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♯54 薬の出処【ビタロ編】
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とりあえず姉さんの部屋を出て自室に帰ってきたけど。
さっき姉さんに言われたことを僕はどう受け取っていいのか全くわからないでいた。
姉さんにセフレ?
姉さんがセック◯大好き?
そんなの嘘でしょ。
そう思いたいけど。
昨日の姉さんを思い返せば完全に否定はできない気もして全身にズクズクとした嫌な脈動が走る。
ずっと姉さんがアイツに色々させられてるから慣れているのかと思っていた。
それですら吐きそうなくらいに耐えられなくてアイツをコロしてやりたいと思うのに。
アイツと初めて関係を持ったのが僕とした『あの日』?
それが本当だとしたらどう考えてもあんなに姉さんが慣れてるのはおかしすぎる。
姉さんの言ったことを否定するための言葉はたくさん頭に浮かんでくるけど。
結局あの凄まじい姉さんとの行為を思い出すたびに胸の奥が痛んでその言葉たちは全て崩れ去る。
そして姉さんが言ったことが事実であると言う解だけが頭の中に浮かび上がってくる。
でも僕は結局それを受け入れられずにまた思考が姉さんの言った言葉を否定するところに戻る。
さっきからずっとその繰り返しだ。
それに、あれが嘘じゃないかもしれないって思ってしまう理由は姉さんがソウイウコトに慣れているってこと意外にもあった。
姉さんと言う人はこんな大博打的且つ誰かを傷つけるような雑な嘘のつき方はしない。
たとえアイツのことだとしても、あんな利用するような言い方、姉さんは嘘でも言ったりしない。
もし姉さんが嘘をつくとしても、いつも人を傷つけないための優しい嘘だ。
なんなら、事実であっても姉さんはそもそもあんな人を傷つけたり貶めたりするような事を口にする人ではないのだ。
そう、さっきの姉さんは嘘とか本当とか以前に僕の知っている姉さんとはかけ離れすぎていた。
だからこそ、余計に頭がぐしゃぐしゃになって何もわからなくなる。
何が嘘で何が本当で、僕の今まで見てきた姉さんはどこまでが本物でどこまでが偽者なのか。
でもこの整理がつかない頭でも一つわかることは。
姉さんは完全に僕を切り離しにかかろうとしてるということだ。
最後の一言で察した。
「もし私に『何か』するつもりなら、私にも『考え』があるからね?」って言葉。
僕が具体的に何をしたかまでは気づいていない様だったけど。
頭のいい姉さんのことだから、僕が『何か』をしくんでやってることに気づいたのだろう。
まあ僕も姉さんの優しさに漬け込んで大胆にやりすぎたのもあるけど。
でも今までの姉さんだったら、それくらいしても僕が反省したそぶりで頼み込めばすぐに丸め込むことができた。
それなのに今日はその隙すら全く与えてもらえなかった。
それに『考えがある』って言葉。
あれの意味もすぐに察した。
たぶん姉さんはこれ以上僕が姉さんに干渉すると『魔法で記憶を消す』という脅しだろう。
姉さんの魔力があればそれくらい簡単だ。
初めて姉さんとしちゃった日も、僕は記憶が消されると思ったくらいだ。
だってそれが1番僕を諦めさせるのに手っ取り早い上に僕との関係性も拗れずにいられる。
僕が姉さんの立場だったら迷わずすぐにそうするだろうし、合理的な姉さんはそれを選んでもおかしくないと思った。
けど結局姉さんは優しくて僕を許してくれたし、自分も悪かったとさえ言った。
完全に暴走しちゃった僕が悪いと僕ですら自覚してるのに。
姉さんは真剣に僕の気持ちに向き合ってくれた。
姉さんは結局そう言う人なのだ。
だからこそ、今日の姉さんの態度は意外すぎて何も言葉を挟めなかった。
まるで知らない人のように見えて、寒気さえした。
そして、そのおかげで本気で『記憶を消す』所まで視野に入れているんだということも悟ったのだ。
これ以上踏み入ると本気で僕の気持ちを全て無かったことにするぞと。
まぁでも魔法で他人の記憶を消すのは医師免許を持った医療行為以外は法律で禁止されている。
強い洗脳系の魔法だからどんなに上手くやっても多少なり痕跡も残るって聞いた事があるし、見る人が見れば魔法をかけたことがバレる可能性だってある。
だから姉さんとしてもそれはおそらく本当の本当にの最終手段として考えているのだろうとは思うけど。
でもやっぱり、ここまで冷静に考えていろいろ導き出せるのに、先ほどの姉さんの暴露がいまだに信じられない。
冷静に考えれば考えるほど、姉さんが言ってることの方が正しい気もするのに、言い知れぬ不安が込み上げてそんなはずないと思ってしまう。
結局僕は、信じたくないんだ。
だってもし、姉さんが言ってることが本当だとしたら、僕が今まで見てきた姉さんは僕の『知ってる姉さんではない』と言う事になるんじゃないだろうか。
そうなると僕は姉さんが言うように、『ずっと騙されていた』と言う事になるのかもしれない。
あの僕を撫でていた手も。
抱きしめてくれた腕も。
温かい笑顔も。
優しさも。
全部全部。
他の見知らぬ男たちにも向けられていた、穢れていたものだなんて。
姉さんを性欲の捌け口としか見てないゴミみたいな低レベルの男たちにもあれが向けられていた…
