この恋は始まらない

こう

文字の大きさ
上 下
16 / 111

第十一話・ちょっと忙しい夏休み

しおりを挟む
学校が休みになって、数日が経過していたが、何事もなく静かなものだった。
小日向や白鷺は仕事や部活の日々が多く慌ただしいようであり、秋月さんは両親に会いに海外へ行っていた。
萌花は暇そうだけども、直接的な繋がりが薄いので、互いに生存確認するくらいの当たり障りない連絡をしていた。
自宅のリビング。
クーラーの効いた部屋で、一人で素麺を啜りながらお昼の情報番組を見ている。
最新女性向けコスメや最新ファッションが気になるとか、心はもう女子だな。
「あらあら、夏休みなのに家でだらだらしているなんて、今時の子はインドアね……」
母親はヤジを飛ばしてくるが。
地獄のようにクソ暑いのに、陽菜みたく真っ昼間から外を出歩くのは無理だっての。
遊びに行く予定があればいいが、そんなものは陰キャの俺にはない。
朝昼晩は絵を描くのに忙しく、夏コミの準備が終わっても色紙を描いたり、日々の宣伝をやっていたりする。
ツイでの宣伝では、メイドとファッション関係のイラストを載せる必要があるため、倍以上に労力がかかっていた。
色紙を描くのも大変で、欲しい人には制限なく受け入れていたせいか、鬼のような注文数になっている。
小日向のファンだったり。
白鷺のメイド仲間だったり。
色々な人から注文を受けるのは初めてだ。
彼女達と出会わなければ、ここまでサークル活動も頑張っていなかっただろう。

いや、頑張っているとは思うけどさ。
一週間あまり経過したのにリアルでは何もしてないじゃん。
何なら例年通りの夏休みと変わらない。
ずっと一人で黙々と絵を描いてるだけだ。
同人作家なら、本望なんだけどさ……。
「ハジメちゃん、少しは出掛けたら? ずっと家に居たら身体を壊すわよ?」
「母さんも家にいるじゃん」
「ママはヨガしているから。あ、ハジメちゃんも一緒にする?」
「いや、出掛けるわ」
何が悲しくて母親とヨガしないといけないんだ。
母親がピチピチの衣裳着てヨガしている姿など見たくもない。


それから一時間後。
『暇なう』
コンビニで立ち読みしていると、萌花から暇そうなラインが飛んでくる。
『コンビニで漫画なう』
『お? 東っち、一人じゃないん?』
『家から追い出された』
『マジワロピ。暇なら駅前来てよ』
あれ?
萌花の地元は三駅くらい隣じゃなかったっけ?
こっち来ているのか?
『ウチの駅でいいのか?』
『ヽ(・ω・)ノ』
わかんねぇ。
対面で話す分には問題ないが、ラインで会話しているとギャルのテンションについていけない。
そして、絵文字の意味がよく分からんことが多い。
返信して詳しく聞いても、会話が二転三転しそうだな。
とりあえず暇だし駅前まで行くか。


改札前で待っていると、改札から萌花が現れる。
わざわざ地元から出てきたみたいだな。
「やーやー、東っちおまたせ」
私服姿は互いに初めてだった。
だが、何だ。
萌花の私服は夏の暑さもあってかラフな格好で似合ってはいるが、メスガキファッションにしか見えない。
タンクトップに、ショートパンツ。
露出度が高過ぎる。
肩が丸見えだ。
「ウケる! 東っち、シャツの柄クソダサ!」
シャツは適当だ。
そこに上着を羽織って誤魔化している。
そもそもコンビニ行くだけの格好だから気にしていなかった。
「いや、もえもやばいだろ」
「は? もえは、めっちゃ可愛いし」
「そういう意味じゃなくて。服を引っ張ると胸元が見えているから、止めなさい」
俺に前科を付ける気かこいつ。
タンクトップなのに、強引に近付いてくる。
「ざっこ。もえから目を反らすなんて、えっちな目で見ているんでしょ?」
メスガキファッションだけではなく。
まごうことなき、メスガキだな。
「それはないわ。ほら、俺の上着羽織っておけよ」
「え~、汗臭そう」
下ろし立てだから、一時間しか着てないっての。
「他人に胸元見られるよりマシだろ」
「気にしないけど」
いや、それは女性として気にしろよ。
強引に上着を羽織らせる。ダサいからか、ボタンは頑なにしなかった。
「少しは女性として気を遣いなさい」
「東っちじゃなくて、真面目っちじゃん」
「いや、意味分からん」
「それでどこ行く? お昼ごはん食べた?」
切り替え早いな。
「すまない。素麺食べたから、腹は減っていないな」
「じゃあ、マックでも行く? ずっと駄弁れるし、クーラー効いてるよ。コーヒーも安いし」


