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1章 失われる技術
支店化計画
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仕事が無くても、ローゼリエッタの生活は特に変わらない。
外に出る機会が増えるわけでもなく、一日中人形を弄り回す。
おかげで、太陽の光を浴びない肌は白く綺麗ではあるが、とてもではないが健康的とは言い難い。
それでも仕事を請け負っている時よりかは、余裕のある生活で、睡眠時間くらいはまともに取れていた。
ローゼリエッタの仕事がない時は、アルストロイが金銭を稼ぐ出番となる。
彼は、人形作成の依頼がない場合、屋敷から約半日かかる町へと出向き、依頼を請け負っていた。
今回もそれに習い、彼は二つの目的の下、町へと出かける。
道中は慣れた物で、幾分舗装された道のおかげもあって、然程苦にはならない。
朝食を取って屋敷を出立すれば、丁度昼前辺りに町へと到着するのだ。
アルストロイは、町につくや否や、込み合う前に早めの昼食を取る。
金銭は前回の依頼で貰った金貨があるので不安はない。
たまには贅沢をしてもいいか。
そう思い彼は、何時もより少しだけ豪華な食事をとった。
それから彼は、市場で物色を始める。
今回彼が町を訪れた目的の一つは、食料の買い出しや、妹から頼まれた素材の補充だった。
館への帰り道は、目的地へと送迎をしてくれる車を頼むつもりで来たので、少々買い込んでも問題は無い。
(これと……これ……後あれもだ。夕方になったらもう少し安くなるだろうし……簡単な依頼を受けて時間を潰そうかな?)
懐は温かいが、染みついた習慣は早々変えられない。
安売りが始まる時間まで、依頼を熟し時間を潰すことに彼は決める。
アルストロイが次に向かったのは、依頼要請所だ。
そこは大きな広場に屋根を付けたような造りで、外壁という物が存在しない。
年中暖かな気候にある為、雨を防げれば事足りるのだ。
町の丁度中心に設けられたそこでは、町から様々な依頼が寄せられ、全てが紙に纏められて張り出されていた。
なお、依頼を熟すのに特別な資格はいらない。
何故ならば、寄せられる依頼の内、どんなに危険なものでも、『野生動物を追い払ってくれ』程度の物しかないからだ。
熊や猪であればそれなりの危険が伴うが、野生生物も大半が臆病であり、大抵は剣を振り回すだけで逃げていく。
少年は、並ぶ依頼書の中から目ぼしい物を一つつかみ取ると、窓口へと向かった。
アルストロイが受けた依頼は、庭の草刈りであった。それも貴族の館のような広大な敷地ではなく、小ぢんまりとした平民の庭である。
当然、然程時間もかからずに草刈りは終わり、日暮れ前には再び依頼要請所を訪れていた。
依頼完了の報告を済まし、報酬である銀貨三枚を受け取って大通りへと繰り出す。
彼の思惑通り、日暮れ間近のこの時間になると、食料を扱う店は安売りを始め、買い物は満足のいく結果となった。
そして買い物の終点として、送迎を請け負う店に訪れ、金貨三枚と引き換えに人形の館へと送って貰う。
家に帰って来たアルストロイは、荷物整理もほどほどに、一枚の紙を持ってローゼリエッタの下へと急ぐ。
彼は、相も変わらず人形弄りをしていた妹を呼び寄せ、兼ねてから温めていた計画を知らせた。
「ロゼ。実は話があるんだ……その……町に行ってみないか?」
「町へ?……うん。いいわね、偶には。何時?明日?明後日?」
そのやり取りは、アルストロイにとって予定と違う物だったが、妹が町に抱く印象は余り悪くないらしく、一つ胸を撫で下ろした。
それでも、妹の勘違いを正さねば後に支障が出るとして、彼は説明を始める。
「ロゼ。そうじゃないんだ。つまりね……町に支店を出してみないかい?」
此処で漸く、アルストロイは手に持った一枚の紙をローゼリエッタに見せた。
それは、町にある貸家の借用書であった。
兄は心配していた。
妹のローゼリエッタは今年で十六歳。もう色恋を知っていても問題ない年だ。
だというのに、ずっと家に籠りっぱなしで、彼女が語りかけるのは、兄のアルストロイか人形の二人だけ。
依頼主も向こうからやってくるので、花も盛りだというのに、これまで碌に家から出ることをしなかった。
どうにかしなくてはと、悩んだ末に持ってきたのが今回の支店化計画だ。
一方妹は、別の意味で兄の提案を捉えていた。
自身も家事こそすれど、人形の素材や食料といった消耗品の確保は、殆ど全てをアルストロイに頼っている。
館から町まで半日。その道程を、大荷物を載せた台車を引いてきたこともあった。
もしこれが、町の中に店を構えていたらどうだろうか?
