1 / 1
死を運ぶエスカレーター
しおりを挟む
(あれ?この人、さっきも私の前に居なかったっけ……)
エスカレーターで男女が上に流されていた。
二人ともスーツ姿で、典型的な就職活動中といった感じの風貌。後ろにいる女は黒いポニーテールに、幼さの残るぽってりとした顔だ。不思議そうに前にいる男を観察していた。
鏡の壁越しに見える男の横顔は、黒い眼鏡と白いマスクでよく見えない。女が、この男にエスカレーターで出会うのは、本日四回目だった。いずれも気付いたら前にいるのだ。
女は男が気になって、後を付けることにした。ここは大型のホームセンターだった。八階建てで雑貨も扱うが、男は工具の揃う六階で、刃の輝く両刃のノコギリを見始めた。
(ノコギリ……?日曜大工?しなそうなインテリの感じだけど)
男が、ふと、振り返り、女に気付いた。うつろ気な目が合う。
「お!お前!どうして生きてるんだ!」
「え?」
男が走って売り場を抜けた。落ちるようにエスカレーターを下っていく。
(あー、そっか。私、あいつに殺されたんだった。そっかそっか……)
男がエスカレーターを駆け下りている。
「忘れ物よ」
男が背後からの声に振り返ると、首に両刃のノコギリが水平に飛んできた。恐ろしい速度の回転は、男の首半分を切り裂いて止まった。
「ふふ、これで買う必要無くなったわね」
人々の悲鳴で騒然とするエスカレーターの鏡に、女だけが映っていなかった。
エスカレーターで男女が上に流されていた。
二人ともスーツ姿で、典型的な就職活動中といった感じの風貌。後ろにいる女は黒いポニーテールに、幼さの残るぽってりとした顔だ。不思議そうに前にいる男を観察していた。
鏡の壁越しに見える男の横顔は、黒い眼鏡と白いマスクでよく見えない。女が、この男にエスカレーターで出会うのは、本日四回目だった。いずれも気付いたら前にいるのだ。
女は男が気になって、後を付けることにした。ここは大型のホームセンターだった。八階建てで雑貨も扱うが、男は工具の揃う六階で、刃の輝く両刃のノコギリを見始めた。
(ノコギリ……?日曜大工?しなそうなインテリの感じだけど)
男が、ふと、振り返り、女に気付いた。うつろ気な目が合う。
「お!お前!どうして生きてるんだ!」
「え?」
男が走って売り場を抜けた。落ちるようにエスカレーターを下っていく。
(あー、そっか。私、あいつに殺されたんだった。そっかそっか……)
男がエスカレーターを駆け下りている。
「忘れ物よ」
男が背後からの声に振り返ると、首に両刃のノコギリが水平に飛んできた。恐ろしい速度の回転は、男の首半分を切り裂いて止まった。
「ふふ、これで買う必要無くなったわね」
人々の悲鳴で騒然とするエスカレーターの鏡に、女だけが映っていなかった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる