いらない魂、回収します

あかいかかぽ

文字の大きさ
6 / 53
序章 家

 翌日、お祓い師がやってくることになった。
 インターフォンに対応したのは穂乃果、ついで幸太郎。
 野良猫が我が物顔で寝ている縁側の端っこに座って、わたしは温かい陽射しと濃いめにいれた茶を飲んでくつろいでいた。

「ええ~、期待してたのと違うんですけど……?」

 幸太郎が落胆の声をあげている。

「まあいいじゃないの。とりあえず中を見てもらいましょうよ」

 穂乃果の取りなす声が聞こえてくる。理由はすぐにわかった。
 兄妹の後ろに少女がいた。中学生かせいぜいが高校一年生といった幼さだ。

「なあ、白い髭のおじいさんは来ないの?」
「あの広告の人はわたしの弟子。除霊にはまだ力不足なんです」
「あんた、ほんとにプロなの?」

 どう見てもプロの除霊師には見えない。どこにでも居る普通の女の子だ。

「詐欺じゃねえか」

 幸太郎は不満を募らせている。だがものは考えようだ。
 やくざまがいの強面ではなかったことで穂乃果はむしろ安心している。その証拠に動画撮影をすっかり忘れていた。
 少女は居間を見渡し風呂場やトイレをのぞき、縁側のわたしと視線を合わせると、人なつっこい笑みを浮かべた。愛想のいい子だ。

「全部の部屋を見てきていいですか?」
「好きにしてもらってかまわない。ちゃんとお祓いしてくれるならね」

 仏間を見たあと二階にあがっていく少女を見送った幸太郎は、穂乃果にあごで合図をした。

「まいったなあ、小遣いやって帰らせるか」
「アルバイトかなにかかしらね?」

 二人はそのまま仏間に入って、小声で何か話している。耳をそばだてると会話が聞こえてきた。

「この家、売ってもたいしたことないみたいよ」
「……いくらだった? え、……それだけなんだ、そっかあ」
「うわものを解体して更地にするにも費用がかかるし、ダメね」
「イギリスだと幽霊屋敷はかえって高くなるのになあ」

 無性に腹が立った。穂乃果が考えていた打つ手はこれなのか。
 わたしに内緒でとんでもない計画を進めるものだ。内心で舌打ちした。
 安すぎてすいませんでしたね。お手数お掛けして申し訳ありません。
 せめてわたしが死んだあとにやっておくれ。
 仏間に怒鳴り込もうかと思ったら、目の前をルンバが通りすぎた。この掃除機がけなげに働いていることを幸太郎たちは気にしていない。ルンバに同情したくなってきた。
 やがて二階から少女が降りてきた。また目が合ったので、今度はこちらからにこりと微笑んだ。少女は頭を下げて丁寧なお辞儀を返してきた。

「不作法な孫がご足労をお掛けしてすみませんね」
「いえ、これが仕事ですから。それに見た目で損をするのは慣れてますからまったく気にしていません」

 会話が聞こえたのか、仏間から兄妹が顔を出した。

「あ、どうでした。なんかいました?」
「座敷童子いそうですか?」
「すみずみまで拝見させていただきましたが、いませんね」

 少女はきっぱりと言い切った。

「え、ウソでしょ。じゃ、やっぱり幽霊がいるのね」

 穂乃果が顔をくもらせる。

「いえ、幽霊もいませんよ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント120万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。