夕飯で買い忘れたものをちょっとそこまで、なんてことも可能になるだろう。
加えて、客足も伸びることは明白だった。
これまでの客層も、こんな辺鄙な森の中より顔も出しやすいだろうし、上手くいけば町に住む人らの内幾らかは、顔なじみになってくれるかもしれない。
そういった様々な考察を繰り返し、一晩の時間をおいて、ローゼリエッタは賛同の答えを出した。
外に出る機会が増えるわけでもなく、一日中人形を弄り回す。
おかげで、太陽の光を浴びない肌は白く綺麗ではあるが、とてもではないが健康的とは言い難い。
それでも仕事を請け負っている時よりかは、余裕のある生活で、睡眠時間くらいはまともに取れていた。
ローゼリエッタの仕事がない時は、アルストロイが金銭を稼ぐ出番となる。
彼は、人形作成の依頼がない場合、屋敷から約半日かかる町へと出向き、依頼を請け負っていた。
今回もそれに習い、彼は二つの目的の下、町へと出かける。
道中は慣れた物で、幾分舗装された道のおかげもあって、然程苦にはならない。
朝食を取って屋敷を出立すれば、丁度昼前辺りに町へと到着するのだ。
アルストロイは、町につくや否や、込み合う前に早めの昼食を取る。
金銭は前回の依頼で貰った金貨があるので不安はない。
たまには贅沢をしてもいいか。
そう思い彼は、何時もより少しだけ豪華な食事をとった。
それから彼は、市場で物色を始める。
今回彼が町を訪れた目的の一つは、食料の買い出しや、妹から頼まれた素材の補充だった。
館への帰り道は、目的地へと送迎をしてくれる車を頼むつもりで来たので、少々買い込んでも問題は無い。
(これと……これ……後あれもだ。夕方になったらもう少し安くなるだろうし……簡単な依頼を受けて時間を潰そうかな?)
懐は温かいが、染みついた習慣は早々変えられない。
安売りが始まる時間まで、依頼を熟し時間を潰すことに彼は決める。
アルストロイが次に向かったのは、依頼要請所だ。
そこは大きな広場に屋根を付けたような造りで、外壁という物が存在しない。
年中暖かな気候にある為、雨を防げれば事足りるのだ。
町の丁度中心に設けられたそこでは、町から様々な依頼が寄せられ、全てが紙に纏められて張り出されていた。
なお、依頼を熟すのに特別な資格はいらない。
何故ならば、寄せられる依頼の内、どんなに危険なものでも、『野生動物を追い払ってくれ』程度の物しかないからだ。
熊や猪であればそれなりの危険が伴うが、野生生物も大半が臆病であり、大抵は剣を振り回すだけで逃げていく。
少年は、並ぶ依頼書の中から目ぼしい物を一つつかみ取ると、窓口へと向かった。
アルストロイが受けた依頼は、庭の草刈りであった。それも貴族の館のような広大な敷地ではなく、小ぢんまりとした平民の庭である。
当然、然程時間もかからずに草刈りは終わり、日暮れ前には再び依頼要請所を訪れていた。
依頼完了の報告を済まし、報酬である銀貨三枚を受け取って大通りへと繰り出す。
彼の思惑通り、日暮れ間近のこの時間になると、食料を扱う店は安売りを始め、買い物は満足のいく結果となった。
そして買い物の終点として、送迎を請け負う店に訪れ、金貨三枚と引き換えに人形の館へと送って貰う。
家に帰って来たアルストロイは、荷物整理もほどほどに、一枚の紙を持ってローゼリエッタの下へと急ぐ。
彼は、相も変わらず人形弄りをしていた妹を呼び寄せ、兼ねてから温めていた計画を知らせた。
「ロゼ。実は話があるんだ……その……町に行ってみないか?」
「町へ?……うん。いいわね、偶には。何時?明日?明後日?」
そのやり取りは、アルストロイにとって予定と違う物だったが、妹が町に抱く印象は余り悪くないらしく、一つ胸を撫で下ろした。
それでも、妹の勘違いを正さねば後に支障が出るとして、彼は説明を始める。
「ロゼ。そうじゃないんだ。つまりね……町に支店を出してみないかい?」
此処で漸く、アルストロイは手に持った一枚の紙をローゼリエッタに見せた。
それは、町にある貸家の借用書であった。
兄は心配していた。
妹のローゼリエッタは今年で十六歳。もう色恋を知っていても問題ない年だ。
だというのに、ずっと家に籠りっぱなしで、彼女が語りかけるのは、兄のアルストロイか人形の二人だけ。
依頼主も向こうからやってくるので、花も盛りだというのに、これまで碌に家から出ることをしなかった。
どうにかしなくてはと、悩んだ末に持ってきたのが今回の支店化計画だ。
一方妹は、別の意味で兄の提案を捉えていた。
自身も家事こそすれど、人形の素材や食料といった消耗品の確保は、殆ど全てをアルストロイに頼っている。
館から町まで半日。その道程を、大荷物を載せた台車を引いてきたこともあった。
もしこれが、町の中に店を構えていたらどうだろうか?
夕飯で買い忘れたものをちょっとそこまで、なんてことも可能になるだろう。
加えて、客足も伸びることは明白だった。
これまでの客層も、こんな辺鄙な森の中より顔も出しやすいだろうし、上手くいけば町に住む人らの内幾らかは、顔なじみになってくれるかもしれない。
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