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知らぬが仏、知っても仏

行ってきまーッ

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金曜日の朝は井戸端会議。

家族で小さく丸い机を囲むように座布団に腰を浮かせ、机に両手をつき体を支えながら顔を寄せ合う。
「学生諸君、ヘルメットを忘れずにつけたまえ。」
母の一言で
俺“金尾 時仁(かねお ときひと)高校一年生”
妹“金尾 希優(かねお きゆう)中学二年生”
は油性マジックで小学生レベルの画力で楽描きをした元白いはずのヘルメットを通学鞄から出し、頭に被り首元近く紐で固定した。
絵を描くことは好きな二人だが、壊滅的な画力は一種の才能としか言いようがない。

さーて、

我が家の教訓
その一・生命の保持/情緒の安定
その一・金曜日を幸せに過ごす計画・反省・改善をし、次の結果へ繋げること(多分無理だろうが)
その一・二度と同じ日は来ない。今日という最後の日を全力で生きろ
その一・つーか、諦めてもいいんじゃない?運命受け入れれば?
その一・今晩のおかずは魚かな?

等の真面目な内容から不真面目な内容まで、半紙に墨で書かれ、壁の柱上から下まで魔物が封じ込められているかのように張り巡らされていた。

我が家の人間は金曜日にのみ、世界にいじめられているかのように不幸に見舞われる。
母は職場に奇妙なことに理解のある上司、笹須田(ささすだ)さんの優しさのおかげで週休にすることができたらしく、外に出ないで家でダラダラするんだとおやつのお煎餅を片手にテレビを見始めた。
父は婿養子。金曜日の影響を受けないので普通のサラリーマンの如く大手で堂々と出勤。

学生には週休も有給もなく、単位と授業と今後の社会的地位(友達の輪に入れなくなるとか)がかかっている為、自分の身を自分で守りつつ登校しなくてはいけないのだ。休みすぎる友達よりも休まない友達を人は選び共にいようとする。
「二人組」先生の魔法の言葉に負けないように、パーティーを組むためだけに利用されているとしか思えないが……

人は見たものしか信じない、必死に代弁しようがそれは“虚言”として片付けられ白い目を向けられる。はじめから人を頼ろうとするから馬鹿を見る。捻くれ育つ難しいお年頃(笑)

「行ってき……「痛っーーーーーーーー!!」
耳につん裂く絶叫。どうやら母は、煎餅の破片で口の中を傷付けたようで口元に手を当て、涙目になりながら悶絶していた。
ざまぁ、クソババアと後ろを振り返りながら歩きほくそ笑んだところで、体が前へとバランスを崩し倒れこんでいくことがわかった。ドアノブに鼻頭を強打し、先程の母と同様に涙目になりながら悶絶していると、「ばっかじゃないの?」と笑う妹は廊下で足を滑らせ尻を強打していた。
人を嘲笑えば穴は∞(無限)。

存在意識が人の不幸を喜ぶ……根本的な根性が曲がっているようなので改善には時間がはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。





ここまで読んでくれた読者の皆さん。ありがとう。
でも、ポイントくれないと家の煎餅噛み砕けないぐらいに硬くしちゃうぞッ。
金曜日の不幸お裾分け虚言癖\(^o^)/バイ、時仁。
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