……別に…」
何か言いたそうな口ぶり。
「奏太、」
「僕、…」
被った。
少し気まずそうに奏太が俯く。
「あの……天馬さんから何か聞いてますか?」
「え…」
「僕…告白したんです……天馬さんに」
「あぁ、…」
俺も何か気まずいんですけど…
「天馬さん…何か……言ってませんでしたか…?」
探るように聞いて来る。
「何か、って?」
俺も探るように聞く。
「…僕の事……避けてる、とか…」
それだけ言うと、奏太は黙ってしまった。
告白した事で、天馬に避けられてると思ってんだ。
確かに、時間貰ったって言ってたし…返事はまだ少し先になりそうって言ってたから…。
そりゃ、待ってる側にしてみたら……辛いのも分かる。
奏太はもう、泣きそうな表情をしていて…俺は、どうしたものかと少し焦る。
「あのさ……天馬は奏太の事、避けたりなんかしてねぇよ?時間くれって言われてんだろ?奏太が好きだって言ってくれた事、真剣に考えたいから時間貰ったって言ってたよ。あいつ、案外真面目だからさ、好きです、はいオッケーってなんねぇんだよ。奏太も待ってるのしんどいと思うけどさ、もうちょっとだけ考えさせてやってくれないかな……」
俺の言葉に奏太は俯いてた顔を上げる。
大きな目にいっぱい溜まってた涙が、とうとう零れ落ちた。
あ……思い出した。
あいつも、泣いてたんだった…。
あの、コインランドリーの男…。
泣いてる横顔を覚えてしまってる。
「…だけど、あんまり長い事待たせんな、って俺が言ってやるから」
奏太の頭を撫でてやる。
天馬の事、すげぇ好きなんだ…。
そんなに人を好きになれて……羨ましいよ、俺は。
「久我さん……」
奏太はそれだけ言うと、ボロボロと泣き出した。
「あーー!!侑利が奏太泣かしてるっ!!」
「ほんとだっ!!侑利っ、何やったんだよっ!!」
宮永 巴流(みやなが はる)と上杉 大和(うえすぎ やまと)だ。
2人とも俺や天馬と同じくオープニングスタッフ。
天馬、巴流、大和、それに俺の4人が、BIRTHでは一番看板張ってる面子。
同期だし、それぞれに認め合ってるから仲も良い。
「いや、泣かしてないし」
ボソッと反論する。
「僕が勝手に泣いてるんですっ、久我さんに相談があって…」
奏太がフォローしてくれてる…。
「侑利に相談して、何か解決すんの?」
「巴流、お前何気に俺に対して失礼だよ」
「奏太、辛い事あったら俺に言いな?」
「おい、大和、お前クールに下心出すな」
いつものふざけた会話が始まって、ふと見ると奏太の涙はもう止まっていた。
「…ありがとうございます、ちょっとだけ楽になりました」
奏太が不安そうな顔で、そう言った。
だけど……きっと、天馬の答えが出るまでは楽になるなんて事無いんだろうな…
「言った事は、ほんとだからな。また、いつでも相談して来いよ」
「…はいっ」
少し嬉しそうな表情をしてくれて、俺も少し救われた。
俺に相談して、ほんとに何も解決しなかったら、巴流の思うツボだ。
奏太は、俺にお辞儀をすると最後の作業の続きに戻った。
「お前、めっちゃカッコつけてんじゃん」
「何がだよ」
「いつでも相談して来いよ、…とか」
「似てねぇし」
俺の口調を真似て言ったであろう巴流に思いっきりデコピンしてやった。
「いてぇ!!!」
おでこ押さえて蹲ってる。
あいつの涙は……何だったんだろう…。
今度もし会ったら……天馬の言う通り……何で泣いてたか聞いてみようか……
聞いたところで、ほんとに何も解決しないかも知れないけど…。
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BIRTHは今日から工事着工。
俺らが手伝いに行く事も無くなり、本格的な休みに入った。
未だ3週間以上も休みがある…。
「っすー」
「おー」
夜、天馬が来た。
今日はあのコインランドリーに行く。
と、言うのも、ほんとに肌寒くなって来て朝方とかちょっと身震いする程で……とにかく布団を変えようと思ってて。
少し厚手の布団とシーツを出したけど、夏の間使ってた布団を片付けるのに、さすがに布団は家の洗濯機ではちょっと洗い辛いな、と。
そうなるとやっぱ、コインランドリーになる。
天馬と飯の約束してたから、家に車で迎えに寄って貰って布団ごと乗り込んで、コインランドリー経由にして貰う事にした。
ただ、最近は晴れ続きで……残念ながら、どこの家でも、洗濯物が乾かないなんて事はまず無いだろう。
コインランドリーを利用する人も……まぁ、多分、居ないだろうと予想される。
片隅にはずっと……あの男の泣き顔と笑った顔が交互にある……
何でそんなに覚えてるのか……自分でも謎だけど……
「ちょっと行って来るわ」
そう言って、布団を抱えて天馬の車を降りる。
到着したコインランドリー。
予想通り、誰の姿も無い。
店内に入ると先客も居ないようで、どの機械も動いていない。
洗濯から乾燥まで一気に出来るタイプの物を選んで布団を押し込む。
1時間以上かかるじゃん…
終了時間を確認し出入り口に向かおうとして、思わず立ち止まった。
「やっぱり!良かったぁー!」
アイツだ。
勢いよく走り込んで来た。
柔らかそうな焦げ茶の髪が、走ったせいで乱れたのを適当に直しながら嬉しそうな顔して言う。
「お、おぅ」
小さく、挨拶とも何とも取れない声を返す。
「あっちから見えて…もしかしてそうかなぁって…それで急いで来たんですっ」
丁寧に説明してくれる。
手に持った紙袋には洗濯物が入ってるんだろうけど……やっぱり、今日も洗濯物は少ない。
しかも、紙袋に入れてる辺りから推測するに、濡れてない衣服なんだろう。
やっぱり、洗濯からすんだな……とか、どうでも良い事を考える。
「あの、これ」
男が財布から100円玉を取り出し、俺の前に手を差し出して来た。
「ありがとうございました」
笑顔で言われたけど、その手は今日も少し震えてて……ヤバい薬でもやってんのかとちょっと不安になる。
俺がそっと手を出すと、手の平に100円玉をポンと置いた。
「マジで返してくれんだな」
律儀なのか何なのか……ちょっと可笑しくなって俺がフッと笑うと、つられた様に男も少し恥ずかしそうに笑う。
「じゃ、確かに」
100円玉を自分の財布に仕舞う。
男は嬉しそうにそれを見届けると、自分の洗濯物を機械に入れ始めた。
こうなると最早何も言う事は無く……ここに居る用事も無い。
「じゃあ、な」
男の背中に向かって一応一声かける。
そのまま出て行くのも何か、って思ってさ…。
「あ……はい」
想像以上に小さな声で男が言う。
寂しそうな……そんな声。
何となく、それが気になって振り返った時………今までずっと聞きたかった事を…質問する気になった。
「この前さぁ、」
俺からの言葉に驚いたように男は俺に向き直る。
「…泣いてなかった?」
「え…」
男の顔が少し曇った気がした。
「いや…見間違いかも知れないけどさ…そんな風に見えたから」
多分…見間違えて無いけど。
「……バレてました?」
ハハ、と小さく笑う。
やっぱり泣いてたんだ。
「何かあったの?…泣くほど辛い事」
ストレート過ぎたかも知れないと、言った後で思ったけど……一番気になってた事だし…
「…はい…ちょっと…」
ややあって、男がボソリと言う。
何かあったんだ。
「でも…もう、大丈夫ですっ」
にっこりと笑う。
俺に天馬の事を相談して来た時の奏太の表情と似てる、って思った。
無理してる感じ。
だけど、本人が大丈夫って言ってる以上、俺はもう何も聞く事が無い。
「…そっか、良かったな」
「は、はいっ」
「…じゃあ、ツレ待ってるし行くわ」
親指で天馬の車を指差して言う。
「あ、はい」
「じゃあな」
何かモヤッとしてるけど…聞きたい事は聞けたし…
「あのっ、」
出入り口を出ようとした瞬間、また、呼び止められた。
「え?」
振り返って見た男の顔は……さっき見せた笑顔とは随分違ってて……少し俯いてるその目に涙が浮かんでるのが分かる。
「ごめんなさい……嘘です」
「…何が?」
その顔を覗き込む。
「…全然大丈夫じゃなくて……まだ…泣いてます」
ドキ…と、心臓が一度大きく鳴った。
顔を上げた男の目から、あの時の奏太と同じ様に、涙が一筋零れ落ちた。
男はハッとしたように指でその滴を拭い、直ぐにもう一度笑って見せた。
何故かとても健気に見えて……何とも言えない感情が沸いた。
知らない男相手に、どんだけ情が沸いてんだって自分で突っ込みたくなったけど……
目の前のその男の表情に…俺は、確かにグラついてしまった。
「また会ったら……話しかけても良いですか?」
しばらく流れてた沈黙を破ったのは男の方だった。
「…あぁ、良いよ。顔見知りなんだし」
断る理由も無いし…
「ありがとうございます」
今度は嬉しそうな顔で言う。
忙しい奴だな…
「友達…待たせてしまってすみません」
「あぁ、大丈夫」
「どこか行くんですか?」
「あー、アレ回してる間、飯行って来る」
さっき放り込んだ布団をチラッと見やって言う。
「気をつけて」
「おー、サンキュ、じゃな」
「じゃあ」
俺はそう言って天馬の車に向かう。
男は小さく俺に手を振った後、またどこに行く感じでもなく店内のイスに座った。
その姿をもう一度チラッと眺めて、車に乗り込んだ。
「あの子?」
天馬が興味津々な顔で乗り込むなり聞いて来た。
「あぁ、そう」
「へぇ~…キレイな子じゃん」
「キレイって、男だし」
まぁ、確かに……BIRTHに居たら一発でトップ持ってかれそうなぐらいイケメンだし…
俺よりは少し背も低いけど、でも、172~3はあるだろう。
小顔だしスラッとしてて手足も長いし……
って、俺も意外と観察してんじゃんか……
「行って良いの?」
「え?」
天馬の言葉に少し驚いた。
行って良いの、ってどういう質問だよ。
「良いよ、何で?」
「や、あの子の事気になってますって顔してるからさ」
どういう意味だよ…
聞く事聞いたし、もう気にしてねぇよ…………多分…
「別に良いよ」
「ふ~ん…じゃ、行くわ」
天馬が車を発進させた。
1人になったらアイツは……また、泣くんだろうか……
どこか引っかかってるけど、何が引っかかってるのか分からない。
ただ、俺の頭の片隅にはまた、やっぱりアイツが居る。
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