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妻として、母として、領主として

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   こうして月日は流れ……一年後。

   情熱と愛ある統治にて、稜禾詠ノ国の民に愛される領主夫妻となった、鈴兄上様となずなに。

  
  *皐月《さつき》の五日に。

 若君の  鈴那斗《りなと》が誕生したの。

 鈴兄上様の、鈴になずなの"な"を漢字にして。鈴那斗。


鈴那若《りなわか》と呼ばれ愛されし。若君。

  
   その一年後の 。

   *文月《ふみつき》の七日に。(文月七日はなずなの誕生日)

    姫君の瑠璃禾《るりか》が誕生。

   瑠璃禾姫の『禾』の字は、 私から一字取って名付けてくれたの。

『 「将来どのような形になるか分からないが……兄か妹、 どちらの国を治めると決めるのではなく。兄妹で力を合わせて、稜禾詠ノ国を統治して行く…… その形もありだと思うのだ」そう、鈴様は話されておりますの』


   なずなが島に遊びに来た時に、そう話してくれたの。


   瑠璃ノ島では…… 11年の後、湖紗若様は瑠璃ちゃまと婚姻し。

   
   一年後。

   *睦月《むつき》の一日に。

   泉紗《いさ》

   泉紗君が誕生し。


    三年後の。

   *弥生《やよい》の三日に。  (弥生の三日は瑠璃ちゃまの誕生日)


    紗璃《さり》


    紗璃姫が誕生したの。


    湖紗若様と瑠璃ちゃまは、私と稜弥様と詠史殿を支えてくれて。年を重ねる毎に力強く、頼りがいのある補役に成長していって。


  私も湖紗若様に。

  『 私達姉弟も 一緒に、瑠璃ノ島を統治しませんか?』

 そう言ったのだけれど。

『私は、 表舞台で 動くよりも。裏で、楓禾姉上様を支える方が性に合ってますゆえ』


   断られてしまったわ。

  
  
  そして……


   稜弥様と詠史殿と私は、三人でよく話し合ったわ。

  
  お母上様お父上様に相談して。凛実の方様にも相談して。


 鈴兄上様となずなにも。

 桜家、朝比奈家、政岡家の親族。忽那家の基史殿。

  皆が。

  
『それが三人の形なのだから』

  後押ししてくれて。


  稜禾詠ノ国の国民と、瑠璃ノ島の島民が。


  『三人様の形。幸せを望みます』


   応援してくれて。

 
  鈴兄上様と、なずなの婚姻から半年後の、*睦月の二十五日に。

稜弥様と詠史殿と私は夫婦になったの。


  そして。十ヶ月後の。

  *霜月《しもつき》の十七日……

  双子の。

 詠弥《えいや》

 稜璃菜《りりな》

  が誕生して。

詠若《えいわか》様、稜璃《りり》姫様。と、稜禾詠ノ国の国民と、瑠璃ノ島の島民が呼び。愛してくれて。 受け入れてくれて嬉しかったの。


「良かった……私は幸せです」

そう言うと。

「これまで、楓禾姫様のなされてきた事に 。稜禾詠ノ国の国民と、瑠璃ノ島の島民が。 感謝されているからですよ」

「これまで、楓禾姫のなされてきた事に 。稜禾詠ノ国の国民と、瑠璃ノ島の島民が。 感謝されているからでございますよ」


稜弥様と詠史殿が 言ってくれて。 本当に私は恵まれていると、幸せで。

『菜』の字を入れたのは。

『楓菜の方様が治めるはずだった稜禾詠ノ国。楓菜の方様に敬意を表して『菜』の字を付たいと思います』

稜弥様と詠史殿が 言ってくれて。

なずなの『な』でもあるしね。



『この館の名前は『鈴紗ナりんさなの館』にしよう。ナはなずなの『ナ』から付けたのだ』



お父上様が名付けられたのだけど。


『お父上様、鈴紗ナの館に、私と湖紗若となずなの名前を付けて頂き感謝致します』

 『おちちうえ さま ありがとうございます』

 『お義父上様。 大変な名誉をありがとうございます。 これからも精一杯精進して努めてまいります』

 
  鈴兄上様、湖紗若様、なずなの名前を館に付けて下さった事、私も嬉しくて。

  お母上様も凛実の方様も『息子の名前を……館に……』と 感激されて涙を流されてたわ。

  そのお姿に、私も感動して。


『 とても感謝いたします』

 そう、お父上様に様にお伝えしたの。


私も。

『将来どのような形になるか分かりませんが……兄か妹、 どちらの国を治めると決めるのではなく。兄妹で力を合わせて、瑠璃ノ島を統治して行く…… その形もあると思います』


  鈴兄上様と、同じ考えを稜弥様と詠史殿に伝えて。

  『それで良いと思います』

  
  稜弥様と詠史殿は、 同意してくれて。

   
  睦月の二十五日。


「 楓禾姫様、 誕生日おめでとうございます 。私は幸せな男です。楓禾姫様。私が生まれた 十八年と七か月前、楓禾姫様がお生まれになる七か月前にですよ『稜禾詠ノ国』から『稜』の字を賜り。それだけでも恐れ多く、幸せな事だったのに。お慕いする楓禾姫様と夫婦となり娘を授かった。 今でも夢の中にいるようです」

 

   「 楓禾姫、 誕生日おめでとうございます 。私も幸せな男です。楓禾姫。私が生まれた 十九年と二か月前、楓禾姫様がお生まれになる一年も前にです『稜禾詠ノ国』から『詠』の字を 賜り。それだけでも恐れ多く。幸せな事だったのに。お慕いする楓禾姫と夫婦となり息子を授かった。 今でも夢の中にいるようです」


「  稜弥様と詠史殿の ご両親様。 ご親戚様。朝比奈家と忽那家の皆様は『 この先、楓菜姫様。爽様にお子様が産まれたらどうなされます』とか『恐れ多すぎます』と言われたと。お母上様もお父上様もおっしゃられてたわ。それだけ、朝比奈家と忽那家の皆を頼りにしていたのよ。 間違いなく、今日の幸せな毎日は詠史殿と稜弥様が幼き時より、守り抜き。愛してくれたからです。ありがとう。この先 一生涯 、ずっと一緒にいて下さいね」 

「はい。お約束いたします 。楓禾姫。一生涯ずっと愛し、お守り致します」

「はい。お約束いたします 。楓禾姫様。一生涯ずっと愛し、お守り致します」



「「うにゃ、ぎゃぁ!」」

  二人仲良く揃って泣き出した、詠弥。詠若と、稜璃菜。稜璃姫。 慌てて詠史殿は、詠若を。稜弥様は、稜璃姫をあやし出して。

 幸せだけど一つ不満があるとすれば……


今みたいに 、抱っこして。詠史殿は詠若を。稜弥様は稜璃姫を離さないで。私に抱っこさせてくれないことかしらね。

 「詠若に稜璃姫。 お腹すいたのね。さぁ、お乳を 飲みましょうね」
 

  でも、最後は私の所に帰って来てくれるのだから。 良しとしましょう。


  母として、我が子をこの手に抱く喜び、幸せ。 こんな日が来るなんて夢にも思っていなかった。

  妻として母として。

 何よりも、この瑠璃ノ島の領主として。島民の幸せの為に尽くして行きたい。


  稜弥様。詠史殿。 

 この先も一緒に頑張って行きましょうね。

 どうぞよろしくね。

終わり
 

*皐月《さつき》  五月
*文月《ふみつき》 七月
*弥生《やよい》三月
*睦月《むつき》一月
*霜月《しもつき》 十一月



 

  


  

  
  
  



  


  





 

  

 










 


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