BLUE DREAMS

オトバタケ

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クロとシロ

お仕置き2

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 今年も、あと三日。今、俺はイギリスにいる。
 今年からイギリスのチームに移籍した元チームメイトでダチのシローの家に遊びに来ているのだ。
 今日も早起きして、丹精込めて朝食を作る。泊めて貰っているお礼に家事をやっているのだ。

「シロー、おはよー。朝飯出来たぞー」

 寝室の扉を開けると、まだ家主はベッドの中で幸せそうに眠っていた。
 膝をついて、その寝顔を覗く。
 そのプクッとした頬に触れると、擽ったそうに寝返りを打った。

 俺はゲイじゃないし、シローに不埒な妄想を抱いたことはない。
 シローが男と付き合っていて女役だってのを知っても、どうこうしたいなんて思ったことはなかった。でも……
 前から天真爛漫で可愛い奴だなとは思っていたが、こんなに色気があったっけ?

「ん……」

 そ、そんな艶かしい声を出すな! なんかドキドキしてきてしまった。
 カーテンの隙間から入る朝日が、シローのプルンとした唇を照らす。

 キッ、キスしたい……。
 軽く触れるだけならいいよな。この国じゃ挨拶だし、しちゃっても問題にならないよな。
 誰もいるはずないのに周りを確認して、シローに顔を近付けていき、柔らかそうな唇に自分の唇を重ねようとする。

「何をしてるんですか?」

 突然背後からした無機質な声に振り返ると、長身の男が扉にもたれかかっていた。

「なっ、なんでいるんだよ?」
「恋人ですからね、いたって不思議じゃないでしょう?」

 表情ひとつ変えずに近寄ってきたのは、シローの恋人だ。

「空港からそのまま来てよかったですよ。俺の可愛いシローが飢えた狼に襲われずに済んで」

 ベッドに腰掛け、さっき俺がしようとしていたことをシローにして、耳元に顔を埋めて何かを言っている。

「んー」

 シローが目を擦りながら、ゆっくりと体を起こした。

「早かったな」

 嬉しそうに恋人に笑いかけるシローに、恋人は優しく頭を撫でてやっている。
 幸せそうに見つめ合う二人。感動の恋人同士の再会。
 って、俺もここにいるんですけど……
 暫く、クロしか映っていなかったシローの瞳に、やっと俺が映る。

「あっ、キイチ、おはよう」

 にこっと笑うその顔を見て、早めに唇を奪っておけば良かった、とか思ってしまった。

「何故あいつがここにいるんですか?」

 優しい眼差しだったクロが、さっき俺を見た目に戻ってシローを追求する。

「だって、友達だから……」
「恋人がいるのに、よく他の男と同じ屋根の下、何日も生活が出来ますねぇ」

 責められて俯いてしまったシローに、なおも攻撃を続けるクロ。

「恋人がいることが分かっているのに、ひょこひょこやって来る奴も奴ですけどね」

 ゆっくりと俺の方に振り返ったクロが、不気味な笑みを浮かべて俺を見る。
 こっ、怖い。いつもは物腰が柔らかくて紳士を絵に描いたようなクロだけど、本当はこんな冷酷な奴なんだ。
 何でシローは、こんな奴と一緒にいるんだ?

「悪い子には、お仕置きしないといけませんね」

 そう言うと、俺が見ている前でクロはシローを押し倒してしまった。

「キイチが見てるだろ」

 必死に体を捩って抵抗するシロー。
 言葉を発せられないようにクロがその口を塞ぐと、静かな朝の部屋にクチュクチュと水音が響きだした。
 唇を離したクロがシローの首筋に顔を埋めると、甘い吐息を吐くシローの口から嬌声が発せられはじめたではないか。
 クロの唇がシローの胸の突起に吸いついた時には、もうシローはクロしか見えていないようで、本能のままにクロを感じていた。

 男同士の絡みだというのに、イケメンのクロと可愛らしいシローだからか、全く気色悪さは感じない。
 嫌悪感がないどころか、よく知っている二人の情事を見て、こともあろうか体が熱くなってきてしまった。
 駄目だと思う程、体は言うことを聞かない。
 こうなってしまったからには仕方がないので、クロにだけは気付かれないようにしようと思ったのも束の間、シローに唇を這わせていたクロがベッドを降りて俺に近付いてきた。
 何をされるんだ?、と固唾を飲んでクロの動きを見ていると、

「うっ……」

 俺の股間を握ったクロが、ニヤッと悪魔のような笑みを浮かべた。

「脱ぎなさい」
「えっ……む、無理」

 やる気まんまんの自身を晒け出すわけにはいかない。

「お仕置きするって言いましたよね? 早く脱ぎなさい!」

 射殺しそうな程の鋭い瞳が迫ってきて、恐怖で背筋に冷たい汗が流れた。
 殺されたらかなわないので、渋々ズボンを下ろす。
 露わになった俺の下半身を見て、満足したようにニヤリと笑ったクロは、俺の右手を掴んで俺自身にあてがった。

「キイチも一緒にやりなさい」
「えぇっ!?」

 やっ、やるって……。何考えてんだ、こいつ。
 でも怖いので、コクコク頷いて自分自身を握る。
 それを確認したクロは、クロクロ、と譫言のように言い続けているシローの元に戻っていく。

「待たせてすいません。続きをやりましょうね」
「早くぅ」

 急かすようにクロの首に腕を回すシロー。
 俺の目の前で恥ずかしげもなく生まれたままの姿になった二人は、野獣のように求め合う。
 段々頭の中がぼーっとしてきた俺は、何とも言えぬ欲望を吐き出したくて無心で右手を動かした。

「クロ……駄目……イッちまう」
「思い切りイきなさい」

 目の前で絶頂を迎えた二人を見届けると、俺も欲望を吐き出した。
 すぐに我に返った俺は、余韻を楽しんでいるシローに気付かれないように、急いでズボンを履く。
 シローはクロの腕の中で、幸せそうに離ればなれだった間の出来事を話している。
 急に何かを思い出したようにその表情が固まると、ゆっくり俺の方を振り向いた。

「キイチ……ずっといたのか?」

 俺を見つめる顔が、大丈夫なのかと心配になるくらい真っ赤になっていく。
 ずっと見ていたなんて、言えるはずがない。

「あっ……急に腹が痛くなって便所行ってて、今戻ったとこ」

 本当か?、と聞くシローに、本当本当、と頷くと、シローを抱きしめているクロがあの不気味な笑みを浮かべた。

 三人で、もう冷めかかっている朝食を食べる。

「キイチの卵焼きってサイコーなんだよ」

 無邪気な笑顔を浮かべ、クロの茶碗に卵焼きをのせるシロー。

「そうなんですか?」

 優しくシローに微笑むと、そのまま俺の方を見るクロ。
 その笑顔の下で、一体何を考えているんだ?
 あと五日、シローの家にいる予定だったんだけど……。

「あのさ……朝飯食ったら、もう帰るから」
「えっ? どっか行くとこあんの?」
「うん。イギリスの観光スポット巡りでもしようかなって思って」

 楽しんでこいなって笑うシローと、してやったりという顔で俺を見るクロ。
 観光なんてする予定じゃなかったけど、ここにいたら干からびて死んでしまうか、クロに殺されるかのどっちかだ。
 帰っていく俺を玄関まで見送りに来てくれたシローを、俺のもんだと言わんばかりに後ろからぎゅっと抱きしめているクロ。
 来年は、日本でゆっくり正月を過ごそう。
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