異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第五章 切望を 叶えた者と 挑む者

第85話 家族

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 まずは属性を聞いてみるか。
 今までも、それを取っ掛かりにして考えたからな。

「名前を考える前に、まずは属性を聞いてもいいか? 魔皇たちの名前を考える時も、それを元にして名前を決めたんだ」

「そうだったのですね。その、私の属性なのですが、どれにも当てはまらないのです。強いて言えば、火と水、でしょうか」

 そういえば前にホムラから聞いたな。
 魔族にはたまに複数属性持ちがいて、さらにその属性が融合した魔族もいるって。
 それと、そんな魔族は希少だとも。

 それで、火と水の魔法を組み合わせた魔法は確か……、

「つまり、氷の魔法が得意ってことでいいのか? そういった魔族もいるって、前にホムラから聞いたんだ」

「そうです。ただ、アオイさんに色々と調べていただいたのですが、あまり詳しいことはわかりませんでした」

 それも、ホムラが言っていたっけ。
 
 つまり彼女は、魔物から魔族になった存在に加え、特殊な属性を持ってるってことだよな。
 ……彼女はアオイについてあまり言わなかったけど、おそらく当時は時々暴走していたんじゃないかな。
 
 それにしても、特殊属性でドラゴンにもなれる龍人族、ってすごくかっこいいな。
 なんだか俺の中二心が刺激されてくる。
 
 ……はっ、いかん。
 思わず、あれな感じの名前を考えそうになっていた。

 気を取り直して、氷に関する名前を考えてみるか。

「うーん。氷、雪、ひょう、うーん」

 ユキ、なら名前としては変じゃないけど、彼女のイメージには合わないんだよな。
 ……他の要素で考えてみるか?
 
 ドラゴン、はどちらかというと、かっこいい名前ばかり思い浮かぶな。
 あと裁縫セット。

「ドラゴン、龍……。”りゅう”、いや、”リュー”っていうのは悪くないか? ……けど、ちょっと安直すぎるよな」

「……あの。一生懸命考えてくださっているところ申し訳ないのですが、先ほどの”リュー”という名前は何故安直なのでしょうか? 言葉の響きがよく、名前としても悪くないと思うのですが」

 あ、考えていたことが口に出ていたか。

「えっとな。”リュー”、正確には”りゅう”っていうのは、俺のいた世界で龍、つまりドラゴンって意味なんだ。だから、名前と言うより種族名で呼んでる感じになっちゃうかなって」

 というか、異世界だと龍とドラゴンって何か違いがあるのかな?
 ……いつも勝手に翻訳されてるから気にしてなかったけど、この世界で長く生活していく予定だし、その辺りも追々おいおい確かめてみようかな。

「そうなのですね。……けれど、この世界でそれがわかる方はほとんどいませんし、大丈夫だと思うのですが」

「せっかく名前を考えるんだし、もう少し悩ませてもらうよ。……とりあえず、”リュー”は候補の一つにしておこう」

 まあ、気にしすぎといえはそうなのかもしれないけど、彼女が初めて他人から与えられる名前なんだ。
 もっと考えるに越したことはない、と思うんだ。

 ……そういう意味では、やっぱり魔皇たちの名前はもうちょっと悩めばよかったか?
 いや、本人たちは気に入ってくれてるし、そもそも悩んだからいい名前が出るとは限らないか。



 それから数分悩んで、一つの名前を提案した。

「……”リューナ”、っていうのはどうだ? ”リュー”っていう言葉も入ってるし、どうだろう?」

「素敵な名前だと思います。……リューナ。響きもよいですね。それでなのですが、名前の由来を伺ってもよいでしょうか?」

「それはもちろん。とはいっても、ちょっと複雑な感じなんだけどな。まず俺のいた世界には色々な神話があるんだが、とある神話に”ブリューナク”っていう名前の槍が出てくるんだ。そこから一部の文字を取って、リューナって名前を思いついだんだ。それでな……」

 ますは、俺が覚えている範囲でブリューナクという槍について説明した。
 元々の神話にブリューナクという名前は記載されておらず、俺のいた国で出版された本にのみその名前が確認されたこと、そもそもこの槍の設定自体が創作かもしれない、等の説明もしておいた。

 それと、俺のいた世界では有名な、カードを用いたテーブルゲームにおいて、その名前を持つ氷の龍がいる、ということも説明しておいた。
 ……こっちは、上手く伝わったかわからないけど。

「……なるほど。元となった槍の名前は元々存在せず、いつのまにか出現したようなのですね。……元々存在しなかった魔族である龍人族と、少しだけ似ているかもしれないですね。それと、”ブリューナク”という名前の響きも素晴らしいと思います。このリューナという名前がますます気に入りました。ハクト様、ありがとうございます」

