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久しぶりの食事
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「さて、貴方は今日からここで弟子として修行する訳だけど」
「まぁ、そうですね」
「取り敢えず、ご飯にしましょうか」
そう言われて、自分が数日間ほとんどなにも口にしていないことを思い出す。人肌に触れて精神的ダメージが和らいだのかもしれない。
やっぱり、精神が身体に影響を及ぼすって本当だったんだな。プラシーボ効果を実際に体験した瞬間だ。
「すみません、お世話になります」
「今回は良いけど、次から手伝いなさいよ」
「はい、そうさせてもらいます」
そう言うと、二人は小屋まで歩き出すので俺も着いていく。
それにしても、本当にユイさん何も話さないな。やっぱり俺にはまだ心を開いてないのか。まぁ、出会って数分の男に心を開けって言う方も無理だけどね。
魔法を教わる時とか、大丈夫だろうか。なんか、ユイさんが言いたいのをユリさんが代弁して言う、とかありそうだ。驚くほど容易に想像出来る。
そんなことを考えていると、いつの間にか小屋に到着していた。
「それにしても……ここは一体どこなんですか?」
「とある山の頂上よ。ユイが結界を張って、誰も入れなくしてるの」
「山の頂上? その割には草木が生い茂っていますが……?」
「植えたのよ。地面を土にするところからだったから、そこそこ大変だったのよ?」
地面を土にしたからって、草木は育つのだろうか?そう言えば、山の頂上なのに気温は地上と変わらないな……。
これも魔法の力なのか?なんなユリさんがユイさんに依存しているように思えてならない。
「ほら、貴方はそこに座って。アタシ達はキッチンに行って料理してるから」
「は、はい。すみません、何から何まで」
扉を開いてすぐのところにある机を指差し、そう言われる。俺が返事をすると、二人揃って奥の方に行ってしまった。
「靴で入るのか……」
二人は靴を脱がずに家に上がった。どうやら、海外と同じように靴で家を上がるようだ。
日本人としては少々気になるが、慣れてしまえばそうでも無いだろう。けど、土足で上がるとかなんか罪悪感があるな……。いや、悪いことじゃないんだろうけどね。
ただ、日本人の性というかなんというか……。
俺は靴を履いたまま家に上がり、机の椅子に腰をかける。そして、二人が戻ってくるのを待った。
~~~
「はぁ……美味かった……」
思わずその一言が口から漏れ出す。お世辞では無く、今まで生きてきた中でも一番美味いと言っても過言じゃ無かった。
やはり、数日間何も食べていなかった故の空腹のお陰なのだろうか?空腹は最高のスパイスとか言うし。実際そう思うしな。
因みに、ご飯はスープだった。栄養失調のことを考えてくれたのだろうか?そうだとしたらありがたい。今ステーキとか出されても、完食出来る気がしない。
「さて、ご飯を食べ終わったことだし、修行でもしましょうか?」
「え、今からですか!?」
「そうよ? 言ったじゃない、スパルタだって」
「言ってましたっけ?」
「……言ってないわね」
あ、やっぱり言ってなかったんだ。
そうだよな。スパルタっぽいなとは思ったけど、本人はスパルタとか言ってなかったし。けど、やっぱりスパルタだったんだな。
「じゃなくて、どうも身体の様子が変なんですよ。力が入らないというか……」
「病気かしら……?」
「多分……栄養失調なんだと思う。……しばらくの間は安静にしてないと……」
「そう言えば貴方数日間何も食べてないんだったわよね。元気だったから忘れてたわ」
あれ、じゃあスープだったのって偶然?
「ユリちゃん……私、栄養失調かもしれないからスープにしようって言ったよね……」
「そう言えば言ってたわね」
どうやらユイさんの方が考えてくれていたらしい。感謝しても怖がらそうなので、心の中で感謝をしておこう。
ユイさん、ありがとうございます!
……魔法で心が読めるとかないよな?もしそうだとしたら、常時怖がられそうだな……。
「じゃあ、しばらくの間休んでなさい。部屋はあの廊下の一番奥の部屋を使っていいから」
「すみません……御迷惑おかけして……」
そう言って、リビングから出たところにある廊下へと移動し、一番奥の部屋に入る。
その部屋は家具は少ないが、勉強机やベットなど、最低限の物が置かれていた。
だが、今の俺は眠気やら倦怠感やらでとても部屋を見て回ろうとは思えない。元気になったら、家を案内してもらおうかな……。
一直線にベットまで歩くと、そのまま倒れ込むようにして眠った。
うわ、このベットめっちゃふかふかじゃん。
~~~
「あら、もう寝てるわね」
「……ベットに倒れ込んだって感じだね……」
「靴は脱いでないし、掛け布団の上で寝てるし、下半身に関してはベットに乗ってないわね。本当に疲れてたのね」
「仕方無いよ……。7日間何も食べずにずっと歩き続けてたんだから。……私でも倒れるよ……」
二人はそんな会話をしながら靴を脱がせ、全身をベットの上に乗せ掛け布団を上にかける。
「弟子、ねぇ……」
「どうしたの……?」
「正直ただの気まぐれなのよね……。確かに聖水を飲ましてしまったから弟子にしたってのもあるんだけど……。修行が嫌になって逃げ出してくれれば楽なんだけど……」
「少なくとも……一人で生き抜けるくらいの力は与えないと……」
「それくらいはちゃんとやるわよ」
そこまで言ってユリは溜め息を吐く。事の面倒さがその溜め息に全て詰まっているようだ。
「……けど、仮に生き抜く力を与えたとしても――」
「分かってるわ。……70年後、魔王が復活するものね」
その呟きに、ユイはコクリと頷く。
「そうなれば……魔物が世界中に溢れかえる……」
「魔物が出てくるのなら、かなり力を与えないといけないわね」
「……出来る限りのことはしてあげよう?」
「そうね……」
その会話に一段落ついたのか、二人は黙って部屋から出て行った。
「まぁ、そうですね」
「取り敢えず、ご飯にしましょうか」
そう言われて、自分が数日間ほとんどなにも口にしていないことを思い出す。人肌に触れて精神的ダメージが和らいだのかもしれない。
やっぱり、精神が身体に影響を及ぼすって本当だったんだな。プラシーボ効果を実際に体験した瞬間だ。
「すみません、お世話になります」
「今回は良いけど、次から手伝いなさいよ」
「はい、そうさせてもらいます」
そう言うと、二人は小屋まで歩き出すので俺も着いていく。
それにしても、本当にユイさん何も話さないな。やっぱり俺にはまだ心を開いてないのか。まぁ、出会って数分の男に心を開けって言う方も無理だけどね。
魔法を教わる時とか、大丈夫だろうか。なんか、ユイさんが言いたいのをユリさんが代弁して言う、とかありそうだ。驚くほど容易に想像出来る。
そんなことを考えていると、いつの間にか小屋に到着していた。
「それにしても……ここは一体どこなんですか?」
「とある山の頂上よ。ユイが結界を張って、誰も入れなくしてるの」
「山の頂上? その割には草木が生い茂っていますが……?」
「植えたのよ。地面を土にするところからだったから、そこそこ大変だったのよ?」
地面を土にしたからって、草木は育つのだろうか?そう言えば、山の頂上なのに気温は地上と変わらないな……。
これも魔法の力なのか?なんなユリさんがユイさんに依存しているように思えてならない。
「ほら、貴方はそこに座って。アタシ達はキッチンに行って料理してるから」
「は、はい。すみません、何から何まで」
扉を開いてすぐのところにある机を指差し、そう言われる。俺が返事をすると、二人揃って奥の方に行ってしまった。
「靴で入るのか……」
二人は靴を脱がずに家に上がった。どうやら、海外と同じように靴で家を上がるようだ。
日本人としては少々気になるが、慣れてしまえばそうでも無いだろう。けど、土足で上がるとかなんか罪悪感があるな……。いや、悪いことじゃないんだろうけどね。