あぁ。
だめだ。
やっぱり無理だ。
そんなこと受け入れられるわけがない。
これ以上考えると吐き気がする。
やっぱり姉さんがさっき僕に言ったことは全部全部僕に姉さんを諦めさせるための嘘なんだ。
そうに決まってる。
そうじゃなきゃ…
僕は姉さんを絶対に許せない。
◇◇◇
「よぉ。久しぶりっ!昼飯でもどーよ。」
僕が教室の窓際の席でぼーっと外を眺めていると急に横から話しかけられた。
声が飛んできた方に視線だけを移すと、同級生のビタロが昼食の入った紙袋を僕の前に突き出して立っていた。
コイツは入学してから去年までずっと同じクラスで、事あるごとに絡んでくるので適当に相手をしていたヤツだ。
今年に入って初めて別のクラスになったので、腐れ縁もここまでかと思っていたが、わざわざ隣のクラスからここまできたようだ。
僕はめんどくさくて無視をしようと思ったが、ふと少し考えて、自分の鞄から昼食の入った布袋を引っ張り出して立ち上がった。
「え?なに?今日は素直についてくるのな?」
ビタロはニヤニヤしながら何かを探るように僕を見てきたので僕は無視して歩き出した。
◇
ビタロと昼食を取る時にいつも使っている人気のない校舎裏のベンチに着くと僕は無言で腰を下ろした。
するとビタロもドカッとぼくの隣に雑に座った。
「いやぁーさすがルミナーレ公爵家サマは連日すごいねぇ?話題を次から次へと作ってくれて世間を飽きさせませんなぁ?」
ビタロが紙袋から取り出したパンを齧りながらヘラヘラとわらって煽るような口調で話題を振ってきた。
「まぁ、僕以外だけどね。」
僕はボソッと呟きながら、自分も布袋からうちのお抱えシェフが作ってくれたサンドイッチの入ったバスケットを引っ張り出した。
今日はこの学園毎年の恒例行事である、新学期の魔力・身体測定と健康診断の日だった。
そのせいで僕のクラスでもミーチェと姉さんの話題で持ちきりだった。
なぜなら当然の如くあの二人は魔力測定でとんでもない数字を叩き出したからだ。
ミーチェは総合的な能力も高めだが、何より光の魔力が学校創設以来の桁違いの強さだったらしいし、姉さんは姉さんで去年の自身の記録をはるかに超えた宇宙的な数字を叩き出したらしい。
ビタロはその事を言っているのだろう。
「いやいや、そんな卑屈になるなよ?あの二人は確かに論外だけど、ルディだって評価的にはSランクじゃねーの。うちのクラスの女子がキャーキャー騒いでたぞ?」
「卑屈というより事実だから。」
「ほんとお前褒めがいのないやつだなぁ?俺にも他の奴らに見せる『天使の微笑み』ってやつを向けて欲しいもんだねぇ?」
僕が適当に返すとビタロはやれやれと言った感じでオーバーにリアクションをとりながら僕を煽ってきた。
コイツは僕の素の顔をしってる唯一の知人だ。
それなのになぜか懐かれている。
いつもの外面の僕と話したいと思うなら理解はできるけど。
こんなつまんない反応の僕と喋っていて何が楽しいのだろうかと疑問でしかない。
「で、どうよ?つかった?あの薬。」
突然ビタロが声を潜めて僕の耳元で囁いた。
やっぱりこれが聞きたかったから今日わざわざ僕を訪ねてきたんだなと思った。
こいつは勝手に僕の事を誘導尋問して『長年片想いに苦しんでいる』と決めつけ他挙げ句、春期休暇が始まる直前、「休み中にこれで落とせよ」と言って、あの例の媚薬を押し付けてきた。
あぁ、そうか。
今僕が悩んでるのも全てコイツが元凶と言っても過言ではないのかもしれない。
昨日自室に戻った僕はあれから姉さんと全く話せていなかった。
お父様の仕事も手伝う気にもなれず、部屋にこもってずっとぐるぐるとあのことについて考えていた。
そして今朝登校するときも、ミーチェがいる手前笑顔は取り繕いはしたが、姉さんと朝の挨拶のハグもする気になれず目すら合わせられなかった。
もちろん馬車でもだ。
したり顔でアイツは姉さんの隣に座ったけど、僕はアイツに噛み付く気も起きずに窓の外を眺めるしかできなかった。
それもこれも、こいつがあんなものをよこさなければ。
あの日、僕はあの薬をつかって『あんなこと』をしなかったのかもしれない。
いや…
でもむりだな。
あの日のあんな状態の姉さんを見たらいずれにせよ冷静さを失って何かしらをしていただろう。
薬がなければあんなふうに姉さんに手を出すことができなかっただろうから、そしたらアイツをコロしにいっていたかもしれない。
それよりかは姉さんと身体を重ねられたことの方が結果的に良かったのかも。
僕は口に入っていたサンドイッチを飲み込むとため息をついた。
「お前とんでもないものを僕に押し付けてくれたよ」
すると僕の反応を見たビタロが目を見開いた。
「え?まじ??ってことはつかったのか??」
「まぁ成り行きで」
僕が答えるとビタロは心から楽しそうにケタケタと笑い出した。
「いやぁ!!まさかおまえが本当に使うとはなぁ??ってことはアレか??ついに童貞卒業か??おめっとさん!すんごかったろ??」
僕はビタロの品の無い言葉の数々にイラッとしてちっと舌打ちをして無視をした。
しかしビタロはそんな僕の様子を全く気にせず話を続けた。
「秒で両思いになれたろ?女だって結局肉欲には抗えねんだからさー?」
女だって…
結局肉欲には抗えない…?
『私、セック◯大好きなんだよね』
ビタロのせいで昨日の姉さんの言葉がフラッシュバックして僕は首を横に振ってその思考を振り切った。
すると僕の様子を見たビタロが訝しげに僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだよ?まさかダメだったとかいわねぇよなぁ?」
そこまで口にしてビタロはハッとして口元を手で押さえて僕に憐れむような視線を向けていた。
「あぁ…それともあれか?お前が勃たなかったとか?それはまぁ…ご愁傷様…」
「あほか」
「じゃあなんだよ」
僕が思わず突っ込むと、ビタロはホッとしたように肩を落とした。
僕はそんな様子のビタロを横目で見ながらしばらく考えてビタロに僕が理解できない『コレ』を聞くべきか迷った。
今日わざわざビタロについて来たのは、『コレ』をビタロに聞けば姉さんがなぜ『あんな嘘』を言ったのか、心理を理解できるかもしれないと思ってしまったからだ。
僕は仕方なく腹を括って口を開く。
「お前は…なんで婚約者も決めず特定の彼女すら作らずセフレと遊んでんだよ」
「は?急になに?珍しく俺に興味持ってくれんの?今日雪でもふるんじゃねー?」
ビタロは目をまんまるに見開いて僕を見つめて来た。
ちっ。
だから聞くの嫌だったんだよ。
どうせ茶化されると思ったから。
「聞いた僕がバカだった。」
僕がイラッとして吐き捨てるとビタロは慌ててブンブンと顔の前で手を横に振った。
「あ、うそうそ!ごめんって!ルディに興味持ってもらえたなんて嬉しくてつい!いやなんでって?そりゃめんどくさいの抜きしにして気持ちイイことしたいからだろ?」
「めんどくさい…?相手の気持ちがか…?お前いつか刺されるんじゃない?」
僕は耳を疑った。
めんどくさいってなんだよ?
ああいうのはお互いの想いが通じ合ったその先にある行為だろ?
いや、姉さんを無理やり襲ってしまった僕が言うのもなんだけど…
でも姉さんも僕だからこそあんなことしても受け入れてくれたんだと…思う…
「いやいや、逆だろ?お互いそういう合意のもとでやってるから健全よ?逆にお前みたいな超ベビー級の気持ち拗らせてる方があぶねーだろ?」
ビタロは鼻で笑いながら僕に返した。
その言葉に僕は思わず口をつぐんでしまった。
流石に自覚はある。
自分の愛が重すぎるということに。
愛しいはずの相手をコロしたいほど憎らしく思ったり、愛しい相手の周りにいる男どもを本気で全員コロしてやりたいと思うのは、普通じゃないって事くらいは、流石の僕でも分かる。
だって世の中の人がもしみんなそうだとしたら、この世界は犯罪者だらけだ。
単純にそうじゃないってことは、きっとみんな僕とは気持ちの形が違うんだろうとは思う。
でも僕の中ではこれしか知らないのだ。
周りがどうやって恋愛してるのかもしらないし。
自分に向けられた気持ちにも興味がない。
なんなら唯一、1番身近で恋愛しているあのクソ野郎も僕と同じ人種な感じがするから参考にならない。
だから僕には一般的なモノがよくわからなかった。
僕が黙りこくっていると、ビタロは僕の表情から何か察したようで急に真面目な顔になって口を開いた。
「なんだよ、お前も一応自覚あんじゃん?まあでも…おまえの想い人は『高貴で聡明で美人な完璧なご令嬢様』なんだろ?しかも幼い頃から婚約者がいるとなったら誰も手出しできてないだろうし。そういう『この世の汚いもんなんも知らない純情なお嬢様』にはお前みたいなちょーっとばかしあぶねーやつの方が色々守ってやれるからお似合いなんじゃねーの?」
「この世の汚いものをなにも知らない純情なお嬢様…」
僕は思わずビタロの言葉を復唱してしまった。
するとビタロはまた訝しげな顔で僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだよ?さっきから?いつも以上にテンション低いなぁ?ツーか、アレ使ってヤったのはヤったんだろ?すぐ落とせただろ?そんなうぶそうなお嬢なんて一瞬だろ絶対。」
「落とすって僕に惚れさせるってこと?アレはそう言う作用は無いだろ?」
僕がため息をつきながら言葉をこぼすと、ビタロは余計にわけがわからないと言った様子で首を傾げた。
「え?いや、確かにアレは『惚れ薬』みたいな御伽噺に出てくるような『気持ちを操作する』効果はねーけどさ。アレでキメセクすれば実質惚れさせられるようなもんじゃん。リピしたがらないやつなんて出会ったことねーよ??ウブなら尚更快楽イコール愛情みたいな感じでどハマりするだろ?え、どれくらい入れた?あー、その人魔力高い人なんだっけ?たまに抵抗力強いやついるけどまあ数滴入れりゃもう無理だろ?」
ビタロが僕があまり多くを語らないことにヤキモキしたのかアレコレと質問を投げかけて来た。
数滴…?
たしかに数滴入れても効くには効いた。
でもそれも中に出せばそれで終わりだ。
なんなら、初日は数滴なんてもんじゃ無い。
「一本丸々入れた。」
それでも姉さんを落とすなんてできなかった。
ビタロが使った相手がことごとく尻軽女だっただけだろ?