それからマックに移動して、テーブルを確保していた。
萌花が自分の分と一緒に飲み物を頼んでくれるので、座って待っていた。
「お待たせ! はいよ、アイコーブラック」
「ありがとう」
「ブラックで飲むの好きなん? 美味い?」
「え? 美味いじゃん。萌花はコーヒー飲めないのか?」
「飲み物は、甘いやつ以外は許さん」
「甘いものばっかって、糖尿病になるぞ」
「そもそも美味しいの飲みたいのに、苦いのとか、水とか炭酸水飲む意味が分からないっての」
俺とは真逆な人間だな。
リラックスしたい時はコーヒー。
食事中は水とかお茶ばかりで、甘いジュースはそんなに飲まない。
萌花は続けて、コンビニなどの高い飲み物なのに、わざわざコーヒー飲むならコスパがいいやつ飲んだ方がいいとか言っていた。
「分からんでもないが、そこまで熱くなるものかね? 俺だってコンビニのタピオカ飲むなら、コーヒーSサイズ三つ買えるじゃんとか思うけどさ。一々口に出すのもアレだろう?」
「コンビニのタピオカ! アレってこんにゃくらしくて、偽物じゃん! タピ要素ないじゃん!!」
やべぇ。
地雷踏んだらしく、もっと煩くなった。
超どうでもいいような食べ物の話で、こうも語り出すとは思わなかった。
怒れる萌花に燃料を投下するかの如く、ラインにグループ写真投稿される。

『アメリカのハンバーガー大きい!』

「あのおっぱいめ! マウント取ってきやがってる!」
ひがみやんけ。
「こっちはマックで我慢しているのに、笑顔でハンバーガー頬張る必要ある?!」
「知らんけど。楽しんでいるならいいんじゃないのか? お土産も買ってきてくれるし」
「おうおう、こっちも対抗するしかないっしょ! 東っち、もえのスマホで写真撮って!」
スマホを押し付けてくる。
対抗するのはいいが、勝てる気がしない。
あっちは本場の肉汁溢れる分厚いハンバーガーで、こっちはマックだ。
マックのてりやきバーガーが如何に美味いとしても、本場アメリカンと真っ正直から殴り合いしたら負けるだろう。
萌花ほどのずる賢いメス……じゃなく、聡明な女性なら、それくらい理解していそうだが。
「ほら、写真撮ったぞ。これでいいのか?」
「でかした!」
これを、こうして。
『マックなう!』
いや、普通……。
何の捻りもない。
『てりやきバーガーいいなぁ。私はサルサソースのタコス食べたよ!』
仕事中の小日向が反応していた。
スタッフと一緒に食べてる写真を送ってきた。
天然でマウント取ってくる。
暇なのか、あいつ。
『萌花もハンバーガー食べてるんだ。てりやき好きだよね。家族と?』
『東っちとマックや』
『裏切り者』
『なんで二人で遊んでるの? 仲良かったっけ?』
返信速度上がってるやん。
小日向は、怒りスタンプ使ってるし。
『本場アメリカのハンバーガーも、渋谷のタコスもメッチャ美味いだろうけど、この勝負。もえの勝ちな』
いや、意味分からん。
何と張り合っているんだ?
怖いから俺はラインの会話には参加しないけど。
「ふうとれーなは弄るとたのしー」
「秋月さんにリアルで怒られるぞ」
「大丈夫! れーなはアメリカだし、まだ帰らんやろ」
それフラグだろ。
物理的に怒られないからと、調子に乗っているが、こういう奴には確実に天罰が下るものだ。
数日間の間が空けば、許されると思っているのだろうか。
『あ、そうだ。今日の夜には日本に戻るからよろしくね』
『ま?』
儚い天下だな。
ちゃんと怒られてこい。


それからだらだらと連絡しつつ、マックで駄弁っていた。
萌花には年の離れた兄がいることや、漫画やゲームなども好きで、ゆっくり実況やクソゲー動画が好きだったり。
「へえ、意外だな。男子が好きな女の子みたいな趣味してるな」
「なんそれ」
「ぶつ森やってそう」
「お? 東っち、喧嘩売ってるん?」
そこそこ真面目に切れてるし。
「いや、ごめん。漫画だと何が好きなんだ?」
「んあ? えーとね、メジャーどころだと。バキと、キングダムと、ワルキューレと、ヒロアカかな」
こいつの身体には武将の血でも流れているのか。
血気盛んなバリバリの戦闘漫画ばかりだし、何なら男の子が惚れるくらいのラインナップだ。
この手の漫画を語れる女の子は、引く手あまたである。
「ちなみに漫画とアニメどっち?」
「両方見てるよ」
ただのガチファンじゃないか。
完璧にこなしている。
真顔で答えるくらいに当然のことだと言いたいのだろうが、メジャー級の漫画だけあってか、単行本の巻数は以上に多いし、アニメなら三期までやってたりするレベルだ。
莫大な時間を費やしていないと、完走は出来ない。
「東っちはなに好きなん?」
「俺はちょっと昔の漫画が好きだから名前を言っても分からんと思うよ」
「わかった! メイドが出てくるやつ?」
「いや、メイドさんが出てくる漫画はないな」
「メイド好きなんじゃないん?」
「いい作品は多いけど、メイド単体の漫画は少ないしさ。そもそも同人作家は自給自足する生物だからね?」
漫画に出てくるメイドキャラは好きだけど、メイド服のデザインとか妥協したくないし。
メイドスキーさんくらいの商業作家さんなら熱量が凄いが、愛好家ごとに好む微妙なデザインの違いとか、スカートの丈の長さとか、自分だけの拘りがあるメイドリストには、同人誌を自給自足しないと生きにくい世界なのだ。
メイドガチの人は、一コマしか登場しないティーカップのデザインで一時間作画に費やす狂人もいる。
「めっちゃ語るやん。ふうと波長合うくらいだし、東っちもかなり狂ってんね」
「そんなことないぞ。あと、あいつとは波長合ってないから」
「めっちゃ美人でモデル級の女の子と、凄く暗くて地味だけどメイド服着てくれる女の子ならどっち好き?」
いきなり二択。
「いや、普通に地味な女の子だろ」
「いやいや、メイド絡んでるからでしょ。ふつーは美人選ぶよ」
めっちゃ美人な女の子選んでもなぁ。
正直、見た目はあんまり気にしないのと、美人にまともな奴がいないのをよく知っている。
美人は性格が悪い。
とは言わないが、一癖ある人間を好んで選ぶのはちょっと嫌である。
「美人はなぁ……」
「男は顔やろ」
「周りの美人を見てみろ。選ぶか?」
「あーね! やべぇやつしかいないわ」
子守萌花だけに、あいつらの子守りしてそうだしな。
幼稚園児みたいにはしゃぐやつもいるから大変そうだ。
「でもさ、みんな良い子だよ。ピュアだし」
「ピュア過ぎるんだよ」
「守護らねば系女子だね!」
「そんな◯◯女子は嫌だわ……」
「え~、でも、東っちはお兄ちゃんキャラだし、色々やってあげるの好きっしょ? 妹系女子とかは?」
「……それはないわ」
実妹だけでもきついっす。
妹のやばさを知っているのに、何で他の奴にもお兄ちゃんしないといけないんだよ。
肉親ですら嫌なのに、赤の他人に対して世話など焼けない。
妹系女子とか、地雷中の地雷だ。
「妹といると妹系女子嫌いって言うよね。なんでだろ?」
「なら、逆の立場に立ってみろよ。兄系男子好きか?」
「ありえねーし。そんなん居たら、ぶち殺すわ」
萌花の兄は嫌われ過ぎだが、同じことである。
陽菜みたいなやつは正直嫌だ。
わがままだし、重度の甘党だし、テンション上がると奇声上げるし。
凄く地味な女の子を選ぶ理由はそこにある。
地味ってことは普通の子だし、安寧の日々を破壊しないって安心するよね。
「そもそも何でこんな話をしているんだ?」
「JKの話は大体恋バナっしょ」
「恋バナって、お前等彼氏いないじゃん」
「あ? しばき倒すぞ」
マジギレやん。
ドスが効いた声だった。
「ぶっちゃけ、学校にイケメンいないんだから仕方ないっしょ。煽るんだったら、イケメン連れて来いっての」
「知り合いにイケメンはいないわ」
「マジかー、残念」
「そもそもどんな奴がタイプなんだ?」
「えー何だろ? イケメンで、優しくて、お金持ちがいいな。漫画好きも外せないかな」
貪欲過ぎだ。
せめて一つや二つにしておけって思う。
そもそも高校生に資金的な部分を持ち出すのもアレだと思うわけで。
「もえの彼氏は大変そうだな」
「まさか! メッチャ楽だよ。彼ピ出来たらズッ好きだし、毎日会いに行くし、今世紀最大の一途女子や!」
「うん。そうか。でも、自分で言うのは違うんじゃないか?」
萌花は案外真面目だから、誇張しているとは言わないが。
今世紀最大ではないな。
マックが似合う今時の女の子って感じであり、自由恋愛するタイプだ。
まあ、イケメン好きなのはどうかと思うけど、一途なのは断言出来るし、常識があり操は固いのでちゃんとした男性と付き合いそうである。
「あ、れーな九時過ぎに日本に着くってさ」
「へえ、早いな」
「朝一で飛行機乗ってたっぽいよ」
それでもアメリカから日本までは、半日ちょっと掛かるのか。
「夜遅くなると危ないし、空港まで迎えに行くかな。もえも来るか?」
「ま? 今から行くと数時間は暇になるよ?」
「着いたら着いたで暇潰し出来るだろうし、空港のショップ巡りしてみたいしいいんじゃない?」
「かもね。でも、遅くなるからってれーなの為に空港まで迎えに行くかねぇ。時間かかるし、かなり面倒じゃん」
「手間は掛かるけどさ、夜遅くに女の子を一人で歩かせるわけにはいかないからな。仕方ないよ」
「東っち、イケメンやん」
「いや、男性ならみんなやるだろ? 犯罪に巻き込まれたら危ないじゃん」
危ないことから女性を守るのは漢の誉れだ。
その結果、自分が苦労するとしても、最悪の事態になって危なくなるのに比べたらマシだろう。
最近は犯罪も多いからな。
特に夏休みは危ないのだから、一人で帰らせるわけにはいかない。
「いやいや、そこまでしないっての。れーな好きなん?」
「ああ、好きだよ。人として尊敬しているし、いい人だからな。秋月さんのこと、嫌いな人はいないだろう?」
「や、意味が違うっつーか。東っちと話して分かったわ。かなりめんでぃー性格してるね」
萌花はかったるそうにしながら、残りのジュースを飲み干す。
いや、友達迎えに行くのは普通だよ。
普通だよな?
萌花は絶対違うって顔していた。


