32 / 146
再興へ向けて
しおりを挟む
――某県某所
世界が変質し揺れが収まった直後、まだ人々が混乱している最中、動き出した人物が居た。
その中の一人、彼の名はモブ山 モブ男(仮名)。
ファンタジー世界に憧れ、いつかそんな世界に行けたら......と、来るはずの無い未来に備えてリアルで格闘技を学ぶくらいの筋金入り野郎だ。
「転移してチートでハーレムの爛れた生活は無理になったけど、これはこれで......先ずはお決まりのステータスの確認からだ」
──────────────────────────────
藻舞山ㅤ喪武男
Lv:0
HP:100%
MP:100%
物攻:1
物防:1
魔攻:1
魔防:1
敏捷:1
幸運:1
残SP:0
スキル:
格闘術Lv2
──────────────────────────────
「おっと......これでもかなり鍛えていたつもりだったけど、ステータスはオール1スタートなのか。でも、VRMMO系のラノベあるあるのPS差があるだろうし、なんとかなるでしょ」
ステータス上では最弱なのに、リアルスキルはスキルとして存在している。最初から付いているのはよかったと思おう。
「これでもウチの道場ではかなり強いほうだったのにLvは二......なのか」
この分だと師範クラスで三か四、トップクラスの格闘家でも五かそこらだろう......
「お決まりのチートらしいスキルが無いのが残念だけど、このスキルは今の俺にとって大きなアドバンテージだ。
それに、こういったラノベだとダンジョンに初めて入る人類や、初めてモンスターを倒す事でチートを入手出来たりもあるな!」
......これから他人は全て俺の邪魔をする存在になる。急いでダンジョンへ向かわないと。
「俺の......俺だけのチートハーレムを形成する為なら、俺は他人を蹴落としてでも進んでやる。......あの謎の声は、生活に必要な機関や観光地をダンジョンにしたと言っていた。ここから一番近くにあるのは、〇〇ダムだよな......急ごう、準備をしっかりしておいてよかった」
――アナウンスは公表していないが、発生したダンジョンには難易度が存在している。
それは......人類が生きていくにあたって、生活に欠かせない重要な施設であればある程に難易度が上がっていく。
彼が向かおうとしているダムはかなりの規模を有しており......中級の中でも上位の方に位置している。生物は水が無いと生きていけない故に難易度は上がるのだ。
そして中級ダンジョンとは、レベル1のクソ雑魚ナメクジが安易に踏み込んでいい場所ではない。
階を進む毎にだんだんと敵が強くなっていくお約束は踏襲されているが、なんの特技も無い雑魚モンスターが出てくるのは、最下級と下級の下位ダンジョンの低階層のみ。
一層目に出てくるモンスターは弱いには弱いが、ベテランがしっかりと準備をしてから向かうような場所である。一筋縄ではいかない。
例えば匠が挑んでいる『原初ノ迷宮』。
これは最高難易度であり、パーティを組んだ上級者向けのダンジョンとなっている。
彼が最初に戦った不死血鳥は、普通に戦っては絶対に勝てない。産まれたてホヤホヤの雛だったからこそ、復活するそばから噛み砕き、その血肉を力尽きるまで飲み込むと言う方法で、ようやく撃破する事が出来たのだ。
初遭遇したMoBであるアシッドスライムも、装備をも溶かす酸液を持つ冒険者泣かせのモンスターだ。
『原初ノ迷宮』は全世界、別世界線にも入口が多数存在し、その入口は普段、巧妙に隠されている。
偶然......本当に偶然、たまたま入口を発見するか、ダンジョン攻略の際に送られる暗号を集め、それを解き明かし、初めて解明される物。所謂隠しダンジョンと言う物である。
さて、モブ山へ話を戻そう。
彼はあのアナウンスが聞こえてから、大急ぎで手荷物や備品の準備を進めていた。それ以前からもずっと......コツコツとサバイバルに必要な道具を肌身離さず持っていた。
もちろんその道具達も詰め込み、かなり酷い悪路でも進めるように改造したマウンテンバイクに乗り込み、目的地であるダムへと向かって走って行き......
