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第九十話 傷物(29)
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「おはよう、大丈夫そうだね」
少女がお爺さんの手を引いて入ってきた。昨夜は気付かなかったが、彼はかなりの長身らしい。ただ手を繋ぐだけで、少女の手が上を向いてしまっていた。
「すみません!倒れてしまってたみたいで、ご迷惑おかけしてしまいました」
「先生、もう大丈夫?あのね、お姉ちゃんがずっと先生のそばに居たんだよ!」
「ちょっと!余計なこと言わないでよ!」
「余計なことじゃないもん!私見ちゃったもん!お姉ちゃんが先生のほっぺにキスしてるの!」
「ちょ!て、て、店長!違います!そういう意味じゃないですからね!」
顔を真っ赤にして、慌てて握手を振り解いて、両手を振り回す後輩が、何だか可愛くて仕方なかった。
「はは、まあ仲が良いのは何よりだからね」
「もう、お爺様まで……」
「ふふ、だからお爺様だなんて呼ばないで良いよ、もう私も定年だけど、ただの爺さんだよ」
「そんなことないですよ!名医なんですから自身持って下さい」
人間不信の後輩が、人懐っこく彼と話しているのが不思議だった。そして、握手を解かれた手が冷たく感じていた。
「ふふ、私が寝ている間に、随分仲良くなれたのね」
「そうなんですよ!お爺様、未だに現役のカウンセラーなんですよ!色々話聞いてもらって、すっかり元気になれました!本当に名医ですよ!」
とても可愛いとは言えない、薄いピンク色のジャージを着ながら、嬉しそうに話す彼女は、前髪なんて不揃いのままでも十分に可愛く見えた。
少女がお爺さんの手を引いて入ってきた。昨夜は気付かなかったが、彼はかなりの長身らしい。ただ手を繋ぐだけで、少女の手が上を向いてしまっていた。
「すみません!倒れてしまってたみたいで、ご迷惑おかけしてしまいました」
「先生、もう大丈夫?あのね、お姉ちゃんがずっと先生のそばに居たんだよ!」
「ちょっと!余計なこと言わないでよ!」
「余計なことじゃないもん!私見ちゃったもん!お姉ちゃんが先生のほっぺにキスしてるの!」
「ちょ!て、て、店長!違います!そういう意味じゃないですからね!」
顔を真っ赤にして、慌てて握手を振り解いて、両手を振り回す後輩が、何だか可愛くて仕方なかった。
「はは、まあ仲が良いのは何よりだからね」
「もう、お爺様まで……」
「ふふ、だからお爺様だなんて呼ばないで良いよ、もう私も定年だけど、ただの爺さんだよ」
「そんなことないですよ!名医なんですから自身持って下さい」
人間不信の後輩が、人懐っこく彼と話しているのが不思議だった。そして、握手を解かれた手が冷たく感じていた。
「ふふ、私が寝ている間に、随分仲良くなれたのね」
「そうなんですよ!お爺様、未だに現役のカウンセラーなんですよ!色々話聞いてもらって、すっかり元気になれました!本当に名医ですよ!」
とても可愛いとは言えない、薄いピンク色のジャージを着ながら、嬉しそうに話す彼女は、前髪なんて不揃いのままでも十分に可愛く見えた。
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