この恋は始まらない

こう

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第三十九話・正しい選択

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あれから一週間。
壮絶な日々を送ってきたが、あえて語るまい。
彼女達に似た両親故に、一筋縄では行かなかったが、温かく迎え入れてくれた。
結果として、彼氏として否定されたわけではない。
まあ、肯定されたわけでもないけど。
父親からしたら、愛娘を任せるに足る人間ではない。
十七歳そこらの学生には荷が重い。
圧倒的に経験値が足りない。
そう思っていたはずである。
学生がそんなものを持っているわけがないので、そこは加味して、親御さんは何も言わないわけである。
人間として足りない部分はこれから学べばいい。
そこは今後の課題だろう。


メイド喫茶シルフィード。
ここでもボロクソに弄られながらも、何だかんだ祝福してくれた。
メイドさん達や、常連の皆さんには感謝である。
コーヒーを飲み、少し落ち着いた頃。
我らがメイドさんが話し掛けてきた。
「ご主人様、五等分って知っていますか?」
「はあ、今人気っすね。なんすか」
「四人だと四等分ですよね? 足りないですよね」
だから何なんだよ。
五等分とか、四等分とか。
今それを言い出す理由が分からん。
なんや、このメイド。
「好きです! 私も花嫁に入れてください!」
「……意味わかんねぇよ」
何で花嫁増えてるんだよ。
この茶番劇を延々と続けられる俺と白鷺の身にもなってくれ。
そもそも五等分になるのヒロインじゃなくて、俺じゃねえかよ。
これ以上、身体とスケジュールを等分されたら俺が死ぬわ。
白鷺が引いている。
同じ人類を見る目ではなかった。
女性の中でも、色々な人間がいるのだろう。
「ご主人様。お嬢様、お邪魔致します」
「ぐえっ」
ダージリンさんが、メイド長の首を躊躇なく絞め落とした。
完全に意識を失ったのか、ぐったりする。
「すみませんでした。引き続き、お二人の時間をゆっくりお楽しみ下さいませ」
綺麗な会釈をして、メイドさんを引き摺って、バックヤードに連れていく。
もうあの人がメイド長でいいんじゃないか?
最近なんて、上に立つ者の品格というか、立場が逆転しているじゃん。
ダージリンさんは、メイドさんに負けず劣らずの美人だからシルフィードではかなりの人気があるし、無口な部分もコアなファンには受けがいい。
美人、多くは語らずである。
クーデレとか、そっちの類いの需要を満たしているわけだ。
うちの専属メイドにも見習ってほしいものだ。
まあ、メイドさんは馬鹿みたいな人だけれども、そこに助けられている部分は多いので嫌いにはなれない。
いや、そんなことないな。
白鷺はジッとこちらを見ていた。
「ん? 白鷺、どうしたんだ?」
「東山は好きなのか?」
「へ?」
「……ほら、リゼさんは綺麗だろう?」
はあ。
よく分からないけれど、嫉妬しているのだろうか。
指をいじいじ。
白鷺が、むくれていた。
最近の白鷺は、なんだか可愛いやつだ。
メイドさんはそりゃ綺麗な人だけど、それをいったら俺の周りには綺麗な人ばかりなわけだ。
普段から顔合わせしているからアレだが、普通にお前らの方が美人だと思う。
わざわざ可愛いとは言えないけど、そう思っている。
「別にあの人とはそういう関係じゃないし、気にしないでいいぞ」
「そうなのか?」
「今の俺は、白鷺達のことで頭がいっぱいだからな」
これ以上、問題ごとを詰め込んだらパンクするわ。
いや、しているのか。
こうして、秋葉原に出向いてコーヒーを飲む余裕を作るのも難しい。
四人もいるとやっぱり大変である。
とはいえ、俺が弱音を吐くわけにはいかないので仕方ない。
「まあ、何だ。私も東山のことで頭がいっぱいだぞ」
「ああ、うん。白鷺、ありがとう」
俺の言いたかった内容とは意味合いが違うけど、白鷺が喜んでいるならいいか。
生粋のお嬢様だし、素直な娘を悲しませるのは嫌だ。
白鷺の表情を見たら、違うとは言えない。
なんだか、今の白鷺がとてつもなく可愛い。
でも、勘違いして嬉しそうにしている姿を見ていると、罪悪感でいっぱいになる。
悲しませたくないものなんだがな。
……難しい。
「そうだ、白鷺。この後どうする? どこか行きたい場所でもあるか?」
秋葉原は慣れ親しんだ街なので、特に遊びに行く場所の予定は組んでいなかった。
毎回、白鷺はガチャガチャ好きだから、ラジオ会館やヨドバシに行くルートだけど、やりたいことがないかは確認しておこう。
「私は特にないな。東山はどうだ?」
「俺も特にないな」
「電車の時に、秋葉原でやりたいことがあるって言ってなかったか?」
「ああ、あれか。佐藤が紅茶好きだろ? だから、紅茶に詳しいメイドさんと話をしたかったんだがな……」
今となっては無理だろう。
バックヤードシメコロシされている。
完全なる死。
今日のうちに、メイドさんの意識が回復することはないだろう。
また今度訪れた時に聞くか。
「東山、私も紅茶には詳しいぞ……」
白鷺がそう言った。
少しびっくりした。
今までの経験から、白鷺がこんなに自己主張してくるとは思わなかった。
「そうだな。先に白鷺に聞くべきだったな」
「もっと私を頼ってくれて構わないからな」
「すまない。なんか、人に頼るの苦手なんだよな」
「苦手なのは分かるが、頼っていいのだからな。それに、私は東山の彼女なのだ。……女性とは、好きな人のためなら、多少なりとも手伝いたいものだ」
なんだこれ。
可愛い生き物過ぎる。
自分の言った言葉に照れている白鷺は、かなり乙女である。
赤面する白鷺さん。
可愛い。
同じ人類なのかってくらいに可愛い。
やばい。
彼女面する白鷺もいいものだ。
これはギャップ萌えが激し過ぎて、ふゆお嬢様親衛隊なら即死してしまう程の威力だった。
尊死。
魂が浄化する一歩手前で踏み留まる。
白鷺さんよ、全力でくるやん。
というのか、そこまで好いてもらう理由がよく分からない。
そんなに惚れられると、こちらまで顔が赤くなってしまう。
「まあそうだな。喫茶店のことをメイドさんに聞くのは近道ではあるけれど、せっかくだし俺と白鷺で色々調べてみるか」
「うむ! なら、本屋さんで調べてみようか」
頼られて幸せそうだ。
可愛い。


それから喫茶店を出て、一階にあるメイド服専門店。
シルフィードの店長さんに挨拶をしてから、本屋さんでカフェの書籍を探すことにした。
大型フロアの書店。
雑誌や漫画。専門書籍まで幅広く取り扱っていて、話題のカフェの雑誌を探すだけで結構時間が掛かってしまう。
二人で色々見てみたが、カフェの開き方や仕事の本は少ない。
タピオカブームとか、カフェブームも過ぎているから、減っているのだろうか。
キッチンカーでの初めてのカフェ。
白鷺が持ってきてくれた。
「これとかどうだろう?」
「あ~、キッチンカー人気だよな」
駅前や公園。
学校の校門前などでよく見かける。
俺達学生からしたら、結構利用しているので馴染みが深いか。
別にこの本を参考にして、キッチンカーを借りて開業するわけではないが、こういう小規模な飲食業は文化祭の延長線みたいで分かりやすい。
キッチンカーの中は小さいから、食べ物や飲み物の数をしぼって、提供時間の少ないものをチョイスする。
加熱や熱処理のいらないものなら、作り置きして販売することも出来るので、便利である。
文化祭の時は、食べ物は焼き菓子にしぼっていたように、カフェでは冷蔵のままでも美味しいベーグルやサンドイッチ。スコーンなどが人気だ。
お洒落な食べ物は女子人気もある。
カフェの本だけあってか、客単価が取れる商品や、品揃えにおいて必要なものなどを詳しく教えてくれていた。
カフェをやるのに必要な開業資金。備品や資格なども載っている。
「いや、これ普通に面白いな」
「ふむ。カフェの世界も深いのだな」
「次の文化祭でも活用出来そうだし、買っておくか」
キッチンカーの部分を文化祭の裏方に変えれば、ほぼ同じように活かせる。
こういう本があるのを知っていたら、文化祭の時に色々出来たのだが。
まだまだ、知識が足りない。
次の時にはもっと頑張ろう。
白鷺とそんな話をしながら、楽しんでいた。

