21 / 26
第3章 黒龍討伐
第21話 冒険者の街 グラナート
しおりを挟む王都を発って三日。ようやく辿り着いた冒険者の街――グラナート。
木造の堅牢な門がそびえ立ち、周囲は人と荷車で賑わっていた。
「止まれ。入街にはギルドカードの提示が必要だ」
門兵が槍を突き出す。
ソウマが即座に前へ出て、ドヤ顔で胸を張った。
「へへっ、俺は勇者だぜ? 勇者にカードなんていらねぇだろ!」
兵士の眉がぴくりと動く。
「……勇者? 先日もう来たぞ。銀髪の男だったが」
「なにぃっ!? あの銀髪野郎、ユウマか! ちくしょう! 俺だって勇者だ! 俺だって神託を受けたんだ!」
ソウマは声を張り上げ、周囲の注目を一気に集めてしまう。
「……ほんと、恥ずかしい」
ルミナスが深いため息をつき、前へ出る。
「すみません、このバカは放っておいて。ちゃんと証明はあるわ」
懐から取り出したのは銀色のカード。王都の紋章が刻まれ、光を反射してきらめいていた。
「これは……勇者の証!」
門兵の目が大きく見開かれる。
「王から正式に渡されたものよ。最初から私に任せておけばよかったのに」
ルミナスは冷ややかに吐き捨てる。
ソウマは「ぐぬぬ……」と唸ったが、すぐに胸を張り直した。
「ま、まぁ! 俺が勇者だからこそカードもあるってわけだな!」
「……黙れ」
ルミナスの鋭い一言にソウマは肩をすくめた。
「はい...すみません...」
リアナは「やっぱりルミナスさんって頼りになります!」と目を輝かせていた。
門番が「ギルドカードあった方がいいから作っといた方がいいぞ」と教えてくれた。
ルミナスは頷いた。
「そうね。銀のカード出したら騒ぎになりかねないわ。冒険者ギルドに向かいましょ」
(問題を起こさないと気がすまないのかソウマは……)
⸻
門をくぐると、そこは冒険者ばかりだった。
大通りには露店が並び、剣や防具が山積みにされている。
食堂からは肉を焼く匂い、酒場からは下品な笑い声。
「おおおっ! すっげぇ! 漢って感じだな!」
ソウマが目を輝かせ、いきなり広場の中央に飛び出した。
「聞けぇい! 俺こそ勇者ソウマだ! 黒龍退治もこの俺に任せろ!」
拳を突き上げ、盛大に宣言する。
通りすがりの冒険者が肩を揺らしながら笑った。
「また“自称勇者”かよ!」
「最近多すぎるんだよな」
「黒龍? あれに近づいた奴はほとんど誰も帰ってきちゃいねえぞ」
どっと笑いが広がる。ソウマは顔を真っ赤にして吠えた。
「なんだとおおお?自称じゃねぇ! 俺は本物なんだよ!」
「……はぁ。ほんとに子どもね」
ルミナスが額を押さえた。
リアナは「そ、ソウマ様! 落ち着いてください!」と慌てて腕を引っ張る。
(ここにも自称勇者は流れてくるんだな)
俺は肩をすくめながら見守るしかなかった。
⸻
広場を抜けた先、酒場の前に立っていた屈強な冒険者たちの会話が耳に入る。
「……黒い龍、の話聞いたか?」
「森を焼き尽くしてたって話だ。魔獣どころじゃねえ、あれは災厄だ」
「ギルドでも調査依頼が回ってきたが……受けた奴はまだ戻ってねえ」
その言葉に、ルミナスの表情が険しくなる。
「……やっぱりただの噂じゃなさそうね」
「おい! だったら余計に燃えてきたぜ!」
ソウマが拳を握る。
「俺がぶっ倒してやる! 黒龍だろうがなんだろうが関係ねぇ!」
「……お願いだから静かにして....」
ルミナスが刺すような視線を送る。
リアナは手を胸に当て、震える声を漏らした。
「でも……もし本当に黒龍がいるなら、放ってはおけません」
俺は空を見上げた。
(黒龍....ね)
⸻
冒険者ギルドへ
俺たちは視線を集めながら、街の中心にそびえる大きな建物へと足を運んだ。
冒険者ギルド。黒龍討伐の、次なる舞台だった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる