傍観者を希望

静流

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「弱いとかではなく、どうでも良かった、というのが本音なんだけどね」

「どうでも良いって…精霊王ですよ?何を言っているんですか!」

唖然としながらも、しっかり突っ込んで怒ってくる。
そこそこの上位に位置しているだけに、別格扱いがよく分かる反応だ。

「怒るのは有り難いが、精霊王が束になっても敵わない相手に、喧嘩を売るのは得策ではないですよ」

ライが、序でというような気軽さで、更なる爆弾を投下してくれる。
敬愛している王の一言に、目を見開きながら、カクカクと音が聞こえそうな動きで首を動かし、此方を凝視してくる。

「私は魔力過多だから、色々と魔道具で押さえた上で、制御しているからね?多分、ライカが把握しているのは、制御後の漏れでた欠片程度だよ」

「セイ様が身に纏っている魔道具も、数十個は下りません。その上、容量も最大レベルで、上級精霊でも、1つ着ければ魔力なしの人間並になれますよ」

追い討ちのかけ過ぎで、声も出ない状態のようだ。
口をパクパクさせ、化け物でも見ているような振る舞いになっている。

「ライ、嘘は言ってないが…やり過ぎではないか?」

「コレくらいで驚いていては、今後が心配になりますよ。さわり程度の内容で、腰を抜かしては、今後やっていけませんからね」

「規格外なのは自覚しているから、そう驚く事態にはならないと思うけど?」

「無自覚でやられるから、忠告しているんですが…」

私の返答に、ライは呆れた視線を向け、嘆息まで零してボヤいてくれる。
これ見よがしの態とらしさだが、心当たりがあるだけに、身を縮ませていた。

「私にとっては、当たり前なのだから、仕方がないだろ。普通がどうか、知りようがないのは分かっている筈だ」

「ええ、承知致しております。ですから、“無自覚”だと申し上げているんですよ」

ライの言いようでは、何だかどう仕様もない者という感じで、まったく慰めにもなっていない。

「同意しているのか、責めているのか、判断がつかないのだが?」

「責めるなんてとんでもない。事実を述べたまでですよ」

胡乱気な問いも、サラリと躱してくれる。
本当に振り回されてるのは、私だと言いたいが、そう主張したところで、到底とおる気がしない。倍以上の反論が予想され、やる気にもなれない。

「本音はっと聞きたいが、時間切れだな」

奥に退がったグレンが、お茶を運んできている。

ライも言われて気付いたようで、微妙に顔を顰めている。
ただ引き取る予定が、大幅に狂っているのだから、それこそ諦めて貰うしかない。

ジトっと見てくるが、話に興を覚えて長引かせたのはライ自身だ。

グレンの要望に応じて、多少は誘導しているが、強制してはいない。
まして、引き留めてもいないのだから、そんな目で見られる覚えはないのだ。

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