帰らぬ人となった。
彼の思惑は全て意味を為さなかった。
ダンジョン初侵入のボーナスも、モンスター初撃破及びユニークモンスター初撃破、ボス初撃破等のボーナスも、全てに於いて先行している存在が居た故に不発。
彼は突然のアナウンスに歓喜し、こういった展開でテンプレな展開がある事を忘れてしまっていたのだった。
そして、もう一つ。もしダンジョン初侵入ボーナスが取られていなかったとしても、彼は絶対に取る事が出来なかったであろう。
重要施設が変化するという事は、その中で働いている人がいたのだ。彼はダンジョン内部でそんな人達の死体を発見して心が折れかけ、モンスター共の奇襲に呆気なく敗れた。
この事を失念している存在は全国に多数存在し、特に大した準備もせず、一番乗りを目指して我先にとダンジョンがあるであろう地域へと向かっていき、内部に残った死体や食い散らかされたパーツを見て動揺し、襲いかかるモンスターに対応できなくなり......そのまま帰らぬ人となる。
そんな事がありながらも時は進み、ダンジョンが発生して一週間が経過した。
この頃になると、ダンジョンに挑み、無事に戻ってくる存在も確認されていた。
実戦に近い戦闘経験がある。
準備を疎かにせず入念に装備や食料品を揃え、万全を期してダンジョンへ挑んだ。
信頼出来る仲間と共にパーティを組んでダンジョンに挑んだ。
そして、挑んだダンジョンの難易度が低い......という事。
一層に出てくる敵が特殊攻撃を何もしない事が難易度を示唆している......と、戻ってきた者の証言からわかった。
戻って来ない者ばかりなダンジョンにも調査に入って確認した結果、一層から特殊攻撃をしてくる敵が出た。
この事実を受け、国の上層部は急ぎダンジョンに関する法案を作成。
自衛隊や警察が全国を飛び回って周知した事によって、一先ずは無謀な挑戦者達の被害は収まる様子を見せる。
その間に無謀な者の被害を減らす為、大急ぎでダンジョン関連の法整備を整える。
『ダンジョン特別法』
『ダンジョン管理庁』
『ダンジョン攻略部隊』
『ダンジョン資源庁』
新しく制定された法、部署によって、混乱はより収まっていく。
そして少しずつ、少しずつだが、人類は資源を取り戻していく為の地盤を固めていく。
だが忘れてはいけない。
ラノベに夢を見て無謀な挑戦をし、散っていった者達がこの法案の礎を築いたことを......
世界が変質し揺れが収まった直後、まだ人々が混乱している最中、動き出した人物が居た。
その中の一人、彼の名はモブ山 モブ男(仮名)。
ファンタジー世界に憧れ、いつかそんな世界に行けたら......と、来るはずの無い未来に備えてリアルで格闘技を学ぶくらいの筋金入り野郎だ。
「転移してチートでハーレムの爛れた生活は無理になったけど、これはこれで......先ずはお決まりのステータスの確認からだ」
──────────────────────────────
藻舞山ㅤ喪武男
Lv:0
HP:100%
MP:100%
物攻:1
物防:1
魔攻:1
魔防:1
敏捷:1
幸運:1
残SP:0
スキル:
格闘術Lv2
──────────────────────────────
「おっと......これでもかなり鍛えていたつもりだったけど、ステータスはオール1スタートなのか。でも、VRMMO系のラノベあるあるのPS差があるだろうし、なんとかなるでしょ」
ステータス上では最弱なのに、リアルスキルはスキルとして存在している。最初から付いているのはよかったと思おう。
「これでもウチの道場ではかなり強いほうだったのにLvは二......なのか」
この分だと師範クラスで三か四、トップクラスの格闘家でも五かそこらだろう......
