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一枚上手な楓禾姫1
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-楓禾姫の部屋の隣 控えの間-
「ごめんなさいね詠史殿。呼び出したりして」
「いえ。仕事も終わりましたしお気になさらないで下さい」
「今、湖紗若様はご自分の部屋にて持女達と過ごしていますが、私が近くにいない事で不安になられたりしたら……いえ、私が湖紗若様より離れられないから控えの間で話を……思ったのよね」
(……)
あの決着の日以来、憂いを帯びた表情をされている楓禾姫。湖紗若は、楓禾姫が意識を失われた日は泣かれたりと情緒不安定気味になられ、舌足らずな話し方をされていたけど。
「賢い子ですからね。私に心配掛けまいとか、色々と……元気に振る舞っているのよね。あの子は」
「そうですね……」
そう。一見、見た目にはお元気に見えるも、鈴様や、稜弥様、私も心に掛かっている事で。もちろん、殿様、凛実の方様、なずな殿や、ゆずな殿も心配していて。
「詠史殿。ごめんなさいね。湿っぽい空気にして。貴方は……絵師も立派なお仕事よ。誰にでも出来る仕事じゃないもの。外喜が失脚して、ようやくあるべき姿の、桜家に戻る時が来たのです。この先、桜家を背負って行く鈴兄上様の……私と湖紗若様を裏からだけでなく、表の仕事でも支えて助けて欲しいのです」
(やはりだ……私は。稜弥様も気が付いておられるのだが。楓禾姫は、桜家の事を鈴様に任せたいと思われているのでは? と感じていた)
「お支えする場を頂けるなら、力を尽くさせて頂きますが……楓禾姫は、どうされるおつもりですか?」
まどろっこしく、グダグダと考えても、答えが出ないで不安なら……ズバリと聞く事にしたんだ。
(……)
まさか、私がそう返して来るとは……思っておられなかったのだろう。楓禾姫は、大きな瞳を更に見開いて、口も少し開けて……驚いた顔をされている。
「詠史殿も。稜弥様と同じ。鋭いのね。驚ろいたわ。けど、そうよね。鋭くなくては人の動きを探る仕事なんて……ね。湖紗若様と二人、しばらく穏やかに暮らせたらな。とか思ったのだけど」
鋭いには、誉め言葉や、参ったわね。色々な意味が含まれているようだけど。稜弥様と同じ。の言葉に、少しイラッとしてしまった……
「 そうですね。よろしいと思いますよ」
けど、それを見せずにお答えすると。
「でも、お父上様や、鈴兄上達、詠史殿や、稜弥様達には苦労を強いて私だけ……」
「その為に、お助けする為の家臣が。我々がいるのですよ。今、楓禾姫と湖紗若が、疲れているのなら心を休める時なのでは。殿様や、鈴様が心疲れた時は、楓禾姫と湖紗若が頑張る。それを、さらに我々がお支えする。それで良いではありませんか」
そう伝えると、大きな綺麗な瞳に涙を浮かべられた楓禾姫。
「ありがとう」
儚げに微笑まれた楓禾姫。
「例えば、何をして過ごされるのですか? 楓禾姫」
「そうですね。川遊びかしらね?」
口元に、右手の人差し指を当て答えられた楓禾姫。
「川遊び?」
「うふふ。心配ないわ。湖紗若様の水泳の鍛練に、お教えしたり、見守るのよ。私は。川には入りませんよ。着物を着てならともかく。人様に見せられない姿をさらして泳いだりしませんよ。ご心配なく!」
カラカラと笑っておられる楓禾姫。
別に、楓禾姫が言われた事を懸念したり、危ないと思ったのではなく、また、楽しそうな事を思いつかれたな。
(お供したい……)
そう、思った訳で……
しかし、楓禾姫が一枚上手でおられた。
この先の事について。楓禾姫が本当の本音を、この時、隠しておられるのを私は、少しの疑念を残しつつも。