「はぁ?!」
僕がボソッと呟くと、ビタロは急に大きい声を出して立ち上がった。
「いっぽんまるまる??ちょ、おま?は!??相手廃人にする気かよ???渡したとき言ったろ??数滴だけにしないと劇薬だからやばいって。」
「使うつもりなかったからそんなの覚えてないよ。」
焦るビタロに僕は変わらず淡々と返した。
何をそんなに焦ってるんだろうか。
姉さんはリピートなんてしてくるどころか、なんなら昨日はっきりと僕を切り離そうとした。
ビタロは大袈裟すぎるんじゃ無いだろうか。
「おい、めんどくせーことになったなぁ??そんなお貴族様のご令嬢廃人にしたら薬の存在公にばれるぞ??俺が渡した責任もあるけどさー?おいおいやってくれたなー。クソー…家にあんのとりあえず今日全部すてっかー?」
「廃人?まさか?確かに薬の効き目は凄かったけど。次の日何事もなかったようにケロッとしてたよ。」
あまりにもビタロが本気で頭を抱えながら冷や汗をかいて焦り出したので、僕は首を傾げながら返した。
するとビタロは信じられないと言う様に目を見開いて正面からガシッと僕の両肩を両手で鷲掴んだ。
「はぁ??!!その子何もんだよ??!え??つーかじゃあなんだよ??それでも尚落とせなかったってことか???そんなわけある??はは!なにそれ??その子とんでもない化け物級のヤリマンビッチだったとか???」
僕は聞き捨てならないビタロの発言にイラッとして彼を睨みつけて肩に置かれた手を振り払った。
するとビタロは僕の表情を見て真顔で固まった。
「え、まじか…冗談のつもりだったのに…あ、そう言うこと?だから俺にセフレがどうのって聞いたの…?」
そこまで呟いてビタロがぴくっと眉端を上げニヤリと笑った。
僕はまずったなと思ってため息をついた。
コイツは勘がいいから本当に厄介だ。
「なぁ、逆に何その子、だれ?もういい加減に教えてくれたっていいだろ??面白すぎるんだけど??俺会って色々話したいんだけど!」
「おい、ふざけるなよ?」
ビタロは好奇心旺盛だからすぐ首を突っ込みたがるのが本当にうざい。
まぁでも僕が誰を想ってるかなんてコイツに一生わかるはずがないから、コイツが姉さんにたどり着くことはあり得ないけど。
もしたどり着いて手でも出そうものなら問答無用でぶちコロすけど。
「いやだって、そういう意味だろ?やってみたらヤリマンだったから落とせなかったっツーことだろ?で、逆に童貞美味しくいただかれたっつーこと?そんな子お前には向いてねーって!これはお前のために言ってんだよ?分かるだろ??その子俺の同類だろぜったい。」
「お前と一緒にすんな!!違う…そうじゃない…!アレは僕の気持ちを諦めさせるための嘘って可能性だってまだある…」
思わずカチンと来て僕は声を荒げた。
同類?
お前みたいな下半身でしか生きていない下等生物と姉さんを一緒にするなよ?
姉さんは優しさから仕方なくあんな嘘をついたんだ。
アレは嘘。
絶対そうだ。
「まぁまぁおちつけって?だってもちろん処女じゃないだろその子?」
僕の感情を逆撫でするようにビタロはニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながら僕に聞いて来た。
処女じゃないのは、確かにそうだ。
けどあれはあの日アイツが無理やり奪ったんだ。
あの日…
「あっはっは!!やっぱそうじゃん!やっばー!」
僕が黙ってビタロを睨みつけているとビタロは僕の表情で勝手に解釈をして決めつけて来た。
本当にコイツはこう言うところがうざい。
「いやぁ…しかし狂ってんなー!その人。そこまで高位貴族でそんなセフレいる様な人だったら俺の耳に噂くらい入って来そうなもんだけど…さっぱり見当がつかねーな。」
「だからそれは…僕を諦めさせるためについた彼女の嘘だっていってるだろ。噂なんて立つわけない…」
僕が呟くとビタロはため息混じりに口を開いた。
「この状況でまだそれいう??いや、それが仮にハッタリだとしたら、そんな嘘つかれてる時点でお前相当嫌われてね?どのみち脈ねーんだからダメだろ」
「そんなことはない!ただ…関係性が問題だから優しさで僕を諦めさせるために…自分を貶める嘘をついてるだけだ…」
コイツはいちいち僕をイラつかせることを言ってくる。
「頑なだなぁー。そーゆーとこがこえーつってんのよ。あーじゃあわかった。俺一回その子とヤって嘘かほんとか見極めてやるよ!」
「ふざけるな!!」
僕が思わず立ち上がってビタロの胸ぐらを掴むと、ビタロはヘラヘラと笑いながら僕の肩をポンポンと叩いた。
「まぁ、おちつけって。どうせ処女じゃないんだし今更俺が味見したって大差ないだろー?んーっと家柄的には公に付き合うのに問題があって?高位貴族で?頭良くて美人?いや、そんなの実際いたら目立つからすぐわかんぞ?まず、公に付き合えないっつーならお前の家とは派閥の違う第一王子の派閥か?」
ビタロは僕に胸ぐらを掴まれたまま楽しそうに一人で推理ゲームを始めた。
ダメだ。
コイツは。
勝手に都合のいい解釈をして僕の話を何一つ聞く耳持たない。
相手にするだけ時間の無駄だ。
「シねクソゴミ下等生物。どうせお前には一生わからないよ。」
僕は胸ぐらを掴んでいた手を離すと、立ち上がった拍子に膝から落ちたバスケットと手提げ袋を拾い上げるとそのまま教室へと歩き出した。
「あはは!こわぁ!口悪ぅっ!その綺麗な顔で暴言吐かれたらゾクゾクしちゃうじゃんっ!本当ルディくんは冗談が通じないんだからなーもう」
何がそんなに楽しいのか僕には全く理解できないが、ビタロはケタケタと笑いながら僕の後について歩き始めた。
さっき姉さんに言われたことを僕はどう受け取っていいのか全くわからないでいた。
姉さんにセフレ?
