異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第八章 さけたなか 湯けむりはれる 魔界旅

第124話 さすりゅー

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 ということで彼女と話してみると、ほとんどの魔族は人間族と会ったことはないけど、興味を持っている魔族は結構多いようだった。

 けど、人間界で使われている言葉は魔界ではほとんど使われておらず、翻訳の魔法も魔族にとっては難しい部類の魔法のようで、人間族との会話することは難しいようだ。
 
 そのため、今日俺たちを見かけた時も、話しかけたいと思ったけど結局眺めている事しかできなかったよー、みたいな話を仲間たちで話していたみたいだ。

 この街を案内してもらっている時、なんとなく遠巻きに視線を感じていた。
 その理由は、俺たち人間族が珍しいからかと思っていたけど、それに加えて話しかけてみたいと思っていたからなんだな。

 話しかけて来なかったのは、水魔皇であるレイに遠慮したから、とかも考えたけど、言葉が話せなかったからってことか。

 それと、彼女は水属性の魔族で、火属性の魔法は苦手で服を乾燥させる魔法を使うと服を燃しちゃうことがある、みたいな話も聞いた。

 それに加えて、

「この服、すぐに乾くから便利なんだけど、あんまり種類がないの。前にね、ここに出入りしている商人に相談したことがあるの。そしたら、知り合いの職人に聞いてくれたんだけど、特殊な構造の服だから難しい、見た目は何とかできても水中での行動に邪魔になりそう、って言われちゃったみたい」

 なんて、種族特有の悩みもあるみたいだった。
 ……無理かもしれないけど、今度ディニエルに聞いてみようかな?

 まあ多分、俺が何もしなくてもリューナが話に行きそうだけど。
 リューナのことだし、今もこの会話を聞いているだろうからな、うん。

 他にも、レイが酔っぱらってこの街を歌いながら闊歩しているのを見たとか、一度水路に落ちたことがあると噂で聞いた、なんて話も聞けた。
 ……魔皇のそういう話も、普通に言っちゃうんだな。
 
 他にも、もっと話をしたそうだったけど、仕事の途中だったことを思い出した彼女は慌てて仕事場に帰っていった。

 初めて、魔皇とかではない普通の魔族と話したけど、人間族とそんなに違う印象はなかったな。
 ……妖精族は、例外枠でいいよな、うん。
 
 ああでも、オブラートに包むことなくストレートに言ったり、レイの失敗談を遠慮なく喋ったりしていたな。
 しかも、それが当たり前って感じだったし。

 多分だけど、多くの魔族は、裏表があんまりなかったり、思ったことを遠慮せず言う、って感じなのかな?
 ホムラたちは、魔皇という立場だから控えめだけど、やっぱりその傾向はある気がする。
 ……突然転移したりとかな。

 まあ俺個人としては、その方が話しやすくていいと思う。
 お互い、遠慮なく話せるのは楽だもんな。



 ほどよく酔いも醒めてきたので、シーラたちのいる建物に戻ることにした。

 扉を開けると、すぐにリューナと目が合った?
 さっきの話、聞いてた? みたいにアイコンタクトを送るとうなずいたので、やっぱり聞いていたんだろう。
 流石はリューナだ。

「おー、戻ったか! んじゃさっそく、ハクトに色々と聞いてみるかねぇ」

「え、えっと。……お手柔らかにお願いします」

 何となく凄みを感じて、思わず敬語になってしまった。

「うん? ……まあ、いいか。それよりも、あたいがお前さんに聞きたいのはな、異世界の酒についてなのさ。人間界の酒も気になるけど、それ以上に異世界の酒ってのは未知数で興味深いからねぇ。せっかくの機会だし、色々と聞かせてもらいたいのさ」

 あー。
 ……凄みを感じた理由はそれか。

「それはもちろん。けど、さっきも言った通り、お酒はそこまで飲まないから、そんなに詳しくは知らないけどな」

「もちろん承知の上さぁ。曖昧でも何でもいいから、ちょっとしたことでも話してほしいねぇ。酒造りに繋がる何かがないかは、あたいが勝手に考えるからさ」

 そういうことなので、俺が今まで飲んだお酒や、あちこちで見かけたお酒を思い出してみた。
 ……あ、これとか、異世界にはないんじゃないかな?

