桃太郎が始まらなかった話②

ジミー凌我

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桃太郎が始まらなかった話②

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 昔々
 あるところ
おじいさんとおばあさんがそれは仲良く暮らしていました。
 ある日
 おばあさんは川へ洗濯に行こうとしました。
 おじいさんは山に芝刈りに行こうとしました。
 けれど何か嫌な予感がしたおばあさんは川へ行くのを辞め、山へ向かうおじいさんに声をかけました。
「じいさんや。今日はなんだか嫌な予感がします。山へ行かずに家でのんびりしませんか?」
「ばあさんや。そんなことできないよ。私ももう歳だ。少しずつでも山に行かないと…」
「わかりましたじいさん。なら、今日は私も行っていいですか?ちょっと準備をしてきます」
「ばあさんが山へ行くのかい?大変だろう。でも来てくれるのは嬉しいよ」
 おじいさんとおばあさんは仲良く手を繋いで一緒に山へ向かいました。
 おばあさんの足腰も考えてゆっくり山に登ったおじいさんとおばあさんは、恐ろしい熊を見ました。
 そこはおじいさんが普段芝刈りをしている場所でした。
 おばあさんが一緒に行くと言い出さなければ、おじいさんは熊と遭遇して、食べられていたかもしれません。
 おじいさんは身震いしました。
 おじいさんは横で震えているおばあさんに小さな声で、指示します。
「ばあさんや、この時期の熊はそこまで気性は荒くない。音を立てず、顔をそらさず、ゆっくり後ろに下がるんじゃ」
「じいさんや…。そんなことを言っても。私、足が震えて」
「大丈夫じゃ。わしがおる!」
 そう言って、おじいさんはおばあさんの手をギュッと力強く握り直しました。
 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、熊と距離を取り、無事山から下りることが出来ました。
「じいさん…。ありがとうございました。私、食べられてしまうと動かなくなってました…。でも、おじいさんが手を握ってくれて、すごく嬉しかったです」
「ばあさんや。助かって良かった。ばあさんが一緒に来てくれなければ、ワシはきっとここにはいなかったよ。ありがとうのう」
 
 おじいさんとおばあさんは、それから一緒にいる時間が増え、より幸せな日々を過ごしました。

 それから何年か何十年後か、おじいさんとおばあさんが住む場所から少し離れた街で、桃三郎という青年がお供を連れて悪い連中と日夜、派遣争いを繰り広げていたという噂は、おじいさんとおばあさんの暮らしには全く関係ないなかったとさ。

めでたしめでたし
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