姉さんがセック◯大好き?
そんなの嘘でしょ。
そう思いたいけど。
昨日の姉さんを思い返せば完全に否定はできない気もして全身にズクズクとした嫌な脈動が走る。
ずっと姉さんがアイツに色々させられてるから慣れているのかと思っていた。
それですら吐きそうなくらいに耐えられなくてアイツをコロしてやりたいと思うのに。
アイツと初めて関係を持ったのが僕とした『あの日』?
それが本当だとしたらどう考えてもあんなに姉さんが慣れてるのはおかしすぎる。
姉さんの言ったことを否定するための言葉はたくさん頭に浮かんでくるけど。
結局あの凄まじい姉さんとの行為を思い出すたびに胸の奥が痛んでその言葉たちは全て崩れ去る。
そして姉さんが言ったことが事実であると言う解だけが頭の中に浮かび上がってくる。
でも僕は結局それを受け入れられずにまた思考が姉さんの言った言葉を否定するところに戻る。
さっきからずっとその繰り返しだ。
それに、あれが嘘じゃないかもしれないって思ってしまう理由は姉さんがソウイウコトに慣れているってこと意外にもあった。
姉さんと言う人はこんな大博打的且つ誰かを傷つけるような雑な嘘のつき方はしない。
たとえアイツのことだとしても、あんな利用するような言い方、姉さんは嘘でも言ったりしない。
もし姉さんが嘘をつくとしても、いつも人を傷つけないための優しい嘘だ。
なんなら、事実であっても姉さんはそもそもあんな人を傷つけたり貶めたりするような事を口にする人ではないのだ。
そう、さっきの姉さんは嘘とか本当とか以前に僕の知っている姉さんとはかけ離れすぎていた。
だからこそ、余計に頭がぐしゃぐしゃになって何もわからなくなる。
何が嘘で何が本当で、僕の今まで見てきた姉さんはどこまでが本物でどこまでが偽者なのか。
でもこの整理がつかない頭でも一つわかることは。
姉さんは完全に僕を切り離しにかかろうとしてるということだ。
最後の一言で察した。
「もし私に『何か』するつもりなら、私にも『考え』があるからね?」って言葉。
僕が具体的に何をしたかまでは気づいていない様だったけど。
頭のいい姉さんのことだから、僕が『何か』をしくんでやってることに気づいたのだろう。
まあ僕も姉さんの優しさに漬け込んで大胆にやりすぎたのもあるけど。
でも今までの姉さんだったら、それくらいしても僕が反省したそぶりで頼み込めばすぐに丸め込むことができた。
それなのに今日はその隙すら全く与えてもらえなかった。
それに『考えがある』って言葉。
あれの意味もすぐに察した。
たぶん姉さんはこれ以上僕が姉さんに干渉すると『魔法で記憶を消す』という脅しだろう。
姉さんの魔力があればそれくらい簡単だ。
初めて姉さんとしちゃった日も、僕は記憶が消されると思ったくらいだ。
だってそれが1番僕を諦めさせるのに手っ取り早い上に僕との関係性も拗れずにいられる。
僕が姉さんの立場だったら迷わずすぐにそうするだろうし、合理的な姉さんはそれを選んでもおかしくないと思った。
けど結局姉さんは優しくて僕を許してくれたし、自分も悪かったとさえ言った。
完全に暴走しちゃった僕が悪いと僕ですら自覚してるのに。
姉さんは真剣に僕の気持ちに向き合ってくれた。
姉さんは結局そう言う人なのだ。
だからこそ、今日の姉さんの態度は意外すぎて何も言葉を挟めなかった。
まるで知らない人のように見えて、寒気さえした。
そして、そのおかげで本気で『記憶を消す』所まで視野に入れているんだということも悟ったのだ。
これ以上踏み入ると本気で僕の気持ちを全て無かったことにするぞと。
まぁでも魔法で他人の記憶を消すのは医師免許を持った医療行為以外は法律で禁止されている。
強い洗脳系の魔法だからどんなに上手くやっても多少なり痕跡も残るって聞いた事があるし、見る人が見れば魔法をかけたことがバレる可能性だってある。
だから姉さんとしてもそれはおそらく本当の本当にの最終手段として考えているのだろうとは思うけど。
でもやっぱり、ここまで冷静に考えていろいろ導き出せるのに、先ほどの姉さんの暴露がいまだに信じられない。
冷静に考えれば考えるほど、姉さんが言ってることの方が正しい気もするのに、言い知れぬ不安が込み上げてそんなはずないと思ってしまう。
結局僕は、信じたくないんだ。
だってもし、姉さんが言ってることが本当だとしたら、僕が今まで見てきた姉さんは僕の『知ってる姉さんではない』と言う事になるんじゃないだろうか。
そうなると僕は姉さんが言うように、『ずっと騙されていた』と言う事になるのかもしれない。
あの僕を撫でていた手も。
抱きしめてくれた腕も。
温かい笑顔も。
優しさも。
全部全部。
他の見知らぬ男たちにも向けられていた、穢れていたものだなんて。
姉さんを性欲の捌け口としか見てないゴミみたいな低レベルの男たちにもあれが向けられていた…
あぁ。
だめだ。
やっぱり無理だ。
そんなこと受け入れられるわけがない。
これ以上考えると吐き気がする。
やっぱり姉さんがさっき僕に言ったことは全部全部僕に姉さんを諦めさせるための嘘なんだ。