「俺が飲んでびっくりしたのは炭酸の日本酒だな。日本酒ってもっと上級者向けかと思っていたんだけど、フルーティで飲みやすくておいしかったよ」

 俺が成人した時に、じいちゃんが買ってきてくれたんだよな。
 じいちゃんは日本酒が好きみたいで、俺にも好きになってもらいたいと言って、飲みやすい日本酒を選んでくれたんだったな。

 ……ただ、その次におすすめされた日本酒がかなり辛口で、やっぱり俺にはまだ早いかも、ってなったんだよなぁ。

「へー、そんな日本酒もあるのね。日本酒に炭酸って、どうやって造るのかしら?」

 アキナがそう言って興味を示したし、やっぱりこっちの世界にはないんだな、なんて思った矢先

「あー。すまんけど、それなら既にあたいのとこで造ってるぜ。ちょっと待ってな」

 と、一度奥に引っ込み、ガラス瓶を持って戻って来た。

「まあこれは、偶然の産物ではあるんだけどね。……昔、ここでワイン造りに挑戦したことがあってなぁ。とはいえ、見よう見まねで造ったから、泡立ったワインになっちまったんだ。酒は酒だ、ってことで一応飲んでみたんだが、やっぱり味は不味かったなぁ。けどな、これで味がよくなればいい酒ができるんじゃいか、って思ったのさ」

 それからシーラは、実際にワインを造っている魔族のところで製法を教わり、自分なりに工夫して炭酸入りのワインを完成させたらしい。
 そして、その製法を他の酒にも使えないか、ってことで色々と試した結果、炭酸入りの日本酒の製法も編み出したみたいだ。

「あの時は楽しかったなぁ」

「そうね。色々なお酒と、それに合う料理を探ったりして、かなり充実していたわ」

 なんて、シーラとレイでしみじみとうなずき合っていた。
 ……最初の印象では、ただの飲兵衛かと思ったけど、新しいお酒を生み出したりしているシーラは、素直にすごいなと思えた。

「それじゃ、ちょっと飲んでみな」

 と、それをコップに注いで、俺とアキナに渡してくれた。

「わぁ! 本当にワインが泡立っているわね。それに、こっちは少し濁っているけど、日本酒みたいね」

「ああ。日本酒の方は、炭酸入りを造ろうとすると、どうしてもそうなっちまうんだよねぇ。けど、味は格別さぁ」

 そういう種類かと思っていたけど、炭酸入りで造ろうとすると濁ってしまうんだな。
 ……けど確か、前に俺が飲んだ奴は透明だったと思うんだよな。

 とりあえず一口飲んでみると、まろかやで包み込むような口当たりで、なんというか高級なお酒な感じがした。
 隣で飲んだアキナは、いつもの日本酒と全然違うわ! なんて、驚いた表情をしながら言っていた。
 
 ……うーん。
 これもすごくおいしいんだけど、やっぱり前に飲んだやつとは味が違う気がするな。

「このお酒、すっごくおいしかったよ。ただ、俺が前に飲んだやつとは見た目も味も全然違ったと思う。見た目は透き通っていたし、味も、なんというか甘酸っぱくてフルーティな感じがしたんだよな」

「……うーん。そいつは確かに、あたいのとこで造ってるやつとは全然違うねぇ。……後で炭酸水で割る? いや、それだと味が薄まっちまうよなぁ。……なあ、ハクト。他にも、製法の違いとか、何か思いつかねぇかい?」

 うーむ。
 日本酒の造り方ですらあんまり詳しくはないからなぁ。

 ……あ、もしかして。

「おそらくだけど、俺が前に飲んだお酒は、完成した後で炭酸を入れたやつかもしれないな」

 確か、飲料に二酸化炭素を注入する、炭酸水メーカーっていうのがあったよな。
 あの方法であれば、透明な炭酸入りの日本酒が造れるだろうな。

「完成した後でだって!? そいつはどうやってやってるんだい!? ハクト、詳しく、詳しく教えてくれねぇか!」

 うおっ!
 急にシーラが眼前まで迫って来た。

 ……ちょっと、お酒臭いかも。
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