それから電車で何本も乗り継いできて、空港まで迎えに来ていた。
まあ、秋月さんには連絡を入れてあるので、空港観光も兼ねて、二人で遊ぶことにする。
手持ち資金が少ないため、散財は出来ないが、高校生同士なのでウインドウショッピングで我慢する。
エリアマップを確認して、お互いに行きたい場所を探していく。
「東っち、展望台あるよ」
「無料っぽいし行ってみるか」
「お金ない学生って感じの発言がショボい」
言いたいことは分かるけどさ、仕方ないだろう。
俺と萌花の交通費だけでかなり高いんだから無駄遣いは出来ないのだ。
誘った手前、俺が出さないといけないしさ。
「足りなくなったら銀行から下ろすよ」
「だいじょーぶ。お金を使わない遊びも楽しいっしょ。とりま、展望台に行こっ!」
展望デッキに上がり、外の空気に触れながら景色を楽しむ。
少し肌寒いが、暑すぎるよりマシか。
「もえ、寒くないか? 大丈夫?」
「風が強いけど、問題ないっしょ。やべぇ、飛行機めっちゃでけぇ」
俺よりもテンション高いな。
空港初体験の田舎者感が強いけど、楽しんでくれていて良かった。
飛行機が行き来しているだけだが、それだけでも普通に楽しい。
こういう機会がないと来ない場所だからな。
「夜になると綺麗らしいぞ。パンフレットに書いてある」
「ま? じゃあ、時間空けてまた来ないとね。映画とかだと夜景はピカピカしてるし、ガチ綺麗っぽい!」
「夜は寒くならないといいけどな」
「その時は東っちに暖めてもらおっと」
「いや、しないって。夏の時期に抱き合うとか、汗だくだしやばいだろ……」
「愛の湿度も上がる的な?」
意味分からん。
付き合い長いバカップルでも、クソ暑い夏場に抱き合うのは中々の勇気がいる。
気にし出すといつもより汗臭い気がする。
まあ無理な話だな。
「ずっといると流石に暑いから中に戻ろうぜ? 飲み物を飲みながら休もうか」
「え~、早くない? まだ大丈夫っしょ」
「熱中症になると困るだろ?」
「東っちは、もえのオカンか」
ええ……。
地元のマックから水分補給していないし、気を遣ってあげたのに。
「もうちょい見ていくか?」
「んにゃ、中に入ってゆっくりする。また話そっか」
「了解。何を話す?」
「漫画描いてるんだし、その話をしてよ」
「もえからしたら、面白い話じゃないと思うけどいいのか?」
「え~、卑屈すぎ。東っちが好きなことなんだし、面白いはずだよ」
そう言ってもらえると有難い。
夜になるまでゆっくりと話すことにした。