そうに決まってる。
そうじゃなきゃ…
僕は姉さんを絶対に許せない。
◇◇◇
「よぉ。久しぶりっ!昼飯でもどーよ。」
僕が教室の窓際の席でぼーっと外を眺めていると急に横から話しかけられた。
声が飛んできた方に視線だけを移すと、同級生のビタロが昼食の入った紙袋を僕の前に突き出して立っていた。
コイツは入学してから去年までずっと同じクラスで、事あるごとに絡んでくるので適当に相手をしていたヤツだ。
今年に入って初めて別のクラスになったので、腐れ縁もここまでかと思っていたが、わざわざ隣のクラスからここまできたようだ。
僕はめんどくさくて無視をしようと思ったが、ふと少し考えて、自分の鞄から昼食の入った布袋を引っ張り出して立ち上がった。
「え?なに?今日は素直についてくるのな?」
ビタロはニヤニヤしながら何かを探るように僕を見てきたので僕は無視して歩き出した。
◇
ビタロと昼食を取る時にいつも使っている人気のない校舎裏のベンチに着くと僕は無言で腰を下ろした。
するとビタロもドカッとぼくの隣に雑に座った。
「いやぁーさすがルミナーレ公爵家サマは連日すごいねぇ?話題を次から次へと作ってくれて世間を飽きさせませんなぁ?」
ビタロが紙袋から取り出したパンを齧りながらヘラヘラとわらって煽るような口調で話題を振ってきた。
「まぁ、僕以外だけどね。」
僕はボソッと呟きながら、自分も布袋からうちのお抱えシェフが作ってくれたサンドイッチの入ったバスケットを引っ張り出した。
今日はこの学園毎年の恒例行事である、新学期の魔力・身体測定と健康診断の日だった。
そのせいで僕のクラスでもミーチェと姉さんの話題で持ちきりだった。
なぜなら当然の如くあの二人は魔力測定でとんでもない数字を叩き出したからだ。
ミーチェは総合的な能力も高めだが、何より光の魔力が学校創設以来の桁違いの強さだったらしいし、姉さんは姉さんで去年の自身の記録をはるかに超えた宇宙的な数字を叩き出したらしい。
ビタロはその事を言っているのだろう。
「いやいや、そんな卑屈になるなよ?あの二人は確かに論外だけど、ルディだって評価的にはSランクじゃねーの。うちのクラスの女子がキャーキャー騒いでたぞ?」
「卑屈というより事実だから。」
「ほんとお前褒めがいのないやつだなぁ?俺にも他の奴らに見せる『天使の微笑み』ってやつを向けて欲しいもんだねぇ?」
僕が適当に返すとビタロはやれやれと言った感じでオーバーにリアクションをとりながら僕を煽ってきた。
コイツは僕の素の顔をしってる唯一の知人だ。
それなのになぜか懐かれている。
いつもの外面の僕と話したいと思うなら理解はできるけど。
こんなつまんない反応の僕と喋っていて何が楽しいのだろうかと疑問でしかない。
「で、どうよ?つかった?あの薬。」
突然ビタロが声を潜めて僕の耳元で囁いた。
やっぱりこれが聞きたかったから今日わざわざ僕を訪ねてきたんだなと思った。
こいつは勝手に僕の事を誘導尋問して『長年片想いに苦しんでいる』と決めつけ他挙げ句、春期休暇が始まる直前、「休み中にこれで落とせよ」と言って、あの例の媚薬を押し付けてきた。
あぁ、そうか。
今僕が悩んでるのも全てコイツが元凶と言っても過言ではないのかもしれない。
昨日自室に戻った僕はあれから姉さんと全く話せていなかった。
お父様の仕事も手伝う気にもなれず、部屋にこもってずっとぐるぐるとあのことについて考えていた。
そして今朝登校するときも、ミーチェがいる手前笑顔は取り繕いはしたが、姉さんと朝の挨拶のハグもする気になれず目すら合わせられなかった。
もちろん馬車でもだ。
したり顔でアイツは姉さんの隣に座ったけど、僕はアイツに噛み付く気も起きずに窓の外を眺めるしかできなかった。
それもこれも、こいつがあんなものをよこさなければ。
あの日、僕はあの薬をつかって『あんなこと』をしなかったのかもしれない。
いや…
でもむりだな。
あの日のあんな状態の姉さんを見たらいずれにせよ冷静さを失って何かしらをしていただろう。
薬がなければあんなふうに姉さんに手を出すことができなかっただろうから、そしたらアイツをコロしにいっていたかもしれない。
それよりかは姉さんと身体を重ねられたことの方が結果的に良かったのかも。
僕は口に入っていたサンドイッチを飲み込むとため息をついた。
「お前とんでもないものを僕に押し付けてくれたよ」
すると僕の反応を見たビタロが目を見開いた。
「え?まじ??ってことはつかったのか??」
「まぁ成り行きで」
僕が答えるとビタロは心から楽しそうにケタケタと笑い出した。
「いやぁ!!まさかおまえが本当に使うとはなぁ??ってことはアレか??ついに童貞卒業か??おめっとさん!すんごかったろ??」
僕はビタロの品の無い言葉の数々にイラッとしてちっと舌打ちをして無視をした。
しかしビタロはそんな僕の様子を全く気にせず話を続けた。
「秒で両思いになれたろ?女だって結局肉欲には抗えねんだからさー?」
女だって…
結局肉欲には抗えない…?
『私、セック◯大好きなんだよね』
ビタロのせいで昨日の姉さんの言葉がフラッシュバックして僕は首を横に振ってその思考を振り切った。
すると僕の様子を見たビタロが訝しげに僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだよ?まさかダメだったとかいわねぇよなぁ?」
そこまで口にしてビタロはハッとして口元を手で押さえて僕に憐れむような視線を向けていた。
「あぁ…それともあれか?お前が勃たなかったとか?それはまぁ…ご愁傷様…」
「あほか」
「じゃあなんだよ」
僕が思わず突っ込むと、ビタロはホッとしたように肩を落とした。
僕はそんな様子のビタロを横目で見ながらしばらく考えてビタロに僕が理解できない『コレ』を聞くべきか迷った。
今日わざわざビタロについて来たのは、『コレ』をビタロに聞けば姉さんがなぜ『あんな嘘』を言ったのか、心理を理解できるかもしれないと思ってしまったからだ。
僕は仕方なく腹を括って口を開く。
「お前は…なんで婚約者も決めず特定の彼女すら作らずセフレと遊んでんだよ」
「は?急になに?珍しく俺に興味持ってくれんの?今日雪でもふるんじゃねー?」
ビタロは目をまんまるに見開いて僕を見つめて来た。
ちっ。
だから聞くの嫌だったんだよ。
どうせ茶化されると思ったから。
「聞いた僕がバカだった。」
僕がイラッとして吐き捨てるとビタロは慌ててブンブンと顔の前で手を横に振った。
「あ、うそうそ!ごめんって!ルディに興味持ってもらえたなんて嬉しくてつい!いやなんでって?そりゃめんどくさいの抜きしにして気持ちイイことしたいからだろ?」
「めんどくさい…?相手の気持ちがか…?お前いつか刺されるんじゃない?」
僕は耳を疑った。
めんどくさいってなんだよ?
ああいうのはお互いの想いが通じ合ったその先にある行為だろ?
いや、姉さんを無理やり襲ってしまった僕が言うのもなんだけど…
でも姉さんも僕だからこそあんなことしても受け入れてくれたんだと…思う…
「いやいや、逆だろ?お互いそういう合意のもとでやってるから健全よ?逆にお前みたいな超ベビー級の気持ち拗らせてる方があぶねーだろ?」
ビタロは鼻で笑いながら僕に返した。
その言葉に僕は思わず口をつぐんでしまった。
流石に自覚はある。
自分の愛が重すぎるということに。
愛しいはずの相手をコロしたいほど憎らしく思ったり、愛しい相手の周りにいる男どもを本気で全員コロしてやりたいと思うのは、普通じゃないって事くらいは、流石の僕でも分かる。
だって世の中の人がもしみんなそうだとしたら、この世界は犯罪者だらけだ。
単純にそうじゃないってことは、きっとみんな僕とは気持ちの形が違うんだろうとは思う。
でも僕の中ではこれしか知らないのだ。
周りがどうやって恋愛してるのかもしらないし。
自分に向けられた気持ちにも興味がない。
なんなら唯一、1番身近で恋愛しているあのクソ野郎も僕と同じ人種な感じがするから参考にならない。
だから僕には一般的なモノがよくわからなかった。
僕が黙りこくっていると、ビタロは僕の表情から何か察したようで急に真面目な顔になって口を開いた。
「なんだよ、お前も一応自覚あんじゃん?まあでも…おまえの想い人は『高貴で聡明で美人な完璧なご令嬢様』なんだろ?しかも幼い頃から婚約者がいるとなったら誰も手出しできてないだろうし。そういう『この世の汚いもんなんも知らない純情なお嬢様』にはお前みたいなちょーっとばかしあぶねーやつの方が色々守ってやれるからお似合いなんじゃねーの?」
「この世の汚いものをなにも知らない純情なお嬢様…」
僕は思わずビタロの言葉を復唱してしまった。
するとビタロはまた訝しげな顔で僕の顔を覗き込んだ。
「ん?なんだよ?さっきから?いつも以上にテンション低いなぁ?ツーか、アレ使ってヤったのはヤったんだろ?すぐ落とせただろ?そんなうぶそうなお嬢なんて一瞬だろ絶対。」
「落とすって僕に惚れさせるってこと?アレはそう言う作用は無いだろ?」
僕がため息をつきながら言葉をこぼすと、ビタロは余計にわけがわからないと言った様子で首を傾げた。
「え?いや、確かにアレは『惚れ薬』みたいな御伽噺に出てくるような『気持ちを操作する』効果はねーけどさ。アレでキメセクすれば実質惚れさせられるようなもんじゃん。リピしたがらないやつなんて出会ったことねーよ??ウブなら尚更快楽イコール愛情みたいな感じでどハマりするだろ?え、どれくらい入れた?あー、その人魔力高い人なんだっけ?たまに抵抗力強いやついるけどまあ数滴入れりゃもう無理だろ?」
ビタロが僕があまり多くを語らないことにヤキモキしたのかアレコレと質問を投げかけて来た。
数滴…?
たしかに数滴入れても効くには効いた。
でもそれも中に出せばそれで終わりだ。
なんなら、初日は数滴なんてもんじゃ無い。
「一本丸々入れた。」
それでも姉さんを落とすなんてできなかった。
ビタロが使った相手がことごとく尻軽女だっただけだろ?
「はぁ?!」
僕がボソッと呟くと、ビタロは急に大きい声を出して立ち上がった。
「いっぽんまるまる??ちょ、おま?は!??相手廃人にする気かよ???渡したとき言ったろ??数滴だけにしないと劇薬だからやばいって。」
「使うつもりなかったからそんなの覚えてないよ。」
焦るビタロに僕は変わらず淡々と返した。
何をそんなに焦ってるんだろうか。
姉さんはリピートなんてしてくるどころか、なんなら昨日はっきりと僕を切り離そうとした。
ビタロは大袈裟すぎるんじゃ無いだろうか。
「おい、めんどくせーことになったなぁ??そんなお貴族様のご令嬢廃人にしたら薬の存在公にばれるぞ??俺が渡した責任もあるけどさー?おいおいやってくれたなー。クソー…家にあんのとりあえず今日全部すてっかー?」
「廃人?まさか?確かに薬の効き目は凄かったけど。次の日何事もなかったようにケロッとしてたよ。」
あまりにもビタロが本気で頭を抱えながら冷や汗をかいて焦り出したので、僕は首を傾げながら返した。
するとビタロは信じられないと言う様に目を見開いて正面からガシッと僕の両肩を両手で鷲掴んだ。
「はぁ??!!その子何もんだよ??!え??つーかじゃあなんだよ??それでも尚落とせなかったってことか???そんなわけある??はは!なにそれ??その子とんでもない化け物級のヤリマンビッチだったとか???」
僕は聞き捨てならないビタロの発言にイラッとして彼を睨みつけて肩に置かれた手を振り払った。
するとビタロは僕の表情を見て真顔で固まった。
「え、まじか…冗談のつもりだったのに…あ、そう言うこと?だから俺にセフレがどうのって聞いたの…?」
そこまで呟いてビタロがぴくっと眉端を上げニヤリと笑った。
僕はまずったなと思ってため息をついた。
コイツは勘がいいから本当に厄介だ。
「なぁ、逆に何その子、だれ?もういい加減に教えてくれたっていいだろ??面白すぎるんだけど??俺会って色々話したいんだけど!」
「おい、ふざけるなよ?」
ビタロは好奇心旺盛だからすぐ首を突っ込みたがるのが本当にうざい。
まぁでも僕が誰を想ってるかなんてコイツに一生わかるはずがないから、コイツが姉さんにたどり着くことはあり得ないけど。
もしたどり着いて手でも出そうものなら問答無用でぶちコロすけど。
「いやだって、そういう意味だろ?やってみたらヤリマンだったから落とせなかったっツーことだろ?で、逆に童貞美味しくいただかれたっつーこと?そんな子お前には向いてねーって!これはお前のために言ってんだよ?分かるだろ??その子俺の同類だろぜったい。」
「お前と一緒にすんな!!違う…そうじゃない…!アレは僕の気持ちを諦めさせるための嘘って可能性だってまだある…」
思わずカチンと来て僕は声を荒げた。
同類?
お前みたいな下半身でしか生きていない下等生物と姉さんを一緒にするなよ?
姉さんは優しさから仕方なくあんな嘘をついたんだ。
アレは嘘。
絶対そうだ。
「まぁまぁおちつけって?だってもちろん処女じゃないだろその子?」
僕の感情を逆撫でするようにビタロはニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながら僕に聞いて来た。
処女じゃないのは、確かにそうだ。
けどあれはあの日アイツが無理やり奪ったんだ。
あの日…
「あっはっは!!やっぱそうじゃん!やっばー!」
僕が黙ってビタロを睨みつけているとビタロは僕の表情で勝手に解釈をして決めつけて来た。
本当にコイツはこう言うところがうざい。
「いやぁ…しかし狂ってんなー!その人。そこまで高位貴族でそんなセフレいる様な人だったら俺の耳に噂くらい入って来そうなもんだけど…さっぱり見当がつかねーな。」
「だからそれは…僕を諦めさせるためについた彼女の嘘だっていってるだろ。噂なんて立つわけない…」
僕が呟くとビタロはため息混じりに口を開いた。
「この状況でまだそれいう??いや、それが仮にハッタリだとしたら、そんな嘘つかれてる時点でお前相当嫌われてね?どのみち脈ねーんだからダメだろ」
「そんなことはない!ただ…関係性が問題だから優しさで僕を諦めさせるために…自分を貶める嘘をついてるだけだ…」
コイツはいちいち僕をイラつかせることを言ってくる。
「頑なだなぁー。そーゆーとこがこえーつってんのよ。あーじゃあわかった。俺一回その子とヤって嘘かほんとか見極めてやるよ!」
「ふざけるな!!」
僕が思わず立ち上がってビタロの胸ぐらを掴むと、ビタロはヘラヘラと笑いながら僕の肩をポンポンと叩いた。
「まぁ、おちつけって。どうせ処女じゃないんだし今更俺が味見したって大差ないだろー?んーっと家柄的には公に付き合うのに問題があって?高位貴族で?頭良くて美人?いや、そんなの実際いたら目立つからすぐわかんぞ?まず、公に付き合えないっつーならお前の家とは派閥の違う第一王子の派閥か?」
ビタロは僕に胸ぐらを掴まれたまま楽しそうに一人で推理ゲームを始めた。
ダメだ。
コイツは。
勝手に都合のいい解釈をして僕の話を何一つ聞く耳持たない。
相手にするだけ時間の無駄だ。
「シねクソゴミ下等生物。どうせお前には一生わからないよ。」
僕は胸ぐらを掴んでいた手を離すと、立ち上がった拍子に膝から落ちたバスケットと手提げ袋を拾い上げるとそのまま教室へと歩き出した。
「あはは!こわぁ!口悪ぅっ!その綺麗な顔で暴言吐かれたらゾクゾクしちゃうじゃんっ!本当ルディくんは冗談が通じないんだからなーもう」
何がそんなに楽しいのか僕には全く理解できないが、ビタロはケタケタと笑いながら僕の後について歩き始めた。
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