「お決まりのチートらしいスキルが無いのが残念だけど、このスキルは今の俺にとって大きなアドバンテージだ。
それに、こういったラノベだとダンジョンに初めて入る人類や、初めてモンスターを倒す事でチートを入手出来たりもあるな!」
......これから他人は全て俺の邪魔をする存在になる。急いでダンジョンへ向かわないと。
「俺の......俺だけのチートハーレムを形成する為なら、俺は他人を蹴落としてでも進んでやる。......あの謎の声は、生活に必要な機関や観光地をダンジョンにしたと言っていた。ここから一番近くにあるのは、〇〇ダムだよな......急ごう、準備をしっかりしておいてよかった」
――アナウンスは公表していないが、発生したダンジョンには難易度が存在している。
それは......人類が生きていくにあたって、生活に欠かせない重要な施設であればある程に難易度が上がっていく。
彼が向かおうとしているダムはかなりの規模を有しており......中級の中でも上位の方に位置している。生物は水が無いと生きていけない故に難易度は上がるのだ。
そして中級ダンジョンとは、レベル1のクソ雑魚ナメクジが安易に踏み込んでいい場所ではない。
階を進む毎にだんだんと敵が強くなっていくお約束は踏襲されているが、なんの特技も無い雑魚モンスターが出てくるのは、最下級と下級の下位ダンジョンの低階層のみ。
一層目に出てくるモンスターは弱いには弱いが、ベテランがしっかりと準備をしてから向かうような場所である。一筋縄ではいかない。
例えば匠が挑んでいる『原初ノ迷宮』。
これは最高難易度であり、パーティを組んだ上級者向けのダンジョンとなっている。
彼が最初に戦った不死血鳥は、普通に戦っては絶対に勝てない。産まれたてホヤホヤの雛だったからこそ、復活するそばから噛み砕き、その血肉を力尽きるまで飲み込むと言う方法で、ようやく撃破する事が出来たのだ。
初遭遇したMoBであるアシッドスライムも、装備をも溶かす酸液を持つ冒険者泣かせのモンスターだ。
『原初ノ迷宮』は全世界、別世界線にも入口が多数存在し、その入口は普段、巧妙に隠されている。
偶然......本当に偶然、たまたま入口を発見するか、ダンジョン攻略の際に送られる暗号を集め、それを解き明かし、初めて解明される物。所謂隠しダンジョンと言う物である。
さて、モブ山へ話を戻そう。
彼はあのアナウンスが聞こえてから、大急ぎで手荷物や備品の準備を進めていた。それ以前からもずっと......コツコツとサバイバルに必要な道具を肌身離さず持っていた。
もちろんその道具達も詰め込み、かなり酷い悪路でも進めるように改造したマウンテンバイクに乗り込み、目的地であるダムへと向かって走って行き......
帰らぬ人となった。
彼の思惑は全て意味を為さなかった。
ダンジョン初侵入のボーナスも、モンスター初撃破及びユニークモンスター初撃破、ボス初撃破等のボーナスも、全てに於いて先行している存在が居た故に不発。
彼は突然のアナウンスに歓喜し、こういった展開でテンプレな展開がある事を忘れてしまっていたのだった。
そして、もう一つ。もしダンジョン初侵入ボーナスが取られていなかったとしても、彼は絶対に取る事が出来なかったであろう。
重要施設が変化するという事は、その中で働いている人がいたのだ。彼はダンジョン内部でそんな人達の死体を発見して心が折れかけ、モンスター共の奇襲に呆気なく敗れた。
この事を失念している存在は全国に多数存在し、特に大した準備もせず、一番乗りを目指して我先にとダンジョンがあるであろう地域へと向かっていき、内部に残った死体や食い散らかされたパーツを見て動揺し、襲いかかるモンスターに対応できなくなり......そのまま帰らぬ人となる。
そんな事がありながらも時は進み、ダンジョンが発生して一週間が経過した。
この頃になると、ダンジョンに挑み、無事に戻ってくる存在も確認されていた。
実戦に近い戦闘経験がある。
準備を疎かにせず入念に装備や食料品を揃え、万全を期してダンジョンへ挑んだ。
信頼出来る仲間と共にパーティを組んでダンジョンに挑んだ。
そして、挑んだダンジョンの難易度が低い......という事。
一層に出てくる敵が特殊攻撃を何もしない事が難易度を示唆している......と、戻ってきた者の証言からわかった。
戻って来ない者ばかりなダンジョンにも調査に入って確認した結果、一層から特殊攻撃をしてくる敵が出た。
この事実を受け、国の上層部は急ぎダンジョンに関する法案を作成。
自衛隊や警察が全国を飛び回って周知した事によって、一先ずは無謀な挑戦者達の被害は収まる様子を見せる。
その間に無謀な者の被害を減らす為、大急ぎでダンジョン関連の法整備を整える。
『ダンジョン特別法』
『ダンジョン管理庁』
『ダンジョン攻略部隊』
『ダンジョン資源庁』
新しく制定された法、部署によって、混乱はより収まっていく。
そして少しずつ、少しずつだが、人類は資源を取り戻していく為の地盤を固めていく。
だが忘れてはいけない。
ラノベに夢を見て無謀な挑戦をし、散っていった者達がこの法案の礎を築いたことを......
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる