ルナリアの隠された能力の秘密

luna - ルーナ -

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番外編:あったかもしれない未来

03

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「転校生から真っ黒いモヤ」
「あそこまで真っ暗いモヤを見るのは初めてです。とっても怖かったです」
 両手で身体を包むかのように抱きしめて、身体をブルブルと震わせる。
「如何しましょう?」
「今は被害が無いが、そうだな―――」
 エヴァンジェリンがルナリアに頼んだもの、それは―――。
「刺繍ですか?」
「ルナリアの刺繍には加護が贈られる」
「加護ですか?」
「ああ、加護を贈られるた物を身に付けているだけで事前に防げる」
「了解しました。私に任せてください」
「頼んだ」
「はい!」
 笑顔で頷くルナリアにエヴァンジェリンは、顔を緩める。
 小さいときは、思えば吉といわんばかりに走り去る姿はなく淑女として凛々しく立ち緩やか動き立ち去る背中を見送る。
「昔は走り回っていたのに、今じゃ立派な淑女だ」
「寂しいですか?」
「少しな」
 ルナリアは知らない。
 エヴァンジェリンとルイスがこんな話をしていたことに。
 当のルナリアはというと、さっそく、布を広げて針を片手に持つ。
 るんるん気分で刺繍を始める。
 ルナリアは自分にできることが嬉しくて仕方ない。
 ルナリアはいつも考えていた。
 己に何ができるのか?
 護られてばっかりだったルナリアに唯一できることは危険を知らせることくらいだ。
 王家は危険が多い。
 口にするもに毒が混ざっていることも稀にある。
 今、現に未然に防げているのはルナリアのおかげでもあるが、ルナリアにとっては当たり前のことで特別だと思っていない。
 だからこそ、ルナリアは頼られたことが嬉しかった。
「張り切りすぎなきゃいいが」
 エヴァンジェリンが懸念していたように一晩中刺繍をしていたようでルナリアの目の下にはくまができている。
「無茶はしない」
「無茶はしておりません」
「目にくまができているが?」
「ぅう」
 言葉に詰まるルナリアにエヴァンジェリンは、ふっと微笑む。
「ルナリアの良いところでもあるが、悪いところでもある。君が倒れたりしたら悲しむものがいることを忘れてはない。解ったね?」
「はい」
「わかったならいい」
 しょんぼりするルナリアの頭をエヴァンジェリンは撫でる。
「助かってはいる」
 ルナリアの活躍のおかげもあってか何事もなく卒業を迎えることができた。
 例の転校生のアリス・ローザには魅了の魔法の持ちと解り魔法を封じるブレスネットをつけられる事になった。
 悪用したり、利用されたりすることを防ぐ為に。
 このブレスネットは王家の者以外に外せない仕組みになっている。
 無理に外そうとすると爆発する仕組みになっているとか。
 怖すぎる。
 そして、無事にディーノ殿下とソフィア様の結婚式を挙げた。
「ソフィア様とっても綺麗でしたね」
「そうだね。―――次は、ルナリアだね」
 その意味を知るのは一年後のことだった。
 両親や妹のリリス、それから第二王子夫妻、前妻の息子のアレックス王子、国民に祝福されて王太子エヴァンジェリンの妃になった。
 妹のリリスは「お姉様ばっかりずるい」と、言いながらも「おめでとう」と、祝福の言葉を贈った。

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