すまない。
気付いたら、脱線しまくっている。
佐藤達のために本屋にきたはずなのに、私利私欲の為に本を漁り出している。
漫画に活かせそうな知識はどれだけあっても足りないし、知らないことを学ぶのは案外楽しいんだよな。
「白鷺、いい本あったか?」
「とりあえず、良さそうなものは抑えておいた」
五冊以上持っているけど全部買うつもりなのか?
ふゆお嬢様は冬コミでかなり稼いでいるので、万年同人苦学生の俺と比べて金持ちである。
……俺もチェキ出そうかな。
野郎の写真は需要ないか。
白鷺が頑張って稼いだお金なので、アニメグッズやガチャガチャで無駄遣いすることはないが、必要だと思ったものにはサラッとお金を出すやつだ。
友達のためなら、高いプレゼントも気にしないだろう。
よく見ると、カフェ以外の本も持っていた。
「ケーキやデザートの本はいるのか?」
「もう一月も終わるだろう?」
「え? 何かあったっけ??」
駄目だ、分からない。
誰かの誕生日とかあったか?
「ほら、この雑誌の文言を見てみてほしい」
白鷺は雑誌のキャッチコピーを指差した。
「ああ、バレンタインか」
普通に忘れていたわ。
そういうイベントとは無縁な人間だし、甘い物は苦手なのでチョコレートを買うこともない。
同じ豆ならコーヒー豆の方が好きである。
「東山は、バレンタインを貰ったことがないのか?」
「ん~、ないなぁ」
母親や陽菜からバレンタインを貰うことはあるが、アレをカウントし始めたら人生の恥である。
なので、カウントゼロでいく。
「そうなのか」
白鷺は、意味深な表情をしていた。
再度聞いてくる。
「ふむ。嘘ではないのか?」
「何故、貰ってないのに嘘を付く必要があるんだ??」
そういう嘘を付く場合って、逆じゃないの?
好きな女の子からバレンタインを貰いたい場合、一度も貰ったことがないとか言うものなのか?
白鷺は語る。
「東山は優しいから、たくさんの女性からチョコレートを貰うのではないか?」
「……白鷺よ、俺がどう見えているのか心配なんだが」
白鷺さん、俺だぞ。
大丈夫っすかね。
これだけ色々頑張っているように見えても、学校での知名度は上から数えても、数十位くらいだ。
クラスメートならまだしも、わざわざ俺に話し掛けてくるやつもいないからな。
存在感なんか、陰キャ特有の無だし。
一年生の時は今以上に目立たない存在だった。
そんなやつにチョコレートくれるやつはいない。
漫研と美術部で交流があった、黒川さんや白石さんも俺の存在忘れていたレベルだからな。
この娘も、恋は盲目タイプなのだろうか。
ハジメちゃんハジメちゃん五月蝿い人間は、一人で充分である。
「では、その分も私が祝ってあげようか」
白鷺からバレンタインを貰えるのは嬉しいけれど、過大評価されると正直困る。
「白鷺、バレンタインはケーキを作るのか?」
「東山は甘いものは苦手だろう? 甘くない紅茶のパウンドケーキにでもするつもりだ」
「おお、それはいいな。甘くないならたくさん食べられるだろうし、コーヒーに合うデザートなら助かるよ」
「分かった。バレンタインには一番美味しいものを用意しておく」
白鷺はご機嫌であった。
俺は何もしていないのに、幸せのようで助かる。
可愛い。
この安定感が白鷺の良さだな。
ふゆお嬢様と言われるだけある。
「東山のお母様にも認めてもらわねばならないからな」
ガッツポーズするふゆお嬢様が可愛い。
でもあの母親とは正直絡まないでほしい。
あんなん、絶対に悪影響になるだろ。


何でもない日。
金曜日の放課後。
俺と萌花は、二人で話ながら駅前に向かっていた。
別に遊びに行くわけではないのだが、空いた時間があったので一緒に帰ることにした。
本来ならすぐに家に帰ってペンを握るべきだが、そうしなかった。
萌花が一人で暇そうだったので、一緒に帰りたかったからだ。
……萌花の場合、こちらからアプローチしないと、ほぼ絡みがないからな。
小日向達とは違い、グイグイ来るタイプではないし、萌花とは学校での交流がメインなので、誰かしらと一緒に話すことが多い。
親友の秋月さんや、三馬鹿とかがワンセットになっているわけだ。
放課後に帰るにしても、大体は数人で行動する。
萌花は、男子はボロクソだが、女子からの人気が高いので、二人っきりで何かをすることは少なく、ごく稀に二人で放課後に帰れることすら稀だ。
この機会を逃したら数週間後になる可能性が高い。
結構、貴重なイベントなのだ。
萌花との帰り道では、漫画やゲームの話をしながら、喉が渇いたらコンビニで飲み物を買ったりして駅前まで送る。
普通過ぎる。
萌花にしては何の捻りもない。
たまに俺のことが本当に好きなのか分からなくなるレベルである。
他の三人みたいに、甘えてくるわけでもないからな。
ドライな性格だから、それくらいの温度感が普通なんだろうか。
「東っち、どしたん?」
「いや、すまない。こんな感じでいいのか?」
「主語がないと分からないっしょ?」
「告白されてから二週間経つのに、彼氏らしいことが出来ているか分からなくてな」
「……ふうは元がアレだから分からんけど、ふゆ辺りは満足してるんじゃない? まあ、れーなは、毎日のように東っちの家にお邪魔している昆虫並みの神経の図太さを何とかした方がいいけどな」
秋月さんは、まあ。
そういう人だし。
それが愛嬌だから別に気にしていない。
秋月さんがいると家族は喜ぶし、妹の勉強の相手をしてくれるから助かっている。
デメリットだって、俺がリビングのソファーで寝るくらいである。
一人暮らしで寂しいだろうし、彼女でもあるので、無下には出来ないしな。
萌花は続けて話す。
「東っちが、何に対して不安なのかは知らんけれど、ちゃんと家族にも挨拶しているし、義理は果たしているからいいんじゃね?」
「う~ん。それは義務だしな……」
四股野郎として炎上していた身としては、ご両親に謝罪するのは当然なため、それを褒められても困る。
「義務だとしても、ちゃんとやり遂げるのは実力やぞ。少しは自分を誇れよ」
「そうだな。そう言ってもらえて助かるよ」
萌花の言葉は心に響く。
いつだって萌花は、俺には足りない部分を補ってくれる。
それが義務だと思っているのは彼女もだろうに。
萌花は友達が好きで、いいやつなのは知っている。
親友であるよんいち組の為に尽くすのはいいが、俺達だって他人である。
自分の幸せより優先すべきとは思えない。
つか、小日向に関しては自分でやらせるべきだし。
そんな話をしながら、ゆっくりと帰り道を歩く。
暫しの間、二人が歩く足音だけが響き。
「なあ、萌花」
「ん?」
「……今更ながら、親御さんは怒っていなかったか」
「ああ、東っちがもえの親に半ギレしたやつか」
すみません。
あの時は、若気のいたりなんです。
深く反省しているんで許してください。

話は遡り、萌花の家に挨拶に行った日のことだ。
女の子の家にお邪魔するだけでもかなりの迷惑なのに、萌花のことで両親とバチバチしてしまった。
萌花のご両親とはいえ、不出来な子供だと萌花のことを延々と悪く言っていて、立場上俺はそれに便乗するわけにもいかなかった。
俺の母親はあんなだし、いいところはないけれど。
我が子のことを悪く言うことはない。
子供が好き過ぎてウザいくらいの家庭の生まれだからか、親が子を否定する親の気持ちがまったく理解出来なかった。
親が子を嫌うなんて、有り得ない。
別世界の出来事にすら感じていた。
最初は笑いながら、やんわりといなしていたが。
何度かやり取りして、ヒートアップしていくと、流石の俺でも半ギレしてしまう。
萌花にいつも助けられている人間なので、その人の為に何かしようとして感情的になってしまったのは許してくれ。
思いっきり、冷静さを欠いていた。
そのせいで、全てが罠であり、萌花の母親にハメられたと気付くのが遅れた。
ちくしょう。
萌花の性格は代々受け継がれし、クソガキの血脈なのだ。
母親も右に同じである。
俺の扱いなんて、簡単なのだ。
初対面の人間に対して、そんなえぐいやり方で俺のことを試してくるとは思わなかった。
萌花の彼氏は、彼女の為に本気で怒ってくれるやつじゃないと信用出来ない。
彼氏が家に来たら、普通は試すものだ。
……そんなん、初見プレイで分かるか。
どこが演技だったのか分からなかったし、あの萌花が俺の為に反論せず静かに黙っていたら、ガチの殴り合い寸前にもなるものだ。
そんな修羅場を用意しないでくれ。
正直、半ギレというよりも、萌花の両親の前で熱烈に褒めまくる古参ファンみたいになっていた。
好きなものを延々と熱く語るオタクほど見苦しいものはない。
向こうの親御さんも、完全に引いていたと思う。
「あの件は、本当にすまない」
「馬鹿な親で悪いな。うちの親はおもっくそ殴り飛ばすくらいで丁度いいっしょ」
「殴ってないからね?!」
やめてください。
勘違いされるやん。
「ま、もえの為に怒ってくれてありがと」
「やめてくれ、感謝されても困るし、感情的になって怒っただけだし。はぁ、萌花の為にも大人の対応をするって決めていたのに……」

「あの時、笑って流していたら、私は嫌いになっていたと思う」

だから、それでいい。
萌花はそう言ってくれた。
「……そうか。なら、あれが正しかったのか」
怒ることはやっぱり良くないけど。
萌花に正しいと言ってもらえると嬉しかった。
日頃からダメ出しが多い分、彼女が口に出して褒める時は本心から来るものだ。
「まあ、親にそういう風に誘導されていたのはムカ付くけどな。あの女、ちったぁ手加減しろよ!」
萌花は、あの時を思い出して、ケンケンしていた。
地面を蹴って地団駄を踏んでいる。
あれってストレス解消になるんかね。
まあ、俺が蹴られないだけマシか。
家族に対して、日頃の鬱憤が溜まっているらしい。
どの家庭でも、子供は親に勝てないものだな。
萌花は、吠えていた。


駅前に着いて、
「一つだけ聞いていい?」
怒りが落ち着いた萌花は、何気なく問いかけてきた。
「ん? 別にいいけど」
「自分の選択に後悔はしていない?」
「全く」
頭で考える前に口に出していた。
「そっか」
萌花は何かに納得したのか、上機嫌で改札に入っていく。
後ろ姿に尾を引かれている自分に気付いてか。
萌花は振り返って。






「私も後悔していない」
「今まで以上に愛してる」

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