ただ、日本人の性というかなんというか……。
俺は靴を履いたまま家に上がり、机の椅子に腰をかける。そして、二人が戻ってくるのを待った。
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「はぁ……美味かった……」
思わずその一言が口から漏れ出す。お世辞では無く、今まで生きてきた中でも一番美味いと言っても過言じゃ無かった。
やはり、数日間何も食べていなかった故の空腹のお陰なのだろうか?空腹は最高のスパイスとか言うし。実際そう思うしな。
因みに、ご飯はスープだった。栄養失調のことを考えてくれたのだろうか?そうだとしたらありがたい。今ステーキとか出されても、完食出来る気がしない。
「さて、ご飯を食べ終わったことだし、修行でもしましょうか?」
「え、今からですか!?」
「そうよ? 言ったじゃない、スパルタだって」
「言ってましたっけ?」
「……言ってないわね」
あ、やっぱり言ってなかったんだ。
そうだよな。スパルタっぽいなとは思ったけど、本人はスパルタとか言ってなかったし。けど、やっぱりスパルタだったんだな。
「じゃなくて、どうも身体の様子が変なんですよ。力が入らないというか……」
「病気かしら……?」
「多分……栄養失調なんだと思う。……しばらくの間は安静にしてないと……」
「そう言えば貴方数日間何も食べてないんだったわよね。元気だったから忘れてたわ」
あれ、じゃあスープだったのって偶然?
「ユリちゃん……私、栄養失調かもしれないからスープにしようって言ったよね……」
「そう言えば言ってたわね」
どうやらユイさんの方が考えてくれていたらしい。感謝しても怖がらそうなので、心の中で感謝をしておこう。
ユイさん、ありがとうございます!
……魔法で心が読めるとかないよな?もしそうだとしたら、常時怖がられそうだな……。
「じゃあ、しばらくの間休んでなさい。部屋はあの廊下の一番奥の部屋を使っていいから」
「すみません……御迷惑おかけして……」
そう言って、リビングから出たところにある廊下へと移動し、一番奥の部屋に入る。
その部屋は家具は少ないが、勉強机やベットなど、最低限の物が置かれていた。
だが、今の俺は眠気やら倦怠感やらでとても部屋を見て回ろうとは思えない。元気になったら、家を案内してもらおうかな……。
一直線にベットまで歩くと、そのまま倒れ込むようにして眠った。
うわ、このベットめっちゃふかふかじゃん。
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「あら、もう寝てるわね」
「……ベットに倒れ込んだって感じだね……」
「靴は脱いでないし、掛け布団の上で寝てるし、下半身に関してはベットに乗ってないわね。本当に疲れてたのね」
「仕方無いよ……。7日間何も食べずにずっと歩き続けてたんだから。……私でも倒れるよ……」
二人はそんな会話をしながら靴を脱がせ、全身をベットの上に乗せ掛け布団を上にかける。
「弟子、ねぇ……」
「どうしたの……?」
「正直ただの気まぐれなのよね……。確かに聖水を飲ましてしまったから弟子にしたってのもあるんだけど……。修行が嫌になって逃げ出してくれれば楽なんだけど……」
「少なくとも……一人で生き抜けるくらいの力は与えないと……」
「それくらいはちゃんとやるわよ」
そこまで言ってユリは溜め息を吐く。事の面倒さがその溜め息に全て詰まっているようだ。
「……けど、仮に生き抜く力を与えたとしても――」
「分かってるわ。……70年後、魔王が復活するものね」
その呟きに、ユイはコクリと頷く。
「そうなれば……魔物が世界中に溢れかえる……」
「魔物が出てくるのなら、かなり力を与えないといけないわね」
「……出来る限りのことはしてあげよう?」
「そうね……」
その会話に一段落ついたのか、二人は黙って部屋から出て行った。
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