九時過ぎになると、秋月さんはキャリーバッグとお土産を持って帰って来た。
「帰って来たよ~!」
「おつ~!」
萌花とハイタッチをする。
秋月さんは、嬉しそうにキャッキャしていた。
「東山くんも、わざわざ来てもらってごめんね」
「今日は暇だったから大丈夫だ」
「そうなの?」
秋月さんは萌花に問いかける。
萌花はさも当然の如く言い放つ。
「うん。デートしてた」
「は?」
「何を言っているんだ?」
「東っちと一緒にごはん食べて、お話して、ウインドウショッピングしたじゃん。夜景も観たし、これってデートじゃん」
「え? そうなのか? いや、普通に友達的なラフさだったよな?」
デートっぽいとか、そんな兆候なかったやん。
飯食べたとか、ある程度は事実だが。
そもそも、俺は萌花の好きなタイプですらないし。
イケメン好きじゃん。
「もえと一緒に居ると楽しいって言ってたじゃん。それはもうデートでしょ」
「萌花! また私をからかってるんでしょ!」
「やべぇ、バレた!」
「迷惑ばかりかけて! 帰って来た時くらいは真面目にしてよね! もう!」
アメリカ帰りで疲れているのに、秋月さんも大変そうだな。
「東山くんも同罪だからね」
「え、俺もですか……」
荷物全て持たされる刑に処された。
いや、まあ、最初から持つつもりだったからいいけどさ。
「あ! そうだ! れーな外人にナンパされた?」
「されてません!」
明日も明後日も騒がしいのだろうな。
それもまあ、楽しいか。
しおりを挟む

処理中です...