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20章 変質
ローゼリエッタの日課 1
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瞬く間に三月が過ぎさった。
当初は大軍の敗戦に静まり返っていた集落だったが、今では活気を取り戻し、そこかしこから賑やかな声が聞こえてくる。また、先の敗戦を経て、ドワーフの集落も大分様変わりをしていた。
ドワーフの集落は、北西に巨大な鉱山を抱える集落だ。中を少し細かく明記すれば、鉱脈の周囲には多くの工場が立ち並び、その南側には各技術者の工房が立ち並ぶ。また大きな傷を負った戦士たちが集う『仮設治療所』が北東に位置し、各々今後に備え忙しなく作業しているのが現状だ。
朝起きて、朝食を取り、着替えをすますと外へと繰り出す。戦士が眠る宿泊施設は、仮説治療所と同じ北東区にあり、多くの戦士がその区画で寝泊まりをしている。
その日も少女は、宿を出ると南へ向けて歩き出す。
宿場街から南に行くと、そこには様々な品を扱う商店街に辿り着く。一言に様々といっても人間の街にてはまる様々とはひと味違い、あちらで見られる物品は少なく、あまり見ることが出来ない。その代わりと言っては何だが、あちらでは見たこともないような物ばかりが並んでいた。それは食べ物から始まり、装飾品、生活用品、薬に鎧、武器類に至るまで、まさに様々だ。
この商店街を練り歩くのも、ローゼリエッタの新たな日課である。
ローゼリエッタが通りを行く。すると一度、明るい声があちこちから上がり出した。
「お、こりゃ聖女様。おはようさん! どうだい、おひとつ」
果物が並ぶ店の店主が、ローゼリエッタへと果物をほおる。
「あ、ありがとうございます」
当初はどうにか返そうとしていたローゼリエッタだったが、余りにも頑なな店主に今では礼を返してそのまま受け取る。
果物を受け取った矢先、少女へと別方から声が上がった。
「聖女様ぁ。今日のお弁当はどれにします? これなんかくどくなくておすすめですよ」
料理屋の女将が、香草をふんだんに使った弁当を指し示す。
するとローゼリエッタは、この日の昼食としてその弁当を受け取り、いくらかの貨幣を手渡した。
他にも別の店主や客と何度かのやり取りを経て、ローゼリエッタは商店街を後にする。
続いてローゼリエッタが向かうのは、商店街から西にある技術者が集う区域だ。
その区域は、エルフの魔法使いやドワーフの鍛冶師、それに志を同じにするものが集まり、日夜魔法に鍛冶にと研究に明け暮れている。
商店街を後にしたローゼリエッタは、次にこの区画を訪れては技術者が研究した成果を一つ一つ見ていくのだ。
「ああ聖女様。今日もおいでくださいましたか。ありがとうございます。ささ、どうぞこちらへ」
一人の老エルフが、訪れたローゼリエッタを一つの建物へと案内する。
その中にはやはり多くのエルフに人間がいて、ああでもないこうでもないと言い合っている。彼らはいずれも優秀な魔法使いたちである。
案内を受けながら、ローゼリエッタは抗議の声をあげていた。
「あの……その聖女様っていうの、やめにしませんか?」
思わず飛び出す苦笑い。大体的に聖女様と呼ばれるようになって暫く経つが、何度聞いても、少女の耳には違和感しか残らない。
だがそんな声にも老エルフは、朗らかに笑って受け流す。
「何をおっしゃいます。我が同胞であるエルフをとって見ても、貴女様程心優しき人もおりますまい」
その顔があまりにも自然か笑顔で、ローゼリエッタはいよいよ愛想笑いしかできなくなる。
それから、魔法使いたちが新たに試行錯誤して編み出した技術を見ては素人目線の意見を残し、その区画を後にするのだ。
技術者の下を去る頃、丁度太陽が頂点を指す頃合いとなる。
するとローゼリエッタは、技術者の集う区画から更に南に歩を進め、集落の外れにある小高い丘を目指す。
足元には綺麗に生えそろった草原。頬を撫でる柔らかな風が、草木を撫で心地よい音を奏でる。波打つ草原は日の光を反射し、白い光の曲線を映し出している。
「……いい風……」
その光景に、以前は何も思わなかった。熱すぎず冷たすぎず、程よい暖かさの柔らかなそよ風。見渡す限りの大草原も、人間が暮らす領域で良く目にすることが出来る。これがエルフやドワーフたち世界の管理者が、人知れず保ってきたものだと思えば、とても愛おしく感じられた。
ローゼリエッタは丘の中腹辺りで腰を下ろすと、集落の方へ顔を向けては弁当を広げる。
ここで昼食を一人で取るのもまた、彼女の日課である。
彼女が聖女と呼ばれる所以はその丘の先にあった。
昼食を取り終えたローゼリエッタは、空になった弁当をしまうと、踵を返し丘を登っていく。
上る程に少しずつ急勾配となり、僅かに息が荒くなる。そして丘を登り切った先には……
「……」
言葉を無くした少女の目の前に、夥しい数の石が並んだ光景が映し出された。
そこは、革命軍が発足して以来命を落としてきた、勇敢な戦士が眠る墓地。
先の大戦による被害に傷心し、ローゼリエッタの提言のり作られた、集落の新しい区画の一つだ。そこには人間だけでなく、エルフやドワーフ、セリオンに至るまで、全ての英霊が眠っている。
この提言をし、実際に作るまでに至ったその行動力を湛え、彼女は皆から聖女と呼ばれるようになったのだった。
ローゼリエッタは、二月前に墓地が出来てからという物、毎日この場所に来ては、英霊に向かって祈りを捧げていた。その祈りを捧げる姿もまた、彼女を聖女と言わしめる所以。
人影のない丘の上で、手を合わせ祈る姿は、とても絵になる。
こうしてたっぷりの時間をかけ祈りを捧げると、少女は墓地を後にする。丘を下り、研究者の集う区画を通り過ぎては、集落の北を目指す。
当初は大軍の敗戦に静まり返っていた集落だったが、今では活気を取り戻し、そこかしこから賑やかな声が聞こえてくる。また、先の敗戦を経て、ドワーフの集落も大分様変わりをしていた。
ドワーフの集落は、北西に巨大な鉱山を抱える集落だ。中を少し細かく明記すれば、鉱脈の周囲には多くの工場が立ち並び、その南側には各技術者の工房が立ち並ぶ。また大きな傷を負った戦士たちが集う『仮設治療所』が北東に位置し、各々今後に備え忙しなく作業しているのが現状だ。
朝起きて、朝食を取り、着替えをすますと外へと繰り出す。戦士が眠る宿泊施設は、仮説治療所と同じ北東区にあり、多くの戦士がその区画で寝泊まりをしている。
その日も少女は、宿を出ると南へ向けて歩き出す。
宿場街から南に行くと、そこには様々な品を扱う商店街に辿り着く。一言に様々といっても人間の街にてはまる様々とはひと味違い、あちらで見られる物品は少なく、あまり見ることが出来ない。その代わりと言っては何だが、あちらでは見たこともないような物ばかりが並んでいた。それは食べ物から始まり、装飾品、生活用品、薬に鎧、武器類に至るまで、まさに様々だ。
この商店街を練り歩くのも、ローゼリエッタの新たな日課である。
ローゼリエッタが通りを行く。すると一度、明るい声があちこちから上がり出した。
「お、こりゃ聖女様。おはようさん! どうだい、おひとつ」
果物が並ぶ店の店主が、ローゼリエッタへと果物をほおる。
「あ、ありがとうございます」
当初はどうにか返そうとしていたローゼリエッタだったが、余りにも頑なな店主に今では礼を返してそのまま受け取る。
果物を受け取った矢先、少女へと別方から声が上がった。
「聖女様ぁ。今日のお弁当はどれにします? これなんかくどくなくておすすめですよ」
料理屋の女将が、香草をふんだんに使った弁当を指し示す。
するとローゼリエッタは、この日の昼食としてその弁当を受け取り、いくらかの貨幣を手渡した。
他にも別の店主や客と何度かのやり取りを経て、ローゼリエッタは商店街を後にする。
続いてローゼリエッタが向かうのは、商店街から西にある技術者が集う区域だ。
その区域は、エルフの魔法使いやドワーフの鍛冶師、それに志を同じにするものが集まり、日夜魔法に鍛冶にと研究に明け暮れている。
商店街を後にしたローゼリエッタは、次にこの区画を訪れては技術者が研究した成果を一つ一つ見ていくのだ。
「ああ聖女様。今日もおいでくださいましたか。ありがとうございます。ささ、どうぞこちらへ」
一人の老エルフが、訪れたローゼリエッタを一つの建物へと案内する。
その中にはやはり多くのエルフに人間がいて、ああでもないこうでもないと言い合っている。彼らはいずれも優秀な魔法使いたちである。
案内を受けながら、ローゼリエッタは抗議の声をあげていた。
「あの……その聖女様っていうの、やめにしませんか?」
思わず飛び出す苦笑い。大体的に聖女様と呼ばれるようになって暫く経つが、何度聞いても、少女の耳には違和感しか残らない。
だがそんな声にも老エルフは、朗らかに笑って受け流す。
「何をおっしゃいます。我が同胞であるエルフをとって見ても、貴女様程心優しき人もおりますまい」
その顔があまりにも自然か笑顔で、ローゼリエッタはいよいよ愛想笑いしかできなくなる。
それから、魔法使いたちが新たに試行錯誤して編み出した技術を見ては素人目線の意見を残し、その区画を後にするのだ。
技術者の下を去る頃、丁度太陽が頂点を指す頃合いとなる。
するとローゼリエッタは、技術者の集う区画から更に南に歩を進め、集落の外れにある小高い丘を目指す。
足元には綺麗に生えそろった草原。頬を撫でる柔らかな風が、草木を撫で心地よい音を奏でる。波打つ草原は日の光を反射し、白い光の曲線を映し出している。
「……いい風……」
その光景に、以前は何も思わなかった。熱すぎず冷たすぎず、程よい暖かさの柔らかなそよ風。見渡す限りの大草原も、人間が暮らす領域で良く目にすることが出来る。これがエルフやドワーフたち世界の管理者が、人知れず保ってきたものだと思えば、とても愛おしく感じられた。
ローゼリエッタは丘の中腹辺りで腰を下ろすと、集落の方へ顔を向けては弁当を広げる。
ここで昼食を一人で取るのもまた、彼女の日課である。
彼女が聖女と呼ばれる所以はその丘の先にあった。
昼食を取り終えたローゼリエッタは、空になった弁当をしまうと、踵を返し丘を登っていく。
上る程に少しずつ急勾配となり、僅かに息が荒くなる。そして丘を登り切った先には……
「……」
言葉を無くした少女の目の前に、夥しい数の石が並んだ光景が映し出された。
そこは、革命軍が発足して以来命を落としてきた、勇敢な戦士が眠る墓地。
先の大戦による被害に傷心し、ローゼリエッタの提言のり作られた、集落の新しい区画の一つだ。そこには人間だけでなく、エルフやドワーフ、セリオンに至るまで、全ての英霊が眠っている。
この提言をし、実際に作るまでに至ったその行動力を湛え、彼女は皆から聖女と呼ばれるようになったのだった。
ローゼリエッタは、二月前に墓地が出来てからという物、毎日この場所に来ては、英霊に向かって祈りを捧げていた。その祈りを捧げる姿もまた、彼女を聖女と言わしめる所以。
人影のない丘の上で、手を合わせ祈る姿は、とても絵になる。
こうしてたっぷりの時間をかけ祈りを捧げると、少女は墓地を後にする。丘を下り、研究者の集う区画を通り過ぎては、集落の北を目指す。
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