 うん。
 すごく悩んだけど、喜んでもらえたようで良かった。

 ……それと、龍人族と似てるかもしれないってのは全然意識してなかったな。
 どちらかというと、某カードゲームのイメージから名前を考えたし。

「オレもいい名前だと思うぜ! そんじゃ、リューナ。これからもよろしくな!」

「はい、ホムラさん。ハクト様もよろしくお願いいたします」

「よろしく、リューナ」



 リューナの名前も決まり、雇う条件を決めることにした。

 期間はとりあえず半年で、延長や変更も可能。
 仕事内容は、魔皇の城にある俺の部屋の定期的な管理と、試練関係の手伝いだ。
 試練関係は事前に予定を確認してから、ってことに俺が決めた。

 リューナは、いつでも呼んでくださって大丈夫です、なんて言っていたけど、リューナにも色々と予定があるはずだしな。
 ……いや、ヒカリ以外の魔皇は結構ヒマみたいだし、リューナもそうなのだろうか。

 その他、何かやってほしいことが出てきたら、その時々でリューナと相談することにした。
 ……こっちも、リューナが何でも言ってください、なんて安請け合いしてる感じだったので、俺の方から提案した。

 そして最後に、給料を決めようとしたのだが……

「こちらからのお願いですし、必要はありません」

 と拒否されてしまった。

 流石にそれは駄目だ、きちんとした給料を払う、なんて俺が言っても、リューナは首を縦には振らなかった。

 「とりあえず、アオイにでも相談するか? どっちも譲るつもりはなさそうだしな」

 とホムラが提案してくれたので、アオイに連絡してみた。

 その結果、まだ全員が魔皇の城に残っていたみたいだったので、せっかくだしと城に戻ることにした。

 リューナの名前とか、色々と報告することもあるしな。



 アオイたちに相談した結果、次のように決定した。

 俺の知識を元にして作成されたアオイの魔道具が売れた時、俺に利益が発生する。
 その利益をリューナが受け取ることになった。

 もちろん、これではリューナは納得しない。
 なので、リューナが俺の手伝いをする時に金銭が必要になれば、そこから捻出ねんしゅつするということになった。

 これなら、俺としてはリューナに給料を渡していることになるし、リューナとしては俺のお金を管理している感じになるので、一応これで決着とすることにした。

 城に来たということで、俺の部屋のレイアウトを加工魔法で作ってもらうことにした。

 色々と悩みつつ、この辺に荷物置き場、こっちに休憩する場所、みたいな感じでリューナに伝えた。

 我ながら適当な伝え方だな、なんて思ったにも関わらず、リューナはすぐに作業に取り掛かり、ほんの十分程度で終えていた。
 それも、壁だけでなく机などのレイアウトも込みでだ。

 ……やっぱりすごいな。

 リューナが作業してくれた部屋を見渡していると、ハヤテが、ご飯だよ~、と呼びに来た。
 ……俺が部屋の配置を悩んでいる間に、結構な時間が経っていたみたいだ。

 何かを企んでいるような視線で俺の部屋を見ていたハヤテをうながし、昼食の時も使用した部屋へと案内してもらった。
 ……まだ城の構造がどうなっているのか、全然覚えられてないです、はい。

 部屋へとたどり着くと、そこには様々な料理が並んでいた。
 最初に俺がこの城に招待されたときよりも、なんとなく豪華な気がするな。
 しかも、その時よりも時間がかかってない気がする。
 
「おう、来たか! 今日はリューナの名前が決まった記念と、ハクトに雇われることになった記念ってことで、ヒカリたちがお祝いの夕食をつくってくれたぜ!」

「……私も、いっぱい手伝った」

「元々使う予定の材料をメインに使用しましたので、そこまで豪華にできず残念です……」

 今日はお祝いってことで、豪華な食事を用意したってことか。
 それと、メイのおかげで色々と時間が短縮できたって感じかな?
 それに、元々夕食を作る予定、いや途中まで作っていたのかもしれない。

 ヒカリは申し訳なさそうにしているが、そんな状況で急遽メニューを変更したなら、この内容でも十分、いやそれ以上だな。

 それに何より、リューナがとっても嬉しそうにしているしな。



 食事中は、リューナが話題の中心となっていた。
 
 さっきホムラが話していたみたいに、魔皇たち皆の妹と言う感じの扱いだった。
 名前を貰ってよかったね~! とか、仮とはいえようやく仕える人が見つかって良かったよ、って感じで、皆が自分のことみたいに喜んでいた。

 なんというか、皆が家族みたいな感じだな。
 ……家族、か。

「どうした、ハクト? お前も今日の主役なんだから、こっちにきて話そうぜ!」

 そんな様子を見ていたら、ホムラに引っ張られて皆の中心に連れて来られてしまった。

 するこ今度は話の標的が俺になり、リューナに俺について色々と話された。
 ……ちょっとやらかしたこととかも含めて。

 そんなこんなで、今日は魔皇たち家族の一員になれた気がして、とても嬉しかった。

 ……うん。
 今日集まった皆の為にも試練を絶対に達成しなくちゃと、改めて強く思った。

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これにて第五章完結です! ここまでお読みいただきありがとうございました!
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