57 / 88
第二章 ヴァンパイアシスターズ
第二章 第三十七話 二階に上がると
しおりを挟む
神代とエルファバがゆっくりと下りてくる。
「神代さん、生きててよかった」
俺は心から安堵した。
彼女はエルファバを蔓で拘束した後、険しい顔で俺にこう言った。
「なんであなたはこういうことするの?」
「えっ?」
「一歩間違えれば、あなたは消えているのよ? わかる?」
あぁ、そうか。
確かにあそこでちゃんと隠れていれば、こういうことにはならなかったもんな。
俺は「ごめん」としか言えなかった。
「ごめんってあなた……はぁ、もういいわ。怒りもしないし、褒める気もしないから」
彼女はそう言い、枝に刺さっているもう一本の矛を抜き取る。
矛は火の粉となって消えると、枯(か)れ葉(は)がひらひらと落ちてきた。
見上げると、発光している大きな果実は徐々に萎(しぼ)み。枯れ葉が多く落ちてくる。
えっ? 何が起こってるの?
葉っぱ、枯れるの早くね?
枝が徐々に萎(しお)れ細くなっていく。
「慌てなくていいわ。もう終わるから」と神代が言うと、俺たちは広間に立っており、先程まであった木は灰になって消えた。
「よっ、お疲れさん!」
「お疲れ様だよ。さすが神代さん、勝てると思ってたよ!」
亮夜と岩城が近づいてくる。
「ふっ、お世辞でもありがたく受け取っとくわ」と言った瞬間、彼女は尻餅をついた。
はぁ……はぁ……はぁ……
彼女の吐息が聞こえる。
「ごめんなさい、もう動けないみたい。少し休憩するから……」
「おう、わかった。二階へ行こう」
「あぁ」
「行こう行こう!」
俺たちは中央の階段を登った。
上がると下の階よりも狭いが広間になっており、左右に片開き扉と真ん中に両開き扉があった。
それを見た瞬間、岩城が「三人一斉に開けようよ」と提案した。
「そうだな。その方が効率がいい。宏もそれでいいか?」
「うん、やろう。俺は真ん中を開ける」
「じゃ、僕は右!」
「俺は左か」
真ん中の両開きの扉の前に立つ。
俺はドアノブに手を掛ける。
「開けるぞ」と亮夜が言う。
ドアノブを回した。
ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……
「開かねぇじゃねぇかよ!!」
「また鍵がいるのかい?」
「そうかもしれない。下の階で探そう」
俺たちは階段を下りる。
踊り場から気絶しているエルファバと赤絨毯に倒れている神代が見える。
倒れてる!?
「神代さん! 大丈夫!?」
「ふぁっ!?」
神代が勢いよく上体を起こす。
「なんだ、寝てただけか」
俺たちはそのまま階段をおり、彼女達に近づく。
よかったと思っていたが、彼女は不満そうな顔で俺を睨む。
「ご、ごめん」
「神代さん、許してあげてよ。実際、倒れているようにしか見えなかったし」
「はぁ、そうね。そういう風にしか見えないか、ねっ転がってただけなんだけど……上はどうだったの?」
「三つほど扉があったんだがよ、全部閉まってた」
「そう、じゃ鍵を探しに行くのね?」
「そういうことだ」
そうか、今からここを探索するのか。
広間を見渡す。
中央階段から左側に両開き扉が二つ、正面に玄関に続く扉、右側に片開き扉が一つある。
「これもさっきみたいに三人で扉を開かないか?」
「そうだね、その方がいいね」
「わかった。俺は片開きの方に行く」
「じゃ、僕たちは両開きの方に行こう」
俺は頷き、階段に近い両開き扉の前に立ち、ドアノブを回す。
カチャ
開いた。
中を見ると長机にすごい数の椅子があった。
ここは食堂か。
俺は後ろを返し、大声で「ここは食堂だよ」とみんなに伝える。
亮夜が「こっちは廊下だ」と答え、岩城は「こっちは……物がいっぱいあってよくわかんない!」と答える。
「わかった。岩城、そこと食堂を見てくれ、俺と宏はこっちを探索するからよ」
「了解! ほら行っておいで」
岩城が手を亮夜に向け、俺を行かすように促す。
「わかった」と岩城に言い、俺は亮夜の方に向かうのだった。
「神代さん、生きててよかった」
俺は心から安堵した。
彼女はエルファバを蔓で拘束した後、険しい顔で俺にこう言った。
「なんであなたはこういうことするの?」
「えっ?」
「一歩間違えれば、あなたは消えているのよ? わかる?」
あぁ、そうか。
確かにあそこでちゃんと隠れていれば、こういうことにはならなかったもんな。
俺は「ごめん」としか言えなかった。
「ごめんってあなた……はぁ、もういいわ。怒りもしないし、褒める気もしないから」
彼女はそう言い、枝に刺さっているもう一本の矛を抜き取る。
矛は火の粉となって消えると、枯(か)れ葉(は)がひらひらと落ちてきた。
見上げると、発光している大きな果実は徐々に萎(しぼ)み。枯れ葉が多く落ちてくる。
えっ? 何が起こってるの?
葉っぱ、枯れるの早くね?
枝が徐々に萎(しお)れ細くなっていく。
「慌てなくていいわ。もう終わるから」と神代が言うと、俺たちは広間に立っており、先程まであった木は灰になって消えた。
「よっ、お疲れさん!」
「お疲れ様だよ。さすが神代さん、勝てると思ってたよ!」
亮夜と岩城が近づいてくる。
「ふっ、お世辞でもありがたく受け取っとくわ」と言った瞬間、彼女は尻餅をついた。
はぁ……はぁ……はぁ……
彼女の吐息が聞こえる。
「ごめんなさい、もう動けないみたい。少し休憩するから……」
「おう、わかった。二階へ行こう」
「あぁ」
「行こう行こう!」
俺たちは中央の階段を登った。
上がると下の階よりも狭いが広間になっており、左右に片開き扉と真ん中に両開き扉があった。
それを見た瞬間、岩城が「三人一斉に開けようよ」と提案した。
「そうだな。その方が効率がいい。宏もそれでいいか?」
「うん、やろう。俺は真ん中を開ける」
「じゃ、僕は右!」
「俺は左か」
真ん中の両開きの扉の前に立つ。
俺はドアノブに手を掛ける。
「開けるぞ」と亮夜が言う。
ドアノブを回した。
ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……
「開かねぇじゃねぇかよ!!」
「また鍵がいるのかい?」
「そうかもしれない。下の階で探そう」
俺たちは階段を下りる。
踊り場から気絶しているエルファバと赤絨毯に倒れている神代が見える。
倒れてる!?
「神代さん! 大丈夫!?」
「ふぁっ!?」
神代が勢いよく上体を起こす。
「なんだ、寝てただけか」
俺たちはそのまま階段をおり、彼女達に近づく。
よかったと思っていたが、彼女は不満そうな顔で俺を睨む。
「ご、ごめん」
「神代さん、許してあげてよ。実際、倒れているようにしか見えなかったし」
「はぁ、そうね。そういう風にしか見えないか、ねっ転がってただけなんだけど……上はどうだったの?」
「三つほど扉があったんだがよ、全部閉まってた」
「そう、じゃ鍵を探しに行くのね?」
「そういうことだ」
そうか、今からここを探索するのか。
広間を見渡す。
中央階段から左側に両開き扉が二つ、正面に玄関に続く扉、右側に片開き扉が一つある。
「これもさっきみたいに三人で扉を開かないか?」
「そうだね、その方がいいね」
「わかった。俺は片開きの方に行く」
「じゃ、僕たちは両開きの方に行こう」
俺は頷き、階段に近い両開き扉の前に立ち、ドアノブを回す。
カチャ
開いた。
中を見ると長机にすごい数の椅子があった。
ここは食堂か。
俺は後ろを返し、大声で「ここは食堂だよ」とみんなに伝える。
亮夜が「こっちは廊下だ」と答え、岩城は「こっちは……物がいっぱいあってよくわかんない!」と答える。
「わかった。岩城、そこと食堂を見てくれ、俺と宏はこっちを探索するからよ」
「了解! ほら行っておいで」
岩城が手を亮夜に向け、俺を行かすように促す。
「わかった」と岩城に言い、俺は亮夜の方に向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる