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19章 世界の審判
特異個体
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天空に放たれた魔導砲は、戦場のどこからでも見ることが出来た。
襲い掛かる黒い影に向かって必死に剣を振る戦士も、必死に怪我人の治療に当たる治癒術師も、人間を守る為に奔走するセリオンも、起きる現象の理を探るエルフも、全ての者が、時間の差異はあれどもその光の柱を見上げた。
誰もが、その光の柱が魔導砲だと分かった。戦いが始まってからこれまでの間で、同様の光は幾度も放たれ、多くの魔物を屠ってきたからだ。ある意味で美しくも感じるその光は、一方で数多の山々を喰い穿ち、周囲の景色を大きく変えていったのである。
だがそれだけ地形を破壊した魔導砲の攻撃は、どれを取ってみても無意味に放たれたものは一つもない。ましてや真上に垂直に放つなど、不条理極まりない。つまりあれは、味方の放ったものではないのだと、誰もが瞬時に悟っていた。
大空を仰ぐ巨人に対して最初に行動をとったのは、戦場にいる誰よりも早くその異変に気付いたシャルルとリエントだった。操る白の巨鎧兵は、立ち塞がる数体の巨人を掻い潜り、魔導砲を取り込んだ巨人に迫る。
近づけば後は一瞬だ。
顔は真上を向き、大地に仁王立つ巨人は明らかに無防備で、巨鎧兵が振る双剣は容易く巨人の四肢を切り刻む。
使い古した油のような真っ黒い液体をまき散らしながら、腕が、足が切り落とされ、そしてその体が地に落ちる前に、苦痛の表情で口を開けていた頭が吹き飛んだ。
巨人はその恐ろしい行動により、戦場にいる戦士の注目を浴びていた。そのおかげで、特異な変化を遂げた巨人が倒れる様を誰もが目撃することになった。
身の毛もよだつ恐ろしい一撃を放った巨人の死に、誰もが安堵する。
だが……忘れてはならない。魔導砲は一門にあらず。防壁の上にはまだ多くの魔導砲が残っているのだ。
先の巨人を真似してか、新たに表れた巨人も続々と防壁の上に手を伸ばし始めた。
減り続ける巨鎧兵に対し数を増やす巨人。その対比は既に半々までに迫っており、とてもではないが全てを捌くことは難しい。
それでもシャルルは持てる力を振り絞り、防壁に群がる巨人の対処を始める。
「させるかあああ!!」
シャルルは覇気を孕む一声と共に、リエントの放つ風属性魔法により機動性が向上した巨鎧兵を操る。リエントは更に火属性魔法を操り、巨鎧兵の攻撃の手を倍に増やす。腕を切り、足を焼き、頭を落としその次へ……巨鎧兵が持つ双剣は、まるでそれぞれが別の生き物のように個別の軌道を描き、現在の巨人程度では到底防ぐことの出来ない怒涛の攻撃を繰り出す。
一体、二体、三体……巨人は瞬く間に数を減らすが、もともといた巨鎧兵三百余りの内、既に半分近くが巨人となってしまっている。いまさら十や二十処理した程度では殆ど意味がない。
また一体の巨人が魔導砲を飲み込んだ。
『ウ……ググ……ガアアアアア!!』
再び苦しげな声と共に、巨人が口を大きく開けてもがき始めた。何度も足を踏み鳴らし、その度に地鳴りと何体もの魔物が潰される。そしてその口が遠くにある山の頂を指した時、閃光と共に光の柱が放たれた。
キュイン!!
音速を超え光に近い速度で飛ぶそれは、山の地表を蠢く魔物諸共、遠くに聳える山の頂を吹き飛ばした。
ぽっかりと丸く欠けてしまった山頂を見て、ガンフが苦し気に吐き捨てる。
「くそっ!! あんなもの、一体どうしろというのだ!!」
ヒトでは到底抗えぬ絶対的な力を前に、皆は放心するしかなかった。
戦場にいる者らは、またもや思い違いをしていた。
それまでの『魔導砲を食らい苦しみもがいていた巨人たち』は、いわば失敗作であったのだ。
自身が生まれながらに持つ体とは全く異質のものを取り込む。その行為は自ら毒を食らうも同意だ。そうなれば当然、異物を吐きだそうと体が不調を訴える。それが異質であればある程に、体はその存在を否定し体の内から追い出そうとする。まさに、今のこの世界のように。
だが稀に、その異質な物を取り込みながらもそれに適応、順応する個体が現れる。数にして全体の極僅かではあるが、確実に存在するそれは、戦場に更なる恐怖をもたらす。
一体の巨人が、魔導砲を飲み込んだ。これまでの巨人に習えば、彼はこの後苦しみながら天を仰ぎ、そちらへ向けて魔導砲を放つのだろう。そして無防備になった巨人は巨鎧兵に倒され、また一つ戦場に肉塊が転がるのだ。
だが今回は違った。魔導砲を飲み込んだ巨人は、苦しむどころか不敵な笑みを湛え、揚々と周囲を見渡した。
彼の目に留まったのは、何体もの巨人を屠った白き巨鎧兵。一人の少女と、一人の少年が操る巨大兵器だ。
『アアアアア‶ア‶ア‶!!』
がぱりと開かれた口。その先はまっすぐに白の巨鎧兵を狙っている。先ほどまでの巨人とは違う、正確無比な固定砲台だ。
口の奥から光があふれ、再び超高速で魔力の塊が打ち出された。
視界を埋め尽くす閃光は、戦場で戦う戦士の視界を遮る。
その間にも食い殺されているであろう人間の悲鳴などは聞こえたりしない。
そして、光が収まり広がった視界には……白い巨鎧兵なんて移りはしなかった。
襲い掛かる黒い影に向かって必死に剣を振る戦士も、必死に怪我人の治療に当たる治癒術師も、人間を守る為に奔走するセリオンも、起きる現象の理を探るエルフも、全ての者が、時間の差異はあれどもその光の柱を見上げた。
誰もが、その光の柱が魔導砲だと分かった。戦いが始まってからこれまでの間で、同様の光は幾度も放たれ、多くの魔物を屠ってきたからだ。ある意味で美しくも感じるその光は、一方で数多の山々を喰い穿ち、周囲の景色を大きく変えていったのである。
だがそれだけ地形を破壊した魔導砲の攻撃は、どれを取ってみても無意味に放たれたものは一つもない。ましてや真上に垂直に放つなど、不条理極まりない。つまりあれは、味方の放ったものではないのだと、誰もが瞬時に悟っていた。
大空を仰ぐ巨人に対して最初に行動をとったのは、戦場にいる誰よりも早くその異変に気付いたシャルルとリエントだった。操る白の巨鎧兵は、立ち塞がる数体の巨人を掻い潜り、魔導砲を取り込んだ巨人に迫る。
近づけば後は一瞬だ。
顔は真上を向き、大地に仁王立つ巨人は明らかに無防備で、巨鎧兵が振る双剣は容易く巨人の四肢を切り刻む。
使い古した油のような真っ黒い液体をまき散らしながら、腕が、足が切り落とされ、そしてその体が地に落ちる前に、苦痛の表情で口を開けていた頭が吹き飛んだ。
巨人はその恐ろしい行動により、戦場にいる戦士の注目を浴びていた。そのおかげで、特異な変化を遂げた巨人が倒れる様を誰もが目撃することになった。
身の毛もよだつ恐ろしい一撃を放った巨人の死に、誰もが安堵する。
だが……忘れてはならない。魔導砲は一門にあらず。防壁の上にはまだ多くの魔導砲が残っているのだ。
先の巨人を真似してか、新たに表れた巨人も続々と防壁の上に手を伸ばし始めた。
減り続ける巨鎧兵に対し数を増やす巨人。その対比は既に半々までに迫っており、とてもではないが全てを捌くことは難しい。
それでもシャルルは持てる力を振り絞り、防壁に群がる巨人の対処を始める。
「させるかあああ!!」
シャルルは覇気を孕む一声と共に、リエントの放つ風属性魔法により機動性が向上した巨鎧兵を操る。リエントは更に火属性魔法を操り、巨鎧兵の攻撃の手を倍に増やす。腕を切り、足を焼き、頭を落としその次へ……巨鎧兵が持つ双剣は、まるでそれぞれが別の生き物のように個別の軌道を描き、現在の巨人程度では到底防ぐことの出来ない怒涛の攻撃を繰り出す。
一体、二体、三体……巨人は瞬く間に数を減らすが、もともといた巨鎧兵三百余りの内、既に半分近くが巨人となってしまっている。いまさら十や二十処理した程度では殆ど意味がない。
また一体の巨人が魔導砲を飲み込んだ。
『ウ……ググ……ガアアアアア!!』
再び苦しげな声と共に、巨人が口を大きく開けてもがき始めた。何度も足を踏み鳴らし、その度に地鳴りと何体もの魔物が潰される。そしてその口が遠くにある山の頂を指した時、閃光と共に光の柱が放たれた。
キュイン!!
音速を超え光に近い速度で飛ぶそれは、山の地表を蠢く魔物諸共、遠くに聳える山の頂を吹き飛ばした。
ぽっかりと丸く欠けてしまった山頂を見て、ガンフが苦し気に吐き捨てる。
「くそっ!! あんなもの、一体どうしろというのだ!!」
ヒトでは到底抗えぬ絶対的な力を前に、皆は放心するしかなかった。
戦場にいる者らは、またもや思い違いをしていた。
それまでの『魔導砲を食らい苦しみもがいていた巨人たち』は、いわば失敗作であったのだ。
自身が生まれながらに持つ体とは全く異質のものを取り込む。その行為は自ら毒を食らうも同意だ。そうなれば当然、異物を吐きだそうと体が不調を訴える。それが異質であればある程に、体はその存在を否定し体の内から追い出そうとする。まさに、今のこの世界のように。
だが稀に、その異質な物を取り込みながらもそれに適応、順応する個体が現れる。数にして全体の極僅かではあるが、確実に存在するそれは、戦場に更なる恐怖をもたらす。
一体の巨人が、魔導砲を飲み込んだ。これまでの巨人に習えば、彼はこの後苦しみながら天を仰ぎ、そちらへ向けて魔導砲を放つのだろう。そして無防備になった巨人は巨鎧兵に倒され、また一つ戦場に肉塊が転がるのだ。
だが今回は違った。魔導砲を飲み込んだ巨人は、苦しむどころか不敵な笑みを湛え、揚々と周囲を見渡した。
彼の目に留まったのは、何体もの巨人を屠った白き巨鎧兵。一人の少女と、一人の少年が操る巨大兵器だ。
『アアアアア‶ア‶ア‶!!』
がぱりと開かれた口。その先はまっすぐに白の巨鎧兵を狙っている。先ほどまでの巨人とは違う、正確無比な固定砲台だ。
口の奥から光があふれ、再び超高速で魔力の塊が打ち出された。
視界を埋め尽くす閃光は、戦場で戦う戦士の視界を遮る。
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