はぐらかされてしまっていたんだ。
「ごめんなさいね詠史殿。呼び出したりして」
「いえ。仕事も終わりましたしお気になさらないで下さい」
「今、湖紗若様はご自分の部屋にて持女達と過ごしていますが、私が近くにいない事で不安になられたりしたら……いえ、私が湖紗若様より離れられないから控えの間で話を……思ったのよね」
(……)
あの決着の日以来、憂いを帯びた表情をされている楓禾姫。湖紗若は、楓禾姫が意識を失われた日は泣かれたりと情緒不安定気味になられ、舌足らずな話し方をされていたけど。
「賢い子ですからね。私に心配掛けまいとか、色々と……元気に振る舞っているのよね。あの子は」
「そうですね……」
そう。一見、見た目にはお元気に見えるも、鈴様や、稜弥様、私も心に掛かっている事で。もちろん、殿様、凛実の方様、なずな殿や、ゆずな殿も心配していて。
「詠史殿。ごめんなさいね。湿っぽい空気にして。貴方は……絵師も立派なお仕事よ。誰にでも出来る仕事じゃないもの。外喜が失脚して、ようやくあるべき姿の、桜家に戻る時が来たのです。この先、桜家を背負って行く鈴兄上様の……私と湖紗若様を裏からだけでなく、表の仕事でも支えて助けて欲しいのです」
(やはりだ……私は。稜弥様も気が付いておられるのだが。楓禾姫は、桜家の事を鈴様に任せたいと思われているのでは? と感じていた)
「お支えする場を頂けるなら、力を尽くさせて頂きますが……楓禾姫は、どうされるおつもりですか?」
まどろっこしく、グダグダと考えても、答えが出ないで不安なら……ズバリと聞く事にしたんだ。
(……)
まさか、私がそう返して来るとは……思っておられなかったのだろう。楓禾姫は、大きな瞳を更に見開いて、口も少し開けて……驚いた顔をされている。
「詠史殿も。稜弥様と同じ。鋭いのね。驚ろいたわ。けど、そうよね。鋭くなくては人の動きを探る仕事なんて……ね。湖紗若様と二人、しばらく穏やかに暮らせたらな。とか思ったのだけど」
鋭いには、誉め言葉や、参ったわね。色々な意味が含まれているようだけど。稜弥様と同じ。の言葉に、少しイラッとしてしまった……
「 そうですね。よろしいと思いますよ」
けど、それを見せずにお答えすると。
「でも、お父上様や、鈴兄上達、詠史殿や、稜弥様達には苦労を強いて私だけ……」
「その為に、お助けする為の家臣が。我々がいるのですよ。今、楓禾姫と湖紗若が、疲れているのなら心を休める時なのでは。殿様や、鈴様が心疲れた時は、楓禾姫と湖紗若が頑張る。それを、さらに我々がお支えする。それで良いではありませんか」
そう伝えると、大きな綺麗な瞳に涙を浮かべられた楓禾姫。
「ありがとう」
儚げに微笑まれた楓禾姫。
「例えば、何をして過ごされるのですか? 楓禾姫」
「そうですね。川遊びかしらね?」
口元に、右手の人差し指を当て答えられた楓禾姫。
「川遊び?」
「うふふ。心配ないわ。湖紗若様の水泳の鍛練に、お教えしたり、見守るのよ。私は。川には入りませんよ。着物を着てならともかく。人様に見せられない姿をさらして泳いだりしませんよ。ご心配なく!」
カラカラと笑っておられる楓禾姫。
別に、楓禾姫が言われた事を懸念したり、危ないと思ったのではなく、また、楽しそうな事を思いつかれたな。
(お供したい……)
そう、思った訳で……
しかし、楓禾姫が一枚上手でおられた。
この先の事について。楓禾姫が本当の本音を、この時、隠しておられるのを私は、少しの疑念を残しつつも。
はぐらかされてしまっていたんだ。
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