落ち武者狩り ーBlack Connectionー

サレルノのエルマンノ

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ビッグブラザー人事:MARIー人材スコアシステムの闇(AIバージョン)

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ジョーンズはイノリを助けるために、新世代暗号規格対応の案件をこなすためにはイノリの暗号の知識が必要だと上層部を説得し主人公と二人で開発を始めることに成功した。
組み込み環境で暗号を作るためには、1から開発しなければならず、既存のライブラリが使えなかったからだ。

ある日の深夜、誰もいない人事部の資料室に偽造された社員証兼認証システムを使って忍び込んだジョーンズは、黒い画面に浮かぶ文字を見つける。

<<MARI:社員信用スコア管理システム>>

「これが答え。」

イノリは戦慄を覚えた。
理由もなく不採用になったり、契約解除されたり、職場で冷遇される――そのすべてが一本の線でつながる証拠だった。ジョーンズは慎重に状況を分析した後、主人公に向かって言った。

「このシステムが、社会の中で、どこで誰が何をしていくら稼ぐかを決めているのだ。自分たちは職業選択の自由の中で生きていると思いこんでいる。だがしかし、実は選ばされているのだということに、人々は気づかない。」

こうして、主人公とジョーンズは小さな開発室に閉じこもり、膨大な作業に取り掛かることになる。暗号アルゴリズムの設計、鍵管理、効率的な演算の実装――それぞれが極めて高度で微妙な作業であり、ほんの小さなミスがセキュリティの穴となる。

ジョーンズは主人公の肩越しにコードを確認しながら、逐一アドバイスを送った。
「ここは定数時間で動くように書かないと、サイドチャネル攻撃に弱くなる。君の知識が活きるのは、まさにこの部分だ」

主人公は久々に、自分の専門性が真に必要とされている状況に燃えた。過去の職場での苦痛や不安は、この挑戦の前では小さな影にすぎなかった。二人は深夜までコードを書き、アルゴリズムをテストし、組み込み環境で正確に動作することを確認する日々を送った。

だが、開発の過程で、ジョーンズはふと不安そうな表情を見せた。
「これだけ重要な案件を、会社は本当に我々に任せてくれるのだろうか。外部からの監視もあるかもしれない」

主人公は頷き、次の作業に手を戻した。
「だからこそ、二人でやる意味がある。ここで手を抜くわけにはいかない」

二人の間には、かつての孤独や恐怖を越えた信頼が生まれ始めていた。組み込み暗号開発という過酷な戦場の中で、二人は互いの知識と技術を融合させ、少しずつプロジェクトを前進させていった。

--------

薄暗い開発室。蛍光灯が一つだけ点き、規則的にジジ、と音を立てている。
イノリがジョーンズと向かい合っている。
ジョーンズはいつも無表情だが、今日は視線が落ち着かない。

「……聞いてほしいことがある」

普段のジョーンズからは想像できない、弱々しい声。
イノリは眉を寄せた。

「なに?」

ジョーンズは机の上に置かれたファイルに触れ、しばらく指先でその縁をなぞってから、ぽつりと口を開いた。

「MARI を作ったのは……俺なんだ」

空気が止まる。
イノリの思考も、時間も。

「……どういう意味?」
その声は震えていた。

ジョーンズはゆっくりと顔を上げる。
瞳の奥には後悔と恐怖が入り混じったような影。

「プロジェクト名は“Module Autonomous Reconstruction Intelligence”。
正式には、警察内部の“証拠自動補完システム”ってことになってる。
でも実際は――」

言葉を切り、深く息を吸う。

「証拠を改ざんするための機械だ。
状況に合わせて“存在していなかった証拠”を生成できる。
警察が犯罪者を仕事につかせないために開発されたんだ。
しかしこのシステムは、結局重大なプライバシー侵害になる。
決裁を出したのは上層部だが、設計したのは俺だ。
……MARI は、本当は、誰も救わない」

イノリの胸が締め付けられる。
これまで感じていた薄い違和感が、ひとつに収束する感覚。

「どうして今になって話すの?」

ジョーンズは震える手で頭を押さえた。

「……もう止められないくらい動き始めてしまった。
君が巻き込まれるのを見ていられなかった。
俺は――君にだけは嘘をつきたくなかった」

沈黙。
蛍光灯が再びジジ……と鳴る。
イノリはその音を遠くに聞きながら、ゆっくりと息を吸う。

「……ありがとう。
言ってくれて」

しかしその瞬間、イノリの胸にははっきりと理解が生まれていた。

この告白は、物語の“終わり”ではなく、真の陰謀の“入り口”に過ぎない。
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