未完のクロスワード

ぬくまろ

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あとがき

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 悩みのない人間はいません。ある悩みが解決したと思ったら、また出てきます。それは、人間はいつも複数の悩みを抱えているからです。隠れていたものが次々と出てくるのです。でもそれは、真剣に生きていることの証であり、煩悩と格闘しながら理想を追求していく過程ではあたりまえの現象です。人間は基本的に弱いものであり、他人に対して多くの点で劣っているのではないかと思ってしまうこともあります。
 どんな人間でも何かのきっかけでグラついてしまうことがあります。例えば、月曜日から金曜日まで仕事が順調に進んでいたとしても、金曜日の夕方に軽微でないクレームの電話が入ってくれば気が重くなり、週末の楽しみが吹っ飛んでしまうことがあるかもしれません。また、一部上場企業の営業部門の幹部の方がおっしゃっていたことで、優秀な社員にポジションを脅かされるのではないかということを常々思っているということがありました。外見上は、部下をぐいぐい引っ張っていくタイプの方ですが、内心はビクビクしているのです。外見を装うとするとき、内心とのギャップがありすぎると、それがストレスとなり、慢性化すると心身が衰弱してしまうこともあります。
 でもそれは、人間であれば多くの人たちが抱いている心情ではないでしょうか。むしろ、社会との関わりを通して、外に向かう行為と内心が一致しないことのほうが多いことと思います。それはそれでしょうがないことです。
 では、どうすればいいのでしょう。それは、自分の弱さをさらけ出すことです。それが人間の基本性能を高めてくれるからです。強さを誇示することよりも、弱さを認めることのほうが勇気を必要とします。弱さを認めることによって、心が解放され、まわりから吸収しようという気持ちが生まれます。その意識が人間を強くしていくのです。例えるなら、呼吸があります。普通の状態で息を吸うと、からだの中に空気はそれほど入ってきませんし、古い空気は残ったままです。しかし、肺の中にある空気を吐き出すとどうでしょう。古い空気は出され、からだに力を入れることもなく、新鮮な空気が自然に入ってきます。繰り返すことによって、気が満ちてきます。
 登場人物たちは、自分自身の力で前に進んでいくことでしょう。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 それでは、またいつかどこかでお会いしましょう。
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