8 / 54
使い魔との契約
8
しおりを挟む「こちらは私の使い魔のモコだよ。」
『モコだよ。よろしく。』
腕の中に居るモコを紹介をする。ソフィアは椅子に座らされていた。周囲を屋敷の人が全員で取り囲んでおり、ソフィアは罪を犯した犯罪者の気分だ。ソフィアはモコに顔を近付けて、周囲の人の顔を見ないようにする。
「ソフィア様はモコと契約したのは、説明がなくても分かります。ですが、太陽すら昇っていない早い時間に、ソフィア様は庭にいらしゃったのですか。」
やはり問題はそこですか。ソフィアは冷や汗をかく。ここで皆が納得する説明をしないと、24時間体制で護衛が付く。そんなのは、ごめんだ。だが、上手い言い訳が思い浮かばず「えっと、あの」と、挙動不審になりエレナ達に怪しまれる。
そこには、エレナ達の後方で椅子に腰掛けるクリスが、今までに見たことがないほど、険しい顔をしており、並大抵の言い訳では無理なことも関係していた。
『ソフィアは週に2・3回、僕のところに遊びに来るーー。』
「こら、モコは余計なことを言わない。」
「ソ・フィ・ア。」
慌ててモコの口を抑えたソフィアだが、完全に遅かった。ハンナがソフィアの前に立ち黒い笑顔で見下ろしている。
ソフィアはもう観念するしかなかった。
「じ、実は――。」
ソフィアは早朝に内緒で庭を散歩していたこと。そこで、たまごを見つけたこと。たまごからモコが産まれて、自分の使い魔として契約したこと。モコと契約するまでの出来事の全てを包み隠さず話した。
「事情は分かりました。よく頑張りましたね。」
「ソフィア達がご立派に成長されて、エレナはとても嬉しいですわ。」
「旦那様に内緒で外に出るなんて、本当に成長したな。」
どういう事だ。怒られると思っていたソフィアの目が点になる。ハンナやエレナに続くように、ソフィアを褒める声が使用人のあちこちで上がる。
「ソフィアのことだから、お父様達にばれたら24時間体制で護衛が付く。と、考えていたんでしょう。」
「どうして、分かるの!?」
「クリスの溺愛っぷりを間近で見ていれば、誰でも想像は出来ますよ。」
エレナの声に周囲が一斉に頷く。ソフィアの考えは全員にお見通しだったようだ。
「クリスのことは私に任せなさい。ソフィアに護衛は必要ないわ。だって、今日からモコが貴方を守ってくれるからね。」
『守るよ。』
「ありがとう。」
最初からハンナに相談すれば良かった。ソフィアが安心するようにハンナがソフィアとモコの頭を撫でる。モコはたまごの時と同じで撫でられるのが好きなようで、気持ち良さそうにしている。
「許さんぞ。私は許していないからな。」
「召喚、カメルン。」
『は~い。渦巻き。』
この部屋の中でソフィアが勝手に外に出たのを怒っているのは、やはりクリスだけのようだ。だが、クリスがどんなに怒ろうが、家の中で最強のハンナをソフィアが味方にした時点で、勝負は決まっていた。
クリスは大きな渦に呑み込まれている。見ている此方が目を回しそうだ。
「絶対に許さんぞ。私は絶対にソフィアと使い魔園に行くんだ。」
「えっ。」
クリスの言葉を理解する為にソフィアは頭を働かせる。ソフィアは使い魔と契約する為にクリスと使い魔園に行くことに決めた。だが、モコと契約を結んだことにより、使い魔園に行く必要がなくなった。娘とのお出掛けを楽しみにしていたクリスは、ソフィアとモコの契約を認めないと駄々を捏ねている。クリスの言動に納得したソフィアは頭を抱えた。
「分かりました。私も契約は抜きにしても、他の使い魔は見てみたいと思っていた所です。一緒に使い魔園に行くから、モコを私の使い魔として認めて下さい。」
「それなら良いぞ。モコのことも認めるぞ。」
「だから、お父様は復活早すぎです。」
ソフィアが頭を抱えている間に復活したクリスが笑いながらモコを見る。その様子にハンナを始めとする使用人全員が呆れていた。
「ですが、旦那様がソフィア様が勝手に外に出たのを、何も感じないなんて驚きです。」
エレナの言動は最もである。ソフィアを溺愛するクリスが、その事実を知って何も感じないのか。当然だがそんな事はあり得なかった。
「当たり前だ。ソフィアが庭でーー。」
「それ以上は話してはダメです。」
「そうです。ハンナ様に怒られます。」
クリスが何か発言をしようとした口を、クリスの護衛が塞いで部屋から出ていった。「そういう訳ね。」と、ハンナは分かった様子だが、ソフィアは理解出来ず首を傾げる。
「クリスの事は放って置きましょう。それより、ソフィアは契約おめでとう。」
「ありがとう。」
たまごの母親に、クリスが最後に残した謎の発言。色々な事が起こったけど、無事にモコと契約出来て良かったとソフィアは思うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。
目覚めた先は、近江・長浜城。
自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。
史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。
そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。
「この未来だけは、変える」
冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。
これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。
「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。
※小説家になろうにも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします
ほーみ
恋愛
その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。
そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。
冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。
誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
だが、彼の言葉は、決定的だった。
「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる