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美しき姫君

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  晩秋  *霜月しもつき

 日の本 稜禾詠 ノ国りょうかえのくに

 桜桃城おうとうじょう城内 屋根裏部屋
 

  「楓禾ふうか姫様、稜弥りょうや様が参られました」

「ありがとう。なずな」

 ガラリ

「楓禾姫様、なぜ屋根裏になどおられるのです?」

「ごあいさつです事。稜弥様。私(わたくし)この屋根裏部屋に住もうかと思って」

「お辞め下さい。楓禾姫様」

「なぜです?」

 なぜ?愚問ですよ。楓禾姫様…

「楓禾姫様は、本家筋。このさくら家を統率して行かれる方だからです」

 美しき姫君… 楓禾姫様… 貴女様が… 治めるべきなのです

りん兄上様がおられます。私など…」

「代々、女性が桜王家を、稜禾詠 ノ国を支配されて来たのです。いずれは日の本を…」

「稜弥様。鈴兄上を当主にと熱望される方々がいるのです。それに、長子が後を継ぐのが良いと私は思うのです」

稜弥(…)

 私は誰かって?

楓禾姫の父方の従兄《いとこ》に当たる者… 

 ** 水無月みなつきの十七日に十六歳になった

朝比奈稜弥あさひな りょうやです。

  まぁ追々と…


*霜月 十一月
**水無月 六月
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